有価証券報告書-第186期(2024/01/01-2024/12/31)
文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営の基本方針
当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けて、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針である「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」
キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成しています。また、社会課題の解決をグループの成長機会と捉え、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築しています。
持続的成長のための経営諸課題「グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM」
キリングループは、社会とともに、持続的に存続・発展していく上での重要テーマを事業へのインパクトとステークホルダーへのインパクトの2つの観点から評価し、「持続的成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM)」に整理しています。GMMは時間の経過とともに変化していくものと捉え、適時再評価をし、改訂しています。2022年中期経営計画の策定以降の社内外環境変化を踏まえ、10年先を見据えてキリングループが社会とともに持続的に存続・発展していくうえでの重要課題を整理しました。2025年以降に向けて、ステークホルダーとの対話/アンケートや、キリングループの役員による意見交換などを通じてグループの事業へのインパクトを再評価し、GMMを更新し、社会的要請への適合度をより高めました。

※各象限内の重要性に差異はありません。
「キリングループCSVパーパス」
GMMに基づき、当社は「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」の4つの領域の課題解決を目指しており、これを「CSVパーパス」と定めています。また、具体的なアクションプランをCSVコミットメントとして、成果指標を会社別により具体化して目標値を設定し、グループ各社の取り組みに繋げています。
また、10年先を見据えて特に注力していく領域の指針を明確にするため「コミュニティ」と「酒類メーカーとしての責任」の表現を見直すとともに、企業経営の土台として「企業としての普遍的な責務」を明記しました。

価値創造モデル/CSV経営の概念
CSV経営のベースの考え方である「社会課題の解決を通じて、社会的価値と経済的価値を創出すること」を持続的に推進していく仕組みとして、当社は価値創造モデルを策定しています。イノベーションを生み出すための組織能力(INPUT)を基盤として、社会課題の解決に事業活動(BUSINESS)を通じて取り組むことで、価値(OUTPUT/OUTCOME)を創出しCSVパーパスを実現しています。特に人的資本や自然資本などの非財務資本の強化は、社会と共に自然の恵みを利用しながら事業を行う当社にとって、継続的な価値の創造につながります。
事業を通じて、当社は社会的価値と経済的価値を同時に生み出し、それらを組織能力などの経営基盤に再投資することで、持続的に資本と価値を成長させることを目指しています。

このCSV経営を推進していくことがどのように企業価値の向上に繋がっているかを図示すると以下のようになります。

社会課題の解決を通じた事業活動(Business)は経済的価値を生み、フリー・キャッシュフローを増加させると共に、事業リスクを低減することにつながるため、資本コストを下げ、企業価値の向上に寄与します。
他方、これらの活動から社会的価値を創出し、その価値がお客様のニーズを充足することで、弊社の製品・サービスに対するWillingness to Payが高まり、長期的にはフリー・キャッシュフローの増加にも影響すると考えられます。さらに、社会的価値が創出され高い水準になることで、従業員エンゲージメントの上昇や採用での優位性などにも影響することが考えられ、価値創造モデルにおけるINPUTの基盤である人的資本の強化に繋がります。その結果、企業の成長率にもポジティブな影響を及ぼすと当社は認識しています。
(参考)
・持続的な成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス)
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/materiality/
・キリングループ CSVパーパス
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/csv_purpose/
・キリングループ CSVコミットメント
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/
・価値創造モデル
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/model/
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
2027年に向けた計画
近年、世界各地で起こる異常気象、天候不順など、社会システムを大きく揺るがす環境変化が続いています。KV2027を発表してから6年が経過し、2027年まで残り3年となりましたが、この6年間においても外部環境としては、新型コロナウイルスの感染症拡大、原材料コストの高騰及び地政学リスクの高まりなど、生活者の行動様式に大きな変化がありました。キリングループは、これらの環境変化に柔軟に対応しつつ、KV2027で掲げた「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」というビジョンの実現に向けて、これまで固定の3年間としていた中期経営計画を、今後は毎年ローリングする方法へと変えます。長期的な目指す姿は変えずに、長期の視点を持ちながら、外部環境を踏まえた最適な計画を柔軟に描き、目標達成を目指していきます。
これまでの6年間は、環境変化に対応する主力事業の競争力強化や、事業ポートフォリオを大胆に入れ替えることに注力をした「構造改革ステージ」でした。これから2027年に向けては、早期に成長実現ステージへと移行し、不確実性のある事業環境下でも、酒類・飲料、医薬及びヘルスサイエンスの事業ポートフォリオだからこそ実現できる一桁後半%のEPS成長を目指していきます。

(基本方針)
不確実性や地政学リスクも考慮しながら事業ポートフォリオを展開し、KV2027で掲げた「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」というビジョンの実現に向けて酒類・飲料、医薬及びヘルスサイエンスの各事業で成長を実現していきます。
(優先課題)
① 各事業の注力分野での価値創造
② 人財、R&D、デジタル及びマーケティングへの投資強化
(重要成果指標)
2027年に向けた財務指標については、EPS※1の成長による株主価値向上を目指すと共に、引き続きROICを採用し、継続的に資本コストを超える水準を目指していきます。
また、重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。(なお、役員報酬に関する詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。)
※1 前中期経営計画においては、「平準化EPS」を採用していたが、より実質的な稼ぐ力を示すために、平準化しないEPSを採用。
[財務目標※2]
※2 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。
※3 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)
[非財務目標]

(財務方針)
キャッシュ・フロー最大化に向けてオーガニック成長による利益創出を目指します。2027年に向けて創出する営業キャッシュ・フローの総額は約8,700億円を想定しています。配当金については、より安定的かつ持続的な配当を実現するために平準化EPSに対する配当性向40%以上の配当から、DOE(連結株主資本配当率)5%以上を目安とする配当方針に変更し、原則として1株あたり配当単価は累進配当を実施いたします。配当金額はグループ総額で約2,300億円を予定しています。設備投資に関しては、総額で約4,000億円を予定しており、長期視点で優先順位を決定し、安全・品質や環境のために必要な設備投資を適切に実施した上で総額のコントロールをします。また、価値創造の源泉となる人財、R&D、ICT及びマーケティングへの投資も強化して企業価値向上につなげます。
安定配当を維持しながら、財務健全性を確保するために、有利子負債の返済を実施していきます。今後、M&A投資を実行する際の資金は事業売却などによって賄いますが、不足する場合には2~3年以内に財務健全性を戻せることが見込める限りにおいては、一時的にグロスDEレシオが1倍を超えることを許容します。最適な事業ポートフォリオのための事業の見直しについては継続して議論をしていきます。
なお、株主還元については、基本的には配当で行うものの、投資機会や事業売却等で創出されるキャッシュバランスを考慮しながら、自己株式取得の実施を機動的に判断します。
(非財務方針)
2025年事業計画基本方針に従い、非財務への取り組みもより強化しています。「イノベーションを実現する組織能力」の強化や、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化により、強固な組織基盤の構築を目指しています。また、組織能力の強化とステークホルダーからの期待を踏まえ、経済的価値につながる非財務目標を設定し、価値創造モデルのInput~Business~Outputを強化することでより大きなOutcomeの創出を目指しています。非財務資本への戦略的な取り組みを通じて、当社はCSV経営を推進し、社会のサステナビリティ課題の解決にも貢献していきます。
(3) 会社の対処すべき課題
政治情勢も相まって今後の経済の先行きは依然として不透明です。また、地球温暖化による気候変動対策も急務であり、経営を取り巻く環境は課題が山積しています。キリングループは、不確実性が増す時代だからこそ、CSVを経営の根幹に据え、社会課題をグループの強みで解決し、経済的・社会的価値を創出します。10年後を見据えて長期ビジョンを描き、いかなる環境変化に対しても、迅速かつ柔軟に戦略を最適化しながら実行していく組織体制へ変革します。経営の原点である「お客様本位」「品質本位」に基づき安全・安心を確保しながら、人財・デジタルICT・R&Dへの投資を積極的に行い、イノベーションを実現する組織能力を向上させていきます。人財では、専門性と多様性を軸に価値創造に挑戦する従業員を育成すると同時に、そのための制度や環境整備も進めます。また、今後のグループ経営を担うグローバル人財やキャリア採用の拡充も図ります。デジタルICTでは、生成AI等のデジタル技術を活用し、マーケティングやR&D領域等で価値創造を推進するとともに、グループ全体で業務プロセスの変革に取り組みます。人とAIの分業化を進めることで働き方を変え、飛躍的な生産性向上を目指します。R&Dでは、強みである発酵・バイオテクノロジーを基盤とした技術力で、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」の機能研究によるさらなる高付加価値化や㈱ファンケルの技術を活用したスキンケアへの展開の可能性等、事業戦略に連動した研究開発を実践します。また、すべての事業において戦略を実行していく「現場力の強化」を共通目標におき、経営と現場が一体となって取り組むことで、グループの成長と収益基盤の強化を図ります。こうした取り組みにより、財務目標である「EPS」「ROIC」と、非財務目標である「健康」「コミュニティ」「環境」「人的資本」各項目の達成を目指します。
①酒類事業
お酒に対するお客様の価値観も多様化しているなかで、麒麟麦酒㈱は、CSVパーパスの「酒類事業を営むキリングループとしての責任」を前提に、お酒の未来を創造し、人と社会につながるよろこびを創出していきます。事業の成長に向けては、2026年の酒税改正等、今後の市場環境を見据えて主力ビールブランドに注力することで、収益基盤の強化を目指します。「一番搾り」ブランドでは、4月に「キリン一番搾り ホワイトビール」を発売し、お客様に新たな飲用機会を提案します。「キリンビール 晴れ風」では、4月から飲食店向けに中びん(500ml)の展開も開始するほか、引き続きビールの新しい美味しさを提案しながら、日本の風物詩の保全・継承に取り組む「晴れ風アクション」を通じて、市場での定着を図ります。クラフトビールでは、3月に「スプリングバレー」ブランドを大幅に刷新し、日本各地のクラフトブルワリーとの連携も積極的に行うことで、引き続きビール文化の魅力化に取り組みます。
LION PTY LTDは、豪州でのビールブランド「Hahn (ハーン)」や、「Stone&Wood(ストーン&ウッド)」、豪州とニュージーランドで展開する「Hyoketsu(ヒョウケツ)」等の販売を強化します。また、北米では、New Belgium Brewing Company, Inc.の「Voodoo Ranger(ブードゥー・レンジャー)」に加え、RTDの「Voodoo Hard Charged Tea(ブードゥー・ハード・チャージド・ティー)」の拡大に取り組みます。
②飲料事業
国内飲料市場の厳しい競争環境下において、キリンビバレッジ㈱では、「お客様の毎日に、おいしい健康を。」をパーパスに掲げ、ヘルスサイエンス飲料をドライバーとして事業成長に取り組みます。3月に「キリン おいしい免疫ケア」「キリン イミューズ ヨーグルトテイスト」をリニューアルするほか、幅広い層に向け飲用機会を提案します。「免疫ケア」を毎日の健康習慣として啓発することで、さらなる市場拡大につなげます。
「午後の紅茶」ブランドでは、3月に「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」をリニューアルし、無糖紅茶の魅力を発信することで、紅茶市場の拡大及び無糖茶市場の強化も図ります。
Coca-Cola Beverages Northeast, Inc.は、好調な炭酸飲料を中心に、市場環境にあわせた価格戦略に取り組みながら、デジタルICTをはじめとしたサプライチェーンの効率化を図り、高い収益性を確保していきます。
③医薬事業
協和キリン㈱は日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、病気と向き合う人々に笑顔をもたらす“Life-changing(ライフチェンジング)”な価値創出にむけた取り組みを加速していきます。
経営体制を一層強固なものとすべくCEO、COOの2名体制に変更し、さらなる飛躍を目指します。注力する疾患領域の製品である「Crysvita(クリースビータ)※1」や「Poteligeo(ポテリジオ)※2」の成長による利益拡大を目指すとともにパイプラインの充実に向けて、「KHK4083/AMG451(一般名:rocatinlimab(ロカチンリマブ))※3」や「ziftomenib(ジフトメニブ)※4」の開発推進及び販売開始に向けた取り組みを着実に進めていきます。また、グローバルでの研究開発力の強化にも取り組みます。
※1 主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬です。
※2 特定の血液がんの治療薬です。
※3 アトピー性皮膚炎の治療を目的とする開発品です。結節性痒疹、喘息を対象とした臨床試験も進行中です。
※4 急性白血病の治療を目的とする開発品です。
④ヘルスサイエンス事業
健康志向の高まりにより市場が大きく伸長するなか、キリングループは、事業を行う地域すべての人の生きるよろこびとこころ豊かな生活の実現にむけ、市場を上回る成長を目指します。当社、㈱ファンケル、Blackmores Limitedそれぞれの成長と、統合効果の早期実現により、提供価値の最大化を図ります。
㈱ファンケルは、国内における化粧品事業と健康食品事業のさらなる成長を実現します。㈱ファンケルの強みである店頭販売や通信販売を通じた顧客分析力に、当社の市場リサーチ力を掛け合わせて、新商品開発につなげる等、両社の強みを生かした価値創出に取り組んでいきます。
海外では中国でのブランド育成のほか、Blackmores Limitedとの協業により東南アジア等へ展開していきます。
Blackmores Limitedは、豪州・ニュージーランドでの「Blackmores(ブラックモアズ)」、医療機関向けサプリメント「BioCeuticals(バイオシューティカルズ)」の持続的な成長と、中国や東南アジアでの収益拡大を目指します。
プラズマ乳酸菌事業では、さらなる成長にむけ、付加価値商品の拡充や、Blackmores Limitedとの連携による海外展開の拡大により収益性向上を目指します。また、国内のサプリメント商品は、㈱ファンケルとの販売基盤の一体化を進め、事業の効率化や収益性向上を目指します。
また、ヘルスサイエンスと医薬の新たなシナジー創出も加速していきます。当社と協和キリン㈱の共同出資で2024年9月に設立したCowellnex(コヴェルネクス)㈱においては、健康に関する研究や事業開発等、両社の強みを融合したイノベーションにより、健康を取り巻く社会課題を解決していきます。
キリングループは、今後もユニークな事業ポートフォリオ経営と高い戦略実行力で、持続的に成長する企業としてご期待いただけるよう取り組んでまいります。KV2027を見据え、従業員一人ひとりがイノベーションを実現するために挑戦し続けることで、世界のCSV先進企業に向けたステージアップを目指します。
(1) 経営の基本方針
当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けて、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針である「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」
キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成しています。また、社会課題の解決をグループの成長機会と捉え、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築しています。
持続的成長のための経営諸課題「グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM」
キリングループは、社会とともに、持続的に存続・発展していく上での重要テーマを事業へのインパクトとステークホルダーへのインパクトの2つの観点から評価し、「持続的成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM)」に整理しています。GMMは時間の経過とともに変化していくものと捉え、適時再評価をし、改訂しています。2022年中期経営計画の策定以降の社内外環境変化を踏まえ、10年先を見据えてキリングループが社会とともに持続的に存続・発展していくうえでの重要課題を整理しました。2025年以降に向けて、ステークホルダーとの対話/アンケートや、キリングループの役員による意見交換などを通じてグループの事業へのインパクトを再評価し、GMMを更新し、社会的要請への適合度をより高めました。

※各象限内の重要性に差異はありません。
「キリングループCSVパーパス」
GMMに基づき、当社は「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」の4つの領域の課題解決を目指しており、これを「CSVパーパス」と定めています。また、具体的なアクションプランをCSVコミットメントとして、成果指標を会社別により具体化して目標値を設定し、グループ各社の取り組みに繋げています。
また、10年先を見据えて特に注力していく領域の指針を明確にするため「コミュニティ」と「酒類メーカーとしての責任」の表現を見直すとともに、企業経営の土台として「企業としての普遍的な責務」を明記しました。

価値創造モデル/CSV経営の概念
CSV経営のベースの考え方である「社会課題の解決を通じて、社会的価値と経済的価値を創出すること」を持続的に推進していく仕組みとして、当社は価値創造モデルを策定しています。イノベーションを生み出すための組織能力(INPUT)を基盤として、社会課題の解決に事業活動(BUSINESS)を通じて取り組むことで、価値(OUTPUT/OUTCOME)を創出しCSVパーパスを実現しています。特に人的資本や自然資本などの非財務資本の強化は、社会と共に自然の恵みを利用しながら事業を行う当社にとって、継続的な価値の創造につながります。
事業を通じて、当社は社会的価値と経済的価値を同時に生み出し、それらを組織能力などの経営基盤に再投資することで、持続的に資本と価値を成長させることを目指しています。

このCSV経営を推進していくことがどのように企業価値の向上に繋がっているかを図示すると以下のようになります。

社会課題の解決を通じた事業活動(Business)は経済的価値を生み、フリー・キャッシュフローを増加させると共に、事業リスクを低減することにつながるため、資本コストを下げ、企業価値の向上に寄与します。
他方、これらの活動から社会的価値を創出し、その価値がお客様のニーズを充足することで、弊社の製品・サービスに対するWillingness to Payが高まり、長期的にはフリー・キャッシュフローの増加にも影響すると考えられます。さらに、社会的価値が創出され高い水準になることで、従業員エンゲージメントの上昇や採用での優位性などにも影響することが考えられ、価値創造モデルにおけるINPUTの基盤である人的資本の強化に繋がります。その結果、企業の成長率にもポジティブな影響を及ぼすと当社は認識しています。
(参考)
・持続的な成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス)
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/materiality/
・キリングループ CSVパーパス
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/csv_purpose/
・キリングループ CSVコミットメント
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/
・価値創造モデル
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/model/
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
2027年に向けた計画
近年、世界各地で起こる異常気象、天候不順など、社会システムを大きく揺るがす環境変化が続いています。KV2027を発表してから6年が経過し、2027年まで残り3年となりましたが、この6年間においても外部環境としては、新型コロナウイルスの感染症拡大、原材料コストの高騰及び地政学リスクの高まりなど、生活者の行動様式に大きな変化がありました。キリングループは、これらの環境変化に柔軟に対応しつつ、KV2027で掲げた「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」というビジョンの実現に向けて、これまで固定の3年間としていた中期経営計画を、今後は毎年ローリングする方法へと変えます。長期的な目指す姿は変えずに、長期の視点を持ちながら、外部環境を踏まえた最適な計画を柔軟に描き、目標達成を目指していきます。
これまでの6年間は、環境変化に対応する主力事業の競争力強化や、事業ポートフォリオを大胆に入れ替えることに注力をした「構造改革ステージ」でした。これから2027年に向けては、早期に成長実現ステージへと移行し、不確実性のある事業環境下でも、酒類・飲料、医薬及びヘルスサイエンスの事業ポートフォリオだからこそ実現できる一桁後半%のEPS成長を目指していきます。

(基本方針)
不確実性や地政学リスクも考慮しながら事業ポートフォリオを展開し、KV2027で掲げた「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」というビジョンの実現に向けて酒類・飲料、医薬及びヘルスサイエンスの各事業で成長を実現していきます。
(優先課題)
① 各事業の注力分野での価値創造
② 人財、R&D、デジタル及びマーケティングへの投資強化
(重要成果指標)
2027年に向けた財務指標については、EPS※1の成長による株主価値向上を目指すと共に、引き続きROICを採用し、継続的に資本コストを超える水準を目指していきます。
また、重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。(なお、役員報酬に関する詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。)
※1 前中期経営計画においては、「平準化EPS」を採用していたが、より実質的な稼ぐ力を示すために、平準化しないEPSを採用。
[財務目標※2]
| 2025年目標 | 2027年目標 | 長期目標 | |
| ・ROIC※3 | 7.2% | 9.0% | 10%以上 |
| ・EPS | 185円 | 3年CAGR +一桁後半% (6%以上) | CAGR +一桁後半% |
※2 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。
※3 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)
[非財務目標]

(財務方針)
キャッシュ・フロー最大化に向けてオーガニック成長による利益創出を目指します。2027年に向けて創出する営業キャッシュ・フローの総額は約8,700億円を想定しています。配当金については、より安定的かつ持続的な配当を実現するために平準化EPSに対する配当性向40%以上の配当から、DOE(連結株主資本配当率)5%以上を目安とする配当方針に変更し、原則として1株あたり配当単価は累進配当を実施いたします。配当金額はグループ総額で約2,300億円を予定しています。設備投資に関しては、総額で約4,000億円を予定しており、長期視点で優先順位を決定し、安全・品質や環境のために必要な設備投資を適切に実施した上で総額のコントロールをします。また、価値創造の源泉となる人財、R&D、ICT及びマーケティングへの投資も強化して企業価値向上につなげます。
安定配当を維持しながら、財務健全性を確保するために、有利子負債の返済を実施していきます。今後、M&A投資を実行する際の資金は事業売却などによって賄いますが、不足する場合には2~3年以内に財務健全性を戻せることが見込める限りにおいては、一時的にグロスDEレシオが1倍を超えることを許容します。最適な事業ポートフォリオのための事業の見直しについては継続して議論をしていきます。
なお、株主還元については、基本的には配当で行うものの、投資機会や事業売却等で創出されるキャッシュバランスを考慮しながら、自己株式取得の実施を機動的に判断します。
(非財務方針)
2025年事業計画基本方針に従い、非財務への取り組みもより強化しています。「イノベーションを実現する組織能力」の強化や、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化により、強固な組織基盤の構築を目指しています。また、組織能力の強化とステークホルダーからの期待を踏まえ、経済的価値につながる非財務目標を設定し、価値創造モデルのInput~Business~Outputを強化することでより大きなOutcomeの創出を目指しています。非財務資本への戦略的な取り組みを通じて、当社はCSV経営を推進し、社会のサステナビリティ課題の解決にも貢献していきます。
(3) 会社の対処すべき課題
政治情勢も相まって今後の経済の先行きは依然として不透明です。また、地球温暖化による気候変動対策も急務であり、経営を取り巻く環境は課題が山積しています。キリングループは、不確実性が増す時代だからこそ、CSVを経営の根幹に据え、社会課題をグループの強みで解決し、経済的・社会的価値を創出します。10年後を見据えて長期ビジョンを描き、いかなる環境変化に対しても、迅速かつ柔軟に戦略を最適化しながら実行していく組織体制へ変革します。経営の原点である「お客様本位」「品質本位」に基づき安全・安心を確保しながら、人財・デジタルICT・R&Dへの投資を積極的に行い、イノベーションを実現する組織能力を向上させていきます。人財では、専門性と多様性を軸に価値創造に挑戦する従業員を育成すると同時に、そのための制度や環境整備も進めます。また、今後のグループ経営を担うグローバル人財やキャリア採用の拡充も図ります。デジタルICTでは、生成AI等のデジタル技術を活用し、マーケティングやR&D領域等で価値創造を推進するとともに、グループ全体で業務プロセスの変革に取り組みます。人とAIの分業化を進めることで働き方を変え、飛躍的な生産性向上を目指します。R&Dでは、強みである発酵・バイオテクノロジーを基盤とした技術力で、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」の機能研究によるさらなる高付加価値化や㈱ファンケルの技術を活用したスキンケアへの展開の可能性等、事業戦略に連動した研究開発を実践します。また、すべての事業において戦略を実行していく「現場力の強化」を共通目標におき、経営と現場が一体となって取り組むことで、グループの成長と収益基盤の強化を図ります。こうした取り組みにより、財務目標である「EPS」「ROIC」と、非財務目標である「健康」「コミュニティ」「環境」「人的資本」各項目の達成を目指します。
①酒類事業
お酒に対するお客様の価値観も多様化しているなかで、麒麟麦酒㈱は、CSVパーパスの「酒類事業を営むキリングループとしての責任」を前提に、お酒の未来を創造し、人と社会につながるよろこびを創出していきます。事業の成長に向けては、2026年の酒税改正等、今後の市場環境を見据えて主力ビールブランドに注力することで、収益基盤の強化を目指します。「一番搾り」ブランドでは、4月に「キリン一番搾り ホワイトビール」を発売し、お客様に新たな飲用機会を提案します。「キリンビール 晴れ風」では、4月から飲食店向けに中びん(500ml)の展開も開始するほか、引き続きビールの新しい美味しさを提案しながら、日本の風物詩の保全・継承に取り組む「晴れ風アクション」を通じて、市場での定着を図ります。クラフトビールでは、3月に「スプリングバレー」ブランドを大幅に刷新し、日本各地のクラフトブルワリーとの連携も積極的に行うことで、引き続きビール文化の魅力化に取り組みます。
LION PTY LTDは、豪州でのビールブランド「Hahn (ハーン)」や、「Stone&Wood(ストーン&ウッド)」、豪州とニュージーランドで展開する「Hyoketsu(ヒョウケツ)」等の販売を強化します。また、北米では、New Belgium Brewing Company, Inc.の「Voodoo Ranger(ブードゥー・レンジャー)」に加え、RTDの「Voodoo Hard Charged Tea(ブードゥー・ハード・チャージド・ティー)」の拡大に取り組みます。
②飲料事業
国内飲料市場の厳しい競争環境下において、キリンビバレッジ㈱では、「お客様の毎日に、おいしい健康を。」をパーパスに掲げ、ヘルスサイエンス飲料をドライバーとして事業成長に取り組みます。3月に「キリン おいしい免疫ケア」「キリン イミューズ ヨーグルトテイスト」をリニューアルするほか、幅広い層に向け飲用機会を提案します。「免疫ケア」を毎日の健康習慣として啓発することで、さらなる市場拡大につなげます。
「午後の紅茶」ブランドでは、3月に「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」をリニューアルし、無糖紅茶の魅力を発信することで、紅茶市場の拡大及び無糖茶市場の強化も図ります。
Coca-Cola Beverages Northeast, Inc.は、好調な炭酸飲料を中心に、市場環境にあわせた価格戦略に取り組みながら、デジタルICTをはじめとしたサプライチェーンの効率化を図り、高い収益性を確保していきます。
③医薬事業
協和キリン㈱は日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、病気と向き合う人々に笑顔をもたらす“Life-changing(ライフチェンジング)”な価値創出にむけた取り組みを加速していきます。
経営体制を一層強固なものとすべくCEO、COOの2名体制に変更し、さらなる飛躍を目指します。注力する疾患領域の製品である「Crysvita(クリースビータ)※1」や「Poteligeo(ポテリジオ)※2」の成長による利益拡大を目指すとともにパイプラインの充実に向けて、「KHK4083/AMG451(一般名:rocatinlimab(ロカチンリマブ))※3」や「ziftomenib(ジフトメニブ)※4」の開発推進及び販売開始に向けた取り組みを着実に進めていきます。また、グローバルでの研究開発力の強化にも取り組みます。
※1 主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬です。
※2 特定の血液がんの治療薬です。
※3 アトピー性皮膚炎の治療を目的とする開発品です。結節性痒疹、喘息を対象とした臨床試験も進行中です。
※4 急性白血病の治療を目的とする開発品です。
④ヘルスサイエンス事業
健康志向の高まりにより市場が大きく伸長するなか、キリングループは、事業を行う地域すべての人の生きるよろこびとこころ豊かな生活の実現にむけ、市場を上回る成長を目指します。当社、㈱ファンケル、Blackmores Limitedそれぞれの成長と、統合効果の早期実現により、提供価値の最大化を図ります。
㈱ファンケルは、国内における化粧品事業と健康食品事業のさらなる成長を実現します。㈱ファンケルの強みである店頭販売や通信販売を通じた顧客分析力に、当社の市場リサーチ力を掛け合わせて、新商品開発につなげる等、両社の強みを生かした価値創出に取り組んでいきます。
海外では中国でのブランド育成のほか、Blackmores Limitedとの協業により東南アジア等へ展開していきます。
Blackmores Limitedは、豪州・ニュージーランドでの「Blackmores(ブラックモアズ)」、医療機関向けサプリメント「BioCeuticals(バイオシューティカルズ)」の持続的な成長と、中国や東南アジアでの収益拡大を目指します。
プラズマ乳酸菌事業では、さらなる成長にむけ、付加価値商品の拡充や、Blackmores Limitedとの連携による海外展開の拡大により収益性向上を目指します。また、国内のサプリメント商品は、㈱ファンケルとの販売基盤の一体化を進め、事業の効率化や収益性向上を目指します。
また、ヘルスサイエンスと医薬の新たなシナジー創出も加速していきます。当社と協和キリン㈱の共同出資で2024年9月に設立したCowellnex(コヴェルネクス)㈱においては、健康に関する研究や事業開発等、両社の強みを融合したイノベーションにより、健康を取り巻く社会課題を解決していきます。
キリングループは、今後もユニークな事業ポートフォリオ経営と高い戦略実行力で、持続的に成長する企業としてご期待いただけるよう取り組んでまいります。KV2027を見据え、従業員一人ひとりがイノベーションを実現するために挑戦し続けることで、世界のCSV先進企業に向けたステージアップを目指します。