有価証券報告書-第180期(平成29年4月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/27 13:20
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126項目

研究開発活動

当企業グループは、既存のお客様のみならず新規のお客様に対しても新たな価値提案を行うべく、基盤技術の多用途展開や、より幅広い製品群開発に繋がる新規技術開発に向け、積極的に活動しております。また、こうした技術・製品開発を通じて、当企業グループの目指す3つの事業ドメインとその重点分野である①ライフサイエンスドメイン:パッケージ分野・ヘルスケア分野、②コミュニケーションサイエンスドメイン:エレクトロニクス分野・ファインイメージング分野、③サスティナビリティサイエンスドメイン:環境調和分野・エネルギー関連分野を柱にお客様に貢献し、世界の人々の豊かな生活や持続可能な社会の実現に貢献する為、日々取り組んでおります。
当企業グループにおける研究開発は、当社のグループテクノロジーセンター(イノベーションラボ、マテリアルサイエンスラボ、ポリマーデザインラボ、解析技術ラボ)、生産・物流本部(プロセスイノベーション研究所)、及び国内・海外の各連結子会社の技術部門により推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、58億94百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりです。
(1) 色材・機能材関連事業
当事業では、色材設計・合成技術を進化させてきた素材開発技術と、顔料化技術を発展させた精密粒子制御技術・精密分散技術によって、新素材や先端部材開発の挑戦を続けております。
顔料及び顔料分散体事業では、厳しくなる環境規制に対応する安全・安心な色材の開発に取り組み、環境懸念原料を一切使用しない高純度顔料の開発を進めております。また、これらの新製品は特長のある色彩を提案でき、高意匠性を実現できる色材と期待されております。顔料技術と精密分散技術を融合し、高色域・高鮮明・易分散を実現した独自技術HAYABUSAプロセスはさらに進化し、インクジェット等デジタル印刷市場向け製品や、分散体、塗料、新色材(顔料)として実績化を進めております。
メディア事業関連では、ディスプレイ用カラーフィルターや、今後のIoT社会に必須の光センサー材料を開発しております。ディスプレイは高精細化が進み、輝度、コントラスト、色再現域の向上が求められております。独自に設計された顔料・染料と高度なレジスト技術により、自製の新規グリーン顔料は国内の高級テレビで採用されたほか、中国市場では各社ライン特性に適合させたレジスト製品でシェアを拡大しました。また、RGB色分解センサーはモバイルや監視カメラで採用が進み、自社開発の赤外線吸収材料で光学制御を赤外線領域にも広げ、センサー事業の拡大を進めております。
着色事業関連では、自動車の電動化・自動運転化に伴う素材変革に向けて熱伝導コンパウンドやカーボンナノチューブ(CNT)コンパウンドの開発が進み、熱マネジメントや電磁波吸収・高漆黒といった用途で応用検討されております。また、意匠性への要求が高い容器用マスターバッチ(MB)は新たな提案としてフロスト(すりガラス)調のMBを開発し、お客様の好評を得ております。開発が進んでいるリキッドカラーシステムについては多彩なカラーバリエーションに加え、機能性分野へも積極的に紹介を始めました。
機能材料事業関連では、リチウムイオン二次電池用分散体は電池性能アップのための改良を続け、独自のCNT分散体との融合技術により電池メーカーから好評を得て、国内のみならず海外も視野に入れた生産拠点を考えたプロジェクトをスタートしました。先端機能材料では、色材設計技術を進化させた波長制御材料「OPTLIONシリーズ」の応用領域を広め、光波長狭帯域吸収・透過制御材、波長変換材料等の開発を進めており、IoT、AI時代のセンサー用部材やエネルギー関連事業への応用を考えております。
当事業に係わる研究開発費は、19億97百万円です。
(2) ポリマー・塗加工関連事業
当事業では、塗加工材料・粘着剤・接着剤・ホットメルト・機能性コーティング剤等の事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和製品の開発を通して、豊かな暮らしと持続可能な社会に貢献してまいります。
スマートフォン・タブレット市場向け機能性フィルムのうち、市場で高い評価を受けている導電性接着シートは海外で大きく拡販が進みました。さらに、これら機能性フィルムに使用しているポリマー技術や分散技術を拡張させ、第5世代向け低誘電性を有する高柔軟系接着シートや電波吸収シートを開発しております。また、研磨パッド用両面テープ等幅広い分野に向けた製品群を開発してまいります。
粘接着剤は、独自のウレタン系粘着剤・アクリル系粘着剤の技術を使い、国内・海外のお客様に対し光学用粘着剤の実績が大幅に伸張しました。今後も国内・海外のお客様の顕在・潜在ニーズを捉え、開発を進めてまいります。ラミネート接着剤については国内・海外での拡販が進み、特に環境調和型の無溶剤系接着剤の開発が進みました。今後も環境調和型の開発を重点化してまいります。
電池周辺材料は、太陽電池バックシート用接着剤とプライマーのほか、リチウムイオン二次電池パッケージ用接着剤や、二次電池セパレーター・電極用樹脂の開発が進みました。
機能性コーティング剤の製缶用塗料(フィニッシェス)では、先端的な環境性能を有する新製品群が完成し、特に海外への市場展開で実績が拡大しました。
ヘルスケア関連では、海外で貼付用粘着剤の拡販が進みました。次期開発品である肌に優しい粘着剤の開発を進めております。また、一昨年に買収した貼付型医薬品事業については、当企業グループのポリマー・塗加工技術を融合させた、新規ジェネリック貼付薬の開発が順調に進んでおります。
当事業に係わる研究開発費は、15億29百万円です。
(3) パッケージ関連事業
当事業は、堅調な成長を続けるパッケージ向けの製品とサービスの提供を中心に、建材インキ、スクリーンインキ及び機能性インキをグローバルに展開しております。
食品パッケージ用インキにおいては、高いレベルでのラミネート強度の安定性と使い易さを追求した汎用ラミネートインキ新製品が完成し国内市場で実績化が進みました。
また、建材、機能性インキ分野では、化粧板用高耐久性コート剤や特徴的な触感を有するグラビアインキ、スクリーンインキの実績化が進んできております。
近年のパッケージ用インキ開発においては、機能と使い易さへの要求や国内外規制の準拠はもちろんの事、様々な環境問題への対応が求められております。こうしたご要望に応えるべく国内市場に向けては、非食用天然物由来原料を使用し二酸化炭素排出削減につながるグラビアインキ「レアルNEX BO」、フレキソインキ「アクワPKバイオ」を展開しており、現在もラインアップを拡大しております。また、海外市場においては、国情やお客様のご要望に応じて水性グラビアインキ、水性フレキソインキ、EBフレキソインキ、あるいは簡素な溶剤組成で溶剤回収しやすいグラビアインキによる揮発性有機化合物(VOC)排出削減提案を行っております。
さらに、当企業グループのラミネート接着剤、ホットメルト、製版技術を合わせ、これからも石化原料使用の削減や、VOC排出削減の研究を推進し、お客様とともに持続可能な開発目標の達成に貢献する製品とサービスを提供してまいります。
当事業に関わる研究開発費は、8億22百万円です。
(4) 印刷・情報関連事業
当事業では二酸化炭素の排出を大幅に削減する低炭素社会の実現に向けて、ノンVOC・低VOC化、省エネルギー・省資源化、脱石化天然物など環境対応にも配慮したインキ製品の開発・販売を積極的に行っております。
油性インキでは、再生植物油を使用したノンVOCインキ「TOYO KING NEX NVシリーズ」、インキ使用量が大幅に削減できる超高濃度新聞インキ「ヴァンテアンエコー リオシリーズ」の開発など持続可能な社会に貢献するとともに、お客様の生産性向上、コスト削減製品開発を継続して進めております。
UVインキは、より省電力で硬化する新型高感度UV・LEDインキ「FLASH DRY LPC/LED シリーズ」を上市し、従来品からの特長である瞬間硬化による短納期化やノンVOCに加え、油性インキ同等の作業性や紙面品位が得られ好評を得ております。
また再生可能な、生物由来の有機資源で化石資源を削減したバイオマス製品としまして、枚葉インキ「TOYO KING NEXシリーズ」、オフ輪インキ「WEB DRY レオエックス シリーズ」に続き、業界初となるUVインキ「FLASH DRY HB エコーBIOシリーズ」を上市し、環境・安全性に配慮した製品ラインアップの拡充を図りました。
インクジェットインキでは、サイン用途向けの低臭溶剤系インキ、多様な被印刷体に密着するLED硬化型UVインキ製品を拡充し、オンデマンド印刷用途では商業用の高演色水性インキ、ローマイグレーションUVインキ、食品包装用水性インキに加えて、捺染用水性インキの開発も進めております。
当事業に係わる研究開発費は、15億39百万円です。
なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、5百万円であります。