有価証券報告書-第19期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/24 13:57
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度の世界経済は、米国での堅調な個人消費や住宅市場を背景とした景気回復の動きや、英国やドイツを中心としたヨーロッパでの緩やかな景気回復の動きが継続しましたが、一方で、中国や新興国では、景気減速の動きが鮮明なものとなりました。
日本経済におきましては、企業収益や雇用環境の改善などを受け、景気は、力強さは感じられないものの、緩やかな回復の動きを見せました。
化学工業界におきましては、原油安や円安の影響を受け、国内のナフサクラッカーの稼働率が高水準で推移した他、非石化製品においても、ヘルスケア材料、機能性樹脂、農薬などの製品が円安の影響を受け好調な動きを見せる等、全般的には改善傾向となりました。
このような情勢のもとで、当社グループは平成26年度を初年度とする中期経営計画の下、成長のターゲット領域と定めた「モビリティ」、「ヘルスケア」、「フード&パッケージング」の3領域の集中的な拡大を図るとともに、「基盤素材」領域における事業再構築を推進してまいりました。折り返し時期にあたる当連結会計年度においては、次のとおり取り組みました。
モビリティ領域では、従来よりコア事業として注力しているPPコンパウンドやエラストマー等を中心とする機能樹脂製品が、特に北中米の自動車生産・販売の増加に伴う需要の拡大を受け、これまで実施してきた成長投資の順調な回収に貢献しました。また、新規事業の創出に関しましても、強度と軽量化の両立を可能とする金属・樹脂一体化技術(ポリメタック®)の一部実用化等、事業化に向けた動きを加速させました。
ヘルスケア領域においても、従来よりコア事業として注力しているメガネレンズ用材料、不織布等は、海外需要の拡大を受け順調に推移しました。特に不織布については、プレミアム紙おむつへの需要・輸出の拡大が著しく、それに対応するため設備増強を実施することとしました。一方で、歯科材料においては、最大市場である北米市場での低迷等の影響を受け、買収当初の利益計画が遅れ、のれんの減損損失を計上しました。ただしこれに対しては、北米での営業体制強化等、事業推進体制の再構築を既に進めており、歯科材料の持続的な成長に向けて取り組んでおります。また、事業領域を拡大し、患者/消費者向けのヘルスケア製品事業を展開するため北米で立ち上げた新たなヘルスケアブランド「Whole You™」は、事業化を進めていた新製品の販売を開始しました。
フード&パッケージング領域においては、農薬に関して、ブラジルのIharabras社への増資、タイのSotus社株式の追加取得を行い、海外拠点を強化するとともに、新規殺菌剤を上市いたしました。また、新事業の創出に向けてフード&パッケージング室を設置し、グループ横断的なシナジーを発揮できる体制を整え、従来とは異なる発想・視点での新事業の探索、ビジネスモデルの構築を図りました。
石化・基礎化学品を中心とする基盤素材領域においては、国内最適生産体制の確立、安定的なフル稼働の継続等、事業再構築の効果が着実に発現してまいりました。
これにより、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。
売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度(億円)13,439709632230
前連結会計年度(億円)15,501420444173
増減率(%)△13.368.742.333.0

セグメント別の業績は、次のとおりであります。
なお、当社は、平成26年度中期経営計画における事業戦略、新事業・新製品創出戦略及び事業支援戦略の加速
を図るため、平成27年4月1日付で一部事業セグメントを見直しました。これに伴い当連結会計年度よりセグメ
ントを一部変更しておりますので、前年同期比較にあたっては、前連結会計年度分を変更後のセグメントに組み
替えて行っております。
(ヘルスケア)
ヘルスケアセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ131億円増の1,513億円、売上高全体に占める割合は11%となりました。また、営業利益は、固定費増加等があったものの増販効果により、前連結会計年度に比べ16億円増の107億円となりました。以上により、セグメント全体では、増収・増益となりました。
ヘルスケア材料のメガネレンズ用材料、不織布は、海外の需要拡大等を受けて販売を拡大し、好調に推移しました。
歯科材料は決算期変更による15ヶ月間の損益取込みの影響により、のれん償却費等の固定費が増加しております。
(機能樹脂)
機能樹脂セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ70億円減の1,675億円、売上高全体に占める割合は12%となりました。一方、営業利益は、円安効果及び需要拡大への的確な対応等により、前連結会計年度に比べ75億円増の262億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。
自動車部品及び樹脂改質材用途を中心とするエラストマーは、円安効果及びグローバルな需要に的確に対応し、収益を拡大しました。
機能性コンパウンド製品は、円安効果及び北米・アジアを中心とする自動車用途の堅調な需要に的確に対応し、収益を拡大しました。
また、機能性ポリマーについても、円安効果及び電子情報関連用途の需要拡大に的確に対応し、収益を拡大しました。
(ウレタン)
ウレタンセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ426億円減の1,122億円、売上高全体に占める割合は8%となりました。また、営業損失は、ポリウレタン材料の海外市況下落の影響により、前連結会計年度に比べ50億円増の85億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・減益となりました。
コーティング材料は、海外での需要拡大及び交易条件の改善等により収益を拡大しております。
一方、ポリウレタン材料は、平成27年7月に設立された三井化学SKCポリウレタン㈱に事業を移管しましたが、海外市況の低迷による同社向け製造受託事業の収益悪化により、厳しい状況が続いております。
(基礎化学品)
基礎化学品セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ796億円減の2,512億円、売上高全体に占める割合は19%となりました。一方、営業損失は、当社が進めてきた事業再構築の効果が発現したことを受け、前連結会計年度に比べ42億円改善の37億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・営業損失の改善となりました。
フェノールは、前連結会計年度に比べ市況は改善しているものの、同業他社の新設立ち上げ及び中国経済鈍化の影響等により、依然として市況水準は低く、厳しい状況が続いております。
高純度テレフタル酸は、中国市況の低迷を背景に、厳しい状況が続いております。
(石化)
石化セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ931億円減の4,913億円、売上高全体に占める割合は37%となりました。一方、営業利益は、堅調な国内需要、為替の影響により、前連結会計年度に比べ177億円増の393億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。
ナフサクラッカーの稼働率が前連結会計年度を上回りました。また、北中米の自動車生産台数の増加等により、海外PPコンパウンド事業の収益は順調に推移しました。
(フード&パッケージング)
フード&パッケージングセグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ27億円増の1,319億円、売上高全体に占める割合は10%となりました。また、営業利益は、販売の拡大や交易条件改善等により、前連結会計年度に比べ48億円増の139億円となりました。以上により、セグメント全体では、増収・増益となりました。
機能性フィルム・シートは、包装材料分野における堅調な販売、スマートフォン等を始めとした高付加価値分野における需要の拡大、新製品の拡販及び円安効果等により、収益を拡大しております。
農薬は、国内においてはほぼ前連結会計年度並みでした。また、海外においては、増販及び円安効果等により、収益が拡大しました。
(その他)
当セグメントの売上高は、前連結会計年度に比べ3億円増の385億円、売上高全体に占める割合は3%となりました。一方、営業損益は、前連結会計年度に比べ10億円悪化の1億円の損失となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、276億円増加し、当連結会計年度末には782億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ876億円増の1,459億円となりました。これは主に、運転資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によって使用された資金は、前連結会計年度に比べ14億円増の364億円となりました。これは、ポリウレタン材料事業の譲渡に関する収入があったものの、設備投資による支出の増加があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって使用された資金は、前連結会計年度に比べ324億円増の790億円となりました。これは主に、有利子負債の返済を行ったことなどによるものです。