有価証券報告書-第163期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 11:02
【資料】
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【項目】
111項目

対処すべき課題

当社は2014年8月以降の一連の問題を踏まえ、15年1月に発表した「信頼回復と再生のための行動計画」に沿って、全社を挙げて信頼回復に向けた取り組みを進めてきた。一連の問題による影響は、沈静化しつつあるものの、長期的な新聞離れやメディアの多様化などで、新聞の販売部数や広告収入の減少傾向が続いている。
主力商品である新聞の販売収入と広告収入を維持していくとともに、新聞以外の既存事業や新規事業をもう一つの収益の柱に育てていく必要がある。当社は16年度から20年度までの「中期経営計画2020」を策定し、16年1月に発表した。2020年のめざすべき姿を描き、実現に必要な戦略と行動計画をまとめた。既存事業の足場固めと成長事業の創出が柱となっている。
聖域なき支出削減も進める。人事・給与制度改革を通じて総額人件費の抑制に取り組む一方、人材への積極投資は重点戦略に据える。65歳定年制、シニア活用の充実も図る。
成長分野の創出では、新たな収益源の確立を目指す。不動産に次ぐもう一つの収益源をつくるため、メディア、教育、シニアなど本社と親和性のある領域で新事業を開拓していく。本社にない分野は、M&Aや他社との提携を模索していく。そのために、社長直属のM&A専従チームを16年2月につくり、メディアラボとも連携して新領域の開拓にあたっていく。
(1) 新聞出版の事業
紙面を含めた商品面では、顧客層やユーザー層の可視化を図り、若者、アクティブシニア、女性などターゲットを絞った新商品やサービスを展開していく。特に18歳選挙権が始まる16年夏の参院選に向けて、夕刊やデジタルなどで、若者向けの紙面・コンテンツを展開していく。また、16年4月に㈱朝日マリオン21が㈱朝日メディアプロダクションに商号を改め、当社は同社に特集面やフィーチャー面などの紙面編集のほか、校閲、写真、デザイン業務の一部の委託を開始、新しい編集部門のあり方を探っていく。
販売では、一連の問題から1年余りが経過し、新規購読契約数やウェブによる購読申し込み、試読申し込みが増加傾向に転じるなど、回復の兆しが見え始めた。販売店を取り巻く環境が厳しくなる中、業界全体で販売網の再編が一層進むことが予想される。経営規模の適正化や複合化、他業種との提携による新たな収入源の確保など、販売店ASAの経営基盤強化を通じて、当社の販売網強化を図っていく。
広告は、朝日新聞デジタルとの共同セールスや、㈱テレビ朝日、㈱ビーエス朝日、㈱朝日新聞出版、㈱朝日学生新聞社などとクロスメディア営業、コンテンツ保有者との連携など、朝日新聞グループの総合的な媒体力を生かした営業活動を推進している。広告主や広告会社とともに様々な社会課題の解決につながる広告活動をめざして、環境、健康、教育、復興などをテーマにした企画・催事にも取り組んでいる。広告主のニーズを元に「ソリューションビジネス」を強化するため、16年5月に広告局をメディアビジネス局に改称。総合プロデュース室を新設して、新商品開発と統合営業を進めていく。
デジタルビジネスでは、電子新聞「朝日新聞デジタル」の16年3月末の有料会員数は27万5千人に達し、無料会員を含めた総会員数は249万人を超えた。デジタルコースの新規獲得・継続のため15年10月、他社が提供するプレミアムコンテンツを利用できる「提携プレミアムサービス」を設けた。コンテンツではデジタル編集部、国際発信部と東京本社報道局デザイン部が連携し、日英二カ国語で展開した「築地 時代の台所」が、世界の優れたデジタル報道デザインを表彰するベスト・オブ・デジタル・デザインで、15年のシルバー・メダル(銀賞)に選ばれた。15年11月には、中華圏からの訪日客向けショッピング・レジャー情報サイト「日本購物攻略」を開設、新たなターゲット層、新しい収入源の開拓に着手している。
(2) 賃貸事業
大阪・中之島再開発プロジェクトでは、12年11月に完成した東地区の中之島フェスティバルタワーに続き、西隣ではもう一つの高層ビル「中之島フェスティバルタワー・ウエスト」の建設が進む。当社創業者・村山龍平のコレクションを擁する香雪美術館(神戸市)が分館として「中之島・香雪美術館(仮称)」を設置するほか、最上層部にはラグジュアリーホテル「コンラッド大阪」が入る計画で、17年春の竣工をめざす。中高層部のオフィスも共同事業者の㈱竹中工務店や㈱朝日ビルディングとともに誘致を進めていく。東京・銀座で建て替えを進める「東京銀座朝日ビルディング」は、16年2月に起工した。17年秋に竣工予定で、3階以上には高級ホテルブランド「ハイアット・セントリック」が入る。
(3) その他の事業
電波事業
系列テレビ局との間で、高校野球を核にした協業が進んだ。朝日放送㈱との統合サイト「バーチャル高校野球」では、テキストデータや静止画のほか、全国大会は朝日放送㈱から、地方大会決勝は系列21局を含む26局から、それぞれ中継映像の提供を受け、インターネットでライブ配信した。戦略的パートナーシップを結ぶ㈱テレビ朝日ホールディングスとは、報道や広告営業などの分野で協力を進めた。16年2月の朝日杯将棋オープン戦では、昨年に引き続き準決勝、決勝の公開対局をCS放送「テレ朝チャンネル2」で生放送するなど、コンテンツを生かした連携を強めた。今後もコンテンツを核に、系列局との提携・連携を強めていく。