有価証券報告書-第183期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/24 13:04
【資料】
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【項目】
166項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当企業グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当企業グループは、「人間尊重の経営」を経営哲学に掲げ、「世界にひろがる生活文化創造企業を目指す」ことを経営理念とし、「CS(顧客満足)、ES(社員満足)、SS(社会満足)、SHS(株主満足)を向上させる」ことを行動指針として、全ての企業活動を進めています。
時代を超えてこれらの経営哲学や経営理念、行動指針は不変のものとし継続しながらも、時代に応じて読み替えながら進化させることで、創業200周年に向け持続的な成長を目指していきます。
具体的には、生活文化創造企業として貢献する対象を、生活者だけでなく、生命や地球環境まで拡げ、これらの課題解決に取り組むことで、すべての対象がいきいきと共生する世界の実現に貢献してまいります。
また価値革新への追求や、リスクマネジメントの高度化も含めた、自らの持続的成長を可能にする企業体質への変革と、すべてのステークホルダーの持続に貢献する長期的な視点での満足度の向上に努めていきます。
(2) 中長期的な経営戦略
当企業グループでは、長期構想を10年単位で掲げているなか、次なるターゲットである2027年に向けて提供していく価値を「For a Vibrant World」と定め、「100年レンジでの持続的成長が可能な企業体質に変革し、すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループ」を目指しており、この第一ステップの中期経営計画「SIC(Scientific Innovation Chain)-Ⅰ」(2018年度~2020年度)では、「ターゲット設定と具体的な行動でイノベーションの連鎖の起点を立て続けに打つ」のスローガンのもと事業活動を推進してきました。本中期経営計画期間においては、デジタル化の急速な進展による構造的な市場縮小や、世界的な環境規制強化による原材料価格の高騰に加え、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化といった事業環境の悪化により、目標とする業績には及びませんでしたものの、不採算事業や地域での構造改革を実行するとともに、ポリマー・塗加工関連やパッケージ関連事業への収益シフトを進め、また、リチウムイオン電池材料やセンサー向け材料、メディカル関連材料などの新事業にも資源を投入してきました。
第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年度~2023年度)においては、新型コロナウイルスの影響により変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、3つの基本方針「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」のもと、その実現に取り組んでまいります。
「事業の収益力強化」では、戦略的な高収益事業群の形成と低収益事業の継続的な再編や改革により、持続成長が可能な強靭な事業ポートフォリオの構築を目指します。グローバルでのパッケージ市場に向けた環境調和型のインキや接着剤の展開、5GやIoT市場関連部材の拡販により、収益源の事業をさらに伸長させるほか、貼付型医薬品の開発促進やリチウムイオン電池材料の育成などにより、新たな収益の柱の確立を目指します。一方で、構造的な市場縮小が続く出版・商業印刷向けインキや顔料事業については、事業効率を高めるための構造改革を継続し、収益体質の強化を進めていきます。また、「重点開発領域の創出と拡大」では、研究開発機能を再配置するとともに、重点開発領域への資源配分を強化することで、新たな社会のニーズに対して強固な技術基盤を応用展開し、事業の創出と拡大を加速させます。サスティナブルサイエンスドメインでは、環境調和型製品やリサイクルシステムなどを展開し、持続可能でグリーンな社会の実現に向けた新素材やシステムを提供していきます。コミュニケーションサイエンスドメインでは、センサー向け材料や導電材料などデバイスの基盤となるキー素材とソリューションで5G・IoT社会への貢献を目指します。ライフサイエンスドメインでは、メディカルや次世代印刷分野で、人々の生活を豊か・健やかにする製品やソリューション創出へ挑戦いたします。さらには、「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み強化により企業体質を改善し、企業インフラである経営資源価値の向上に努めていきます。

(3) 対処すべき課題
中期経営計画「SIC-Ⅱ」の初年度である次期連結会計年度では、以下のように各事業を推進していきます。
色材・機能材関連事業では、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料で、中国市場を中心に差別化製品によるシェア拡大を進めていくことに加え、センサー向け材料では、独自の開発、品質保証体制を整備し拡販を図ります。また、車載用リチウムイオン電池材料の米国や欧州拠点の円滑な立ち上げを進めるうえ、インクジェット用インキ関連事業を再編し、顔料合成からの一貫開発体制により競争力を高めていきます。
ポリマー・塗加工関連事業では、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社を2021年1月に合併し、環境調和型粘着剤や無溶剤のホットメルト(熱溶融型接着剤)の技術融合を図り、環境、エレクトロニクス、ヘルスケア市場に向けてイノベーション製品やサービスの開発を強化します。また、国内、インド、米国、中国などで生産体制の強化を進めますほか、5G関連市場では、低誘電や導電性などを訴求した差別化製品で拡販を推進します。
パッケージ関連事業では、中国の新工場の早期立ち上げやトルコでの円滑な新工場建設で、堅調な需要に対する供給体制を整えていきますほか、伸長する東南アジア、インドへの集中的な資源投入も行いさらなる拡販を図ります。また、高まる環境意識や安全衛生ニーズに対応して、環境対応製品群や抗菌・抗ウイルス製品群、リサイクルなどの環境システム構築について展開を加速させていきます。
印刷・情報関連事業では、UVインキの原材料のコストダウンを継続的に進めることに加え、シールラベルや紙器などのパッケージ市場への展開を強化します。また、市場の縮小に対応した構造改革をさらに進めて体質を強化します。
これらに加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、あらゆる事業プロセスをデジタルの力で進化させるとともに、ガバナンスやリスクマネジメントの強化により経営資源の価値を高め、社会環境が大きく変化するなか、柔軟かつ強靭に企業活動を継続してまいります。