有価証券報告書-第129期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 12:05
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文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社、連結子会社及び持分法適用会社(以下、「当社グループ」)が判断したものです。なお、新型コロナウイルス感染拡大による影響については、現時点における推測を含んでいます。
(1) 経営方針・経営戦略等
① 当社グループ理念等
当社グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループ理念のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。
また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆さまに対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。
② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等
Ⅰ サステナビリティの追求(中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」)
<経営環境・経営課題>国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)に象徴されるように、社会課題や環境課題に対する意識は世界的に高まっています。人類は技術の進歩とともに発展をしてきましたが、世界には今なお繁栄から取り残された地域や人びとが存在し、他方で、従来型の発展が地球の限界に至りつつあることは、人類にとって大きな課題です。加えて、先進国を中心とした少子高齢化の進展は、新たな課題を提示しつつあります。当社グループは、企業としてこれらの事実に正面から向き合う必要があります。
当社グループは、グループ理念「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」を掲げ、世の中の課題に応じた事業展開を行ってきました。約100年前に“人類文化の向上”を唱えて創業して以来、「生活基盤の確立」「物資豊富な生活」「豊かで便利・快適な生活」「新興国での需要」といった変遷するニーズに応えるべく歩んできました。当社グループは現在の社会ニーズを「持続可能な社会の実現」と捉え、経営課題として取り組んでいきます。
「持続可能な社会の実現」に向けて、当社グループが継続して取り組みを進めていくためには、高い収益性を実現するとともに、ステークホルダーとの信頼関係を深めていくことが重要です。当社グループは透明・公正な経営により、「持続可能な社会の実現」への貢献と「持続的な企業価値の向上」の両立を進めることで、サステナビリティを追求していきます。
<経営方針・経営戦略>上記の具体化のため、2019年4月に3ヵ年の中期経営計画「Cs+(シーズプラス) for Tomorrow 2021」を新たにスタートさせました。「Cs+ for Tomorrow 2021」では、前中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」で定めた「Compliance」「Communication」「Challenge」「Connect」という“Cs”に、「Care for People」「Care for Earth」(人と地球の未来を想う)という二つの“C”を追加し、人びとと地球のサステナブルな発展に貢献していく当社グループの姿勢を表現しました。
サステナビリティを追求していくためには、「持続可能な社会」に高い価値を提供する事業体へと、事業ポートフォリオの転換を進めていくことが重要です。また、価値創出の源泉となる要素を研究開発や新事業創出のプロセスの中で着実に生み出していくこと、更には、世界で価値創出を行い、価値提供を進めるためのグローバルオペレーションの強化が必須となります。加えて、これらの活動の礎となる事業基盤の強化は欠かせません。これらの考えから、以下の対応方針に基づき、各種施策を進めていきます。
ⅰ 事業ポートフォリオの転換
当社グループでは「マテリアル」セグメント、「住宅」セグメント、「ヘルスケア」セグメントの3つのセグメントで事業運営をしていますが、創業以来、変化する社会ニーズを捉え、社会課題に対する解決策を提供すべく、事業ポートフォリオを転換してきました。当社グループの強みは、各時代の様々な課題解決に取り組んできた人財・技術・事業の「多様性」と「変革力」です。今後においても当社グループの経営環境が絶え間なく変化していくことを踏まえ、「多様性」と「変革力」を活かした事業ポートフォリオの転換を最も重要な経営戦略と位置付けています。
これらのセグメントの中で、「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」「Home & Living」「Health Care」の5つの価値提供注力分野を定め、経営資源を優先投入し、持続的な事業成長を図るとともに持続可能な社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。具体的には、「成長性(自社売上高成長率、市場成長率等)×収益性(ROS、ROIC等)」「利益規模や効率等(営業利益規模、一人当たり営業利益額等)」「事業特性等(価値提供注力分野、サステナビリティ貢献、競争優位性、他事業とのシナジー等)」の評価軸において、年に2回、事業の状況をアップデートし、ポジショニングを分析・評価します。その上で事業ポートフォリオ転換の重要テーマを選定し、検討を推進していきます。
「Cs+ for Tomorrow 2021」のコンセプトと当社グループの価値提供注力分野

当社グループの価値提供注力分野セグメントサステナビリティにおけるテーマ
Environment & Energyマテリアル環境負荷低減
Mobility安全・快適な移動
Life Material快適な生活
Home & Living住宅安心で豊かな暮らし
Health Careヘルスケア健康長寿社会の実現


ⅱ グローバルオペレーション強化
当社グループの2019年度の海外売上高比率(「住宅」セグメントを除く)が約6割を占める中、地域毎に市場特性を踏まえて事業の成長促進とシナジー創出を後押しする機能を強化します。2019年度には既存の米国・欧州・中国・インドの統括拠点に加えて、ASEAN地域の成長を取り込むことと同地域内の拠点の支援を目的に、Asahi Kasei Asia Pacific Co., Ltd.をタイ・バンコクに開設しています。また、「ヘルスケア」セグメントにおいては、クリティカルケア事業のZOLL Medical Corporationや2019年度に買収した米国製薬企業のVeloxis Pharmaceuticals, Inc.を事業プラットフォームとして、グローバル化をさらに進展していきます。
当社グループにおける地域毎の位置付け
・米国 :新ビジネスモデル発信地域、ヘルスケア先進地域
・欧州 :環境・自動車の先進地域
・中国 :世界市場の一極としての巨大市場
・インド :成長市場
・ASEAN :成長市場、重要製造拠点
ⅲ 研究開発と新事業創出
当社グループでは、研究開発においてコア技術やテーマの棚卸を行い、注力すべき対象を定めています。新事業創出については、社内リソースのみならず、米国を中心に活動を拡大するCVC(Corporate Venture Capital)の更なる活用や、他企業、大学、行政等との柔軟な連携により、広い視野を持ちながらスピードを意識して進めていきます。具体的には「第2 事業の状況 5 研究開発活動」をご参照ください。
ⅳ 事業基盤の強化
・ デジタルトランスフォーメーション推進による事業高度化:
デジタルトランスフォーメーションを業務の効率化のみならず、事業戦略検討や新事業創出においても活用していくため、ITインフラ基盤(データプラットフォーム、ツール、人財育成)の強化に取り組みます。具体的には、知財情報による事業戦略構築、マテリアルズ・インフォマティクスによる開発手法の革新、AIによる製品の画像自動検査、設備診断技術の高度化等に注力していきます。2018年度に買収したSage Automotive Interiors, Inc.はAIを活用し、自動車内装材の業界及び競合の知財情報を俯瞰的に分析・処理することによって、当社グループの技術を新事業に応用しています。また、2020年度末を目標にデジタル系エンジニアによるオープンイノベーション拠点の設立等体制を強化することや、2021年度末にはデジタルプロフェッショナル人財を150名体制に拡充すること等、各種施策を着実に進めていきます。
・ 従業員が活躍できる基盤づくり:
当社グループが目指す、多様性と変革力による新たな価値の創出には、人財の育成や活躍、またそのための環境整備が欠かせません。特に、新型コロナウイルス感染拡大後の在宅勤務の浸透等によるニューノーマル(新常態)を前提とし、各種施策を進めていきます。これらの施策を通じて、従業員のエンゲージメントの向上や組織への参画意識を向上させ、「皆と一緒に働きたい We want to work together」と、従業員一人一人が心から感じられるような基盤をつくっていきます。
従業員が活躍できる基盤づくりの施策例
項目施策内容
働く環境づくり・リモートワーク環境下でも働きやすいIT環境の整備
・柔軟な働き方を可能にする勤務ルールの設計
制度・仕組みの整備・プロフェッショナル人財の育成を目的とした高度専門職制度等の多様な
キャリアパスの整備
・多様な働き方を前提としたパフォーマンスマネジメントの仕組みを検討
マネジメントの強化・ワーク・エンゲージメントの定期測定による可視化
・コーチング等を活用したマネジメント力の強化
・ニューノーマルにおける新しいマネジメントスタイルの検討

・ 安全/品質/リスク管理/コンプライアンスの強化:
当社グループの事業基盤として、引き続き重点テーマと位置付けて取り組んでいきます。当社グループは「現場」「現物」「現実」を重視して行動する三現主義を徹底することで、社会から常に信頼される企業となることを目指しています。その具体的な取り組みの一例として、国内・海外拠点の各職場で当社グループの「行動規範」の読み合わせを行うなど、その周知徹底に努めています。
・ ガバナンス体制の進化:
多様性と変革力を発揮するガバナンス体制の進化を継続的に図っていきます。具体的には「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。
Ⅱ 新型コロナウイルスへの対応
<経営環境・経営課題>当連結会計年度後半より、新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界中の多くの尊い命が犠牲になるとともに、感染拡大防止のための各国政府、各地方自治体における外出規制等を背景とした世界的な経済危機により、人びとの“いのち”と“くらし”が大きく脅かされています。また、当社グループにおいても、足元の業績の悪化や事業活動の制限等による将来の業績の不透明さなどの影響が出ているため、新型コロナウイルス感染拡大の影響を軽減することは重要な課題と認識し、最優先で取り組んでいきます。
<経営方針・経営戦略>当社グループは、事業に関わる人びとの安全に十分な注意を払いつつ、社会で必要とされる製品・サービス(※)を安定的に供給していくとともに、以下の方針により経営環境の変化に対応していきます。
ⅰ 中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」の基本的な考え方は堅持しながら、現在を社会全体の革新の機会と認識し、大きな変化に対して自発的に行動していきます。
ⅱ 業績の先行きを見通すことは困難ですが、3領域で展開する事業ポートフォリオが奏功し、「住宅」、「ヘルスケア」が安定的に収益を創出することで、2020~2021年度も健全な財務基盤を堅持していきます。
ⅲ 財務規律強化や事業ポートフォリオ転換を通じた体質強化に取り組むことでキャッシュ創出につなげ、厳しい事業環境においても株主還元水準の維持・向上を目指します。
ⅳ 5つの価値提供注力分野において、新型コロナウイルス感染拡大による非連続で不可逆な構造変化を想定し、旭化成の強みである「多様性」と「変革力」で先手を打って行動することで、企業価値向上につなげていきます。
ⅴ 多様な“C”による持続的成長への経営基盤強化は継続推進していきます。中でもデジタルトランスフォーメーション推進による事業高度化(Challenge)、ニューノーマルにおける従業員が活躍できる基盤づくり(Communication)に重点的に取り組み、生産性向上につなげていきます。詳細は、「Ⅰ サステナビリティの追求(中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」) ⅳ 事業基盤の強化」をご参照ください
(※参考)新型コロナウイルス感染拡大の影響軽減について当社グループが貢献できる製品群
人工呼吸器等救命救急医療機器、腎臓等の内臓機能を補助する血液浄化関連医療機器、治療薬関連、治療薬製造用ウイルス除去フィルター、医療用ガウンや消毒用ワイパー向け不織布等
Ⅲ 財務・資本政策
<経営環境・経営課題>新型コロナウイルス感染拡大の影響によって市場環境の不透明感はより強まっており、当社グループでも翌連結会計年度の業績予想を合理的に見積もることは困難であるため未定としています。将来のキャッシュ・フローが具体的に見通せない環境においても、市場から期待される収益性・株主還元の充実・財務健全性の3つを充足し続けていけるような経営の舵取りをしていくことが課題であると認識しています。
<経営方針と経営戦略>ⅰ 資金の源泉:新型コロナウイルス感染拡大による事業へのマイナス影響を最小限に止め、関連需要を的確に捉えることで、収益力を高めていきます。加えて、適切な在庫管理・経費管理の徹底で支出を抑えることにより、営業活動によるキャッシュ・インの増加を目指していきます。また、「住宅」セグメント、「ヘルスケア」セグメントでの安定的なキャッシュ創出力に磨きを掛けるとともに、「マテリアル」セグメントにおいては、事業ポートフォリオ転換を通じた収益体質の強化を加速し、更なるキャッシュ創出、確保にも努めていきます。
ⅱ 設備投資・投融資:当連結会計年度には、当社グループの価値提供注力分野を中心とした設備投資やM&A等の投融資で約4,000億円以上の案件の意思決定を行いました。今後は、市場環境の透明度が改善するまでは慎重に構え、市場環境を見通せる状況になった段階で、以下のテーマ等に優先して投資することで、当社グループの経営基盤強化や中期的な成長を図っていきます。
・ サステナビリティ貢献
・ 働き方改革やデジタルトランスフォーメーション等の生産性向上
・ イノベーションを実現するための研究開発
・ 新規ニーズ・トレンド対応
ⅲ 株主還元:成長投資と株主還元をバランスよく行うよう、適切な内部留保を保ちながら、安定配当と継続的な収益拡大による増配を目指すことを基本方針としています。一時的な利益水準の変動によらず、財務体質や中期的なフリー・キャッシュ・フローの見通しを踏まえた最適な株主還元を実現していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」とあわせてご参照ください。
ⅳ 資本コスト:当社グループは株主資本コストを認識し、継続的にこれを上回るリターンを追求します。収益性の向上に向け、事業ポートフォリオの転換、オペレーションの効率化、投資案件の精査と投資効果の追求等を進めていきます。
③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等
Ⅰ 「マテリアル」セグメント
●価値提供注力分野 :「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」
●基本戦略 :価値提供注力分野への経営資源の柔軟なシフト
<経営環境・経営課題>本セグメントにおいては、「第1 企業の概況 3 事業の内容」の記載のとおり、汎用の石油化学製品を中心とする基盤マテリアル事業、繊維、高機能ポリマー、消費財を中心とするパフォーマンスプロダクツ事業、電池用セパレータや様々な特殊用途の素材、電子部品等を中心とするスペシャルティソリューション事業を運営しています。これらの事業においては、ビジネスモデルや市場の状況、競合他社に対する競争優位性等の経営環境は、製品群によって大きく異なります。今後の経営環境が目まぐるしく変化する状況においては、製品群によっては価値提供が困難となることも想定し、セグメント全体として高付加価値の製品群を伸ばし、事業を成長させていくことが課題であると認識しています。特に、現在のような経済危機局面においても、高収益を実現できる製品群ポートフォリオへ転換を加速していくことが重要であると考えています。
<経営方針・経営戦略>「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」における注力事業は、以下の通りです。
ⅰ 「Environment & Energy」分野:多様な技術(CO2ケミストリー~半導体等)で、環境との共生に貢献する
・ リチウムイオン電池用を中心としたセパレータ事業の拡大
・ CO2センサ、水処理用ろ過モジュール、イオン交換膜等の省エネ・環境改善ソリューション事業の拡大
・ アルカリ水電解水素製造システム(グリーン水素の製造)や低炭素社会実現に貢献する次世代CO2ケミストリー、新規CO2分離回収システム等の事業化
ⅱ 「Mobility」分野:安全・快適・環境技術により、これからのモビリティ社会に貢献する
・ 自動車内装ファブリック事業の拡大
・ 構造部品向けのエンジニアリング樹脂等車載関連素材事業の拡大
・ アルコールセンサ等ガスセンサ事業の拡大
ⅲ 「Life Material」分野:特長ある製品と技術力で、健康で快適な日々の生活に貢献する
・ 5G用の情報通信機器向け電子材料・基板材料・電子部品のソリューション事業の拡大
・ 衛生意識の変容、新しいライフスタイルへの転換等によるニーズの変化に対応する素材・ソリューション事業の拡大(医療用ガウン、マスク、消毒ワイパー用途の不織布、食品保存用フィルム、殺菌用深紫外線LED等)
Ⅱ 「住宅」セグメント
●価値提供注力分野 :「Home & Living」
●基本戦略 :バリューチェーン・マネジメントの強化・拡張
<経営環境・経営課題>日本国内においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済活動の停滞や個人の消費マインドの低下により景況感が悪化しています。当社グループにおいても、住宅展示場・モデルルームの閉鎖等による新規集客・受注活動の制限や工事の中断、引渡しの延期等の影響が出ています。これらの影響を軽減させ、新規集客から引き渡しに至るプロセスを効率的に進める取り組みの確立が課題であると認識しています。
一方、自然災害の多発化や人生100年時代における住まいや暮らしの在り方などのライフスタイルの多様化により、住宅を取り巻くニーズは変化し続けています。今後は、災害に強く安心できるレジリエンス(防災力)の高い住宅や環境負荷を低減する住宅、シニアが安心かつ快適に生活できる住宅等の事業機会は広がっていくと考えています。これらの環境変化に対応し、都市で培ったノウハウを活かし、日本国内の関連市場へ新事業を展開していくこと、また、日本国内市場の成長の鈍化を踏まえて、海外市場へ事業展開を加速していくことが課題であると考えています。
<経営方針と経営戦略>ⅰ ITを活用したデジタルマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上、コストダウンの推進
ⅱ 賃貸管理・仲介事業やリフォーム事業等ストックビジネスの一層の強化
ⅲ 新事業の展開加速
・ 安心と快適が途切れないシームレスな住まいとサービスで高齢化社会へ貢献するシニア事業
・ 工業化による高品質・高精度の建築を可能とすることで都市の多様なニーズに応える中高層事業
・ 国内請負事業で培った工業化住宅の強みを活かせる海外事業
Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント
●価値提供注力分野 :「Health Care」
●基本戦略 :グローバル・ヘルスケア・カンパニーへの進化の更なる加速
<経営環境・経営課題>短期的には、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出自粛制限等が患者様の通院や当社グループの事業活動への制約となり、各事業において影響が出る可能性があります。一方で、人工呼吸器や除細動器、血液浄化関連製品や血漿分画製剤用等のウイルス除去フィルター等の医療機器事業において需要が高まっており、安定生産や生産能力増強を通じて供給責任を果たし、コロナ禍早期収束と収束後の医療へ貢献することが課題です。
中長期的には、国内では医療費削減圧力が高まることによる市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続すると認識しています。そのため、ヘルスケア領域の長期的な成長のための課題は、「グローバル・ヘルスケア・カンパニー」への進化を加速することであり、当社グループに足りない経営資源を追加・補強する手段の1つとしてM&Aを位置付けています。当連結会計年度は、クリティカルケア事業ではCardiac Science Corporation、米国医薬事業ではVeloxis Pharmaceuticals, Inc.を買収し、新たな成長ドライバーを獲得しました。獲得した米国医薬事業においては、先進国の「大病院」市場、「高度専門医療を行う施設」にフォーカスすることで、製品の製造、医師への情報提供及び安全性管理等において、極めて高い効率性と収益性を有する事業プラットフォーム構築を目指します。
<経営方針と経営戦略>ⅰ 新型コロナウイルス感染拡大の影響により需要が高まる医療機器及び医薬品の供給能力強化
ⅱ Veloxis Pharmaceuticals, Inc.を事業プラットフォームとした医薬事業の既存パイプラインのグローバル開発やグローバルでの製品導入による収益最大化
ⅲ ZOLL Medical Corporationを事業プラットフォームとしたクリティカルケア事業の更なる深耕
ⅳ 国内医薬・医療事業の基盤強化
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 「マテリアル」セグメント
「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅰ 「マテリアル」セグメントの項目に加えて、以下の事業上の課題があります。
Ⅰ 「Environment & Energy」分野
リチウムイオン電池用のセパレータについては、2015年度に買収したPolypore International, LPの製品群も含めて、湿式・乾式の特徴が異なる両タイプの製品を提供し、世界市場で高いシェアを維持しています。特に、今後も需要が拡大すると考えられるハイブリッド自動車や電気自動車等の環境対応車用のリチウムイオン電池用途では、更なるビジネス拡大の機会があると考えています。また、需要拡大に伴い競合他社との競争も厳しくなってきています。
そのため、市場動向を見極めつつタイムリーに需要に対応し、競争優位性のある高付加価値製品を供給し続けていくことが課題であると認識しています。タイムリーな能力増強と継続的な高付加価値製品の開発を進めていきます。
Ⅱ 「Mobility」分野
足元では新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛や各国における都市閉鎖の影響を受け、自動車市場の落ち込みによる関連製品の需要減が見られていますが、中長期的には自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新の進展が加速し、又は変化していくことにより、新たなニーズが生まれてくると考えています。
車室空間にはこれまでにない快適性やデザイン性が求められており、内装市場の中長期的な拡大を見込んでいます。そのため、環境特性に優れた人工皮革「ラムース™」の増加する需要への対応や2018年度に買収した米国のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化しつつ、事業を成長させていくことが課題となります。「ラムース™」の供給能力の増強や欧米を中心としたSage Automotive Interiors, Inc.のブランドである「DINAMICA™」との連携でグローバルでのバリューチェーンを広げていきます(2020年3月にはSage Automotive Interiors, Inc.が欧州自動車市場における事業拡大と基盤強化を目的に、大手自動車シートサプライヤーの米国Adient plcの自動車内装ファブリック事業の買収契約を締結しました)。
また、自動車の燃費向上・電動化等による車体軽量化のニーズが拡大しています。これらの顧客のニーズに合わせて、車体軽量化に寄与する構造部品向けのエンジニアリング樹脂の製品の展開をグローバルに加速していくことが課題と認識しています。このようなニーズへ対応すべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへのマーケティングを強化していきます。加えて、自動車の安全性の更なるニーズも機会として認識しています。2018年度に買収したSenseair ABのアルコールセンサによる飲酒運転防止等、新たな価値提供を実現するため、Senseair ABとの連携をより強化していきます。
Ⅲ 「Life Material」分野
新型コロナウイルスの感染拡大による外出規制等により、衣料用繊維の需要は減少しており、市場の先行きが不透明な状況となっています。
一方、5Gによる情報通信高度化需要は順調に拡大しており、情報通信機器に使用されるガラスクロス等の電子材料・基板材料・電子部品のニーズは増加しています。今後、市場動向を注視し、タイムリーに顧客へソリューション提供をしていくことが課題であり、対応の高度化を進めていきます。
また、医療用ガウン、マスク、消毒ワイパー用途の不織布の需要や在宅時間の長期化に伴い増加する食品保存用フィルム需要が増加しているため、これらの需要に対応する供給責任を果たしていきます。
加えて、殺菌用深紫外線LEDは、今後人びとの健康・衛生意識の高まり等から需要が拡大していくと考えています。これらの機会を活かすため、タイムリーに革新素材/ソリューションの提供力を強化していきます。
② 「住宅」セグメント
「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅱ 「住宅」セグメントの項目をご参照ください。
③ 「ヘルスケア」セグメント
「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメントの項目をご参照ください。
④ 財務上の課題
「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等」Ⅲ 財務・資本政策の項目をご参照ください。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループはグローバルGDP成長率を上回る「持続的な利益成長」を志向しています。収益性の高い付加価値型事業の集合体を目指すとともに、グループ全体の資本効率の一層の向上に努めます。また、積極的な投資の実施とともに、財務の健全性を図ります。その進捗を見極めるために、以下の指標を経営指標として定めています。なお、中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」ではキャッシュ創出力を示すためEBITDAを新たな経営指標として加えています。
2019年度の具体的な結果については「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容」をご参照ください。
<経営指標>
主な経営指標考え方
EBITDAキャッシュ創出力を示す業績指標
EPS株主視点での収益性を測る指標
ROIC利益創出についての投下資本の効率を測る指標
ROE利益創出についての株主資本の効率を測る指標
D/Eレシオ財務健全性を測る指標

EBITDA :営業利益+減価償却費(有形固定資産・無形固定資産(のれんを含む))
EPS :親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均発行株式数(ただし、自社株は除く)
ROIC :(営業利益-法人税等)÷期中平均投下資本
ROE :親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均自己資本
D/Eレシオ:期末有利子負債÷期末自己資本

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