有価証券報告書-第18期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/20 11:25
【資料】
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【項目】
129項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げております。「私たちは、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」このような思いを企業活動の基本方針とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。
(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境としましては、現時点で新型コロナウイルス感染症が収束する見通しは立っていない状況ではありますが、当期は米国や欧州を中心に経済回復の傾向が見られ、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量も前期を上回りました。事業を展開する各地において、セパレートガスの安定供給体制を維持しております。
景気回復に伴い需要が堅調に回復した一方で、国家間の武力紛争や政治経済摩擦などによる地政学リスクに起因した資源価格の上昇、サプライチェーンの混乱が世界経済回復の足かせとなっており、今後はより機動的に適切な対策を実施していく必要があります。また、コロナ禍収束後の行動様式の変化、産業界全体での気候変動リスクに対応した脱炭素化への取り組み、デジタル化のさらなる進展なども想定され、長期的視点に立った新たな事業機会の取り込みやガバナンス体制整備にも対処していく必要があります。
以上のような環境認識のもと、当社では2023年3月期から2026年3月期までの4ヵ年を対象期間とする新中期経営計画「NS Vision 2026 – Enabling the Future」を策定いたしました。NS Vision 2026は、2020年10月の純粋持株会社体制移行後、はじめての中期経営計画となります。NS Vision 2026では財務KPI目標のみならず、非財務KPI目標も新たに定め、以下5点を重点戦略として設定いたしました。
① サステナビリティ経営の推進:環境分野では、当社グループの事業活動で排出される温室効果ガス削減に努めるほか、顧客への環境貢献製商品、サービス拡充に注力いたします。また、保安安全の確保、製品・サービスの信頼性向上に加え、社会から信頼される企業であり続けるための人権尊重の取り組みや人材の多様性確保、コンプライアンス推進活動の充実と浸透に努めます。
② 脱炭素化社会に向けた新事業の探求:環境貢献製商品やソリューション提供により、顧客業界の温室効果ガス排出削減に貢献いたします。そのために必要な技術開発の取り組みに加え、戦略的パートナーとの連携強化を進めます。また、当社グループの取り組みに関する対外発信及びグループ内コミュニケーションの強化にも努めます。
③ エレクトロニクス事業の拡大:今後も大きな成長が期待されるセミコンダクター顧客からの信頼に応える品質保証、新製品及びソリューションを提供するとともに、既に保有しているグループ資源の更なる活用や強化を進めます。
④ オペレーショナル・エクセレンスの追求:各事業会社が保有する生産性向上ノウハウの相互共有を図り、グループ展開を進めることで、オペレーション全体の効率化や最適化を進めます。
⑤ 新しい価値創出へとつながるDX戦略:デジタルデータの連携・分析・活用で事業モデルを高度化し、顧客満足度、生産性、従業員満足度を向上する新しい事業価値や顧客体験の創出を各事業会社で推進いたします。また、これらの取り組みを支えるグローバルITセキュリティ体制の強化を持株会社として進めます。
4極の産業ガス事業では上記5つの重点戦略に共通して取り組む一方、地域固有の経営課題にも取り組みます。
・日本ガス事業:エレクトロニクス向け新規商品・サービスを強化するとともに、ソリューションビジネスを拡大いたします。
・米国ガス事業:生産拠点の整備やオンサイト事業拡大、ディストリビューターのM&Aによる事業密度向上を目指します。
・欧州ガス事業:食品、医療などのレジリエンス市場への注力、顧客ニーズに沿ったガスアプリケーション技術獲得のための投資、事業エリア拡大を進めます。
・アジア・オセアニアガス事業:大型オンサイト案件の獲得や空気分離装置の能力増強、HyCO(※)案件の獲得、新商材や事業エリアの拡大に注力します。また、東南アジア+インド事業、東アジアエレクトロニクス事業、東アジア産業ガス事業、オセアニア事業の4サブセグメント制による機動的な事業運営体制への移行を進めます。
(※)天然ガス等から水蒸気改質装置(SMR)で分離される水素(H2)と一酸化炭素(CO)を石油精製・石油化学
産業にパイプラインを通じて大規模供給する事業
また、当社グループ唯一のB to Cビジネスであるサーモス事業では、新商品、キッチン商材の強化、直営店拡大と電子商取引の拡大、海外市場でのプレゼンス拡大に取り組みます。
財務目標
実績
(2022年3月期)
NS Vision 2026最終年度目標
(2026年3月期)
売上収益9,571億円9,750~10,000億円
コア営業利益1,027億円1,250~1,350億円
EBITDAマージン(注1)20.4%≧24%
調整後ネットD/Eレシオ(注2)0.94 倍≦0.7 倍
ROCE after Tax(注3)4.8%≧6%

(注)1.EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)
コア営業利益に減価償却費及び償却費を加えて算出される利益です。国・地域により、金利水準、税率、減価償却費などに差異がありますが、この指標ではその差異を最小限に抑え、利益額を表示します。
2.調整後ネットD/Eレシオ
財務の安全性を示す指標であり、(純有利子負債-資本性負債)/(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)で算出する比率です。
資本性負債とは、格付機関により、ハイブリッドファイナンスで調達した金額(2,500億円)の50%を「資本」として認められている部分の当社内呼称です。
3.ROCE after Tax (Return on Capital Employed after Tax:使用資本税引き後利益率)
[NOPAT: 税引き後コア営業利益(+受取配当金)]((コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)×(1-実効税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金)/[使用資本](有利子負債+親会社の所有者に帰属する持分)で算出する収益性指標です。
非財務目標
NS Vision 2026最終年度目標
(2026年3月期)
ご参考:長期目標
(2031年3月期)
GHG総排出量削減(注4)18%32%
GHG排出量に関する考え方当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量-
休業度数率(連結)(注5)≦1.6-
女性従業員比率≧22%25%
女性管理職比率≧18%22%
コンプライアンス研修受講率100%-

(注)4.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定しま
す。
5.休業度数率
労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。
当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げており、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現に貢献することを目標にしています。その実現の第一歩として、上記に掲げた課題に取り組んでまいります。