有価証券報告書-第130期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 13:56
【資料】
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【項目】
134項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、下記各項のものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、「第2 事業の状況」の他の項目、「第5 経理の状況」の各注記、その他においても個々に記載しておりますので、併せてご参照ください。
なお、当社グループは、これらのリスクの発生頻度や影響度の低減を図るため、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりの企業統治体制を整え、内部統制システムを整備・運用しております。さらに、グループの各社・各部門が自部門における事業上のリスクの把握・評価を行ったうえで、グループとしてのリスクマネジメントの基本方針を定め、事業を取り巻く様々なリスクに対し的確な管理・実践を行うこととしております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①製品の品質について
当社グループの製品は、自動車・航空機・医療機器・電子材料等の直接間接に人命に関わる用途にも利用されております。そのため、大規模な製品事故が発生した場合、顧客に損害を与えたり、社会に悪影響を及ぼしたりする結果損害賠償やリコール等で多額の費用負担が発生するばかりでなく、当社グループに対する信用失墜により、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、科学技術の進歩や顧客市場や使用方法の変化により、上市後に顧客等から求められる品質管理水準が高くなり、予期せぬ品質問題が生じることもあります。
当社グループは国際的な品質管理基準(ISO-9001,IATF-16949, AS9100他)に準拠した品質マニュアルに従い、各種製品の設計管理から製造・販売までの一貫した品質管理体制をとっております。
当社グループでは、有資格者による内部監査や外部監査による現地品質監査により品質管理状態の検証を定期的に行うとともに、FMEA、FTAという手法を用いた潜在的品質リスクの洗い出しとその低減対応を行うなどの改善活動を行っております。変更管理、初動管理には特に注意を払った活動を行っております。 直近では、国内主要拠点においてAI・IoT技術を駆使し人的変動要素の排除とトレーサビリティーの強化拡大を図っており、順次海外を含む各拠点に展開しております。
また、当社グループでは国内外の全事業所で発生した品質問題について直ちに共有し、一元管理するシステムを構築しており、品質問題の初動対応と被害拡大防止、発生と流出防止の対策を図っております。
すべての製品に完全に不良や欠陥が無いこと、および将来にわたって全く品質クレームやリコールが発生しないことまでは保証できませんが、これらの取り組みにより、引き続き安心してお使いいただける製品提供に努力し続けております。



②災害・事故について
当社グループでは、想定される災害・事故等のうち「地震」「爆発・火災・漏洩」「風水害」「パンデミック」を 重大事態と位置付けております。特に近年、気候変動による大型の「風水害」や、新型コロナウイルス感染症に代表される世界規模の「パンデミック」が現実の事態となっており、当社グループのみならずサプライチェーン全体への影響を考える必要があります。
これらの事態が発生した場合は、近隣住民・従業員の人的被害、施設設備の被害や電気・ガス・水道・通信機能の 停止により、製品の供給を継続できない状況が発生する恐れがあります。また、得意先・仕入先・物流の機能停止によるサプライチェーン分断により、経済活動の継続性が確保できない可能性があります。これらの結果、多額の損害賠償の請求を受けるなど、経営成績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、こうした事態発生時の事業の継続性を確保するため「事業継続計画(BCP)」を従来から作成し、必要に応じて関係先と共有しております。東日本大震災の際には、宇都宮事業所の建屋や設備の一部に損壊がありましたが、このBCPに従った行動で当社グループにおける被害を最小限に抑えることができました。
なお、当社グループでは、科学技術の進歩や気候変動の影響により、重大事態と位置付けた災害・事故等の発生頻度や影響の大きさ・範囲は、毎年変化するものであると認識しております。減災対応や持続性確保として、これまでも適正在庫の確保、国内外事業所での生産体制の二重化、予備品の増強や復旧体制の制度化といった対策を行ってきましたが、最新の情報を踏まえてこれらの対策の妥当性を毎年検証し、今後もBCPの見直しおよび訓練を実施してまいります。
さらに、取引先各社の協力を得てサプライチェーンの上流のBCP確認と追加対応策についても取り組みを始めております。
また、上記災害のうち、当社要因で引き起こされる可能性のある「爆発・火災・漏洩」については、国内外の事業所で発生したヒヤリハット情報も取り入れ、2018年設置のコーポレート・セイフティー・センターにて科学的解明と対策立案を行い、それらを当社グループ全体に展開しております。AI技術を取り入れた予兆管理システムにも取り組んでおり、適用範囲を順次拡大していく予定です。
③原材料の供給問題・価格変動について
機能性化学品メーカーである当社グループでは、主要原料の多くが石油由来のものであります。そのため、地政学的リスクや需給バランスの変動により石油・ナフサ価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。銀・銅といった金属材料も原材料として使用しており、同様に経済情勢などからこれらの価格が高騰した場合、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外企業より調達している原材料については、原産国の情勢や気候変動、法令の改正、環境規制の強化に起因する供給の停止や一時制限、価格の高騰、さらには原材料メーカーの突然の事業撤退が起こる可能性があり、そのような場合には、売上減少や収益性の悪化、事業の継続に支障が生じる可能性があります。
当社グループでは安定調達を第一に考え、調達先の複数化、安全在庫の確保などによりリスクの低減に努めております。また、植物や鉱物などの天産物由来の原料については、地域が変わることによって生じる組成や成分の違いをコントロールする技術開発にも継続して取り組んでおります。さらに、新規原材料の採用にあたっては、将来的に規制対象になる物質を含まないことを採用の基準の一つとし、リスク低減を図っております。
主要原材料の価格変動については顧客と協議の上、フォーミュラー制(原料変動分を価格に自動反映)を適用することも進めております。

④環境負荷低減対策について
当社グループは、以前より、レスポンシブル・ケア活動に基づき、健康や環境問題について化学物質管理や環境負荷低減対策等に積極的に取り組んでまいりました。しかし、パリ協定におけるCO2排出削減の合意以降、地球規模での対応が必要な気候変動問題に対し更なる対策が求められており、これらの対策が遅れている企業は市場から淘汰されていくリスクがあると認識しています。
特に、2050年に向けたカーボンニュートラルの達成は、有機化学産業に属する当社グループにとっての重要課題と認識しています。 当社グループでは、単に使用エネルギー改善にとどまらず、使用する原料や製品の廃棄について、資源循環の観点からケミカルリサイクル、マテリアルリサイクル技術の確立が不可欠と認識しており、早期の戦略立案とその実行に努めていきます。
当社グループが現在実行している、使用エネルギーを削減した上での再生エネルギー・グリーンエネルギーへの置き換え、LCA(ライフサイクルアセスメント)活動、SDGs貢献製品開発活動、化学物質管理活動については、経営トップを長とする横串組織において活動を促進しています。 これらの活動の状況と結果は統合報告書やCDP(カーボンディスクロージャープログラム)他を通じ継続的かつ積極的に外部発信していきます。
環境負荷低減に必要なイノベーション技術の開発については、社内開発はもとより、産学官連携プログラムや産業界プロジェクトに積極参画し、遅滞ない開発を目指していきます。
⑤法令および規制への対応について
当社グループはグローバルに事業活動を展開しており、日本および諸外国において、様々な分野にわたる広範な法令および規制に服しております。このうち、機能性化学品メーカーである当社グループの事業内容に密接に関わる規制としては、化学物質管理規制、廃棄物・二酸化炭素・排水・粉塵の排出に係る規制などがあります。
当社グループが現在または将来の法令および規制を遵守できなかった場合には、刑事罰・課徴金・民事訴訟による多額の損失発生、信用失墜などにより経営成績等への悪影響を及ぼす可能性があります。
法令や規制の違反の発生防止、これによる財政状態および経営成績への悪影響を極小化するため、当社グループでは化学物質管理システムの運用・改善、各種社内規則・社内手続の整備と改善、各種コンプライアンス教育・内部監査を実施し、法令および規制への適切な対応に努めております。
⑥情報セキュリティインシデントについて
近年、サイバー攻撃は巧妙化、高度化しており、不正アクセスやサイバー攻撃を受け、企業が保有する情報が流出する事件が多発しています。当社グループがサイバー攻撃を受け、重要なシステムの誤作動や停止、保有する機密情報の流出が発生した場合、社会的信用の失墜、事業活動の混乱や停滞、取引先等への補償などの費用発生により、当社グループにおける経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報セキュリティインシデントを予防するため、情報セキュリティ対策製品の導入やサイバー攻撃の監視を行っております。また、役員、従業員を対象とした情報セキュリティ教育やサイバー攻撃訓練を実施し、情報セキュリティ意識向上に取り組んでおります。
その他、日本シーサート協議会やサイバー情報共有イニシアティブ(J-CSIP)等、サイバー攻撃に関する情報共有や対応強化を行う団体に参加し積極的な情報入手を図っているほか、情報セキュリティインシデント発生に備えた組織横断的機関である「SUMIBE-CSIRT」を設置し、有事の際には経営層を含めた対応や、外部セキュリティ関係機関との連携を行う体制を整備しております。