有価証券報告書-第18期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/28 17:13
【資料】
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【項目】
128項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「『人は変われる。』を証明する」をグループ理念として掲げ、全ての人が、より健康に、より輝く人生を送るための「自己実現産業」を事業領域として様々な商品、サービスを提供しております。当社グループではこのグループ理念をグループ全社で共有し、世界中から必要とされ続ける商品・サービスを提供し続けることを使命として事業を推進しています。
(2)目標とする経営指標
当社は継続的な収益力の指標として「営業利益」を、成長性の観点から「売上収益」を経営指標としております。また、事業毎の収益性の観点から「売上収益営業利益率」を補助指標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
2021年3月期は、2019年3月期に開始した構造改革の最終段階へ移行し、新しい中期経営計画に基づき持続的な成長に向けて前進する計画でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営環境が急速に悪化し、先々の見通しも不透明となったことから、「新型コロナウイルス危機対応」に集中することといたしました。具体的には当社グループ各社の共通機能の統合を進め、スケールメリットを最大化し、グループ全体のコスト最適化を行いました。また、政府が提唱する「新しい生活様式」に則った非対面・非接触事業の開発を急ぎ、新たな収益源の確保を進めました。
当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大の収束時期は依然として不透明であるとの認識から、2022年3月期も「新型コロナウイルス危機対応」を継続し、引き続き新たな収益源の確保を進めるとともに、さらに安定した財務運営を目指してまいります。
主な重点施策は以下のとおりです。
① グループ管理体制の強化およびグループ機能統合
当社グループは当社および連結子会社72社で構成されており、今後の持続的成長のためには、各社の経営管理体制を整備し、経営の機動性および計画実行の確実性を向上させていくことが必要と考えております。
そのため、当社グループ全体の執行体制を、中核子会社及びその傘下のグループ会社群から構成される体制に再編・集約しております。中核子会社には、当社グループの主力事業を運営するRIZAP株式会社をはじめ、上場グループ会社を中心とした当社中核事業を担当する会社を配置するとともに、投資機能及び経営再建支援機能に特化した中間持株会社であるRIZAPインベストメント株式会社及びREXT株式会社を配置しております。
なお、中核子会社は以下のとおりとなります。
(1)RIZAP株式会社、(2)MRKホールディングス株式会社、(3)株式会社ワンダーコーポレーション、
(4)株式会社HAPiNS、(5)株式会社ジーンズメイト、(6)夢展望株式会社、
(7)株式会社イデアインターナショナル
また、「新型コロナウイルス危機対応」の一環として、グループ各社の共通機能の統合を目的とした「One RIZAP」プロジェクトを開始いたしました。本プロジェクトでは、グループ会社間での人材の流動化を進めるとともに、グループ各社の営業、人事、マーケティング等の共通機能の統合を加速し、既存事業のビジネスモデル変革による収益力の強化を図ってまいります。
2021年3月期においては、上述のグループ横断的な各種経営対策を実施し、グループ全体のコスト適正化・合理化をはじめ、グループ各社の収益力の改善、競争力向上を推進したなかで、当社からグループ各社への経営支援及び経営基盤強化に向けた施策が2020年6月以降に大幅に増加してきました。
具体的な経営支援の内容としては毎週開催するグループ社長会において経営合理化(主に販管費削減及び在庫削減)に関する各種情報の提供・議論を通じたベストプラクティスの共有を行っており、各社において当該情報が経営改善活動に活用された他、新型コロナウイルス対応にかかる支援として対応マニュアルの整備や関連する助成金に係る情報提供等を行いました。また、経営基盤強化としてはコスト削減プロジェクトによる販管費削減支援等により各社の固定費削減に寄与いたしました。
これにつき、今般の社会情勢の変化、グループ各社の成長、当社のグループ各社への関与程度の深化等を総合的に勘案し、また、上述の各種施策の成果が第3四半期までに明らかとなったことを踏まえ、これらの当社によるグループ各社への役務提供を適切に評価した結果、2021年1月分からの経営支援料の算出方法を変更することをグループ各社と合意いたしました。変更された算出方法についてはグループ各社間の公平性、客観性、および経済的合理性を担保するため、主な対象役務である経営支援については当社で発生した費用のうち、各グループ会社に対する役務提供の対価として請求すべき金額を各グループ会社の資本規模や売上高等の客観的指標を用いて按分して算出し、経営基盤強化については各グループ会社の固定費の前期比削減額を基礎として、一定割合の金額として算出しております。当社は、以前よりグループ各社との間で経営指導及び役務提供に関する契約を締結しており、これまではその対象役務の多くがRIZAP株式会社に対するものだったため、大半がRIZAP株式会社に係る経営支援料でしたが、算出方法の変更より、RIZAP株式会社以外のグループ各社の経営支援料が増加することとなりました。
なお、当該契約の締結は関連当事者取引であり非支配持分に影響を与えるため、グループ各社において公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置が取られたのに加え、取引の合理性(事業上の必要性)と取引条件および取引条件の決定方針の妥当性については、グループ各社と討議及び検討を行い、その過程において、弁護士、税理士等の各種専門家から聴取した意見及び回答を踏まえて本契約を締結することによるリスクを含め、所要の検討を行いました。
② 新規事業の創出
足元、消費者の購買行動はコロナ禍で急速に変化しつつあり、これまで「対面・接触型」で行っていたあらゆるビジネスが「非対面・非接触」に移行することが求められています。当社グループでも、全グループ会社でEC(電子商取引)化の加速を経営の重点施策の一つとしています。
具体的には、小売業を営むグループ会社において、自社オンラインショップの充実やマーケティング施策の拡充を進めております。また、パーソナルトレーニングジム「RIZAP」において、オンライントレーニングの拡充やトレーニング関連動画の配信を拡充しているほか、今後はウエアラブル端末などを用いた遠隔での健康維持・ダイエットサポートサービスの充実を計画しております。
③ BPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)の推進
益々不透明性を増す経済環境下で、当社グループが今後も安定的に成長し続けるためには、グループ全体でさらに踏み込んだ経営改革が必要であると認識しております。そのため、2021年4月に「BPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)」プロジェクトを開始いたしました。「BPX」とは「BPR(業務プロセス改革)のさらに先を行く改革」という意味の当社独自の概念です。グループ内のあらゆる業務を再設計することで、より付加価値の高い領域へ経営資源を再配置することを目指してまいります。
④ 海外事業の推進
当社グループでは、以前より、RIZAPやパーソナルゴルフジム「RIZAP GOLF」を、主に中国や台湾等の東アジアで事業を展開してきました。今後、新型コロナウイルス感染拡大収束後に、当社グループの海外事業を東アジアから北米・欧州に拡大し、現在海外事業を行っていないグループ会社の海外進出も加速いたします。
⑤ キャッシュ・フロー経営の強化
当社グループが今後持続的成長を実現するには、継続的に既存事業及び新規事業に投資を行っていく必要があり、そのためには、投資の原資となるキャッシュ・フローをより改善していく必要があると考えております。
その実現のため、当社グループ各社に対し重点経営管理指標を設定するとともに、グループ横断でのコスト削減プロジェクトを立ち上げ、キャッシュ・フローの改善を図ってまいります。
(4)当社の対処すべき課題
① 持続的成長に向けた経営基盤の強化
2021年3月期は、第1四半期において、新型コロナウイルス感染拡大に伴う店舗の臨時休業などの影響がありましたが、店舗の営業再開後は多くのグループ傘下店舗でいち早く客足が戻り第2四半期以降、売上が順調に回復しました。また、2019年3月期から続けてきた構造改革により収益構造が改善したことや、第2四半期以降売上が回復する中でも、「新型コロナウイルス感染拡大に伴う経営対策」として前期末から行っているグループ横断的なコスト削減を継続したことが功を奏し、通期で営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益の黒字化を達成しております。
一方で、2021年4月に3回目となる緊急事態宣言が発出されるなど、新型コロナウイルス感染拡大の収束時期は依然として不透明であるため、当社では新型コロナウイルス感染拡大のさらなる長期化に備えて不採算店舗の閉鎖や収益性の低い店舗等の固定資産や在庫等に係る評価を今期末に実施した結果、一過性の損失約32億円を計上したことにより、前期に引き続き税引前損益が損失となったことから、金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触している状況にあります。その結果、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象等が存在する状況となっておりますが、主な取引銀行からは、当社の事業計画を遂行していく限り、期限の利益喪失請求権の権利行使は行わないという方針について承諾を得ております。具体的には、財務制限条項への抵触状況のみで判断するのではなく、当社の構造改革の一環として、短期的な収益改善が難しい事業や当初想定していたグループシナジーが見込めない事業の売却、コロナ危機克服に向けた当社グループ全体のコスト最適化、非対面事業等の新たな収益源の創出等を含めた当社グループ全体の事業計画の遂行状況を多面的・総合的に考慮する中で、当社への継続支援の具体的な内容や条件についての協議を行ってまいります。
当社では、引き続き持続的成長に向けた経営基盤の強化のための構造改革施策を実施していくとともに、2022年3月期も引き続き新型コロナウイルス感染拡大に伴う経営対策に注力いたします。具体的には、グループ横断的なコスト最適化や業務合理化、在宅勤務常態化による本社家賃の低減をはじめとする固定費の削減、不採算店舗の統廃合などを進め、収益力の向上を目指してまいります。加えて、事業売却やグループ資金の活用等により事業活動に必要な資金を確保するための施策を講じており、当面の資金状況は安定して推移する見通しです。
以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
② 人材の確保及び管理体制の強化
当社グループは、人材の確保が経営の重要課題の一つであると認識しております。今後の業績拡大のため、エンジニアを含むDX(デジタルトランスフォーメーション)人材を確保するとともに、引き続き、商品企画開発、マーケティング、営業等の事業成長に直結する能力を有する人材、そして業績管理やコンプライアンス等グループ全体を適切に管理できる能力を有する人材の確保が重要と考えております。グループ内での機能統合や人材の活用、外部からの採用等を行うことで、経営基盤の強化を着実に進めたいと考えております。
③ 消費者ニーズの変化に対応する新商品・新サービスの開発
今後当社グループが業績を伸ばしていくためには、新型コロナウイルス感染拡大で急速に変化している消費者の購買行動やニーズに合致した新商品や新サービスの企画開発に努める必要があります。また、そのような消費者ニーズの変化に対応しながら、特にPB商品やその他商品・サービスのラインアップの充実とライフサイクルの段階に応じた新商品や新サービスの投入の強化を図ってまいります。
④ リピート顧客の育成
当社グループが安定的な利益を生み出すためには、新規顧客だけでなく継続的に商品やサービスをご購入いただくリピート顧客の獲得が重要となります。当社グループは、新規にご購入いただいたお客様にリピートしていただくため、コールセンターによるフォローコールや、コミュニケーションツールとしてのショッピングサイトの構築等、顧客満足度の向上に努め、リピート顧客=ファン顧客の獲得・拡大に取り組んでまいります。
⑤ マーケティングの強化
当社グループのヘルスケア・美容事業において、売上に対する広告宣伝費の割合は高く、新規顧客獲得のための広告宣伝活動は非常に重要であります。当社グループは、広告宣伝活動の強化を推進するとともに、費用対効果の高い広告宣伝媒体・手法を常に開拓し、顧客獲得コストの最適化を図ってまいります。
⑥ グループシナジーの活用
当社グループは、グループ内の事業との親和性の高い事業を運営する企業を子会社化し、グループを拡大してまいりました。今後は個々の事業会社の強みを活かしながら、グループ会社間でのシナジーを最大限に発揮するための企業間連携を更に強め、グループ全体での売上・利益拡大の実現に向け取り組んでまいります。
⑦ コンプライアンス体制の強化
当社グループは、各種事業を営むにあたり、大量に個人情報を収集・保有しております。個人情報保護を徹底するため、引き続き管理体制の強化に努めてまいります。
また、当社グループは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「食品衛生法」、「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」、「製造物責任法(PL法)」、「特定商取引に関する法律」等、多くの法的規制を受けており、関係部門で関係諸法令のチェック体制を常に整備しておく必要があります。
当社は、当社およびグループ会社の財務報告の信頼性を確保するために内部統制システムの構築を行い、その仕組みが適正に機能することを継続的に評価し、不備があれば必要な是正を行うことにより、「金融商品取引法」およびその他関係法令等を遵守する体制を整備してまいります。
今後も、コンプライアンス体制の充実に積極的に取り組んでまいります。