有価証券報告書-第165期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/27 11:17
【資料】
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【項目】
107項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は、1879年の新聞創刊以来、戦争と平和の歴史を経て、民主主義の発展とともに歩んできた。2016年に打ち出した新しい企業理念「ともに考え、ともにつくる~みなさまの豊かな暮らしに役立つ総合メディア企業へ」の根本には、1952年に制定した朝日新聞綱領がある。言論の自由を貫き、国民の幸福に貢献する。綱領に掲げた私たちの決意は、いつの時代も変わらない。この精神のもとで、情報やサービスの質を高める中から収益機会を見いだし、独立した報道機関としての責務を果たしていく。
(2) 目標とする経営指標、中長期的な会社の経営戦略
社会から必要とされるジャーナリズムの担い手であり続けるには、主力商品である新聞の販売、広告収入の維持を中心とした既存事業の足場固めと、新聞以外の事業や新規事業を新しい収益の柱に育てる成長事業の創出、その両輪が欠かせない。こうした考えのもと、16年度から20年度までの5年間を対象とする提出会社の「中期経営計画2020」を16年3月に策定し、経営目標として以下を掲げた。
① 新聞業に関わる事業、不動産事業、新領域事業をあわせて20年度に売上高3,000億円規模、営業利益100億円超
② 5年間の計画期間中、経常利益、当期純利益などすべての利益指標で黒字確保
中期経営計画2020では、16~18年度の当初3年間を既存事業の足場を固める経営基盤強化期、20年度までを再成長への道筋を確かなものにする新事業成長期と位置づけ、年度ごとに計画の進捗状況を点検し、必要な修正を加えている。新聞を取り巻くメディア環境の急激な変化に直面し当初売上目標の達成が厳しさを増す中にあって、より実現可能性の高い数値計画を策定し、各種施策に取り組んでいる。
(3) 会社の対処すべき課題
新聞業界では、デジタルメディアの普及による若年層を中心とした新聞離れで、販売部数や広告収入の減少傾向が続いている。当社では2014年の一連の記事問題を踏まえ、全社を挙げて信頼回復に努めた結果、その影響は徐々に収まりつつあるが、健全なジャーナリズムを持続させるために必要な利益目標を達成するためには、引き続き従来の発想を超える構造改革に取り組む必要がある。
その一環として、メディア環境が激変する中で再成長するための体制づくりを進める。18年4月に編集部門では報道局と編成局を「編集局」に統合した。これらを通じて紙とデジタルが融合した「統合編集局」構想の実現を目指す。同時に、メディアビジネス部門では「ソリューション・デザイン部」を新設し、急速にデジタルシフトの進む広告クライアントとのビジネス創出拡大を図っている。18年6月には、従来のデジタル本部を「デジタル・イノベーション本部」に改組し、朝日新聞デジタルの増強とともに、営業、アライアンス、メディア開発の一層の強化に取り組む。
成長事業の創出を一層加速することも課題である。M&Aなどを検討する戦略チームや、新規事業の創出を目指すメディアラボだけでなく、各部門においても新たな収益源開拓に取り組んでいく。
徹底したコスト管理も継続する。人事・給与制度改革を通じた総額人件費抑制に取り組むとともに、人材への積極投資を進める。17年10月には65歳定年制を導入し、シニア層の活躍の場を広げた。「働き方改革」にも継続して取り組んでおり、18年4月に発足した働き方改革実行委員会で議論を活発化させ、効率的な働き方、多様な働き方を実現することで、長時間労働を是正し、生き生きと安心して働き続けられる会社を目指す。