有価証券報告書-第130期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 13:56
【資料】
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【項目】
134項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、プラスチックのより高度な機能を創出し、顧客価値の創造を通じて、機能性化学品分野での持続的成長を続けるグローバル・エクセレント・カンパニーを目指します。
(2) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、国際情勢や社会環境は大きく変化しました。また、環境問題への意識の高まり、デジタルシフトの加速、生活様式・価値観の変化、サプライチェーンの変化など、社会の課題も変わってきています。当社グループは、このような大きな社会の変化や不確実な状況にも適応できるようこれまで以上に経営基盤を強化するとともに、社会課題の変化を成長機会に結びつけることで、将来につながるサステナブルな経営を推進することとし、新たに2021年度を初年度とする3ヶ年の中期経営計画の策定を進めております。その概要は、次のとおりであります。

新中期経営計画の下で、変化する社会のニーズや課題の解決に貢献できる価値を創造していくべく、次のとおり、SDGsへの取り組みやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も課題として掲げております。
(SDGs取り組みの推進)
当社グループは、社会的問題を解決し、持続的な成長と価値創造を実現していくためには、経済的価値のみなら ず社会的価値向上への取り組みが不可欠と考えています。すべての事業活動において、当社の社是である「我が社は、信用を重んじ確実を旨とし、事業を通じて社会の進運及び民生の向上に貢献することを期する。」の理念に基づいて「開発・モノづくり」を行い、持続可能な社会の実現に寄与できるよう取り組んでいます。2015年9月の国連サミットで採択された世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)は、究極の潜在ニーズであり、その具現化に向けた研究開発を推進することは、当社の社是の理念に通じるものであると考えています。
これまで当社グループでは、当社グループの事業分野や強みを踏まえて、SDGsの分野目標のうち「健康と福祉」「エネルギー」「働きがい・経済成長」「産業と技術革新」「つくる責任・つかう責任」の5つのほか、プラスチックメーカーの使命として海洋プラスチックごみ問題の解決などに取り組むべく「海の豊かさを守ろう」を加えた5+1を重点領域と定めていましたが、国際的なカーボンニュートラルへの動きなどを踏まえて、新たに「気候変動」を追加し、6+1を重点領域と設定いたしました。
「気候変動」に対する取り組みとして、2021年2月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明いたしました。当社グループは、化学産業の一員として、これまで以上に「気候変動」への取り組みを強化し、その積極的な姿勢を内外に示していくことが重要であると認識しており、社内チームを結成し、対応を進めているところであります。また、CO2削減に向けて、2050年を最終年とする「2050年環境ビジョン(CO2削減)」を策定いたしました。従来も2030年度を最終年とする中長期計画の下で活動を進めてまいりましたが、昨今の深刻化する環境問題を踏まえ、より長期的な視点で活動を推進することが必要であると考えております。
また、当社グループでは、前述のSDGs重点領域をもとに、これに寄与する製品をSDGs貢献製品と定め、その売上収益比率を2020年度の37%から、新中期経営計画の最終年度である2023年度には50%以上、そして2030年度には70%以上とする目標を掲げて取り組みを進めております。
(DXの推進)
当社グループでは、AI・IoTやオートパイロットを活用した生産活動を日本国内のみならずグローバルに展開するなど、すでにDXを踏まえた取り組みを全社的に進めておりますが、今後は営業活動などへの展開も図るほか、DXの推進のための社内の人財育成や風土の醸成にも取り組みます。DXを通じてビジネスモデルの変革を起こすことで、新たな顧客の価値を創出し、これに即した競争力ある製品やサービスを提供してまいります。
事業分野ごとの重点施策は、次のとおりです。
(半導体関連材料)
5G通信やDXの拡大などを背景とした先端材料・高機能材料の事業強化・積極展開、半導体の需要増大に対応し たグローバルでのタイムリーな生産増強など、成長領域へのリソース投入。
自動車の電動化の進展に向けて、モビリティ分野向け封止材料の欧州での現地生産による顧客獲得および戦略製品のソリューション提案による実績化の加速。
(高機能プラスチック)
既存製品のグローバルでの体制・連携の強化によるシェア拡大、自動車の電動化やサーマルマネジメントなど市場の変化を先取りした製品投入の加速および航空機などの停滞市場向け事業の構造改革を通じた製品ポートフォリオの見直しによる成長市場への注力。
(クオリティオブライフ関連製品)
・ヘルスケア事業
川澄化学工業株式会社との医療機器事業の統合によるグループシナジーの早期発現・プレゼンスの向上、低侵襲治療分野における品揃えの拡充および研究開発の強化・加速。
S-バイオ事業部、バイオ・サイエンス研究所およびSBバイオサイエンス株式会社の一体運営を通じたバイオ事業の拡大。
*低侵襲治療とは、内視鏡やカテーテルなどを用いた、苦痛の少ない、身体にやさしい手術により、患者の負担を
軽減する治療法です。
・フィルム・シート事業
食品包装用スキンパック市場の創造、医薬品・食品包装用途向けの環境対応製品の市場投入・ラインナップ拡充、産業用フィルムの中国市場での拡販などによる事業規模・事業領域の拡大。
・産業機能性材料事業および防水関連事業
光学制御製品のアイウエア・モビリティ向けへの展開など、差別化技術を生かした高付加価値製品の実績化の促進。防水機能一体型の屋根材である「スミルーフDN®」の拡販などによる大面積案件の獲得。