訂正有価証券報告書-第178期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、企業理念を以下のとおり定めています。
・挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。
また、企業理念を実現するために提供する価値・姿勢を、VALUEで定めています。
(VALUE)
・わたしたちは、地球環境にやさしい製品やサービスを提供し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。
・わたしたちは、新たな価値を創造し、お客様に感動と満足を提供します。
・わたしたちは、企業価値を高め、株主の皆さまの期待に応えます。
・わたしたちは、従業員が誇りを持っていきいきと働き、果敢に挑戦できる企業文化を大切にします。
当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、グループ経営・グローバル経営の深化を図り、多様性の中での団結を進め企業価値の向上を目指しています。
また、企業の本質は人間集団であり事業は借り物との考えに基づき、「モノ」づくりの強みをベースに「コト」「サービス」の視点を高めつつ、デジタルトランスフォーメーションをとおして新たな時代や社会の要請に応える業容へと変化を継続していきます。
当社グループは、地球環境の維持やサステナブルな社会づくりをテーマに、環境・エネルギー分野に事業領域をシフトしてきました。今後とも、環境保全、省エネルギー、代替エネルギーを実現する新製品やシステム提案はもとより、環境破壊や気候変動による災害など人間社会が直面する課題に対してもソリューションを提供し、「環境・エネルギーカンパニー」グループとしてスマート社会を実現して参ります。
こうした考えのもと、主力であるモビリティ分野の拡充に加え、インフラストラクチャー&セーフティー分野、ライフ&ヘルスケア分野への製品・サービスの提供を通じて未来社会の創造に寄与していきます。
現在モビリティ分野においては、無線通信技術に電子デバイス・メカトロニクス・ケミカル技術を融合しグループ横断的に事業を拡大しています。
自動車向けには、業界をリードしている銅フリー摩擦材の開発・拡販によりグローバル市場での地位を高める一方、カーボンセパレータや白金代替触媒など燃料電池車用の部材開発を進めています。また、自動運転技術のキーとなるデバイスの供給やセンサーの開発を進め、自動車と交通インフラとの通信網構築に取り組みます。
更には、船舶自動航行や衛星通信・航空機・ドローンの管制制御に必要なレーダー、センサー、デバイスの開発を進めると共に、開発機器により収集されたデータを活用する安全運行・省エネ運行サポートビジネスにも取り組みます。また、当社グループでは新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)によってもたらされるパラダイムシフトを柔軟かつ積極的に事業成長に取り込んで参ります。
なお、当社グループでは、2025年ROE12%達成を長期目標に掲げています。
(2) 事業別の経営戦略及び経営環境並びに対処すべき課題
①無線・通信事業
無線・通信事業では、現業の成長戦略の見直しと、低収益事業の見極めと見切り、高収益事業への挑戦などの事業ポートフォリオ改革を促進することで、売上規模の拡大と収益性の向上の両面を重視した経営へのシフトを図っていきます。
・マリンシステム
マリンシステムでは、黒字化体質への転換に向けて、収益構造の抜本的な見直しにより低収益体質からの脱却を図ります。引き続き収益性の高いアフターマーケットにおけるLCMビジネスの拡大に努め、シェアの維持・拡大や、機器換装および修理工事向けの受注増を図ります。中小型船分野では、特に河川市場向け商品・販売・サービスの強化に努め、Alphatron Marine社が得意とする欧州市場への販路を活用し、シェア拡大を図ります。また、デジタル分野の新たな取り組みとして、2020年4月に発表した船舶内情報共有サービス「Smart Ship Viewer」を中心として、船陸間ネットワークによる船舶の安全運航支援サービスの拡大を目指します。
・ソリューション・特機
既存事業の需要を確実に取り込み、収益力の強化を図りながら、隣接分野への進出を通じて事業領域の拡大と、ICT(※)/IoTを活用したデジタルビジネスの推進に注力していきます。官公庁関連では、引き続き「防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策」への取り組みで収益を確保していきます。また、LTE関連やモーション等における民需を取り込み、海外においても、気象・防災、海洋ソリューション、交通ビジネスを柱に東南アジア等での事業領域の拡大を図ります。また日本無線㈱は、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」におけるドローンの社会実装に向けた新たな研究開発に関する公募で2件採択されています。今後も引き続き、2020年に着手した衝突回避システムの小型化・低消費電力化などの新たな研究開発を進めていきます。
※ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)
・ICT・メカトロニクス
ICTでは、IoT分野における機器製造・販売の形態から、市場ニーズに合わせた技術サービスを準備し、顧客との共同開発により付加価値を向上させるビジネス形態を目指します。そしてサポートパッケージの構築と、鉄道・交通インフラの通信分野領域の拡大により、デジタルビジネス創出の基盤を確立します。車載部品ではグループシナジーを追求し、NJコンポーネント㈱とのシナジー創出を通じて、差別化製品を開発し、新規顧客の開拓を通じてマーケットシェアの拡大を図ると同時に、製品開発ならびに生産における徹底的な効率化を図っていきます。メカトロニクスでは、ICTとの技術融合による生産設備の自動化・デジタルトランスフォーメーション化を通じ、産業機器への事業領域の拡大を加速します。
・医用機器
医用機器においては、マーケティングの強化と販売ルートの確立を通じて、付加価値の高い携帯型超音波事業の拡大を図ります。さらに、保有技術である無線技術を医用機器に応用するなど医用のワイヤレス化に注力し、予防・予後分野、診断・治療支援分野への新規参入を図ります。また、携帯型超音波等での診断領域でデジタルビジネスを創出することで医用機器事業の拡大・伸長を図ります。それら成長戦略分野製品の自社ブランド化や、事業体制の製造販売業への転換などを通じて、収益力の向上にもつなげていきます。
・5G/LTEへの取り組み
5Gでは、2020年12月に日本無線㈱長野事業所においてローカル5Gに向けた無線試験局免許を取得し、実証実験を開始しました。2021年は装置の開発と並行して、さまざまなアプリケーションに向けた実証実験やデモンストレーションを通じてビジネスパートナーとの協業を進め、来るべきローカル5Gビジネスにつなげていきます。プライベートLTEに関しては、2020年はガボン共和国の鉱山向けシステムの受注をはじめとして、グローバルに広くビジネスを展開しています。システムを一体化したLTE-Boxや、顧客ニーズに寄り添うアプリケーションの提供など、日本無線㈱の強みを活かしたシステムの提供で、ビジネスをより一層拡大していきます。
②マイクロデバイス事業
マイクロデバイス事業は、5G、CASE、IoT関連の需要拡大を背景に、安定した事業の拡大が見込める中、“Connect Everything”技術に磨きをかけ、超スマート社会の実現に向けて、アナログソリューションプロバイダとしてのさらなる成長・発展を目指しています。なかでも車載、産業機器、IoT向け製品を今後の成長分野として位置付け、事業強化を図り、特にEVやADASなど次世代自動車向けの新製品の開拓などを進めることで、車載向けビジネスの構成比を高め、成長率が高く、かつ半導体市況やコロナ禍などの外部要因に左右されにくい安定的な事業の確立を図っていく予定です。
・2022年1月に二社を統合
マイクロデバイス事業ではこれまで、音響向けアナログ半導体に強い新日本無線㈱と、電源に使われるアナログ半導体を得意とするリコー電子デバイス㈱の2社を中核に事業を推進してきました。
新日本無線㈱では、各種デバイスの実用化に向けた開発のほか、スマートフォンやAIスピーカー用のマイクモジュール向けMEMSセンサー、ウェアラブル端末・健康機器応用製品向け光センサーなどの次世代製品開発、さらには量産を開始したアナログフロントエンドICの高精度化に向けた開発を行っているほか、衛星通信、センサーおよび高出力電子管など幅広い分野のマイクロ波製品の開発・製造も行っています。一方、リコー電子デバイス㈱では、主力製品の電源ICにおいて、CMOSアナログ技術をコアとして小型、低消費、高効率、高精度、高信頼性の製品開発を進めています。特に今後の成長が望める車載市場向けには、次世代パワートレイン機器向けの高耐圧・大電流・高品質なICに加えて、ADAS機器向けにセンサーの精度を向上させる低ノイズ、対ノイズ性能を向上させたICの開発を進めています。
これまで生産から購買に至るまで両社間での協力体制を通じてグループ内シナジーを追求してきましたが、2022年1月をめどに両社を統合し、「日清紡マイクロデバイス株式会社」として双方のリソースを活用しながら、より収益力の高い事業へと成長させていくこととしました。引き続き、開発・営業・生産面で両社のシナジーの創出を図りつつ、統合に向けて管理等での重複領域の効率化を加速していきます。
・電子デバイス製品
電子デバイス製品では、短期・中長期の両視点での製品企画・開発に注力します。車載向けでは、ASSP/ASICなどのLSIを中心に製品開発の強化を、産業機器向けでは高機能・高付加価値製品の展開と顧客基盤の拡充を図ります。また通信機器向けでは、スマートフォン以外の車載、産業機器、IoTを中心に取り組みを強化します。
収益性のさらなる改善に向けて、生産面では外部委託コストの低減と原価管理の徹底を図ります。リコー電子デバイス㈱が外注委託していた組立生産をTHAI NJR CO., LTD.へと移管し、THAI NJR CO., LTD.での生産増強を通じて内製化するほか、外部に委託しているウエハの生産についても、リコー電子デバイス㈱のやしろ工場(兵庫県)での生産へと切り替え、SAWフィルタは、自社生産を中止します。材料面でも、半導体に使用している金線の銅ワイヤー化を推進しながらリードフレームの購入先を集約することで、材料費削減を図り、競争優位性の高い適正な製品価格を実現します。
営業面でも両社のシナジーの最大化を図ります。既存代理店の共用でクロスセルによる拡販を図ると同時に、相手先製品の自社ブランドでの販売(リブランド)を通じてソリューション提案力を強化し、顧客認知度・満足度のさらなる向上につなげます。また、確定受注生産ならびに小ロット投入により、顧客への納入に必要な製品のみの生産を行うことで、適正在庫の維持にも努めます。
・マイクロ波製品
マイクロ波製品では、レーダー用コンポーネント市場は安定的に推移する一方、衛星通信用コンポーネント市場は拡大基調にあり、情報化社会が多様化する中で今後も成長が期待されています。成長の鍵となる衛星通信用コンポーネントの需要は、「衛星通信の新興国」が多くあるアジア地区を中心に拡大し、通信の高速・大容量化に対応し、小型・低消費電力化もあわせて実現する送受信一体の高機能トランシーバなどの開発を推進しています。マイクロ波技術を使ったセンサーはこの数年で大きく成長し、一つの新事業分野を形成しつつあり、防犯などのセキュリティ、家電、車載応用、ヘルスケアに至るまで応用分野が広がっているほか、センサー周辺部品を一体化したモジュールを提供することで新たな顧客の獲得にもつながっており、2021年も引き続き新規案件獲得に向けた取り組みを継続・強化します。生産面ではTHAI NJR CO., LTD.での生産品種を拡大し、海外部材調達を増やすことで原価の低減を図ります。また品質保証体制の強化も図っていきます。
③ブレーキ事業
2021年以降も、コロナ禍は現在進行形の問題と捉え、多くの先進国では自動車生産台数の減少といったマイナス影響は続くものと見ています。その一方で、公共交通機関を避け自動車の利用が進むことで補修品市場においては追い風傾向が期待できるという見方もあります。
また、電動化や自動運転に関連した次世代車両・新たなブレーキの企画が、完成車メーカー各社において進捗しています。HV、EVなどの電動車では制動時に電気駆動システムを活用したエネルギー回収が行われ、従来の機械式ブレーキによる摩擦材の摩耗が減少し、長期的には補給部品の需要減少が想定されます。一方で、組付け品は長期間の使用に耐える耐久性や電子的に制御される回生ブレーキとの協調による安定した制動力の実現、さらに車両静粛性の高まりへの対応として、制動時のノイズ・振動抑制に優れる高品質な製品が求められています。当社においては、今後の自動車の使われ方による摩擦材への要求の変化を見据え、電子制御ブレーキと親和性の高い製品の研究開発に注力しています。製品開発での取組みとしては、これまでの多くの経験とそれを活用できるデジタル開発を推進し、より効率的に的確な提案ができる仕組みを構築しています。さらに、将来的なモビリティ社会に向け、グループ企業と連携した車両足回りのセンシングについての研究も開始しました。高品位の製品とそれを生み出す技術により、お客様から信頼されるパートナーとして当社の価値を訴求していきます。さらにDXへの取り組みとして製造工程におけるICTを活用した生産管理、設備稼働状況の見える化や設備予知・予兆保全、さらには製造や検査データのAI分析による品質管理、RPAを活用した業務の効率化の検討を加速していきます。
・環境規制への対応
米国では2021年から摩擦材における銅の含有量を制限する環境規制が施行され、2021年以降銅含有量5%以上の摩擦材製品の販売及び新車への組付けが禁止されました。さらに2025年以降は銅含有量0.5%以上へと環境規制が強化されます。このような中、日清紡ブレーキ㈱の銅レス(銅含有量5%未満)・銅フリー(同0.5%未満)摩擦材の新規受注は順調で、今後も計画通り進めていきます。また、銅規制対応の次の課題として、ブレーキから排出される摩耗微小粒子についても規制へ向けた動きが予測されるため、引き続き調査及び研究開発活動を推進していきます。
・TMDグループの再生計画
TMDグループはアフターマーケット市場で、欧州の大手ディストリビューターとの関係を構築しながら拡販を進めています。また、再生計画についてはコロナ禍の状況でも強力に実行されてきましたが、2021年はさらにその取り組みを加速させていきます。競合他社ならびにディストリビューターは合併等の業界再編が進んでおり、環境変化への即応力が求められます。新車組付け用では、ドイツのEssen工場を筆頭にグローバルに展開する全拠点での収益性の改善に引き続き取り組んでいきます。
・カイゼン活動
世界中の各拠点で展開しているカイゼン活動は、コロナ禍にあっても着実に推進しています。また、例年、当社のブレーキ事業に携わる社員同士の交流の場として、相互訪問による発表会を開催し、知見の共有やコミュニケーションの機会としていましたが、コロナ禍による移動制限を踏まえ、オンライン会議を活用しながら、こうした交流がさらに活発化できるよう、工夫を重ねています。
④精密機器事業
精密機器事業においては、自動車向け精密部品、エアコン部品や自動車ヘッドランプともに足もとの中国・アジア経済の影響を強く受けるため、コロナ禍などの厳しい環境が短期的には続くものと見ています。しかし、自動車向け製品については、将来的に需要増となる見通しであるため、各工場において生産体制の充実を図るとともに、不採算拠点・製品の見極めと見切りや、生産拠点の再編を進めていきます。
・事業/製品の見極めと見切り
南部化成㈱は、国内およびアジア(中国、フィリピン、インドネシア)に生産拠点を有しており、今後グローバルな需要の取り込みを図る上で、最適な生産拠点の再編を進めています。具体的には、インドネシア子会社PT. Nanbu Plastics Indonesiaでの事業縮小を進めています。また、日清紡メカトロニクス㈱の成形品事業は、グローバル全体での最適な生産拠点の再編を引き続き進めます。さらに、2020年の基幹システムのリプレイスを機に、原価計算システムの刷新によって、より高精度な個別原価の「見える化」が実現されており、不採算製品の原価低減活動や顧客への価格提案へとつなげ、収益力の改善を図ります。
・精密部品事業の収益力強化策
精密部品事業では、2022年以降も顧客からの需要増が見込まれるEBSバルブブロック「MK100」の生産を日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司に移管・集約し、生産効率の向上を通じた収益力の強化を図ります。また2021年3月からは、自動車の電動化、自動運転化に向けた次世代EBSバルブブロック「MKC1」の量産を開始するほか、同製品をさらに小型・軽量化した次世代モデル「MKC2」向けの生産設備の導入を進め、2022年からの量産開始に向け取り組んでいきます。日清紡精機広島㈱では、D2(ディーゼル次世代)排気シャッターバルブ、EGRバルブの受注に伴い、2021年12月からの量産準備を進めます。また更なる自動車部品の受注を目指した新規製品の開発も継続していきます。
・成形品事業の収益力強化策
成形品事業においては、日清紡メカトロニクス㈱の国内では、2021年以降の家電向け主要顧客の国内回帰の動向を注視しながら受注の拡大を図ります。また、回転体成形技術を活用したエアコン向け新製品の開発に注力すると同時に、リサイクル材の活用や不良率改善活動を通じた製造原価の低減を図り収益力の改善にも取り組みます。Nisshinbo Mechatronics (Thailand) Ltd.では、第三工場を活用しながらクロスフローファンの受注拡大や、車載向け製品の新規受注獲得を通じた収益の拡大を図ります。日清紡精密機器(上海)有限公司では、家電向け主要顧客の樹脂部品の板金化に伴う受注減が見込まれる中、新規顧客の開拓およびEcoクロス®・Ecoブレードターボ®の売上拡大に注力します。また、南部化成㈱より生産移管した自動車ヘッドランプ用厚肉レンズの受注拡大を図ります。Nisshinbo Mechatronics India Private Limitedでは、政府の現地調達化生産を推進する施策がコロナ禍で強化される中、拡大する市場の需要を取り込むべく、必要な設備投資を行いながらシェア拡大を図ります。
さらに医療分野の拡大も期待しています。2021年度内に南部化成㈱のメディカル事業(吉田事業所)を日清紡グループの藤枝事業所内へ移転し、生産設備・能力の強化と生産効率の向上を図ります。南部化成㈱ではすでに採便容器などを生産していますが、2020年2月からはアレルギー診断キットの出荷を開始しています。感染対策を含む衛生面や予防医療に対する需要の高まりを受け、衛生用品向けやアレルギー検査向け成形品の受注獲得・拡大に引き続き注力していきます。
⑤化学品事業
・断熱製品の差別化・高付加価値化戦略
断熱製品では、既存のシステム原液および硬質ブロックの製造・販売を基盤事業と位置づけ不燃スプレーの認定取得と迅速な市場投入を通じた高付加価値化を進めるとともに、高利益商品の拡販に注力します。また2020年に日刊工業新聞社主催の第23回「オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」の経済産業大臣賞を受賞したHFO(ハイドロフルオロオレフィン)を発泡剤としてトンネルの背面空洞に注入する裏込めウレタン注入材については、重点事業領域として今後さらに強化していきます。鉄道防振材は、軌道の保守メンテナンス作業周期の延伸を可能にする製品の受注拡大を通して、日本の安全な鉄道網に貢献していきます。中国での現地生産を開始した水処理担体は、中国での安定生産・販売体制の構築と同時に、アジア全体をターゲット市場とした展開を進めていきます。高性能・高耐久性担体を迅速に開発することで早期の市場投入を図ります。
・環境課題解決に寄与するカルボジライトの拡販
生分解性プラスチック用の耐加水分解抑制剤、さらには大気汚染等の環境汚染問題を低減する塗料、コーティング、接着剤などに使用される水性架橋剤など、環境配慮商品の普及に貢献するカルボジライトの新製品の市場投入を加速していきます。海洋生分解性プラスチックに対応する添加剤の開発も、NEDOの受託事業として新たに進めており、海洋マイクロプラスチック汚染問題の解決に寄与するより付加価値の高い提案を通じて売上の拡大に努めます。今後の需要拡大を見据え、現状設備での生産効率向上を進めながら、アライアンス・M&Aを含めた新たな生産・開発拠点の増強、事業領域の拡大を計画していきます。
・燃料電池セパレータの開発加速に向けた新組織体制
カーボンニュートラルを実現する技術として注目を集める水素・燃料電池では、FCV(燃料電池自動車)の中でも特にバス・トラック向けの開発が世界中で行われています。当社は複数の有力メーカーと開発を進めながら、旺盛なバス・トラック向けの試作品需要に応え、商業化を目指しています。また、グローバルで定置用の引き合いも増えており、より多くの採用を目指します。
2021年1月には、車載向け開発のさらなる加速を目的に、これまで新規事業開発本部内にあった研究開発部門を日清紡ケミカル㈱燃料電池事業部と統合し、車載向け量産工程の確立と、生産性・品質の向上を図っていきます。また、自動車部品工場の必要資格であるIATF16949については、2021年末までに取得することを目標とします。
・長期的な成長が見込めるガラス状カーボン製品
カーボン製品の主要用途である半導体市場では、微細化・省電力化を実現した先端半導体の製品開発が活発化しています。洗浄・成膜・露光・エッチングの各工程で、半導体製造装置メーカーおよび半導体製造業者による先端半導体の開発が行われており、カーボン製品に対しても、高純度化や複数形状の実現等の要求が高まる中、当社ではそうした要求性能の実現を目指した開発を進めています。半導体以外の分野では、ガラス状カーボン製品の長所を生かした新規用途の開拓を進めると同時に、これまで培った焼成技術を活かした製品による新規顧客の採用獲得に注力していきます。
⑥繊維事業
衣料品消費と直結した繊維事業は、コロナ禍による外出自粛やテレワークの普及といった生活様式・消費行動の変化の影響を大きく受けましたが、衣料品のオンライン販売やビジネススタイルのカジュアル化に対応したサービス・商品、ならびに天然素材を中心としたSDGsを具現化する環境商品には大きなビジネスチャンスがあります。また、世界の人口は依然増加を続けており、ことアジアにおいては経済成長も著しいことから、世界の繊維製品市場は更なる拡大が予想されます。
そうした市場環境の中、繊維事業では、「環境」「デジタル」「機能性」「グローバル」を中心に据え、超スマート社会・環境エネルギー社会に貢献する新商品の開発・上市を加速させ、環境に配慮したモノづくりとデジタルビジネスを早期に構築することで、営業キャッシュ・フローの向上を図ります。
・環境負荷を低減しながら既存事業を拡大
シャツ分野においては、ノーアイロンにより電力消費削減に貢献する「アポロコット」を中心として、さらなる機能向上を図った次世代製品で新たな市場を創造しシェアを拡大するとともに、新しい生活スタイルに合ったビジネスカジュアル商品の展開を拡げていきます。開発素材分野では、市場拡大が見込める医療マスク用モビロンテープの新販路開拓を目指すとともに、化粧品雑貨用不織布ならびにレッグウエア用スパンデックス糸においては原料のエコ化やリサイクル化を図り、環境配慮商品の開発を推し進めて新規販路の拡大を図ります。
東京シャツ㈱では、コットン100%の超形態安定シャツの販売拡大やポリエステル素材のリサイクルペット使用を推進するなど、環境負荷の低減を訴求しながら、オンライン販売へと大きく軸足を移していきます。店舗での試着や受け取りといった店頭サービスと連動したオムニチャネル戦略を推進し、オンライン販売の拡大を進めていきます。
生産拠点であるインドネシア子会社では、引き続き「グローバルコスト、グローバル品質」を追求し、生産体制の再構築を進めると同時に、石炭燃料から天然ガス燃料への代替など環境規制に対応した環境配慮型工場への転換に取り組み、SDGsに沿った新商品の開発を加速させることで、「外―外ビジネス」の拡大を図ります。
・「環境」をテーマに、新規事業を推進
新しい「環境」事業として、「シャツ再生プロジェクト」、「セルロースナノファイバー活用プロジェクト」に取り組んでいきます。「シャツ再生プロジェクト」は、日清紡ホールディングス㈱新規事業開発本部と信州大学との共同研究で、着用しなくなった綿製シャツを回収・裁断し、コットンを溶解・再生繊維化することで、新たなシャツに生まれ変わらせるプロジェクトです。2021年3月より実用化に向けた研究開発を本格化させ、2023年の試験生産を目指しています。また、次世代環境商品として進めている「セルロースナノファイバー活用プロジェクト」は、製造工程から発生する裁断くずや落綿などの廃棄物をナノファイバー化し、再凝縮してさまざまな用途に活用するプロジェクトです。現在開発中のセルロースナノファイバーをスクラブ剤に使用した石鹸は、海洋マイクロプラスチック問題の解決に貢献することを目指しています。
⑦不動産事業
2021年は、土地やオフィスビル・商業施設用建物の賃貸による安定した賃貸事業と、土地販売などの分譲事業の継続により、前期に引き続き高収益を確保する見込みです。
当社の不動産事業は、全社での経営計画達成に向けた資金創出を担う役割を継続しつつ、グループ全体の不動産の有効活用を推進しています。下記のプロジェクトを中心に、今後も継続的、安定的な収益の確保ができるものと見込んでいます。
日本無線㈱三鷹製作所跡地(東京都)の再開発は、2020年より全678戸のマンションおよび商業施設用地の販売を開始し、2021年にすべての物件を完売する予定です。
美合事業所跡地(愛知県)の再開発は、前年に引き続き全357区画の戸建ておよび商業用地、医療・福祉施設用地の販売を実施します。
新規開発案件では、西新井社宅(東京都)の再開発を進め、賃貸マンションに建て替える事業を開始しました。賃貸マンションは第1期(50戸)を2021年9月より、第2期(149戸)を2024年4月より賃貸を開始する計画です。
さらに能登川工場跡地(滋賀県)の再開発に着手し、120戸の分譲マンションおよび都市化推進施設用地の販売を2023年に計画しています。
(3)ESG、SDGsの取組み
当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、グループ経営、グローバル経営の深化を図り、多様性の中での団結を進め企業価値の向上を目指しています。これはSDGsの考え方と軌を一にするものです。
(日清紡ホールディングス統合報告書https://www.nisshinbo.co.jp/ir/library/annual_report.html)

当社グループの事業が社会とともに持続的に成長するために取り組むべき課題を明確にすることを目的として、マテリアリティ(重要課題)を次の通り特定しています。
〇グローバル・コンプライアンス
〇環境・エネルギー分野の貢献
〇安心・安全な社会づくり
現在、2018年度からの第4期中期CSR目標を掲げ、数値で把握可能な項目についてはKPIを用いて活動しています。
マテリアリティに基づく活動内容は以下のとおりです。なお、詳細な活動内容および目標の達成状況につきましては、当社グループの統合報告書およびホームページにて積極的な開示に努めています。
(日清紡ホールディングスHP https://www.nisshinbo.co.jp/index.html)

(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは、企業理念を以下のとおり定めています。
・挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。
また、企業理念を実現するために提供する価値・姿勢を、VALUEで定めています。
(VALUE)
・わたしたちは、地球環境にやさしい製品やサービスを提供し、すべての人びとにとって安心・安全な社会を誠実に実現します。
・わたしたちは、新たな価値を創造し、お客様に感動と満足を提供します。
・わたしたちは、企業価値を高め、株主の皆さまの期待に応えます。
・わたしたちは、従業員が誇りを持っていきいきと働き、果敢に挑戦できる企業文化を大切にします。
当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、グループ経営・グローバル経営の深化を図り、多様性の中での団結を進め企業価値の向上を目指しています。
また、企業の本質は人間集団であり事業は借り物との考えに基づき、「モノ」づくりの強みをベースに「コト」「サービス」の視点を高めつつ、デジタルトランスフォーメーションをとおして新たな時代や社会の要請に応える業容へと変化を継続していきます。
当社グループは、地球環境の維持やサステナブルな社会づくりをテーマに、環境・エネルギー分野に事業領域をシフトしてきました。今後とも、環境保全、省エネルギー、代替エネルギーを実現する新製品やシステム提案はもとより、環境破壊や気候変動による災害など人間社会が直面する課題に対してもソリューションを提供し、「環境・エネルギーカンパニー」グループとしてスマート社会を実現して参ります。
こうした考えのもと、主力であるモビリティ分野の拡充に加え、インフラストラクチャー&セーフティー分野、ライフ&ヘルスケア分野への製品・サービスの提供を通じて未来社会の創造に寄与していきます。
現在モビリティ分野においては、無線通信技術に電子デバイス・メカトロニクス・ケミカル技術を融合しグループ横断的に事業を拡大しています。
自動車向けには、業界をリードしている銅フリー摩擦材の開発・拡販によりグローバル市場での地位を高める一方、カーボンセパレータや白金代替触媒など燃料電池車用の部材開発を進めています。また、自動運転技術のキーとなるデバイスの供給やセンサーの開発を進め、自動車と交通インフラとの通信網構築に取り組みます。
更には、船舶自動航行や衛星通信・航空機・ドローンの管制制御に必要なレーダー、センサー、デバイスの開発を進めると共に、開発機器により収集されたデータを活用する安全運行・省エネ運行サポートビジネスにも取り組みます。また、当社グループでは新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)によってもたらされるパラダイムシフトを柔軟かつ積極的に事業成長に取り込んで参ります。
なお、当社グループでは、2025年ROE12%達成を長期目標に掲げています。
(2) 事業別の経営戦略及び経営環境並びに対処すべき課題
①無線・通信事業
無線・通信事業では、現業の成長戦略の見直しと、低収益事業の見極めと見切り、高収益事業への挑戦などの事業ポートフォリオ改革を促進することで、売上規模の拡大と収益性の向上の両面を重視した経営へのシフトを図っていきます。
・マリンシステム
マリンシステムでは、黒字化体質への転換に向けて、収益構造の抜本的な見直しにより低収益体質からの脱却を図ります。引き続き収益性の高いアフターマーケットにおけるLCMビジネスの拡大に努め、シェアの維持・拡大や、機器換装および修理工事向けの受注増を図ります。中小型船分野では、特に河川市場向け商品・販売・サービスの強化に努め、Alphatron Marine社が得意とする欧州市場への販路を活用し、シェア拡大を図ります。また、デジタル分野の新たな取り組みとして、2020年4月に発表した船舶内情報共有サービス「Smart Ship Viewer」を中心として、船陸間ネットワークによる船舶の安全運航支援サービスの拡大を目指します。
・ソリューション・特機
既存事業の需要を確実に取り込み、収益力の強化を図りながら、隣接分野への進出を通じて事業領域の拡大と、ICT(※)/IoTを活用したデジタルビジネスの推進に注力していきます。官公庁関連では、引き続き「防災・減災、国土強靭化のための5カ年加速化対策」への取り組みで収益を確保していきます。また、LTE関連やモーション等における民需を取り込み、海外においても、気象・防災、海洋ソリューション、交通ビジネスを柱に東南アジア等での事業領域の拡大を図ります。また日本無線㈱は、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」におけるドローンの社会実装に向けた新たな研究開発に関する公募で2件採択されています。今後も引き続き、2020年に着手した衝突回避システムの小型化・低消費電力化などの新たな研究開発を進めていきます。
※ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)
・ICT・メカトロニクス
ICTでは、IoT分野における機器製造・販売の形態から、市場ニーズに合わせた技術サービスを準備し、顧客との共同開発により付加価値を向上させるビジネス形態を目指します。そしてサポートパッケージの構築と、鉄道・交通インフラの通信分野領域の拡大により、デジタルビジネス創出の基盤を確立します。車載部品ではグループシナジーを追求し、NJコンポーネント㈱とのシナジー創出を通じて、差別化製品を開発し、新規顧客の開拓を通じてマーケットシェアの拡大を図ると同時に、製品開発ならびに生産における徹底的な効率化を図っていきます。メカトロニクスでは、ICTとの技術融合による生産設備の自動化・デジタルトランスフォーメーション化を通じ、産業機器への事業領域の拡大を加速します。
・医用機器
医用機器においては、マーケティングの強化と販売ルートの確立を通じて、付加価値の高い携帯型超音波事業の拡大を図ります。さらに、保有技術である無線技術を医用機器に応用するなど医用のワイヤレス化に注力し、予防・予後分野、診断・治療支援分野への新規参入を図ります。また、携帯型超音波等での診断領域でデジタルビジネスを創出することで医用機器事業の拡大・伸長を図ります。それら成長戦略分野製品の自社ブランド化や、事業体制の製造販売業への転換などを通じて、収益力の向上にもつなげていきます。
・5G/LTEへの取り組み
5Gでは、2020年12月に日本無線㈱長野事業所においてローカル5Gに向けた無線試験局免許を取得し、実証実験を開始しました。2021年は装置の開発と並行して、さまざまなアプリケーションに向けた実証実験やデモンストレーションを通じてビジネスパートナーとの協業を進め、来るべきローカル5Gビジネスにつなげていきます。プライベートLTEに関しては、2020年はガボン共和国の鉱山向けシステムの受注をはじめとして、グローバルに広くビジネスを展開しています。システムを一体化したLTE-Boxや、顧客ニーズに寄り添うアプリケーションの提供など、日本無線㈱の強みを活かしたシステムの提供で、ビジネスをより一層拡大していきます。
②マイクロデバイス事業
マイクロデバイス事業は、5G、CASE、IoT関連の需要拡大を背景に、安定した事業の拡大が見込める中、“Connect Everything”技術に磨きをかけ、超スマート社会の実現に向けて、アナログソリューションプロバイダとしてのさらなる成長・発展を目指しています。なかでも車載、産業機器、IoT向け製品を今後の成長分野として位置付け、事業強化を図り、特にEVやADASなど次世代自動車向けの新製品の開拓などを進めることで、車載向けビジネスの構成比を高め、成長率が高く、かつ半導体市況やコロナ禍などの外部要因に左右されにくい安定的な事業の確立を図っていく予定です。
・2022年1月に二社を統合
マイクロデバイス事業ではこれまで、音響向けアナログ半導体に強い新日本無線㈱と、電源に使われるアナログ半導体を得意とするリコー電子デバイス㈱の2社を中核に事業を推進してきました。
新日本無線㈱では、各種デバイスの実用化に向けた開発のほか、スマートフォンやAIスピーカー用のマイクモジュール向けMEMSセンサー、ウェアラブル端末・健康機器応用製品向け光センサーなどの次世代製品開発、さらには量産を開始したアナログフロントエンドICの高精度化に向けた開発を行っているほか、衛星通信、センサーおよび高出力電子管など幅広い分野のマイクロ波製品の開発・製造も行っています。一方、リコー電子デバイス㈱では、主力製品の電源ICにおいて、CMOSアナログ技術をコアとして小型、低消費、高効率、高精度、高信頼性の製品開発を進めています。特に今後の成長が望める車載市場向けには、次世代パワートレイン機器向けの高耐圧・大電流・高品質なICに加えて、ADAS機器向けにセンサーの精度を向上させる低ノイズ、対ノイズ性能を向上させたICの開発を進めています。
これまで生産から購買に至るまで両社間での協力体制を通じてグループ内シナジーを追求してきましたが、2022年1月をめどに両社を統合し、「日清紡マイクロデバイス株式会社」として双方のリソースを活用しながら、より収益力の高い事業へと成長させていくこととしました。引き続き、開発・営業・生産面で両社のシナジーの創出を図りつつ、統合に向けて管理等での重複領域の効率化を加速していきます。
・電子デバイス製品
電子デバイス製品では、短期・中長期の両視点での製品企画・開発に注力します。車載向けでは、ASSP/ASICなどのLSIを中心に製品開発の強化を、産業機器向けでは高機能・高付加価値製品の展開と顧客基盤の拡充を図ります。また通信機器向けでは、スマートフォン以外の車載、産業機器、IoTを中心に取り組みを強化します。
収益性のさらなる改善に向けて、生産面では外部委託コストの低減と原価管理の徹底を図ります。リコー電子デバイス㈱が外注委託していた組立生産をTHAI NJR CO., LTD.へと移管し、THAI NJR CO., LTD.での生産増強を通じて内製化するほか、外部に委託しているウエハの生産についても、リコー電子デバイス㈱のやしろ工場(兵庫県)での生産へと切り替え、SAWフィルタは、自社生産を中止します。材料面でも、半導体に使用している金線の銅ワイヤー化を推進しながらリードフレームの購入先を集約することで、材料費削減を図り、競争優位性の高い適正な製品価格を実現します。
営業面でも両社のシナジーの最大化を図ります。既存代理店の共用でクロスセルによる拡販を図ると同時に、相手先製品の自社ブランドでの販売(リブランド)を通じてソリューション提案力を強化し、顧客認知度・満足度のさらなる向上につなげます。また、確定受注生産ならびに小ロット投入により、顧客への納入に必要な製品のみの生産を行うことで、適正在庫の維持にも努めます。
・マイクロ波製品
マイクロ波製品では、レーダー用コンポーネント市場は安定的に推移する一方、衛星通信用コンポーネント市場は拡大基調にあり、情報化社会が多様化する中で今後も成長が期待されています。成長の鍵となる衛星通信用コンポーネントの需要は、「衛星通信の新興国」が多くあるアジア地区を中心に拡大し、通信の高速・大容量化に対応し、小型・低消費電力化もあわせて実現する送受信一体の高機能トランシーバなどの開発を推進しています。マイクロ波技術を使ったセンサーはこの数年で大きく成長し、一つの新事業分野を形成しつつあり、防犯などのセキュリティ、家電、車載応用、ヘルスケアに至るまで応用分野が広がっているほか、センサー周辺部品を一体化したモジュールを提供することで新たな顧客の獲得にもつながっており、2021年も引き続き新規案件獲得に向けた取り組みを継続・強化します。生産面ではTHAI NJR CO., LTD.での生産品種を拡大し、海外部材調達を増やすことで原価の低減を図ります。また品質保証体制の強化も図っていきます。
③ブレーキ事業
2021年以降も、コロナ禍は現在進行形の問題と捉え、多くの先進国では自動車生産台数の減少といったマイナス影響は続くものと見ています。その一方で、公共交通機関を避け自動車の利用が進むことで補修品市場においては追い風傾向が期待できるという見方もあります。
また、電動化や自動運転に関連した次世代車両・新たなブレーキの企画が、完成車メーカー各社において進捗しています。HV、EVなどの電動車では制動時に電気駆動システムを活用したエネルギー回収が行われ、従来の機械式ブレーキによる摩擦材の摩耗が減少し、長期的には補給部品の需要減少が想定されます。一方で、組付け品は長期間の使用に耐える耐久性や電子的に制御される回生ブレーキとの協調による安定した制動力の実現、さらに車両静粛性の高まりへの対応として、制動時のノイズ・振動抑制に優れる高品質な製品が求められています。当社においては、今後の自動車の使われ方による摩擦材への要求の変化を見据え、電子制御ブレーキと親和性の高い製品の研究開発に注力しています。製品開発での取組みとしては、これまでの多くの経験とそれを活用できるデジタル開発を推進し、より効率的に的確な提案ができる仕組みを構築しています。さらに、将来的なモビリティ社会に向け、グループ企業と連携した車両足回りのセンシングについての研究も開始しました。高品位の製品とそれを生み出す技術により、お客様から信頼されるパートナーとして当社の価値を訴求していきます。さらにDXへの取り組みとして製造工程におけるICTを活用した生産管理、設備稼働状況の見える化や設備予知・予兆保全、さらには製造や検査データのAI分析による品質管理、RPAを活用した業務の効率化の検討を加速していきます。
・環境規制への対応
米国では2021年から摩擦材における銅の含有量を制限する環境規制が施行され、2021年以降銅含有量5%以上の摩擦材製品の販売及び新車への組付けが禁止されました。さらに2025年以降は銅含有量0.5%以上へと環境規制が強化されます。このような中、日清紡ブレーキ㈱の銅レス(銅含有量5%未満)・銅フリー(同0.5%未満)摩擦材の新規受注は順調で、今後も計画通り進めていきます。また、銅規制対応の次の課題として、ブレーキから排出される摩耗微小粒子についても規制へ向けた動きが予測されるため、引き続き調査及び研究開発活動を推進していきます。
・TMDグループの再生計画
TMDグループはアフターマーケット市場で、欧州の大手ディストリビューターとの関係を構築しながら拡販を進めています。また、再生計画についてはコロナ禍の状況でも強力に実行されてきましたが、2021年はさらにその取り組みを加速させていきます。競合他社ならびにディストリビューターは合併等の業界再編が進んでおり、環境変化への即応力が求められます。新車組付け用では、ドイツのEssen工場を筆頭にグローバルに展開する全拠点での収益性の改善に引き続き取り組んでいきます。
・カイゼン活動
世界中の各拠点で展開しているカイゼン活動は、コロナ禍にあっても着実に推進しています。また、例年、当社のブレーキ事業に携わる社員同士の交流の場として、相互訪問による発表会を開催し、知見の共有やコミュニケーションの機会としていましたが、コロナ禍による移動制限を踏まえ、オンライン会議を活用しながら、こうした交流がさらに活発化できるよう、工夫を重ねています。
④精密機器事業
精密機器事業においては、自動車向け精密部品、エアコン部品や自動車ヘッドランプともに足もとの中国・アジア経済の影響を強く受けるため、コロナ禍などの厳しい環境が短期的には続くものと見ています。しかし、自動車向け製品については、将来的に需要増となる見通しであるため、各工場において生産体制の充実を図るとともに、不採算拠点・製品の見極めと見切りや、生産拠点の再編を進めていきます。
・事業/製品の見極めと見切り
南部化成㈱は、国内およびアジア(中国、フィリピン、インドネシア)に生産拠点を有しており、今後グローバルな需要の取り込みを図る上で、最適な生産拠点の再編を進めています。具体的には、インドネシア子会社PT. Nanbu Plastics Indonesiaでの事業縮小を進めています。また、日清紡メカトロニクス㈱の成形品事業は、グローバル全体での最適な生産拠点の再編を引き続き進めます。さらに、2020年の基幹システムのリプレイスを機に、原価計算システムの刷新によって、より高精度な個別原価の「見える化」が実現されており、不採算製品の原価低減活動や顧客への価格提案へとつなげ、収益力の改善を図ります。
・精密部品事業の収益力強化策
精密部品事業では、2022年以降も顧客からの需要増が見込まれるEBSバルブブロック「MK100」の生産を日清紡大陸精密機械(揚州)有限公司に移管・集約し、生産効率の向上を通じた収益力の強化を図ります。また2021年3月からは、自動車の電動化、自動運転化に向けた次世代EBSバルブブロック「MKC1」の量産を開始するほか、同製品をさらに小型・軽量化した次世代モデル「MKC2」向けの生産設備の導入を進め、2022年からの量産開始に向け取り組んでいきます。日清紡精機広島㈱では、D2(ディーゼル次世代)排気シャッターバルブ、EGRバルブの受注に伴い、2021年12月からの量産準備を進めます。また更なる自動車部品の受注を目指した新規製品の開発も継続していきます。
・成形品事業の収益力強化策
成形品事業においては、日清紡メカトロニクス㈱の国内では、2021年以降の家電向け主要顧客の国内回帰の動向を注視しながら受注の拡大を図ります。また、回転体成形技術を活用したエアコン向け新製品の開発に注力すると同時に、リサイクル材の活用や不良率改善活動を通じた製造原価の低減を図り収益力の改善にも取り組みます。Nisshinbo Mechatronics (Thailand) Ltd.では、第三工場を活用しながらクロスフローファンの受注拡大や、車載向け製品の新規受注獲得を通じた収益の拡大を図ります。日清紡精密機器(上海)有限公司では、家電向け主要顧客の樹脂部品の板金化に伴う受注減が見込まれる中、新規顧客の開拓およびEcoクロス®・Ecoブレードターボ®の売上拡大に注力します。また、南部化成㈱より生産移管した自動車ヘッドランプ用厚肉レンズの受注拡大を図ります。Nisshinbo Mechatronics India Private Limitedでは、政府の現地調達化生産を推進する施策がコロナ禍で強化される中、拡大する市場の需要を取り込むべく、必要な設備投資を行いながらシェア拡大を図ります。
さらに医療分野の拡大も期待しています。2021年度内に南部化成㈱のメディカル事業(吉田事業所)を日清紡グループの藤枝事業所内へ移転し、生産設備・能力の強化と生産効率の向上を図ります。南部化成㈱ではすでに採便容器などを生産していますが、2020年2月からはアレルギー診断キットの出荷を開始しています。感染対策を含む衛生面や予防医療に対する需要の高まりを受け、衛生用品向けやアレルギー検査向け成形品の受注獲得・拡大に引き続き注力していきます。
⑤化学品事業
・断熱製品の差別化・高付加価値化戦略
断熱製品では、既存のシステム原液および硬質ブロックの製造・販売を基盤事業と位置づけ不燃スプレーの認定取得と迅速な市場投入を通じた高付加価値化を進めるとともに、高利益商品の拡販に注力します。また2020年に日刊工業新聞社主催の第23回「オゾン層保護・地球温暖化防止大賞」の経済産業大臣賞を受賞したHFO(ハイドロフルオロオレフィン)を発泡剤としてトンネルの背面空洞に注入する裏込めウレタン注入材については、重点事業領域として今後さらに強化していきます。鉄道防振材は、軌道の保守メンテナンス作業周期の延伸を可能にする製品の受注拡大を通して、日本の安全な鉄道網に貢献していきます。中国での現地生産を開始した水処理担体は、中国での安定生産・販売体制の構築と同時に、アジア全体をターゲット市場とした展開を進めていきます。高性能・高耐久性担体を迅速に開発することで早期の市場投入を図ります。
・環境課題解決に寄与するカルボジライトの拡販
生分解性プラスチック用の耐加水分解抑制剤、さらには大気汚染等の環境汚染問題を低減する塗料、コーティング、接着剤などに使用される水性架橋剤など、環境配慮商品の普及に貢献するカルボジライトの新製品の市場投入を加速していきます。海洋生分解性プラスチックに対応する添加剤の開発も、NEDOの受託事業として新たに進めており、海洋マイクロプラスチック汚染問題の解決に寄与するより付加価値の高い提案を通じて売上の拡大に努めます。今後の需要拡大を見据え、現状設備での生産効率向上を進めながら、アライアンス・M&Aを含めた新たな生産・開発拠点の増強、事業領域の拡大を計画していきます。
・燃料電池セパレータの開発加速に向けた新組織体制
カーボンニュートラルを実現する技術として注目を集める水素・燃料電池では、FCV(燃料電池自動車)の中でも特にバス・トラック向けの開発が世界中で行われています。当社は複数の有力メーカーと開発を進めながら、旺盛なバス・トラック向けの試作品需要に応え、商業化を目指しています。また、グローバルで定置用の引き合いも増えており、より多くの採用を目指します。
2021年1月には、車載向け開発のさらなる加速を目的に、これまで新規事業開発本部内にあった研究開発部門を日清紡ケミカル㈱燃料電池事業部と統合し、車載向け量産工程の確立と、生産性・品質の向上を図っていきます。また、自動車部品工場の必要資格であるIATF16949については、2021年末までに取得することを目標とします。
・長期的な成長が見込めるガラス状カーボン製品
カーボン製品の主要用途である半導体市場では、微細化・省電力化を実現した先端半導体の製品開発が活発化しています。洗浄・成膜・露光・エッチングの各工程で、半導体製造装置メーカーおよび半導体製造業者による先端半導体の開発が行われており、カーボン製品に対しても、高純度化や複数形状の実現等の要求が高まる中、当社ではそうした要求性能の実現を目指した開発を進めています。半導体以外の分野では、ガラス状カーボン製品の長所を生かした新規用途の開拓を進めると同時に、これまで培った焼成技術を活かした製品による新規顧客の採用獲得に注力していきます。
⑥繊維事業
衣料品消費と直結した繊維事業は、コロナ禍による外出自粛やテレワークの普及といった生活様式・消費行動の変化の影響を大きく受けましたが、衣料品のオンライン販売やビジネススタイルのカジュアル化に対応したサービス・商品、ならびに天然素材を中心としたSDGsを具現化する環境商品には大きなビジネスチャンスがあります。また、世界の人口は依然増加を続けており、ことアジアにおいては経済成長も著しいことから、世界の繊維製品市場は更なる拡大が予想されます。
そうした市場環境の中、繊維事業では、「環境」「デジタル」「機能性」「グローバル」を中心に据え、超スマート社会・環境エネルギー社会に貢献する新商品の開発・上市を加速させ、環境に配慮したモノづくりとデジタルビジネスを早期に構築することで、営業キャッシュ・フローの向上を図ります。
・環境負荷を低減しながら既存事業を拡大
シャツ分野においては、ノーアイロンにより電力消費削減に貢献する「アポロコット」を中心として、さらなる機能向上を図った次世代製品で新たな市場を創造しシェアを拡大するとともに、新しい生活スタイルに合ったビジネスカジュアル商品の展開を拡げていきます。開発素材分野では、市場拡大が見込める医療マスク用モビロンテープの新販路開拓を目指すとともに、化粧品雑貨用不織布ならびにレッグウエア用スパンデックス糸においては原料のエコ化やリサイクル化を図り、環境配慮商品の開発を推し進めて新規販路の拡大を図ります。
東京シャツ㈱では、コットン100%の超形態安定シャツの販売拡大やポリエステル素材のリサイクルペット使用を推進するなど、環境負荷の低減を訴求しながら、オンライン販売へと大きく軸足を移していきます。店舗での試着や受け取りといった店頭サービスと連動したオムニチャネル戦略を推進し、オンライン販売の拡大を進めていきます。
生産拠点であるインドネシア子会社では、引き続き「グローバルコスト、グローバル品質」を追求し、生産体制の再構築を進めると同時に、石炭燃料から天然ガス燃料への代替など環境規制に対応した環境配慮型工場への転換に取り組み、SDGsに沿った新商品の開発を加速させることで、「外―外ビジネス」の拡大を図ります。
・「環境」をテーマに、新規事業を推進
新しい「環境」事業として、「シャツ再生プロジェクト」、「セルロースナノファイバー活用プロジェクト」に取り組んでいきます。「シャツ再生プロジェクト」は、日清紡ホールディングス㈱新規事業開発本部と信州大学との共同研究で、着用しなくなった綿製シャツを回収・裁断し、コットンを溶解・再生繊維化することで、新たなシャツに生まれ変わらせるプロジェクトです。2021年3月より実用化に向けた研究開発を本格化させ、2023年の試験生産を目指しています。また、次世代環境商品として進めている「セルロースナノファイバー活用プロジェクト」は、製造工程から発生する裁断くずや落綿などの廃棄物をナノファイバー化し、再凝縮してさまざまな用途に活用するプロジェクトです。現在開発中のセルロースナノファイバーをスクラブ剤に使用した石鹸は、海洋マイクロプラスチック問題の解決に貢献することを目指しています。
⑦不動産事業
2021年は、土地やオフィスビル・商業施設用建物の賃貸による安定した賃貸事業と、土地販売などの分譲事業の継続により、前期に引き続き高収益を確保する見込みです。
当社の不動産事業は、全社での経営計画達成に向けた資金創出を担う役割を継続しつつ、グループ全体の不動産の有効活用を推進しています。下記のプロジェクトを中心に、今後も継続的、安定的な収益の確保ができるものと見込んでいます。
日本無線㈱三鷹製作所跡地(東京都)の再開発は、2020年より全678戸のマンションおよび商業施設用地の販売を開始し、2021年にすべての物件を完売する予定です。
美合事業所跡地(愛知県)の再開発は、前年に引き続き全357区画の戸建ておよび商業用地、医療・福祉施設用地の販売を実施します。
新規開発案件では、西新井社宅(東京都)の再開発を進め、賃貸マンションに建て替える事業を開始しました。賃貸マンションは第1期(50戸)を2021年9月より、第2期(149戸)を2024年4月より賃貸を開始する計画です。
さらに能登川工場跡地(滋賀県)の再開発に着手し、120戸の分譲マンションおよび都市化推進施設用地の販売を2023年に計画しています。
(3)ESG、SDGsの取組み
当社グループは、企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」の具現化を通して、グループ経営、グローバル経営の深化を図り、多様性の中での団結を進め企業価値の向上を目指しています。これはSDGsの考え方と軌を一にするものです。
(日清紡ホールディングス統合報告書https://www.nisshinbo.co.jp/ir/library/annual_report.html)

当社グループの事業が社会とともに持続的に成長するために取り組むべき課題を明確にすることを目的として、マテリアリティ(重要課題)を次の通り特定しています。
〇グローバル・コンプライアンス
〇環境・エネルギー分野の貢献
〇安心・安全な社会づくり
現在、2018年度からの第4期中期CSR目標を掲げ、数値で把握可能な項目についてはKPIを用いて活動しています。
マテリアリティに基づく活動内容は以下のとおりです。なお、詳細な活動内容および目標の達成状況につきましては、当社グループの統合報告書およびホームページにて積極的な開示に努めています。
(日清紡ホールディングスHP https://www.nisshinbo.co.jp/index.html)
