有価証券報告書-第148期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 14:00
【資料】
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【項目】
171項目
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、主なステークホルダーである顧客、株主、従業員、社会・環境にとって存在価値のある企業グループとして、人々の幸せを実現するとともに、社会・経済の発展に貢献し続けていくことを使命と考えております。そのために永年培ってきた植物油脂をはじめとする食に関わる技術をベースに、「おいしさ・健康・美」の追求をコアコンセプトとし、新たな価値の創造と社会への提供を通じて、絶えず発展・進化していく企業グループでありたいと考えております。
また、地球環境問題への主体的な取組み、CSR(企業の社会的責任)の推進、関係法令の遵守等を通じて、現代社会の一員である企業としての責任を全うしたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、2017年度から2020年度までの中期経営計画「OilliO Value Up 2020」を策定し、企業収益拡大に向けた中長期の戦略、施策を実行しております。
「OilliO Value Up 2020」において、当社グループは、110年に亘って培ってきた卓越した油脂に関する技術をもって、お客様のニーズや課題を解決することで新たな価値を生み出し、市場を創造してまいります。さらに、豊かな食卓の提案、人々の健康への貢献を通じて、企業価値の最大化を目指し、2020年度に営業利益130億円以上、ROE7%以上、EPS成長率8%(年平均)および営業キャッシュフローの4年間累計額500億円の実現を目標として取り組み、営業利益については2019年度に目標を達成いたしましたが、新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、2020年度の目標を変更することとしました。
中期経営計画「OilliO Value Up 2020」の最終年度である2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による国内外での消費低迷等の影響が年間に亘り続くと想定し、売上高3,200億円、営業利益104億円、経常利益108億円、親会社株主に帰属する当期純利益72億円をそれぞれ見込んでおります。
なお、2020年度における新型コロナウイルス感染症の影響としては、国内の油脂販売数量では、ホームユースで数量増となるものの、業務用の大幅減により、全体で前期比10%弱の減少を見込んでおります。Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.の販売数量については、前期比約10%の減少を見込んでおり、化粧品原料の販売数量については、前期比約30%の減少を見込んでおります。また、このほかに2020年度の業績影響要因としては、ミールの国際価格の下落とその販売価格の低下を見込んでおります。
※中期経営計画「OilliO Value Up 2020」および2020年度の経営目標は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性などを含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。また実際の業績等も当中期経営計画とは大きく異なる結果となる可能性がありますので、当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループの2017年度から2020年度までの中期経営計画「OilliO Value Up 2020」では、「事業構造改革を継承しつつ、より成長路線に軸足を移す」ことを基本方針としており、具体的には次の5つの成長戦略と2つの基盤強化策を進めております。
(成長戦略)
○「健康とエネルギーを生むチカラ」で社会に貢献するヘルスサイエンス事業をグローバルに拡大します。
○グローバル化の加速に向けて、投資を拡大するとともに、点から面への展開に向けて、拠点間の連携を強化します。
○業務用、加工用領域において、グループの総力を結集した戦略を展開します。
○ホームユース領域において、ブランド力を一層強化するとともに、新たな市場の創造に向けて取り組みます。
○マーケティングを強化し、新たな付加価値を追求します。
(基盤強化策)
○徹底したコストダウンや生産体制の再構築等により生産基盤を強化するとともに、製油競争力の確保や油脂販売基盤の強化に向けて製油構造改革を進めます。
○ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営を実践します。
(財務戦略)
○ROEを重視した資本効率性と格付け向上を考慮した財務健全性の最適バランスを勘案した企業価値向上を追求します。
○利益成長の成果を株主に適切に還元するための配当性向目標(30%程度)の設定、また、総還元性向と資本効率性向上を意識し、必要に応じた機動的な自社株取得を実施します。
(4) 経営環境
当社グループは、主に食品用の植物油脂と飼料・肥料用にミールをお届けする油脂・油糧および加工食品事業と、当社グループの持つ技術力などの強みを活かし国内外で事業を展開する加工油脂事業、ファインケミカル事業を行っております。
[油脂・油糧および加工食品事業]
国内の油脂事業においては、主要原料相場、為替相場、物流費、資材費、エネルギーコスト等を踏まえたうえで適正な販売価格を設定し、食品産業を支えるために安定供給が求められています。ホームユースの国内市場規模は年間で1,500億円超と推定され、この数年で400億円程度拡大しております。サラダ油やキャノーラ油などの汎用的な油脂の市場規模が縮小するなかで、ごま油、オリーブオイル、アマニ油などの市場規模が拡大し、付加価値型の製品構成が高まっていることによるものです。当社はこの市場で高いシェアを有しており、「かけるオイル」などの油脂の新しい使い方を積極的に提案するなどにより需要を喚起し、市場の拡大を牽引しています。また、業務用および加工用では、レストランなどの外食、コンビニエンスストア・量販店などの中食、製菓・製パンや加工食品業界などに向けた販売を行っております。競争の激しい市場環境ではありますが、ユーザーとのニーズ協働発掘型営業によるソリューション提案で需要を創造し、収益の獲得、拡大につなげております。
ミールについては、国内の需給などの影響もありますが、国内の販売価格が国際価格と連動する傾向にあります。
中長期的には、国内の人口減少による油脂消費量の減少が見込まれることもあり、一層の合理化、効率化が必要と考えております。
[加工油脂事業]
パーム油を活用したスペシャリティファットをグローバルに販売するマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.、国内でチョコレート事業を行う大東カカオ㈱と、ショートニングやマーガリンなどの事業を行う当社が事業の主体となっております。世界のチョコレート市場はアジアの中間所得層の増加などにより拡大が続いており、今後も、チョコレートと、スペシャリティファットの中でもチョコレート用の油脂の需要は増加すると考えております。当社グループでは、チョコレートの生産設備やチョコレート用油脂の生産設備へ投資し、生産能力の増強を行いました。Intercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.はパーム油の分別・精製における高度な技術を有しており、欧州などの高い品質基準を要求する顧客を中心に付加価値品の販売が拡大しております。
[ファインケミカル事業]
化粧品用の原料である油剤を主力商品としており、多くの国内化粧品メーカーや、欧米の大手化粧品メーカーへも長期に亘り取引を行っております。世界的な化粧品市場は、中長期的にはアジア諸国の経済成長とともに拡大を続けると想定しております。
新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大に伴う活動制限や貿易の低迷により、世界経済の大幅な悪化は避けられない状況となっております。
国内においても、緊急事態宣言が発出され、学校の臨時休校や外出自粛等により、家庭での内食需要が増加する一方で、飲食店・ホテルなど外食での営業休止・時短営業により業務用市場における需要の低迷が顕著になっています。また、訪日外国人の大幅な減少によって、インバウンド需要も大きく減少しております。
中期経営計画「OilliO Value Up 2020」の最終年度である2020年度の業績見込みは、「(2) 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
当社グループは、中期経営計画「OilliO Value Up 2020」で目標として掲げていた営業利益130億円を1年前倒しで達成することができました。これは中期経営計画「OilliO Value Up 2020」で掲げた「基盤となる汎用素材型ビジネスにおける安定収益の追求」および「成長戦略としてのグローバル化と多様な付加価値型ビジネスの追求」の基本方針に則った取組みが着実に成果として表れたものと考えております。
2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を想定したなかで、中期経営計画「OilliO Value Up 2020」で掲げた営業利益目標を下回る見込みとなっておりますが、中期経営計画「OilliO Value Up 2020」で掲げた基本方針を変えることなく、“植物のチカラ®”を通じて社会に貢献するという当社グループの使命と社会的責任を果たすことで、将来に亘る持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
油脂・油糧および加工食品事業においては、引き続きコストに見合った適正価格での販売に努めるとともに、高付加価値商品の拡販に取り組んでまいります。また、業務用および加工用の各領域においては、お客さまへのソリューション提案を強化してまいります。
加工油脂事業においても、油脂・油糧および加工食品事業と同様にソリューション提案に力を入れるとともに、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.を中心とするグローバルなネットワークの強化を進めてまいります。
ファインケミカル事業においては、2020年度内に稼働予定の横浜磯子事業場内の新工場、スペインおよび中国の子会社によるグローバル供給網により需要の獲得に努めます。
また、量販店、ドラッグストア、病院・介護施設などターゲットを明確にしたMCTの販売拡大に取り組み、全社横断的に展開しているヘルスサイエンス事業の基盤を確立してまいります。
以上のほか、新たな取組みとして、2020年3月に株式会社J-オイルミルズと川上領域である搾油工程までを範囲とした業務提携基本契約を締結しました。両社の独自性と健全な競争環境を維持しながら、長期的な視点で持続可能な安定供給体制の構築を目指してまいります。
このほかに基盤強化策として、デジタル技術の導入による業務プロセス改革、生産部門での次世代型スマートファクトリー化の推進、新たな事業領域の創出を目指した研究開発やインキュベーション機能の拡充など「当社グループの持続的な成長を支える基盤の強化」を進めてまいります。さらに、安全で安心できる商品やサービスの安定的な提供はもちろんのこと、環境負荷の軽減、働き方改革と健康経営の更なる推進による生産性と働き甲斐の向上、物流効率化による「運びきる力」の強化、コーポレート・ガバナンスの強化など「ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営の実践」を着実に実行してまいります。