有価証券報告書-第147期(2024/04/01-2025/03/31)
(2)戦略
味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開しています。気候変動は、大規模な自然災害による事業活動の停止、農作物や燃料などの原材料調達への影響、製品の消費の変化など、さまざまな形でグループの事業に影響を与えます。
①シナリオ分析の前提
2024年度も、2100年に地球の平均気温が産業革命後より1.5℃又は4℃上昇するというシナリオで(*1)、グローバルのうま味調味料、及び国内・海外の主要な製品を対象とし2030年時点と2050年時点の気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しました。
中長期における生産に関する事項として、気候変動の影響のうち、渇水、洪水、海面上昇、原料の収量変化等を物理的リスクとして、カーボンプライシングやその他の法規制の強化及びエネルギー単価の上昇、消費者嗜好の変化等を移行リスクとして捉え分析しました。
1.5℃と4℃シナリオにおける2030年時点の平均気温差は0.2℃程度であり物理的リスクに大きな差が見られないと考え、平均気温差が1℃程度予想され物理的リスクに差があると考えられる2050年時点のシナリオ分析のリスクと機会を②・③の表において示しています。
なお、これまでに当社が実施したシナリオ分析に係る前提の推移を要約すると以下のとおりです。
*1 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しています。
*2 過年度に実施したシナリオ分析の結果については、過年度に発行したサステナビリティデータブックをご参照ください。https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook.html
②シナリオ分析:リスク
*3 SBT(Science Based Targets)イニシアチブに認定された味の素グループの2018年度の基準GHG排出量に、IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の1.5℃シナリオに相当する2030年CO2価格の予測:新興国=25$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=90$/t-CO2、先進国=140$/t-CO2、2050年CO2価格の予測:新興国=180$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=200$/t-CO2、先進国=250$/t-CO2を乗じて算出。4℃シナリオは現状の成り行きでありCO2価格の上昇は想定しておりません。
*4 IEA発行のWorld Energy Outlookにおける、化石燃料の現状に対する4℃シナリオについて、2022年発行版(2021年を現状とする)では2050年に大幅な価格上昇予測となっておりましたが、2024年発行版(2023年を現状とする)では価格上昇がほとんどなくなっており、当社予測による潜在的財務影響額も2023年度予測値に比して小さくなっております。
③シナリオ分析:機会
④シナリオ分析結果の戦略への反映
(ⅰ)事業戦略への反映
シナリオ分析における事業への影響を踏まえ、今後一層のGHG排出量削減に向け、燃料転換・再生可能エネルギー利用・環境配慮型の製法に関する投資を計画していきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。
また、2025年度以降のシナリオ分析においては、各種情報源のデータ更新と合わせてリスク・機会の見直しをしていきます。
(ⅱ)資金調達戦略への反映
当社は、各種取組みに対して必要な資金については、サステナブルファイナンスを基本としております。2021年10月のサステナビリティボンド発行を第一弾に、2022年1月のポジティブ・インパクト・ファイナンスによるコミットメントライン契約、2022年12月のサステナビリティ・リンク・ローンによるコミットメントライン契約、2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンド発行と継続的にサステナブルファイナンスによる調達を実行しています(*5)。また、直近では2024年3月および4月に新たなサステナビリティ・リンク・ローンを2件契約しました。
これら資金調達により、味の素グループが掲げる2030年までの2つのアウトカムのうちの1つ「環境負荷を50%削減」の実現、及び持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層加速させていきます。
*5 これらの詳細に関しては、以下の「サステナブルファイナンス」サイトをご参照ください。
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/sustainability/finance/
味の素グループは、食品事業について調味料・食品から冷凍食品まで幅広い商品領域を持ち、またヘルスケア等の分野にも事業を展開しています。気候変動は、大規模な自然災害による事業活動の停止、農作物や燃料などの原材料調達への影響、製品の消費の変化など、さまざまな形でグループの事業に影響を与えます。
①シナリオ分析の前提
2024年度も、2100年に地球の平均気温が産業革命後より1.5℃又は4℃上昇するというシナリオで(*1)、グローバルのうま味調味料、及び国内・海外の主要な製品を対象とし2030年時点と2050年時点の気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しました。
中長期における生産に関する事項として、気候変動の影響のうち、渇水、洪水、海面上昇、原料の収量変化等を物理的リスクとして、カーボンプライシングやその他の法規制の強化及びエネルギー単価の上昇、消費者嗜好の変化等を移行リスクとして捉え分析しました。
1.5℃と4℃シナリオにおける2030年時点の平均気温差は0.2℃程度であり物理的リスクに大きな差が見られないと考え、平均気温差が1℃程度予想され物理的リスクに差があると考えられる2050年時点のシナリオ分析のリスクと機会を②・③の表において示しています。
なお、これまでに当社が実施したシナリオ分析に係る前提の推移を要約すると以下のとおりです。
| 2020年度(*2) | 2021年度(*2) | 2022年度(*2) | 2023年度以降(*2) | |
| 事業 | うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品 | うま味調味料(グローバル)、国内・海外の主要な製品 |
| 発現の時期 | 2030年 | 2030年/2050年 | 2030年/2050年 | 2030年/2050年 |
| シナリオ | 2℃/4℃ | 2℃/4℃ | 1.5℃/4℃ | 1.5℃/4℃ |
| 売上高基準 カバレッジ | 24% | 24% | 55% | 65% |
*1 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9(1.5℃シナリオ)、SSP5-8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しています。
*2 過年度に実施したシナリオ分析の結果については、過年度に発行したサステナビリティデータブックをご参照ください。https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook.html
②シナリオ分析:リスク
| 1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合 | ||||||
| リスク | 平均気温上昇 | 洪水・渇水の重大性と頻度の上昇 | 製品に対する命令及び規制 | 消費者嗜好の移り変わり | 右の対象は味の素グループ全体 | カーボンプライシングメカニズム |
| リスクの分類 | 移行リスク | 物理的リスク | 移行リスク | 移行リスク | 移行リスク | |
| 事業インパクト | カーボンプライシングによる原料調達のコストアップ(コーヒー豆ほか) | 創業時より実施している供給継続対策 | 使用する原料に関する法規制の強化によるコストアップ (想定:原料のトレーサビリティやリサイクル使用の法規制) | 気温上昇による需要減 (想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト) | カーボンプライシングにより、使用する燃料のコストアップ | |
| 潜在的財務影響 | 2億円/年 | 僅少 | - | - | 2030年:180億円/年(*3) 2050年:430億円/年(*3) | |
| 対応策 | ・原料産地の支援 ・別製法で作られた原料の検討 | ・調達地域の多様化 ・代替原料の研究開発 | ・サプライチェーン上下流の包括的な協力体制構築 | ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・アイス飲用に適したマーケティング活動 ・レンジ調理メニューの探索・提案 | ・内部カーボンプライシングによる財務影響の見える化 ・燃料転換 ・再生可能エネルギー利用 ・環境配慮型の製法開発 | |
| 4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合 | ||||
| リスク | 平均気温上昇 | 洪水・渇水の重大性と頻度の上昇 | 消費者嗜好の移り変わり | 燃料のコスト増加 |
| リスクの分類 | 物理的リスク | 物理的リスク | 移行リスク | 移行リスク |
| 事業インパクト | 農畜水産物の生産性低下によるコストアップ (想定1:養殖の生育環境悪化、想定2:家畜の増体率や生産性の低下、想定3:乳牛の乳量低下、想定4:家畜の感染症流行、想定5:農産物の生育不良や病害虫流行) | 原料調達のコストアップ、操業停止、納期遅延による売上高の減少 (想定1:タイの洪水、想定2:タイの渇水、想定3:日本の局地豪雨による冠水) | 気温上昇による需要減 (想定:みそ汁、スープ類、ホットコーヒー、加熱調理からレンジ調理へのシフト) | 化石系の燃料や電力の価格上昇 |
| 潜在的財務影響 | 90億円/年 | 1億円/年 | - | 20億円/年(*4) |
| 対応策 | ・調達地域の多様化 ・サプライヤー・農家との連携強化 ・エキス削減レシピの開発 ・代替原料の研究開発 ・高温耐性品種の導入 ・販売価格への反映 | ・調達地域の多様化 ・代替原料の研究開発 ・節水生産の継続・改善 ・供給体制・物流体制の整備 | ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・手軽な加熱調理コミュニケーションへの改善 ・アイス飲用に適したマーケティング活動 ・レンジ調理メニューの探索・提案 | ・燃料転換 ・再生可能エネルギー利用 ・環境配慮型の製法開発 |
*3 SBT(Science Based Targets)イニシアチブに認定された味の素グループの2018年度の基準GHG排出量に、IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の1.5℃シナリオに相当する2030年CO2価格の予測:新興国=25$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=90$/t-CO2、先進国=140$/t-CO2、2050年CO2価格の予測:新興国=180$/t-CO2、ブラジル・中国・インド・インドネシア=200$/t-CO2、先進国=250$/t-CO2を乗じて算出。4℃シナリオは現状の成り行きでありCO2価格の上昇は想定しておりません。
*4 IEA発行のWorld Energy Outlookにおける、化石燃料の現状に対する4℃シナリオについて、2022年発行版(2021年を現状とする)では2050年に大幅な価格上昇予測となっておりましたが、2024年発行版(2023年を現状とする)では価格上昇がほとんどなくなっており、当社予測による潜在的財務影響額も2023年度予測値に比して小さくなっております。
③シナリオ分析:機会
| 1.5℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた一定の政策的対応が行われ、化石燃料の消費が減少する場合 | ||
| 機会 | 低排出量商品及びサービス | 消費者嗜好の移り変わり |
| 機会の分類 | 製品及びサービス | 製品及びサービス |
| 事業インパクト | 生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加 | ・健康志向によるニーズ拡大=売上増加 ・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加 |
| 対応策 | ・環境配慮型の製法や製品の開発 ・ESGの高評価を取得する取組み推進 ・低環境負荷を証明する信頼性のあるデータ強化 ・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策 | ・栄養価値が向上する製品開発 ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・環境配慮型の製法や製品の開発 |
| 4℃シナリオ(2050年):GHG排出量削減に向けた政策的対応を行わない、成り行きの場合 | ||
| 機会 | 低排出量商品及びサービス | 消費者嗜好の移り変わり |
| 機会の分類 | 製品及びサービス | 製品及びサービス |
| 事業インパクト | 生活者や顧客のエシカル志向の拡大により環境負荷が低い製品として売上増加 | ・健康志向によるニーズ拡大=売上増加 ・気温上昇による飲料などのニーズ拡大=売上増加 |
| 対応策 | ・環境配慮型の製法や製品の開発 ・低環境負荷を証明する信頼性のあるデータ強化 ・中大容量品へ顧客嗜好をシフトする推進策 | ・栄養価値が向上する製品開発 ・栄養価値訴求を通じた喫食の習慣化を図るコミュニケーション ・環境配慮型の製法や製品の開発 |
④シナリオ分析結果の戦略への反映
(ⅰ)事業戦略への反映
シナリオ分析における事業への影響を踏まえ、今後一層のGHG排出量削減に向け、燃料転換・再生可能エネルギー利用・環境配慮型の製法に関する投資を計画していきます。また、サステナビリティに対する取組みが製品の付加価値向上につながる「ASV」の実現に向けて、新たな事業戦略の策定に取り組んでまいります。
また、2025年度以降のシナリオ分析においては、各種情報源のデータ更新と合わせてリスク・機会の見直しをしていきます。
(ⅱ)資金調達戦略への反映
当社は、各種取組みに対して必要な資金については、サステナブルファイナンスを基本としております。2021年10月のサステナビリティボンド発行を第一弾に、2022年1月のポジティブ・インパクト・ファイナンスによるコミットメントライン契約、2022年12月のサステナビリティ・リンク・ローンによるコミットメントライン契約、2023年6月にサステナビリティ・リンク・ボンド発行と継続的にサステナブルファイナンスによる調達を実行しています(*5)。また、直近では2024年3月および4月に新たなサステナビリティ・リンク・ローンを2件契約しました。
これら資金調達により、味の素グループが掲げる2030年までの2つのアウトカムのうちの1つ「環境負荷を50%削減」の実現、及び持続可能な社会の実現に向けた取組みをより一層加速させていきます。
*5 これらの詳細に関しては、以下の「サステナブルファイナンス」サイトをご参照ください。
https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/sustainability/finance/