有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 16:01
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、創業以来『品質第一、原価逓減、研究努力』の3つの社訓を経営の規範として会社を運営してまいりました。創業者は『品質第一』と『原価逓減』が、「より良い製品を、より安価に、お客様に提供することが会社隆昌の基本」であり、この「2つの社訓を実現する原動力となるのは不断の研究活動である」と3つ目の『研究努力』を説いています。これら3つの創業精神に則り、以下の素材で区分した6つのセグメント別の連結事業運営を行っております。
①非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を中心とする『界面活性剤』
②セルロース系高分子材料、ショ糖脂肪酸エステル、アクリル系高分子材料及びビニル系高分子材料を中心とする『アメニティ材料』
③ポリエーテルポリオール及びウレタンプレポリマーを中心とする『ウレタン材料』
④光硬化樹脂用材料、難燃剤及び水系ウレタン樹脂を中心とする『機能材料』
⑤導電性ペースト及び射出成形用ペレットを中心とする『電子デバイス材料』
⑥健康補助食品を中心とする『ライフサイエンス』
安定的な収益を生み出すための企業体質強化の取り組みを継続します。その一方で、「京都から、世界へ未来へ。」と飛躍を志した当社グループの成長戦略を確実に軌道に乗せるための諸施策を、全社員が一丸となり確実に実行し、新たな会社の歴史を作ります。
3つの社訓『品質第一、原価逓減、研究努力』を礎に、社是「産業を通じて、国家・社会に貢献する」の実現に努めてまいります。
(2)経営戦略等
新5カ年経営計画「FELIZ 115」では、以下の経営方針を掲げて取り組んでまいります。
①2030年3月期の業績は、アクチャル(既存)、ネクスト(周辺)、ドリーム(新規)が各1/3となる事業構成を目指します。アクチャルの質的充実、ネクストの拡大増強、ドリームの開発・育成を図ります。
②計画的設備投資の結果である総資産を最大活用し、年間売上高に匹敵する総資産回転率1.0を目標とします。製品別管理と並行して、顧客別のマーケティングを強化します。
③営業、研究、生産、管理の本部制を敷き、経営資源の最適配分を行います。貢献に報いる業績評価体系により、社員幸福度経営を実践します。企業を取り巻く4つのステークホルダーの期待に応え、企業価値を高めます。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2015年4月からスタートした5カ年経営計画「REACT1000-飛躍への行動を-」が終了しました。売上高は昨年の過去最高を更新しました。IT・電子用途の光硬化樹脂用材料が顕著に伸びたことが主な理由です。一方、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、昨年から減益となりました。新規事業関連等の研究開発費用や新工場の償却、のれんの償却負担の増加が主な要因です。
新5カ年経営計画「FELIZ 115」では、2025年3月期を最終年度として、数値目標を掲げました。
①連結売上高 850億円
②連結営業利益 100億円
③連結営業利益率 11.7%
④総資産 920億円(予想)
⑤総資産回転率 1.0回
⑥設備投資額 120億円(5年累計)
⑦売上高研究開発費率 5.0%
⑧ROE 10%以上
(4)経営環境
5カ年経営計画「REACT1000-飛躍への行動を-」の最終年度である第156期が締まりました。有終の美を飾ろうと、前年度との決算比較で増収増益を目指しました。個人消費、インバウンド需要、設備投資に支えられていた景気の回復が、陰り始めました。米国の通商政策に始まる世界経済の不確実性は、本年初めの新型コロナウイルス感染拡大により先行き不透明な状況です。輸出や自動車関連の製品では収益減少の影響も出始めております。しかし、お互いに閃き合う特定のお客様であるインスパイアードパートナーとの取組みや規模でなく独自性で評価されるユニトップ戦略を推進することで競争力を高め、さらにはライフサイエンス分野への投資を推進することで事業の拡大と収益の安定化をはかります。昨秋より、ニューヨーク市場に異常を見て、2月に早めの資金調達も行いました。新計画スタート前のコロナショックは、足元を固める契機としました。新5カ年経営計画の最終年度の数値目標は変えずに、初年度は機動的な事業運営を行う所存です。
当連結会計年度は、前期に比べて増収減益の結果となりました。コロナショックの前からの新規事業関連等の研究開発費用や新工場の償却負担の増加、外部委託製造コストの増加が主因です。一方で、三重県四日市市で稼働させた霞工場第一、第二プラントの業績への貢献は期待を上回るものになっています。2019年4月に竣工した第三プラントも順調に稼働を開始し、売上高に反映しております。次世代通信規格5G材料の第四プラントは、本年6月に完成する予定です。新投資の償却負担は増加しますが、未来の基盤作りに不可欠な工程と計画的に建設して来ました。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
企業価値を高めるために会社が対処すべき課題は、次の3点と認識しています。
「黒い白鳥2020」(予測できない事象)、コロナショックに関連する、「バリュー・ストリーミング・マップ」への対処です。「価値」、「流れ」、「位置づけ」の変化への会社としての対処と解釈しています。第一に、商品価値のデジタル化に見る企業価値のありよう、第二に、サプライチェーンの孤立化、分断化への対応、第三に、業界の一部に見られる産業再編の動きです。
先ず、企業価値を高めるために、前計画の5年間に取り組んだ収益性を高める事業構造転換の加速化です。新5カ年経営計画の初年度、2年度で不採算事業を見直します。後半の3年間で投資事業の刈り取りと拡大を図り、ポートフォリオを充実させ、ソリューションによる機能・用途の開発と共に顧客を軸としたマーケティングを強化することで社訓『品質第一』をより確かなものにします。
次のテーマである物流の孤立化、分断化には、原料の安定的確保、長期的には非石化原料を増加させることです。パートナー企業との連携を更に強化します。リードタイムの短縮を、新計画の重要施策として、期初から施策を実行しています。社訓にうたう『原価逓減』となります。
3番目の再編の動きには、掲げているユニ・トップ企業の歩みを前進させることです。規模を追うのではなく、独自性で評価されることです。「工業用薬剤の首位」と掲載される道を今後も大切にします。技術開発型の当社の原点でもあります。社訓の『研究努力』を更に推進してまいります。
新5カ年経営計画「FELIZ 115」の最終年度の売上高は850億円の実現を掲げました。計画的な設備投資の結果である総資産は、年度末に817億円となっています。金融的には総資産回転率は、年間の売上高に関係しますので、5年後の目標1.0とすれば、可能な水準です。これまでの事業部制から営業・研究・生産・管理の本部制に変えました。経営と執行の分離を明確にして貢献に報いる業績評価体系とします。2025年3月期の115周年を意識した計画の名称は、「FELIZ 115」です。英語のハッピーを意味するスペイン語で、幸福度経営に取り組む5年となります。株主の皆様のご理解と、今後とも変わらぬご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
(免責・注意事項)
本計画に記載されている当社の現在の計画、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の実績等
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