有価証券報告書-第69期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 13:13
【資料】
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【項目】
137項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
日清食品グループは、創業者が掲げた「食足世平」「食創為世」「美健賢食」「食為聖職」の4つの精神をもとに、世の中のために食を創造することを追求し、日々、CreativeでUniqueな仕事に取り組み、Globalな領域で、「食」を通じて世界の人々にHappyを提供することで、グループ理念である「EARTH FOOD CREATOR」の体現を目指してまいります。
また、総合食品企業グループとして、各カテゴリーの中で常にNo.1ブランドを創造・育成していき、No.1ブランドの集合体として形成される「ブランディングコーポレーション」の実現を目指し、より一層、ゆるぎない経営基盤を築きながら、企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に努めてまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、平成29年3月期からの5ヵ年を対象とする「中期経営計画2020」を策定いたしました。
本中計の目標達成に向けて以下5つの戦略を遂行し、収益性の追求を徹底します。
① グローバルブランディングの促進
海外の収益性向上のため、自社の強みが活かせる高付加価値商品のカップヌードルの海外展開を加速し、海外販売食数において1.5倍の成長を目指し、収益の向上につなげます。明確化したターゲット (一定の生活水準を満たした若者) に対して、デザイン、フレーバー、プロモーションの各施策でアプローチを徹底する事で、効果的かつ効率的にマーケットへの浸透を促進してまいります。
② 海外重点地域への集中
市場自体の魅力 (即席めん市場規模・成長性)、当社の勝機 (事業基盤の強さ及び短~中期でのカップ型商品等の高付加価値製品市場拡大可能性) の2つの観点から、BRICs (ブラジル、ロシア、インド、中国) を重点地域として設定し、当該地域における確実な利益成長を実現します。中国では成長する収益率の高いカップヌードルの販売エリア拡大をさらに進めてまいります。インドでは都市部での袋めんの成長に加え、急増する中間富裕層に向けてカップヌードルの強化も推進してまいります。ブラジル、ロシアに関しましては、ともにNo.1シェアの確固たる基盤を活かし、高付加価値商品のカップめん市場拡大を図り、さらなるシェア獲得と利益を目指してまいります。
③ 国内収益基盤の盤石化
人口減少及び人口・消費者構成変化に影響されない事業モデルを構築すべく、マーケティングを軸とした国内市場の深耕と、省人化及び食の安全性の向上を可能にする工場高度化投資を実行し、国内即席めん事業の収益基盤をより盤石なものとしていくことで、「100年ブランドカンパニー」の実現を目指してまいります。
④ 第2の収益の柱の構築
菓子・シリアル事業を第2の収益の柱へと成長させるため、国内外での取り組みを強化します。各社のさらなるブランド成長に加え、技術シナジーによる連携強化、海外事業展開、M&Aの活用を行い、持分法適用会社である提携先も含めて売上高1,000億円規模を目指してまいります。また、低温事業・飲料事業におきましても、前中計期間までに進めてきたブランドの浸透を背景に、国内でのさらなる利益成長を目指してまいります。
⑤ グローバル経営人材の育成・強化
これまでの積極的投資によりプラットフォームの強化は進み、成長をサポートする体制を整えることができました。今後は選抜型社内大学やダイバーシティの推進、及び海外トレーニー制度の強化などによるグループ内での人材育成施策と、外部からの人材登用との両輪で経営人材を増やし、グローバル経営を加速してまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
本中計では、「グローバルカンパニーとしての評価獲得」の要件として、「本業で稼ぐ力」と「資本市場での価値」を重視した指標を下表のとおり設定しております。
区分2020年度
(参考値 日本基準)目標値 IFRS基準
本業で稼ぐ力売上高6,000億円5,500億円
調整後営業利益(注1)400億円475億円
資本市場価値時価総額(注2)1兆円
純利益(注3)330億円
ROE8%以上
調整後EPS(注4)年平均成長率 10%以上
330円

(注)1 調整後営業利益 = 営業利益 - 退職給付会計の影響
2 時価総額 = 株価×期末発行済株式数(自己株式控除後)
3 純利益 = 日本基準における「親会社株主に帰属する当期純利益」、IFRS基準における「親会社の所有者に帰属する純利益」
4 調整後EPS = 調整後NOPAT(注5)÷期中平均発行済株式数(自己株式控除後)
5 調整後NOPAT = 税引後調整後営業利益+持分法損益+のれん償却額(持分法に含まれるものを含む)-非支配株主に帰属する当期純利益
(4)経営環境
今後の日本経済の見通しにつきましては、海外経済動向に関する不確実性など、一部に先行き不透明感があるものの、企業収益や雇用・所得環境の改善傾向が継続しており、各種政策の効果もあり、経済の好循環が進展する中で、緩やかな回復基調を維持することが期待されております。
このような環境の中、当社グループは、平成29年3月期からの5ヵ年を対象とする「中期経営計画2020」に基づき、「本業で稼ぐ力」と「資本市場での価値」の向上を徹底してまいります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 「食の安全・安心」について
当社は、食の安全・安心を経営の最重要課題と位置づけており、グローバル食品安全研究所での科学的な検査体制をはじめ、原材料の調達から製造、流通、販売、消費のあらゆる段階において安全性に責任を持つ管理体制を徹底してまいります。
② 「コーポレート・ガバナンス」について
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るために、コーポレート・ガバナンスの充実・強化を経営上の最重要課題の一つとして認識しており、客観性と透明性の高い経営の実現に努めるため、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンス体制を一層強化する必要があると考えております。当社は積極的にコーポレートガバナンス・コードの適用を図る他、全てのグループ構成員が公正な価値観や適正な判断基準に従って行動できるよう環境整備を進めております。今後もより実効性の高いコーポレート・ガバナンスの実現を目指して、継続的にその強化と改善に取り組んでまいります。
③ 「CSR活動」について
当社は、国連WFP協会(特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会)への協力、平成20年からの50年間で合計100の社会貢献活動を行う「百福士プロジェクト」及びスポーツ支援活動等を推進し、これからも信頼される企業グループ作りに取り組んでまいります。
④ 「ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランス」について
当社では、社員の多様な価値観を受容し、イノベーションを起こせる組織風土の醸成を図るべく、ダイバーシティ委員会を設置し、様々な活動を精力的に実施しています。
平成29年3月期は、'ダイバーシティ元年'として、女性社員の更なる活躍推進のため、仕事と育児の両立支援策の拡充やリーダーシップ開発支援を中心に進めてまいりました。
平成30年3月期は、女性活躍推進の深化及び多様なワークスタイルの社員が効率よく働ける環境整備を推進します。また、様々なバックグラウンドの社員が交流できるイベントやセミナーを定期開催し、多様な視点・思考が交わることによる持続的な企業競争力向上を促進してまいります。
(6)株式会社の支配に関する基本方針について
① 基本方針の内容
当社は、主に、食品事業を行う事業会社を傘下に有する持株会社であり、これらの事業会社を通じて、即席袋めん、カップめん、チルドめん、冷凍めんを主とするめん類の製造販売を中核に、菓子、乳酸菌飲料の製造販売を展開しております。
当社は、創業者の掲げた「食足世平」、「美健賢食」、「食創為世」及び「食為聖職」の4つの言葉を変わることのない創業の価値観と捉え、グローバルに「食」の楽しみや喜びを提供することで、社会や地球に貢献する「EARTH FOOD CREATOR」をグループ理念とし、その体現を目指しております。
また、総合食品企業グループとして、各カテゴリーの中で常にNo.1ブランドを創造・育成していき、No.1ブランドの集合体として形成されるブランディングコーポレーションを目指し、より一層、ゆるぎない経営基盤を築きながら、企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に努めてまいります。
② 不適切な支配の防止のための取組み
当社は、大規模買付者により大規模買付行為が行われる場合、これを受け入れて大規模買付行為に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様ご自身の判断に委ねられるべきものであると考えております。
しかしながら、大規模買付行為は、それが成就すれば、当社の事業及び経営の方針に直ちに大きな影響を与えうるものであり、当社の企業価値及び株主共同の利益に重大な影響を及ぼす可能性を内包しております。また、近時の日本の資本市場と法制度の下においては、上記①で述べた当社の企業価値の根幹を脅かし、当社の企業価値及び株主共同の利益に明白な侵害をもたらすような大規模買付行為がなされるおそれも、決して否定できない状況にあります。
そこで、当社としては、大規模買付行為が行われようとする場合、大規模買付者に対して大規模買付行為が当社の企業価値及び株主共同の利益に及ぼす影響を適切に判断する必要かつ十分な情報を提供するように求めること、大規模買付者の提案する事業及び経営の方針等が当社の企業価値及び株主共同の利益に与える影響を当社取締役会が検討・評価して株主の皆様の判断の参考に供すること、さらに、場合によっては、当社取締役会が大規模買付行為又は当社の事業及び経営の方針等について大規模買付者と交渉・協議を行い、あるいは当社取締役会としての事業及び経営の方針等に関する代替案を株主の皆様に提示するというプロセスを確保するとともに、当社の企業価値及び株主共同の利益に対する明白な侵害を防止するため、大規模買付行為に対する対抗措置を準備しておくことも、株主の皆様に対する責務であると考えております。
また、株主の皆様にとっても、大規模買付者の提案に一定のルールを設け、十分な情報の提供と検討の期間を確保し、取締役会が必要な交渉を行うとともに、公正なご判断を仰ぐ仕組みを構築することは、株主共同の利益の向上のためにも必要であると考えます。
現在も金融商品取引法によって、濫用的な買収を規制する一定の対応はなされておりますが、公開買付けが開始される前における情報提供と検討時間を法的に確保することおよび市場内での買集め行為を法的に制限することがいずれもできないなど、必ずしも有効に機能しないことが考えられます。当社が中長期的な企業価値の向上を目指し、持続的な成長戦略を実施するために本施策を定めることにより、不測の事態などによる混乱や弱体化に備えることは、当社の経営資源を分散させることなく成長戦略に集中できる環境を整えるために必要であります。本施策を定めることは決して当社の取締役の保身を目的としないのみならず、取締役の責務である当社グループの企業価値・株主共同の利益の維持、向上に資するものと考えております。
当社は、かかる見解を具体化する施策として、平成19年6月28日開催の当社第59期定時株主総会において、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本対応策」といいます。)の導入(平成28年6月28日開催の第68期定時株主総会において、平成31年6月開催予定の当社第71期定時株主総会終結の時まで延長すること等の改正をご承認いただいております。)を決議しております。また、大規模買付者が従うべき一定の情報提供等に関する手続き並びに大規模買付者が当該手続きを遵守しない場合又は大規模買付行為によって当社の企業価値及び株主共同の利益が毀損される場合に当社がとりうる対抗措置発動の要件、手続き及び内容に関するルール(以下「大規模買付ルール」といいます。)を定めております。
③ 不適切な支配の防止のための取組みについての取締役会の判断
本対応策は、株主の皆様をして大規模買付行為に応じるか否かについての適切な判断を可能ならしめ、かつ当社の企業価値及び株主共同の利益に対する明白な侵害を防止するために、大規模買付者が従うべきルール、並びに当社が発動しうる対抗措置の要件及び内容を予め設定するものであり、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上を目的とするものです。
また、大規模買付ルールの内容並びに対抗措置の内容及び発動要件は、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上という目的に照らして合理的であり、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上に資するような大規模買付行為までも不当に制限するものではないと考えます。
なお、本対応策においては、対抗措置の発動等に際して、取締役の恣意的判断を排除し、当社の企業価値及び株主共同の利益の確保・向上という観点から客観的に適切な判断を行うための諮問機関として独立委員会を設置することとしております。当社取締役会は、対抗措置の発動等の決定に先立ち、独立委員会の勧告を得る必要があり、また当社取締役会はかかる独立委員会の勧告を最大限尊重しなければなりませんので、これにより、当社取締役会による恣意的判断が排除されることになります。