有価証券報告書-第184期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/23 15:10
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【項目】
149項目

研究開発活動

当企業グループは、創業200周年を見据え、10年後のありたい姿を新たな長期構想として掲げ、持続的な成長を実現する企業活動のコンセプト「Scientific Innovation Chain 2027(SIC27)」を設定し、第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」を2021年度より展開しています。すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、研究開発においては、サイエンス領域を広げて新技術を獲得し、新たな価値を創造し、お客様とともに成長、発展すべく積極的に活動を進めております。
「SIC-Ⅱ」ではサステナブル・サイエンス、コミュニケーション・サイエンス、ライフ・サイエンスを重点開発領域として設定し、変わりつつある新たな社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し続けていきます。「SIC-Ⅱ」の初年度となる2021年度は、それら重点開発領域の拡大と創出に注力し、それぞれの領域で戦略的に技術開発し、イノベーションの連鎖を起こすべく、日々取り組んでまいりました。
当企業グループにおける研究開発においては、素材開発力の強化と新製品・新事業の創出を加速させるため、各セグメントの中核事業会社に2~5年の中期的な研究開発を担う研究所(先端材料研究所、ポリマー材料研究所、機能材開発研究所)を新設しました。当社のR&D本部(技術開発研究所、フロンティア研究所、解析技術研究所)、生産・物流本部(生産技術研究所)では長期的な開発を担います。各研究所及び国内外の各連結子会社の技術部門では、持続可能でクリーンな社会の実現に向けた新素材やシステムの提供、5G・IoT社会への貢献、人々の生活を豊か・健やかにする製品やソリューション創出など、それぞれの社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し、新たな事業の創出・拡大を目指すべく研究開発活動を推進しております。
連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,496百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりです。
(1) 色材・機能材関連事業
当事業では、コア技術である有機合成技術と精密分散技術を融合し、市場のニーズに合った独自の新素材、分散加工製品、着色剤、インクジェットインキの製品開発を続けております。
顔料及び顔料分散体事業関連では、印刷インキ市場に向けてデジタル印刷を含む各種インキの広色域化、難分散顔料の易分散化に寄与できる色材の開発を進めております。また、塗料市場に向けて顔料の高濃度かつ微細分散技術を応用した新製品開発を進めております。
メディア事業関連では、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料において原料高騰を製法革新などによるコストダウンで補うとともに、好調な市場需要により中国、台湾市場で伸長しました。独自開発した色材もハイエンド用途で採用が伸びております。また、新型ディスプレイ向け低温硬化レジストを新規開発し、量産を開始しました。
着色事業関連では、光波長制御機能を持つ新素材を、フィルム包装容器製品や自動車の衝突防止システムに使用されるミリ波レーダー向けの電波吸収コンパウンドへ展開しております。また、CO2削減や廃プラスチック問題などの社会課題を解決するため、電気自動車関連製品及びリサイクル材料やバイオプラスチックを使用した製品の開発に積極的に取り組んでおります。
機能材料事業関連では、カーボンナノチューブを用いた車載用リチウムイオン電池材料の供給を米国の拠点よりスタートさせるとともに、欧州でも工場の整備を進め、生産を開始しております。また、特殊無機材料、金属材料の精密分散技術を応用した新たな製品展開として、電子材料向け金属分散体の量産も開始しました。
インクジェットインキでは、今期から事業を本セグメントへ移管し、これまで培ってきたインキ及び周辺材料の技術を集結し、高濃度、高演色インキの開発を加速しています。また、食品包装用水性インキについては、耐熱性・耐水性向上や、多様な基材への対応を進めており、パッケージ印刷のさまざまなニーズに対しデジタル化、水性化の提案を行うべく開発を進めております。
当事業に係わる研究開発費は、3,533百万円です。
(2) ポリマー・塗加工関連事業
当事業では、重点市場を①包装・工業材市場、②エレクトロニクス市場、③メディカル・ヘルスケア市場と位置づけ、その事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和型製品の開発を続けております。
包装・工業材市場向けについては、粘着剤では、環境調和型製品のラインナップを更に拡大し、90%以上分解する生分解性粘着剤や、薄膜でも接着力の高い粘着剤などを開発しました。接着剤では、破断強度と伸びを両立する二液硬化型接着剤「LIOWELDTM」を開発し、市場評価が進んでおります。ホットメルト(熱溶融型接着剤)では、飲料ペットボトルに巻き付けるラベルの剥がしやすさを向上したホットメルト粘着剤を開発しました。また、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社との合併を実施し、その技術シナジーにより温度依存性の少ないポリウレタン型反応性ホットメルト粘着剤を開発しました。缶用塗料では、前連結会計年度に新ブランドとして立ち上げたビスフェノールAを意図的に含まないBPA-NI塗料「LIONOVA TM」を上市しました。
エレクトロニクス市場向けについては、スマートフォン・タブレット向けに高速通信対応の電磁波シールドフィルムの販売が好調に推移しましたうえ、次世代品の開発も進みました。センサー関連では、介護分野でセンサーシート「Fichvita®」が引き続き順調に出荷されております。また、中型自動運転バスに座席センサー、飲食店舗内にフロアセンサーをそれぞれ設置し、屋内施設における滞在人数や位置をリアルタイムに把握する実証試験を行いました。
メディカル・ヘルスケア市場向けについては、貼付型医薬品、検査薬用のシート製品、ヘルスケア用の高透湿性アクリル系粘着剤や低皮膚刺激性ウレタン系粘着剤の開発を引き続き進めております。
当事業に係わる研究開発費は、2,440百万円です。
(3) パッケージ関連事業
当事業では、環境調和型の軟包装用グラビア、フレキソインキを始め、建装材用グラビアインキ、機能性インキの開発やマテリアルリサイクルのシステム構築など、持続可能な社会の実現及び新たな価値の創造に向けた開発に力を入れております。
再生可能な植物由来原料を活用したバイオマスインキでは、フィルムラミネート用及び表刷り用、紙器用やシート段ボール用など幅広い製品をラインナップしています。特に、フィルムラミネート用グラビアインキは市場で高い評価を頂いており、CO2排出削減に貢献しております。
また、水性化の障壁となっていた乾燥性の課題をブレークスルーしたハイソリッド水性グラビアインキや印刷適性に優れる水性フレキソインキを開発・上市し、国内外で実績化が進んでおります。
建装材分野では、建築物の外装など屋外用途に適した高耐久性グラビアインキ及びトップコートの販売を開始しました。製品の長寿命化や、グラビア印刷による可飾ソリューションのさらなる普及拡大を目指してまいります。
今後も、リサイクル技術、バイオマス製品をはじめ、各種の環境調和型製品やシステムの開発を通じて、お客様とともに持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する製品とサービスを提供し、社会に貢献してまいります。
当事業に係わる研究開発費は、1,464百万円です。
(4) 印刷・情報関連事業
当事業では、持続可能な社会の実現に向けて、CO2排出量や廃棄物の削減に寄与する製品群の開発を積極的に行っております。
油性インキ及びUVインキでは、脱炭素社会実現に向けてCO2排出量の削減に貢献するバイオマスインキの開発に注力しており、多様な用途に対応した製品群を上市しています。特に、バイオマス原料の活用が困難とされてきたUVインキにおいて、パッケージ、シール・ラベル、カップ、情報出版用途のバイオマスインキ製品をラインナップしています。バイオマス度の向上にも絶えず努めており、UVランプよりさらに省エネルギーなLEDランプでも硬化するバイオマス度20%のシール・ラベル用UVフレキソインキを開発し、工業化に向けた活動を進めております。また、シリコン系添加剤不使用の後加工適性に配慮したUV硬化型スクリーン印刷用バイオマスインキを開発しました。なお、バイオマス成分については、外食産業等から排出された使用済みの植物油を変性して活用するなど、食用でない植物材料にこだわることで、廃棄物の有効活用を進めております。
また、抗菌、抗ウイルス加工製品へのニーズの高まりに対し、油性インキ及びUVインキに対応した抗菌ニス、抗ウイルスニスの開発と市場評価を進めております。
当事業に係わる研究開発費は、1,051百万円です。
なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、5百万円です。