有価証券報告書-第153期(2024/04/01-2025/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社の経営理念は、次のとおりです。
ステークホルダーの皆様へお約束するコンセプトとして、「コアプロミス」を次のとおり定めています。
また、「日清オイリオグループビジョン2030」において「2030年に目指す姿」を次のとおり
定めております。
当社グループは、従来以上に事業活動による価値創造を通じて社会の持続可能性に貢献してまいります。
「ビジョン2030」策定時に、当社グループが2030年に目指す姿に至るために、行動の基本とするValues
(「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」)を定めました。
また、理念を実践していくための行動指針である「日清オイリオグループ行動規範」のグループ内での
浸透を図っています。
日清オイリオグループ理念体系は次のとおりです。

(2) 中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
近年、当社グループを取り巻く環境は、大きな変化の渦中にあります。地球規模での環境課題の累積や気候変動に伴う植物資源の収量不安定化、国際紛争などの発生によるサプライチェーンの混乱、国内における人手不足の深刻化、物流課題への対応、物価高による消費の冷え込み等、事業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
このような中、「ビジョン2030」で示した「2030年に目指す姿」と「戦略の指針」に沿って、当社グループは、社会課題の解決を通じた、多様な共有価値の創造(CSV)を成長のドライバーとすることで、将来にわたって持続的に成長し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
日清オイリオグループビジョン2030
当社グループは、2021年3月「日清オイリオグループ ビジョン2030」を策定しました。2030年の目指す姿として、“植物のチカラ®”と“油脂をさらに究めた強み”で、食の新たな機能を生み出すプラットフォームの役割を担うとともに、多様な価値を創造し、“生きるエネルギー”をすべての人にお届けする企業グループになることを掲げています。「これまでより“もっとお客さまの近く”でビジネスを展開することを基本方針とし、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業への飛躍に向けた取り組みを進めています。

〇生きるエネルギー
生きるために必要な根源的なエネルギー
おいしい食事で人を元気にするエネルギー
栄養機能で人を健康にするエネルギー
美を演出し活力を与えるエネルギー
油脂と相乗効果を発揮する素材・技術・事業から生み出されるエネルギー
価値創造モデル
当社グループの価値創造の源泉は、無限の可能性をもつ植物資源と磨かれた技術力、そして価値創造力を掛け合わせた“植物のチカラ®”です。“植物のチカラ®”と私たちの“コアコンピタンスである油脂”を究めた強みでお客さまとともに社会課題を解決する油脂ソリューションを実現します。当社グループの事業に求められるニーズや当社グループが取り組むべきという視点で定めた6つの重点領域(マテリアリティ)、すなわち「すべての人の健康」、「おいしさ・美のある豊かな生活」、「地球環境」、「食のバリューチェーンへの貢献」、「信頼でつながるサプライチェーン」、「人材マネジメント」の領域の中で多様な価値を持つ“生きるエネルギー”を生み出し、その価値をすべての人にお届けします。
“生きるエネルギー”は社会課題を解決する一方で、次なる成長のための植物資源の循環や技術の進化を可能とする資本を生み出します。再度投入された資本によって、さらに油脂を究め、社会課題を解決する“生きるエネルギー”を生み出します。このプロセスの循環を通じて、当社グループらしいサステナビリティを実現していきます。
また、「生きるエネルギー」をすべての人にお届けするためには、油脂を素材として提供するだけでなく、当社グループが持つ強みを活かして他の食品メーカーや素材メーカーなどと一緒に価値を共創することが非常に重要であると考えています。生活を支えるあらゆるチャネルでお客さまとの接点を持っている強みにより、社会課題解決のためのプラットフォームの役割を担うことで可能になると考えています。
そして、2030年度に達成を目指す経営指標としてROE10%、ROIC7%を目標値として設定しており、持続的な利益成長と資本効率の改善を通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

2021年度~2024年度 中期経営計画「Value Up+」の振り返り
「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、最初の4年間(2021年度から2024年度まで)を対象とした中期経営計画「Value Up+」をスタートしました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによる生活者の行動や意識の変化、異常気象の頻発や地政学リスクの顕在化等に伴う原料調達におけるリスクやコストの増大等、この4年間で当社グループの事業環境は大きく変化しました。そうした状況の中、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、売上拡大、収益性向上・効率化、基盤強化に取り組みました。
[売上拡大]
低栄養・フレイルや過栄養、パーソナルな健康課題に貢献する商品や、「少量使い」、「酸化抑制」、「オイルで味つけ」といった、豊かな食卓を実現する商品等を多数上市し、油脂の活用シーンの拡大や価値向上につなげました。また、ユーザーベネフィット起点での機能性油脂・油剤の拡大や更なる油脂ソリューションを生み出す共創の場(インキュベーションスクエア)の開設等、BtoB領域での取り組みも加速させました。グローバルでは、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.におけるチョコレート用油脂生産設備の能力増強投資、北米での事業拠点や、ファインケミカル事業の東アジア・ASEAN地域での収益拡大に向けた上海テクニカルセンターの新設等、価値提供の更なる拡大に向けて多様な機能を拡充しました。
[収益性向上・効率化]
原材料価格や社会的コストの高騰を受け、新たな価格の均衡点を模索し、適正な販売価格を形成しました。また、西日本の搾油機能の統合を目的に、株式会社J-オイルミルズとの合弁会社である製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、稼働を開始しました。
[基盤強化]
国内生産拠点における生産性向上、働き方改革、技術力の獲得と伝承を同時に実現するスマートファクトリー化やサプライチェーン全体でのCO2削減への取り組み等、企業活動全体のサステナビリティ向上を推進しました。
変化の激しい事業環境をしっかりと捉え、対応力を高めるとともに、「Value Up+」で掲げた戦略を着実に実行してきた結果、2022年度および2023年度は過去最高益を達成するなど、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、更なる成長の足掛かりを築きました。
2025年度~2028年度 新中期経営計画「Value UpX」
「ビジョン2030」で目指す姿の実現と、その先の次なる成長に向けて、2025年度~2028年度の4年間を対象期間とした、新中期経営計画「Value UpX」を策定しました。「Value UpX」では、「ビジョン2030」の基本方針として掲げた「“Marketing”דTechnology”דGlobalization”」を結実、深化させ、当社らしい“勝ち筋”(無形資産の循環的創造によるイノベーションの体質化)により、加速的な成長を実現してまいります。その実現に向けては、「将来の利益成長の柱となる成長戦略」、「Value UpXの成長ドライバーとなる基幹戦略」、「グループの安定的・持続的な成長を支える基盤戦略」の3階層からなる戦略を展開してまいります。また、それらの戦略を支える機能として「技術の深化・探索による価値創造」、「サプライチェーンの構築、強靭化」、「成長を加速させるデジタルイノベーション」、「地球環境・資源の保護・人権尊重」の取り組みを強化していきます。そして、これらの戦略を強固でレジリエントな人材基盤の構築によって推進するとともに、ROICマネジメントを通じて、利益率の向上と投下資本の効率化による「資本収益性向上」に取り組み、更なる「成長投資」につながる好循環を生み出していきます。これらの取り組みを通じた、油脂ソリューションの創出力の最大化と、展開領域・エリアの拡大により、「グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業」への飛躍を果たし、最終年度の経営目標として、2028年度には、営業利益280億円(利益率5%以上)、ROE8%以上、ROIC6%以上の達成を目指してまいります。
※中期経営計画「Value UpX」の経営目標は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性などを含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。
図1:中期経営計画「Value UpX」の位置付け

図2:「Value UpX」における戦略の全体像

(3) 経営環境、課題及び対応
世界経済については、米国の関税政策の導入に対する各国からの報復関税の決定や関税引き下げに向けた交渉等、貿易摩擦の更なる激化が懸念されています。こうした各国の政策運営等に起因する不安定さに加え、長期化するウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスクによる影響も引き続き懸念される状況にあり、世界レベルでの景気後退リスクへの警戒感が高まっています。
国内においては、2024年度の実質GDP(速報値)が4年連続でプラス成長になる等、緩やかな景気回復に向けた動きが見える一方で、生活必需品を中心とした物価上昇が消費マインドの冷え込みにつながっています。米国における通商政策の不透明感もあり、個人消費の減速による今後の景気動向については、下振れリスクが懸念されています。
当社グループへの影響が大きい大豆、菜種、パーム油などの原材料については、世界的に旺盛な油脂需要に加えて、米国の通商政策に起因する市況の変動や、サプライチェーンの混乱などによる影響が懸念されます。また、天候不順による歴史的な収量減少となったオリーブオイルやカカオ豆などの価格高騰や、製造に関わるエネルギーコスト、物流費、包材・資材費の高騰など、当社を取り巻く事業環境は不透明かつ厳しい状況が継続しています。
喫緊の課題としては、不透明な事業環境の中でも、ニーズを捉えた国内市場における機能訴求型の商品やソリューションの強化、グローバル市場でのスペシャリティファット(チョコレート油脂等)や化粧品油剤の販売拡大、また今後の成長に向けた投資や事業拡大・基盤強化などに関わる施策の着実な実行などが考えられます。そして、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じて持続的な成長を目指してまいります。
各事業の状況については、次のとおりです。
[油脂事業]
(油脂・油糧)
国内の油脂事業においては、主要原料相場、為替相場、物流費、資材費、エネルギーコスト、将来コスト・社会的コスト等を踏まえたうえで適正な販売価格を設定し、人々の暮らしや食品産業を支えるための安定供給が求められています。
ホームユースにおいて、当社はキャノーラ油をはじめとしたクッキングオイルや、オリーブオイル、アマニ油などの健康価値の高い商品などにおいて高い市場シェアを有しています。一方、「味つけオイル」等の油脂の新しいカテゴリーの創出や、油脂の栄養・健康機能、手軽さ・簡便さなどの新たな価値の提案を通じて需要を喚起し、市場の拡大を牽引しています。
業務用および加工用では、レストランなどの外食、コンビニエンスストア・量販店などの中食、製菓・製パンや加工食品業界などに向けた販売を行っており、ユーザーベネフィットの追求を起点とした、機能性やソリューションを提供する商品の販売や提案を実施しています。2024年度には、新たな研究開発拠点として、横浜磯子事業場内にインキュベーションスクエアを開設し、お客さまとの共創を通じた価値創造力の強化に取り組んでいます。
大豆、菜種、パームなどを主原料とする商品については、需給の動向や米国の通商政策に起因する市況の混乱などにより、不透明かつ厳しいコスト環境が継続することが予想されますが、原料調達先の複線化や生産技術・油脂加工技術の向上、生産・物流機能の最適化等により、強靭なサプライチェーンを構築し、持続的・安定的な供給に努めてまいります。また、ミールについては国内の需給などの影響もありますが、油脂・油糧事業における安定的な収益獲得を目的に、市況の動向に応じた適正価格での販売に取り組んでいます。
中長期的には、国内の人口減少による油脂消費量の減少が見込まれることもあり、一層の合理化・効率化が必要と考えております。こうした環境が見込まれる中、2023年10月に株式会社J-オイルミルズとの共同出資により、製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、国内搾油業の国際競争力強化と安定供給を長期にわたって確保する共同運営体制の構築を目指した取り組みを進めています。また、国内の生産拠点では、AIやIoTの活用によるスマートファクトリー化を進めており、先駆的な取り組みを進める名古屋工場に続き、今後は順次他拠点にも展開してまいります。そして、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、環境・社会課題への解決にも繋がる「次世代型搾油工場」の構築に向けた取り組みを推進していきます。
(加工油脂)
パーム油を活用したチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットをグローバルに販売するマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd. (以下、ISF社)と日本国内での製菓・製パン向けにショートニングやマーガリンなどを販売する事業から構成されます。ISF社とそのグループ会社は、パーム油の分別・精製における高度な技術を有しており、欧州などの高い品質基準を求めるお客様を中心に付加価値品の拡販に努めています。
チョコレート用油脂については、異常気象や病害の深刻化等による主要産地・西アフリカでのカカオ不足・収量の不安定化により、カカオ相場の高騰が続くものと予想されており、代替品としての需要拡大が見込まれます。
一方で短期的には価格高騰等によるチョコレート市場の成長鈍化の影響を受ける可能性がありますが、中長期的にはチョコレートおよびチョコレート用油脂の需要は堅調に増加すると考えており、ISF社においてはチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットの生産能力や販売機能を強化する投資も積極的に実施しております。成長市場において、トレーサブルで高機能なチョコレート用油脂の提供を拡大することで、収益を拡大させていきます。
[加工食品・素材事業]
チョコレート関連事業、ドレッシングなどの調味料、MCTを中心とした機能素材・食品、大豆素材・食品から構成されます。
チョコレートについては、世界的なカカオ不足に伴う価格高騰による原料調達への懸念はありますが、原料調達国の複線化や希少カカオ豆の生産性向上等に取り組むことでサプライチェーンの強靭化を図っています。また、市場動向については、国内・グローバル共に価格高騰に伴う短期的なチョコレート消費量の低下リスクはありますが、中長期的にはチョコレートの需要は堅調に推移するものと考えており、特に、アジアでの中間所得層の増加による、市場の拡大を見込んでいます。
調味料においては、おいしさの追求やアマニ油、MCTオイルなどの健康価値を訴求する油脂への関心の高まりなどを背景に油脂の機能を活かした商品開発および販売を展開しています。
機能素材・食品においては、MCTの脂肪燃焼やフレイル対策における栄養状態の改善など、健康機能の高さを引き続き啓発するとともに、マーケティングを強化し、売上拡大に向けた取り組みを進めています。
大豆素材・食品においてはプラントベースドフードの市場拡大も見据え、大豆たん白の供給にとどまらず、油脂の活用による食感、おいしさなどのソリューションの提供に力を入れています。
[ファインケミカル事業]
化粧品用の原料である油剤を主力商品としており、国内外の多くの化粧品メーカーと取引を行っております。世界の化粧品市場は、中長期的にはアジアを中心に中間所得層の増加が見込まれるエリアでの継続的な拡大が見込まれます。当社は、特に高付加価値なスペシャリティオイルを中核とする市場成長を取り込み、テクニカルサポート機能の発揮により、ソリューション提供を拡大することで、グローバル市場でのプレゼンスを更に高め、市場シェアを獲得するとともに利益率を高めてまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社の経営理念は、次のとおりです。
1.企業価値の追求と、その最大化を通じた人々・社会・経済の発展への貢献 2.「おいしさ・健康・美」の追求をコアコンセプトとする創造性、発展性ある事業への飽くなき探求 3.社会の一員としての責任ある行動の徹底 |
ステークホルダーの皆様へお約束するコンセプトとして、「コアプロミス」を次のとおり定めています。
日清オイリオグループは、健康的で幸福な「美しい生活」(Well-being)を提案・創造いたします。そのために私たちは、無限の可能性をもつ植物資源と、最高の技術によって、あなたにとって、あったらいいなと思う商品・サービスを市場に先駆けて創り続け、社会に貢献することを約束いたします。 |
また、「日清オイリオグループビジョン2030」において「2030年に目指す姿」を次のとおり
定めております。
私たちは、“植物のチカラ®”と“油脂をさらに究めた強み”で、食の新たな機能を生み出すプラットフォームの役割を担います。そして多様な価値を創造し、“生きるエネルギー”をすべての人にお届けする企業グループになります。 |
当社グループは、従来以上に事業活動による価値創造を通じて社会の持続可能性に貢献してまいります。
「ビジョン2030」策定時に、当社グループが2030年に目指す姿に至るために、行動の基本とするValues
(「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」)を定めました。
また、理念を実践していくための行動指針である「日清オイリオグループ行動規範」のグループ内での
浸透を図っています。
日清オイリオグループ理念体系は次のとおりです。

(2) 中長期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
近年、当社グループを取り巻く環境は、大きな変化の渦中にあります。地球規模での環境課題の累積や気候変動に伴う植物資源の収量不安定化、国際紛争などの発生によるサプライチェーンの混乱、国内における人手不足の深刻化、物流課題への対応、物価高による消費の冷え込み等、事業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
このような中、「ビジョン2030」で示した「2030年に目指す姿」と「戦略の指針」に沿って、当社グループは、社会課題の解決を通じた、多様な共有価値の創造(CSV)を成長のドライバーとすることで、将来にわたって持続的に成長し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
日清オイリオグループビジョン2030
当社グループは、2021年3月「日清オイリオグループ ビジョン2030」を策定しました。2030年の目指す姿として、“植物のチカラ®”と“油脂をさらに究めた強み”で、食の新たな機能を生み出すプラットフォームの役割を担うとともに、多様な価値を創造し、“生きるエネルギー”をすべての人にお届けする企業グループになることを掲げています。「これまでより“もっとお客さまの近く”でビジネスを展開することを基本方針とし、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業への飛躍に向けた取り組みを進めています。

〇生きるエネルギー
生きるために必要な根源的なエネルギー
おいしい食事で人を元気にするエネルギー
栄養機能で人を健康にするエネルギー
美を演出し活力を与えるエネルギー
油脂と相乗効果を発揮する素材・技術・事業から生み出されるエネルギー
価値創造モデル
当社グループの価値創造の源泉は、無限の可能性をもつ植物資源と磨かれた技術力、そして価値創造力を掛け合わせた“植物のチカラ®”です。“植物のチカラ®”と私たちの“コアコンピタンスである油脂”を究めた強みでお客さまとともに社会課題を解決する油脂ソリューションを実現します。当社グループの事業に求められるニーズや当社グループが取り組むべきという視点で定めた6つの重点領域(マテリアリティ)、すなわち「すべての人の健康」、「おいしさ・美のある豊かな生活」、「地球環境」、「食のバリューチェーンへの貢献」、「信頼でつながるサプライチェーン」、「人材マネジメント」の領域の中で多様な価値を持つ“生きるエネルギー”を生み出し、その価値をすべての人にお届けします。
“生きるエネルギー”は社会課題を解決する一方で、次なる成長のための植物資源の循環や技術の進化を可能とする資本を生み出します。再度投入された資本によって、さらに油脂を究め、社会課題を解決する“生きるエネルギー”を生み出します。このプロセスの循環を通じて、当社グループらしいサステナビリティを実現していきます。
また、「生きるエネルギー」をすべての人にお届けするためには、油脂を素材として提供するだけでなく、当社グループが持つ強みを活かして他の食品メーカーや素材メーカーなどと一緒に価値を共創することが非常に重要であると考えています。生活を支えるあらゆるチャネルでお客さまとの接点を持っている強みにより、社会課題解決のためのプラットフォームの役割を担うことで可能になると考えています。
そして、2030年度に達成を目指す経営指標としてROE10%、ROIC7%を目標値として設定しており、持続的な利益成長と資本効率の改善を通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

2021年度~2024年度 中期経営計画「Value Up+」の振り返り
「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、最初の4年間(2021年度から2024年度まで)を対象とした中期経営計画「Value Up+」をスタートしました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによる生活者の行動や意識の変化、異常気象の頻発や地政学リスクの顕在化等に伴う原料調達におけるリスクやコストの増大等、この4年間で当社グループの事業環境は大きく変化しました。そうした状況の中、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、売上拡大、収益性向上・効率化、基盤強化に取り組みました。
[売上拡大]
低栄養・フレイルや過栄養、パーソナルな健康課題に貢献する商品や、「少量使い」、「酸化抑制」、「オイルで味つけ」といった、豊かな食卓を実現する商品等を多数上市し、油脂の活用シーンの拡大や価値向上につなげました。また、ユーザーベネフィット起点での機能性油脂・油剤の拡大や更なる油脂ソリューションを生み出す共創の場(インキュベーションスクエア)の開設等、BtoB領域での取り組みも加速させました。グローバルでは、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.におけるチョコレート用油脂生産設備の能力増強投資、北米での事業拠点や、ファインケミカル事業の東アジア・ASEAN地域での収益拡大に向けた上海テクニカルセンターの新設等、価値提供の更なる拡大に向けて多様な機能を拡充しました。
[収益性向上・効率化]
原材料価格や社会的コストの高騰を受け、新たな価格の均衡点を模索し、適正な販売価格を形成しました。また、西日本の搾油機能の統合を目的に、株式会社J-オイルミルズとの合弁会社である製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、稼働を開始しました。
[基盤強化]
国内生産拠点における生産性向上、働き方改革、技術力の獲得と伝承を同時に実現するスマートファクトリー化やサプライチェーン全体でのCO2削減への取り組み等、企業活動全体のサステナビリティ向上を推進しました。
変化の激しい事業環境をしっかりと捉え、対応力を高めるとともに、「Value Up+」で掲げた戦略を着実に実行してきた結果、2022年度および2023年度は過去最高益を達成するなど、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、更なる成長の足掛かりを築きました。
2025年度~2028年度 新中期経営計画「Value UpX」
「ビジョン2030」で目指す姿の実現と、その先の次なる成長に向けて、2025年度~2028年度の4年間を対象期間とした、新中期経営計画「Value UpX」を策定しました。「Value UpX」では、「ビジョン2030」の基本方針として掲げた「“Marketing”דTechnology”דGlobalization”」を結実、深化させ、当社らしい“勝ち筋”(無形資産の循環的創造によるイノベーションの体質化)により、加速的な成長を実現してまいります。その実現に向けては、「将来の利益成長の柱となる成長戦略」、「Value UpXの成長ドライバーとなる基幹戦略」、「グループの安定的・持続的な成長を支える基盤戦略」の3階層からなる戦略を展開してまいります。また、それらの戦略を支える機能として「技術の深化・探索による価値創造」、「サプライチェーンの構築、強靭化」、「成長を加速させるデジタルイノベーション」、「地球環境・資源の保護・人権尊重」の取り組みを強化していきます。そして、これらの戦略を強固でレジリエントな人材基盤の構築によって推進するとともに、ROICマネジメントを通じて、利益率の向上と投下資本の効率化による「資本収益性向上」に取り組み、更なる「成長投資」につながる好循環を生み出していきます。これらの取り組みを通じた、油脂ソリューションの創出力の最大化と、展開領域・エリアの拡大により、「グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業」への飛躍を果たし、最終年度の経営目標として、2028年度には、営業利益280億円(利益率5%以上)、ROE8%以上、ROIC6%以上の達成を目指してまいります。
※中期経営計画「Value UpX」の経営目標は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性などを含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。
図1:中期経営計画「Value UpX」の位置付け

図2:「Value UpX」における戦略の全体像

(3) 経営環境、課題及び対応
世界経済については、米国の関税政策の導入に対する各国からの報復関税の決定や関税引き下げに向けた交渉等、貿易摩擦の更なる激化が懸念されています。こうした各国の政策運営等に起因する不安定さに加え、長期化するウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスクによる影響も引き続き懸念される状況にあり、世界レベルでの景気後退リスクへの警戒感が高まっています。
国内においては、2024年度の実質GDP(速報値)が4年連続でプラス成長になる等、緩やかな景気回復に向けた動きが見える一方で、生活必需品を中心とした物価上昇が消費マインドの冷え込みにつながっています。米国における通商政策の不透明感もあり、個人消費の減速による今後の景気動向については、下振れリスクが懸念されています。
当社グループへの影響が大きい大豆、菜種、パーム油などの原材料については、世界的に旺盛な油脂需要に加えて、米国の通商政策に起因する市況の変動や、サプライチェーンの混乱などによる影響が懸念されます。また、天候不順による歴史的な収量減少となったオリーブオイルやカカオ豆などの価格高騰や、製造に関わるエネルギーコスト、物流費、包材・資材費の高騰など、当社を取り巻く事業環境は不透明かつ厳しい状況が継続しています。
喫緊の課題としては、不透明な事業環境の中でも、ニーズを捉えた国内市場における機能訴求型の商品やソリューションの強化、グローバル市場でのスペシャリティファット(チョコレート油脂等)や化粧品油剤の販売拡大、また今後の成長に向けた投資や事業拡大・基盤強化などに関わる施策の着実な実行などが考えられます。そして、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じて持続的な成長を目指してまいります。
各事業の状況については、次のとおりです。
[油脂事業]
(油脂・油糧)
国内の油脂事業においては、主要原料相場、為替相場、物流費、資材費、エネルギーコスト、将来コスト・社会的コスト等を踏まえたうえで適正な販売価格を設定し、人々の暮らしや食品産業を支えるための安定供給が求められています。
ホームユースにおいて、当社はキャノーラ油をはじめとしたクッキングオイルや、オリーブオイル、アマニ油などの健康価値の高い商品などにおいて高い市場シェアを有しています。一方、「味つけオイル」等の油脂の新しいカテゴリーの創出や、油脂の栄養・健康機能、手軽さ・簡便さなどの新たな価値の提案を通じて需要を喚起し、市場の拡大を牽引しています。
業務用および加工用では、レストランなどの外食、コンビニエンスストア・量販店などの中食、製菓・製パンや加工食品業界などに向けた販売を行っており、ユーザーベネフィットの追求を起点とした、機能性やソリューションを提供する商品の販売や提案を実施しています。2024年度には、新たな研究開発拠点として、横浜磯子事業場内にインキュベーションスクエアを開設し、お客さまとの共創を通じた価値創造力の強化に取り組んでいます。
大豆、菜種、パームなどを主原料とする商品については、需給の動向や米国の通商政策に起因する市況の混乱などにより、不透明かつ厳しいコスト環境が継続することが予想されますが、原料調達先の複線化や生産技術・油脂加工技術の向上、生産・物流機能の最適化等により、強靭なサプライチェーンを構築し、持続的・安定的な供給に努めてまいります。また、ミールについては国内の需給などの影響もありますが、油脂・油糧事業における安定的な収益獲得を目的に、市況の動向に応じた適正価格での販売に取り組んでいます。
中長期的には、国内の人口減少による油脂消費量の減少が見込まれることもあり、一層の合理化・効率化が必要と考えております。こうした環境が見込まれる中、2023年10月に株式会社J-オイルミルズとの共同出資により、製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、国内搾油業の国際競争力強化と安定供給を長期にわたって確保する共同運営体制の構築を目指した取り組みを進めています。また、国内の生産拠点では、AIやIoTの活用によるスマートファクトリー化を進めており、先駆的な取り組みを進める名古屋工場に続き、今後は順次他拠点にも展開してまいります。そして、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、環境・社会課題への解決にも繋がる「次世代型搾油工場」の構築に向けた取り組みを推進していきます。
(加工油脂)
パーム油を活用したチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットをグローバルに販売するマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd. (以下、ISF社)と日本国内での製菓・製パン向けにショートニングやマーガリンなどを販売する事業から構成されます。ISF社とそのグループ会社は、パーム油の分別・精製における高度な技術を有しており、欧州などの高い品質基準を求めるお客様を中心に付加価値品の拡販に努めています。
チョコレート用油脂については、異常気象や病害の深刻化等による主要産地・西アフリカでのカカオ不足・収量の不安定化により、カカオ相場の高騰が続くものと予想されており、代替品としての需要拡大が見込まれます。
一方で短期的には価格高騰等によるチョコレート市場の成長鈍化の影響を受ける可能性がありますが、中長期的にはチョコレートおよびチョコレート用油脂の需要は堅調に増加すると考えており、ISF社においてはチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットの生産能力や販売機能を強化する投資も積極的に実施しております。成長市場において、トレーサブルで高機能なチョコレート用油脂の提供を拡大することで、収益を拡大させていきます。
[加工食品・素材事業]
チョコレート関連事業、ドレッシングなどの調味料、MCTを中心とした機能素材・食品、大豆素材・食品から構成されます。
チョコレートについては、世界的なカカオ不足に伴う価格高騰による原料調達への懸念はありますが、原料調達国の複線化や希少カカオ豆の生産性向上等に取り組むことでサプライチェーンの強靭化を図っています。また、市場動向については、国内・グローバル共に価格高騰に伴う短期的なチョコレート消費量の低下リスクはありますが、中長期的にはチョコレートの需要は堅調に推移するものと考えており、特に、アジアでの中間所得層の増加による、市場の拡大を見込んでいます。
調味料においては、おいしさの追求やアマニ油、MCTオイルなどの健康価値を訴求する油脂への関心の高まりなどを背景に油脂の機能を活かした商品開発および販売を展開しています。
機能素材・食品においては、MCTの脂肪燃焼やフレイル対策における栄養状態の改善など、健康機能の高さを引き続き啓発するとともに、マーケティングを強化し、売上拡大に向けた取り組みを進めています。
大豆素材・食品においてはプラントベースドフードの市場拡大も見据え、大豆たん白の供給にとどまらず、油脂の活用による食感、おいしさなどのソリューションの提供に力を入れています。
[ファインケミカル事業]
化粧品用の原料である油剤を主力商品としており、国内外の多くの化粧品メーカーと取引を行っております。世界の化粧品市場は、中長期的にはアジアを中心に中間所得層の増加が見込まれるエリアでの継続的な拡大が見込まれます。当社は、特に高付加価値なスペシャリティオイルを中核とする市場成長を取り込み、テクニカルサポート機能の発揮により、ソリューション提供を拡大することで、グローバル市場でのプレゼンスを更に高め、市場シェアを獲得するとともに利益率を高めてまいります。