有価証券報告書-第185期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/28 15:14
【資料】
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【項目】
143項目
戦略内容気候変動による温暖化や降雨量の変化、自然災害が、重要な原料である農産物や水に大きな影響を与える一方で、自然資本の保全・回復が「自然に根差した社会課題の解決策」として気候変動の緩和策や適応策になることを理解し、研究・技術開発力およびエンジニアリング力を活用して環境課題の解決に向けて統合的にアプローチしています。
□気候変動では、TCFDのシナリオ分析をインプットとして2020年に改訂した「キリングループ環境ビジョン2050」で、2050年のネットゼロ目標を設定しました。SBT1.5℃目標の設定、RE100への加盟(以上、2020年)により中間目標にブレイクダウンし、自社主体の削減に加えて、取引先の削減を促進します。
□自然資本では、場所固有・依存性を考慮し、「持続可能な生物資源利用行動計画」の下、TNFDが提唱するLEAPアプローチを活用しながら、持続可能な原料農産物の調達と水資源の利用を図るとともに、気候変動問題の緩和策としても活用し、事業のレジリエンスを向上させます。
□容器包装では、2027年の日本でのペットボトルのリサイクル樹脂使用率50%目標達成と持続可能な容器包装の開発により、プラスチックが循環する社会構築に貢献するとともに、Scope3でのGHG削減、自然環境への影響低減を目指します。
□気候変動・自然資本等の環境課題への統合的アプローチの推進とルールメイキングへの貢献を目的として、以下に参画・活動しています。
・Alliance To End Plastic Waste(2021年に加盟)
・SBTs for Natureのコーポレートエンゲージメントプログラム(2021年に国内医薬品・食品業界初として参加)
・TNFDシナリオ分析のパイロットテスト(2021年からThe TNFD Forumに参加。2022年にパイロットテストに参加。2023年にTNFD Adopter登録)

進捗□TCFD新ガイダンス※1に完全準拠したシナリオ分析の中でアセットのリスクと機会を分析・評価する等、気候変動による財務インパクト把握の精緻化(2022年~)を行うとともに、自然資本の依存度・影響度・リスクと機会を把握するための評価を実施して、気候変動と自然資本の財務インパクトを統合的に開示しました(2023年)。
□気候変動の緩和策として、2030年までのGHG排出量削減ロードマップを策定(2023年)し、グループ会社の削減目標・行程を確定して実行を開始しています。主な取り組みは以下の通りです。
・大規模太陽光発電をPPA方式(横浜工場除く)でキリンビール全工場(2021年)、協和キリン宇部工場・メルシャン藤沢工場(2023年)に設置。協和キリン高崎工場およびライオン豪州およびニュージランドの全拠点(2023年)、シャトー・メルシャンの全ワイナリー(2022年)、キリンビール全工場・全営業拠点(2024年)での調達電力再生可能エネルギー比率100%を達成。
・食品企業として世界で初めてSBTネットゼロの認定を取得(2022年)。
・その他、低GHG排出の原料農産物や資材の調達検討、ペットボトルの再生樹脂使用比率の増加等のバリューチェーン全体のGHG排出量削減を推進中。主要なサプライヤーへのアンケートから把握した各社の削減計画と削減進捗状況をもとに削減施策を協同検討する等、エンゲージメントを重視して削減を計画(2023年)。
□適応策として、スリランカの紅茶農園での持続可能な農園認証の取得支援、水ストレスを考慮した適切な節水を継続しています。
□気候変動の事業機会では、オーストラリアで初のカーボンニュートラルなアルコールフリービール「XXXX Zero」(2022年)を発売しました。免疫機能の機能性表示食品を外部パートナー企業と連携してラインアップを拡大し、デング熱・新型コロナウイルスなど気候変動の影響でリスクが拡大すると言われている感染症対応研究も継続しています 。
□自然資本では、気候変動の緩和・適応に寄与する再生型農業の知見獲得と推進を目的として、スリランカでレインフォレスト・アライアンスと共同で「リジェネラティブ・ティー・スコアカード」の開発を開始しています。椀子ヴィンヤードは、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で新しい世界目標として採択された「30by30」の目標達成に向けた環境省の自然共生サイトに正式認定(2023年)されました。アメリカコロラド州のニュー・ベルジャン・ブルワリーでTNFDと共同で実施したシナリオ分析結果はTNFDフレームワークβ版「ディスカッションペーパー」で紹介され、2023年9月に開示されたTNFD正式版の中でもオーストラリアでの水資源への対応が事例紹介されました。
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