有価証券報告書-第112期(2022/01/01-2022/12/31)
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
(単位:億円)
<連結損益の概要(IFRSベース)>当連結会計年度の売上収益は12,599億円(前年同期比26.0%増)、営業利益は5,333億円(同26.4%増)、当期利益は3,744億円(同23.6%増)となりました。これらには無形資産の償却費17億円、無形資産の減損損失6億円及び事業所再編費用等68億円に加え、当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約に関わる収入等907億円など、当社が管理する経常的業績(Coreベース)から除外している項目が含まれています。
<連結損益の概要(Coreベース)>当連結会計年度の売上収益は、ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入は大きく減少したものの、製商品売上高の大幅な伸長により、11,680億円(前年同期比16.8%増)となりました。
売上収益のうち、製商品売上高は10,392億円(同29.4%増)となりました。国内製商品売上高は、薬価改定や後発品の影響を受けたものの、新製品のエブリスディ、ポライビー、エンスプリング、バビースモの順調な市場浸透や、主力品のヘムライブラやカドサイラの好調な推移に加え、ロナプリーブの政府納入を主因として前年比で増加しました。海外製商品売上高は、ロシュ向けのアレセンサ輸出が減少した一方で、ヘムライブラ及びアクテムラの輸出が大幅に増加し、前年を大きく上回りました。ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入は、ヘムライブラの初期出荷分に関するロイヤルティ収入の大幅な減少により1,288億円(同34.6%減)となりました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により45.7%と前年同期比で3.9%ポイント上昇しました。これらの結果、売上総利益は6,930億円(同4.3%増)となりました。
経費については、2,413億円(同4.8%増)となりました。販売費は為替影響等により767億円(同1.2%増)、研究開発費は開発プロジェクトの進展に伴う費用の増加や為替影響等により1,437億円(同10.7%増)でした。一般管理費等は諸経費等が減少したことに加えて有形固定資産の売却益が発生し209億円(同15.0%減)となりました。以上から、営業利益は4,517億円(同4.1%増)、当期利益は3,177億円(同2.0%増)となりました。
なお、ロシア及びウクライナの情勢変化による当連結会計年度での業績影響については、当社は当該国内において直接的な事業活動を展開しておらず、製造委託先や原材料の仕入れ先はありませんが、これらの情勢変化等に起因するエネルギー価格等の高騰により、一部の原価や経費が増加しています。また、当該国及び周辺国において、一部のロシュ主導試験の進捗に影響がみられているものの、開発活動全体への影響は限定的です。
※Core実績について
当社はIFRS移行を機に2013年よりCore実績を開示しております。Core実績とは、IFRS実績に当社が非経常事項と捉える事項の調整を行ったものであります。なお、当社が非経常事項と捉える事項は、事業規模や範囲などの違いによりロシュと判断が異なる場合があります。当社ではCore実績を、社内の業績管理、社内外への経常的な収益性の推移の説明、並びに株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標として使用しております。
株主還元を行う際の指標には、Core EPS及びCore配当性向を指標として使用しております。Core EPSは、Core実績をもとに算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であり、Core配当性向は、Core EPS対比の配当性向です。
<製商品売上高の内訳>(単位:億円)
[国内製商品売上高]
国内製商品売上高は、薬価改定や後発品浸透の影響を大きく受けたものの、主力品及び新製品の好調な市場浸透により、6,547億円(前年同期比26.2%増)となりました。
オンコロジー領域の売上は、2,560億円(同2.1%減)となりました。新製品の抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー」の適応拡大による順調な市場浸透や、抗悪性腫瘍剤/抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体「カドサイラ」の堅調な推移、遺伝子変異解析プログラムFoundation Medicine**の検査数の伸長により売上が増加しました。一方、薬価改定及び後発品浸透の影響により抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」や抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」の売上が減少し、抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」も主に2021年8月の市場拡大再算定の影響により売上が減少しました。
スペシャリティ領域の売上は、3,986億円(同54.9%増)となりました。薬価改定及び後発品浸透の影響により、骨粗鬆症治療剤「エディロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」などの売上が減少したものの、主力品の血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤「ヘムライブラ」が好調に推移しました。新製品では2021年7月に特例承認された抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入による売上が大幅に増加したことに加え、脊髄性筋萎縮症治療剤「エブリスディ」、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」、眼科用VEGF/Ang-2阻害剤/抗VEGF/抗Ang-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「バビースモ」の順調な市場浸透が寄与しました。また、2022年8月にアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を適応症としてマルホ株式会社が新発売したヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ミチーガ」について、同社への製品提供の売上が計上されました。
* 2022年7月より領域名称を「プライマリー」から「スペシャリティ」に変更
** 「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイリング」及び「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイリング」
[海外製商品売上高]
海外製商品売上高は3,846億円(前年同期比35.5%増)で、前年を大幅に上回りました。ロシュ向け輸出については、抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」が前年比で減少したものの、通常出荷価格での輸出本格化に伴い「ヘムライブラ」が1,911億円(同70.6%増)と大幅に増加しました。加えて、重症の新型コロナウイルス治療薬、入院中の成人COVID-19治療薬としてそれぞれ欧州、米国で承認を取得した「アクテムラ」も1,262億円(同26.1%増)と好調に推移しました。また、2022年7月に中国で発売した「エディロール」の売上高は1億円でした。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における純営業資産(NOA)は前連結会計年度末に比べ2,267億円増加し、9,993億円となりました。うち、純運転資本は、ロナプリーブ等の営業債権の増加などにより前連結会計年度末に比べ1,815億円増加し5,516億円となりました。また、長期純営業資産は主に中外ライフサイエンスパーク横浜及び藤枝工場における合成原薬製造棟(FJ3)への投資により前連結会計年度末から454億円増加し、4,478億円となりました。
次項「③ キャッシュ・フローの状況」で示すとおり、有価証券や有利子負債を含むネット現金は前連結会計年度末に比べ311億円増加し、5,031億円となりました。その他の営業外純資産は、主に為替予約負債の増加等により前連結会計年度末から216億円減少し、△781億円となりました。
これらの結果、純資産合計は前連結会計年度末に比べ2,364億円増加し、14,244億円となりました。
※純営業資産(NOA)及び純資産について
連結財政状態計算書は国際会計基準第1号「財務諸表の表示」に基づいて作成しております。一方で、純営業資産(NOA)及び純資産は、連結財政状態計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、純営業資産(NOA)及び純資産にはCore実績のような除外事項はありません。
※純営業資産(NOA)について
純営業資産(NOA:Net Operating Assets)は金融取引や税務上の取引とは独立に当社グループの業績を評価することを可能としております。純営業資産は純運転資本及び有形固定資産、使用権資産、無形資産等を含む長期純営業資産から引当金を控除することで計算しております。
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
営業利益から、営業利益に含まれる減価償却費などのすべての非現金損益項目及び純営業資産に係るすべての非損益現金流出入を調整した調整後営業利益は、5,706億円(前年同期比22.3%増)となりました。
純運転資本等の増加1,833億円及び有形固定資産の取得による支出626億円等があった一方で、営業利益の増益により、営業フリー・キャッシュ・フローは3,084億円(同2.3%増)の収入となりました。純運転資本等の増加要因は前項「② 財政状態の状況」に記載したとおりです。
営業フリー・キャッシュ・フローから法人所得税1,521億円を支払ったこと等により、フリー・キャッシュ・フローは1,664億円(同12.1%減)の収入となりました。
フリー・キャッシュ・フローから配当金の支払1,382億円等を調整したネット現金の純増減は311億円の増加となりました。
また、有価証券及び有利子負債の増減を除いた現金及び現金同等物は456億円減少し、当期末残高は2,222億円となりました。
※フリー・キャッシュ・フロー(FCF)について
連結キャッシュ・フロー計算書は国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に基づいて作成しております。一方で、FCFは、連結キャッシュ・フロー計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、FCFにはCore実績のような除外事項はありません。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産の状況
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
(注)1.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は売価換算(仕切単価ベース)であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
2.当連結会計年度において、医薬品事業の生産が著しく増加しております。これは、主に抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入に伴うものです。
b. 商品仕入実績
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の商品仕入実績は次のとおりであります。
(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は実際仕入高であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
c. 受注の状況
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売の状況
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は百万円未満を四捨五入して記載しております。
3.販売高は売上収益(製商品売上高とロイヤルティ等収入及びその他の営業収入、その他の収入)であります。
4.当連結会計年度において、医薬品事業の販売高が著しく増加しております。これは、主に抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入、及び当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約による一時金収入などに伴うものです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況 及び ② 財政状態の状況」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、これまで、運転資金並びに設備投資及び研究開発活動を自己資金で充当しております。2021年度に始動しましたTOP I 2030 は「R&Dアウトプットの持続的な創出」に代表されるイノベーションへの継続的な経営資源の配分を掲げています。引き続き資金流動性の確保と事業活動から創出されるキャッシュ・インフローの最大化に努めるとともに、継続的なイノベーション投資に必要な財務健全性を維持していく方針です。また、計画外の急な資金需要が生じた場合の財源につきましては、金融機関からの借入や短期社債等を利用するなどの体制を整えており、既存の手許資金も含めて十分な流動性を確保しております。
今後についても資本財源は事業活動を通じて獲得した資金を基盤とする方針であり、継続的なイノベーションへの投資を通じ、持続的な企業価値の向上を目指す方針です。なお、資本配分としての配当につきましては、継続的で安定的な配当の実施を目標としており、Core EPS 対比45%(5年平均)を目安としております。
③ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度においては、Core売上収益は、主にヘムライブラやアクテムラのロシュ向け輸出の増加や、国内における新製品・主力品の好調な市場浸透に加え、ロナプリーブの政府納入もあり11,680億円(公表予想比1.6%増)となり、当社として初めて1兆円を超えました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により45.7%(同1.1%増)、経費は2,413億円(同3.5%減)となりました。この結果、Core営業利益は、公表予想を上回る4,517億円(同2.7%増)となり、6期連続で過去最高の売上収益・営業利益を達成しました。また、長期にわたる投資効率の指標として重点的に管理することとしているCore ROICの実績は、ロナプリーブ政府納入に伴う期中平均純営業資産の大幅な増加により、前年を下回る36.1%となりました。
2021年に開始した成長戦略「TOP I 2030」の2年目となる2022年は、創薬、開発、製薬、Value Delivery、成長基盤という5つの改革分野で設定している中期マイルストン(3~5年後の目標)に対し、着実な進展が見られました。
創薬においては、抗体、低分子に続く第3のモダリティとして注力する中分子医薬品について、初のプロジェクトである抗がん剤LUNA18の臨床試験が進行するとともに、製造体制の構築も着実に進展しております。後続プロジェクトの継続的な創出や競争優位性を高める新技術の開発についても中期マイルストン目標達成に向けて、着実に進展しております。また、自社の強みとする抗体医薬品においても、次世代抗体技術の開発とプロジェクトの創出が進んでおります。こうした自社の技術基盤を強化するとともに、本年はCAR-T細胞療法であるPRIME(Proliferation inducing and migration enhancing)技術に関しノイルイミューン・バイオテック社とライセンス契約を締結するなど、外部連携の活用等により革新的なモダリティの開発も進捗しています。加えて、10月には当社の新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」が竣工しました。これまで富士御殿場研究所及び鎌倉研究所の二カ所に分散していた創薬研究拠点を統合し、一カ所に集約することで、創薬力を最大限に発揮する体制が整いました。
開発については、2022年は合計12プロジェクトが承認・発売され、新薬・適応拡大を含め3プロジェクトが承認申請に移行しました。また、ロシュ品・自社品含めて計6プロジェクトの第Ⅲ相国際共同治験、6プロジェクトの第Ⅰ相臨床試験を開始しました。引き続き、画期的な医薬品をより速く、より多くの患者さんにお届けできるよう、臨床予測性の向上や複数疾患の同時開発、後期臨床開発オペレーションの進化に向けた活動も進展しています。
製薬では、R&Dアウトプット倍増への対応及び効率的な生産体制の実現を目指し、7月に製薬技術本部・生産技術本部の二本部に分割しました。生産機能においては、効率的で質の高い生産プロセスを支えるデジタル基盤を構築し、グループ会社である中外製薬工業株式会社の浮間工場にて稼働しました。また、両機能強化を目指し浮間事業所の隣接用地の購入契約を締結いたしました。これらに加え、バイオ原薬開発・製造体制や効率的な生産体制の構築に向けて、順調に進展しております。
Value Deliveryにおいては、多様化する顧客ニーズに対応すべく、リアル・リモート・デジタルを組み合わせた最適な顧客エンゲージメントモデルを構築し、医療従事者や患者さんが求める情報を的確かつ迅速に提供できる体制の強化が進んでいます。7月には営業本部の組織改正を行い、より高度・専門的な情報提供を行うべく、オンコロジー/スペシャリティの2領域体制に再編しました。加えて、デジタルMSL・オンラインMR等の取組みを開始し、新たな情報提供チャネルも拡充しております。また、個別化医療に資する独自エビデンスの創出を目指し、社内外データの統合的な活用にも取り組んでいます。
成長基盤は、D&Iの推進とともに、会社のビジョンや目標の達成に向けて自発的・能動的に行動できる人財の増加を目指す「人・組織」について、2022年は社員意識調査を実施し、グループ全体で活躍社員の出現率は高水準を維持していることを確認いたしました。引き続き中期マイルストン目標であるグローバル好業績企業と同水準まで向上できるよう、取り組んでまいります。また、女性活躍推進に優れた上場企業として2年連続で「なでしこ銘柄」に選定されております。新薬創出力の高度化・効率化や全てのバリューチェーン効率化の柱である「デジタル」については、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に3年連続で選定されるとともに、「DXグランプリ2022」に初選定されました。世界水準でのサステナブル基盤としての「環境」については、世界の代表的なESG評価指数である「Dow Jones Sustainability Index World」の3年連続選定(医薬品企業で世界最高の評価)など、当社の事業活動を通じたESGの取り組みが高く評価されました。その他、新モダリティ・新ビジネスプロセスを見据えた質と効率を両立する次世代クオリティマネジメントを目指す「クオリティ」、そして事業化を目指す「インサイトビジネス」など、イノベーション創出に必要な成長基盤の強化を図っています。なお、10月には関係会社変革の一環として人財マネジメント改革を実施し、関係会社への出向者が各関係会社に転籍しております。これにより、関係会社における自律的な事業運営が加速し、オペレーションの高度化・効率化が実現するとともに、中外製薬グループ全体での生産性向上とイノベーション創出に貢献すると考えております。
※ROICについて
投下資本利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを知ることができます。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループはIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 1.重要な会計方針等 (2)重要な会計上の判断、見積り及び前提」に記載のとおりです。
① 経営成績の状況
(単位:億円)
| 2022年 12月期実績 | 2021年 12月期実績 | 前年同期比 | ||
| 連結損益(Core実績) | ||||
| 売上収益 | 11,680 | 9,998 | +16.8 | % |
| 製商品売上高 | 10,392 | 8,028 | +29.4 | % |
| ロイヤルティ等収入及び その他の営業収入 | 1,288 | 1,969 | △34.6 | % |
| 売上原価 | △4,750 | △3,355 | +41.6 | % |
| 売上総利益 | 6,930 | 6,643 | +4.3 | % |
| 販売費 | △767 | △758 | +1.2 | % |
| 研究開発費 | △1,437 | △1,298 | +10.7 | % |
| 一般管理費等 | △209 | △246 | △15.0 | % |
| 営業利益 | 4,517 | 4,341 | +4.1 | % |
| 当期利益 | 3,177 | 3,115 | +2.0 | % |
| 連結損益(IFRS実績) | ||||
| 売上収益 | 12,599 | 9,998 | +26.0 | % |
| 営業利益 | 5,333 | 4,219 | +26.4 | % |
| 当期利益 | 3,744 | 3,030 | +23.6 | % |
| Core EPS(円) | 193.11 | 189.35 | +2.0 | % |
| Core 配当性向(%) | 40.4 | 40.1 | - | |
<連結損益の概要(IFRSベース)>当連結会計年度の売上収益は12,599億円(前年同期比26.0%増)、営業利益は5,333億円(同26.4%増)、当期利益は3,744億円(同23.6%増)となりました。これらには無形資産の償却費17億円、無形資産の減損損失6億円及び事業所再編費用等68億円に加え、当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約に関わる収入等907億円など、当社が管理する経常的業績(Coreベース)から除外している項目が含まれています。
<連結損益の概要(Coreベース)>当連結会計年度の売上収益は、ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入は大きく減少したものの、製商品売上高の大幅な伸長により、11,680億円(前年同期比16.8%増)となりました。
売上収益のうち、製商品売上高は10,392億円(同29.4%増)となりました。国内製商品売上高は、薬価改定や後発品の影響を受けたものの、新製品のエブリスディ、ポライビー、エンスプリング、バビースモの順調な市場浸透や、主力品のヘムライブラやカドサイラの好調な推移に加え、ロナプリーブの政府納入を主因として前年比で増加しました。海外製商品売上高は、ロシュ向けのアレセンサ輸出が減少した一方で、ヘムライブラ及びアクテムラの輸出が大幅に増加し、前年を大きく上回りました。ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入は、ヘムライブラの初期出荷分に関するロイヤルティ収入の大幅な減少により1,288億円(同34.6%減)となりました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により45.7%と前年同期比で3.9%ポイント上昇しました。これらの結果、売上総利益は6,930億円(同4.3%増)となりました。
経費については、2,413億円(同4.8%増)となりました。販売費は為替影響等により767億円(同1.2%増)、研究開発費は開発プロジェクトの進展に伴う費用の増加や為替影響等により1,437億円(同10.7%増)でした。一般管理費等は諸経費等が減少したことに加えて有形固定資産の売却益が発生し209億円(同15.0%減)となりました。以上から、営業利益は4,517億円(同4.1%増)、当期利益は3,177億円(同2.0%増)となりました。
なお、ロシア及びウクライナの情勢変化による当連結会計年度での業績影響については、当社は当該国内において直接的な事業活動を展開しておらず、製造委託先や原材料の仕入れ先はありませんが、これらの情勢変化等に起因するエネルギー価格等の高騰により、一部の原価や経費が増加しています。また、当該国及び周辺国において、一部のロシュ主導試験の進捗に影響がみられているものの、開発活動全体への影響は限定的です。
※Core実績について
当社はIFRS移行を機に2013年よりCore実績を開示しております。Core実績とは、IFRS実績に当社が非経常事項と捉える事項の調整を行ったものであります。なお、当社が非経常事項と捉える事項は、事業規模や範囲などの違いによりロシュと判断が異なる場合があります。当社ではCore実績を、社内の業績管理、社内外への経常的な収益性の推移の説明、並びに株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標として使用しております。
株主還元を行う際の指標には、Core EPS及びCore配当性向を指標として使用しております。Core EPSは、Core実績をもとに算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であり、Core配当性向は、Core EPS対比の配当性向です。
<製商品売上高の内訳>(単位:億円)
| 2022年 12月期実績 | 2021年 12月期実績 | 前年同期比 | ||
| 製商品売上高 | 10,392 | 8,028 | +29.4 | % |
| 国内製商品売上高 | 6,547 | 5,189 | +26.2 | % |
| オンコロジー領域 | 2,560 | 2,615 | △2.1 | % |
| スペシャリティ領域* | 3,986 | 2,574 | +54.9 | % |
| 海外製商品売上高 | 3,846 | 2,839 | +35.5 | % |
[国内製商品売上高]
国内製商品売上高は、薬価改定や後発品浸透の影響を大きく受けたものの、主力品及び新製品の好調な市場浸透により、6,547億円(前年同期比26.2%増)となりました。
オンコロジー領域の売上は、2,560億円(同2.1%減)となりました。新製品の抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー」の適応拡大による順調な市場浸透や、抗悪性腫瘍剤/抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体「カドサイラ」の堅調な推移、遺伝子変異解析プログラムFoundation Medicine**の検査数の伸長により売上が増加しました。一方、薬価改定及び後発品浸透の影響により抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」や抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」の売上が減少し、抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」も主に2021年8月の市場拡大再算定の影響により売上が減少しました。
スペシャリティ領域の売上は、3,986億円(同54.9%増)となりました。薬価改定及び後発品浸透の影響により、骨粗鬆症治療剤「エディロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」などの売上が減少したものの、主力品の血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤「ヘムライブラ」が好調に推移しました。新製品では2021年7月に特例承認された抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入による売上が大幅に増加したことに加え、脊髄性筋萎縮症治療剤「エブリスディ」、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」、眼科用VEGF/Ang-2阻害剤/抗VEGF/抗Ang-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「バビースモ」の順調な市場浸透が寄与しました。また、2022年8月にアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を適応症としてマルホ株式会社が新発売したヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ミチーガ」について、同社への製品提供の売上が計上されました。
* 2022年7月より領域名称を「プライマリー」から「スペシャリティ」に変更
** 「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイリング」及び「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイリング」
[海外製商品売上高]
海外製商品売上高は3,846億円(前年同期比35.5%増)で、前年を大幅に上回りました。ロシュ向け輸出については、抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」が前年比で減少したものの、通常出荷価格での輸出本格化に伴い「ヘムライブラ」が1,911億円(同70.6%増)と大幅に増加しました。加えて、重症の新型コロナウイルス治療薬、入院中の成人COVID-19治療薬としてそれぞれ欧州、米国で承認を取得した「アクテムラ」も1,262億円(同26.1%増)と好調に推移しました。また、2022年7月に中国で発売した「エディロール」の売上高は1億円でした。
② 財政状態の状況
| (単位:億円) | |||
| 2022年 期末実績 | 2021年 期末実績 | 前期末比 | |
| 純営業資産(NOA)及び純資産 | |||
| 純運転資本 | 5,516 | 3,701 | 1,815 |
| 長期純営業資産 | 4,478 | 4,024 | 454 |
| 純営業資産(NOA) | 9,993 | 7,726 | 2,267 |
| ネット現金 | 5,031 | 4,720 | 311 |
| その他の営業外純資産 | △781 | △565 | △216 |
| 純資産合計 | 14,244 | 11,880 | 2,364 |
| 連結財政状態計算書(IFRS実績) | |||
| 資産合計 | 18,698 | 15,387 | 3,311 |
| 負債合計 | △4,454 | △3,507 | △947 |
| 純資産合計 | 14,244 | 11,880 | 2,364 |
当連結会計年度末における純営業資産(NOA)は前連結会計年度末に比べ2,267億円増加し、9,993億円となりました。うち、純運転資本は、ロナプリーブ等の営業債権の増加などにより前連結会計年度末に比べ1,815億円増加し5,516億円となりました。また、長期純営業資産は主に中外ライフサイエンスパーク横浜及び藤枝工場における合成原薬製造棟(FJ3)への投資により前連結会計年度末から454億円増加し、4,478億円となりました。
次項「③ キャッシュ・フローの状況」で示すとおり、有価証券や有利子負債を含むネット現金は前連結会計年度末に比べ311億円増加し、5,031億円となりました。その他の営業外純資産は、主に為替予約負債の増加等により前連結会計年度末から216億円減少し、△781億円となりました。
これらの結果、純資産合計は前連結会計年度末に比べ2,364億円増加し、14,244億円となりました。
※純営業資産(NOA)及び純資産について
連結財政状態計算書は国際会計基準第1号「財務諸表の表示」に基づいて作成しております。一方で、純営業資産(NOA)及び純資産は、連結財政状態計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、純営業資産(NOA)及び純資産にはCore実績のような除外事項はありません。
※純営業資産(NOA)について
純営業資産(NOA:Net Operating Assets)は金融取引や税務上の取引とは独立に当社グループの業績を評価することを可能としております。純営業資産は純運転資本及び有形固定資産、使用権資産、無形資産等を含む長期純営業資産から引当金を控除することで計算しております。
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
| 2022年 12月期実績 | 2021年 12月期実績 | 前年同期比 | ||
| フリー・キャッシュ・フロー | ||||
| 営業利益 | 5,333 | 4,219 | +26.4 | % |
| 調整後営業利益 | 5,706 | 4,664 | +22.3 | % |
| 営業フリー・キャッシュ・フロー | 3,084 | 3,014 | +2.3 | % |
| フリー・キャッシュ・フロー | 1,664 | 1,894 | △12.1 | % |
| ネット現金の純増減 | 311 | 934 | △66.7 | % |
| 連結キャッシュ・フロー計算書(IFRS実績) | ||||
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,441 | 2,796 | △12.7 | % |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △1,460 | △1,189 | +22.8 | % |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △1,456 | △1,074 | +35.6 | % |
| 現金及び現金同等物の増減額 | △456 | 555 | - | % |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,222 | 2,678 | △17.0 | % |
営業利益から、営業利益に含まれる減価償却費などのすべての非現金損益項目及び純営業資産に係るすべての非損益現金流出入を調整した調整後営業利益は、5,706億円(前年同期比22.3%増)となりました。
純運転資本等の増加1,833億円及び有形固定資産の取得による支出626億円等があった一方で、営業利益の増益により、営業フリー・キャッシュ・フローは3,084億円(同2.3%増)の収入となりました。純運転資本等の増加要因は前項「② 財政状態の状況」に記載したとおりです。
営業フリー・キャッシュ・フローから法人所得税1,521億円を支払ったこと等により、フリー・キャッシュ・フローは1,664億円(同12.1%減)の収入となりました。
フリー・キャッシュ・フローから配当金の支払1,382億円等を調整したネット現金の純増減は311億円の増加となりました。
また、有価証券及び有利子負債の増減を除いた現金及び現金同等物は456億円減少し、当期末残高は2,222億円となりました。
※フリー・キャッシュ・フロー(FCF)について
連結キャッシュ・フロー計算書は国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に基づいて作成しております。一方で、FCFは、連結キャッシュ・フロー計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、FCFにはCore実績のような除外事項はありません。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産の状況
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 医薬品事業 | 1,119,167 | 29.0 |
| 合計 | 1,119,167 | 29.0 |
(注)1.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は売価換算(仕切単価ベース)であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
2.当連結会計年度において、医薬品事業の生産が著しく増加しております。これは、主に抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入に伴うものです。
b. 商品仕入実績
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の商品仕入実績は次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 医薬品事業 | 3,009 | △3.2 |
| 合計 | 3,009 | △3.2 |
(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は実際仕入高であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
c. 受注の状況
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売の状況
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前年同期比(%) |
| 医薬品事業 | 1,259,946 | 26.0 |
| 合計 | 1,259,946 | 26.0 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 当連結会計年度 | 前連結会計年度 | ||
| 販売高 (百万円) | 割合 (%) | 販売高 (百万円) | 割合 (%) | |
| エフ・ホフマン・ラ・ ロシュ・リミテッド | 482,737 | 41.3 | 450,217 | 45.0 |
| 厚生労働省 | 203,655 | 17.4 | 77,449 | 7.7 |
| アルフレッサ株式会社 | 91,655 | 7.8 | 104,690 | 10.5 |
2.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は百万円未満を四捨五入して記載しております。
3.販売高は売上収益(製商品売上高とロイヤルティ等収入及びその他の営業収入、その他の収入)であります。
4.当連結会計年度において、医薬品事業の販売高が著しく増加しております。これは、主に抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入、及び当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約による一時金収入などに伴うものです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況 及び ② 財政状態の状況」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、これまで、運転資金並びに設備投資及び研究開発活動を自己資金で充当しております。2021年度に始動しましたTOP I 2030 は「R&Dアウトプットの持続的な創出」に代表されるイノベーションへの継続的な経営資源の配分を掲げています。引き続き資金流動性の確保と事業活動から創出されるキャッシュ・インフローの最大化に努めるとともに、継続的なイノベーション投資に必要な財務健全性を維持していく方針です。また、計画外の急な資金需要が生じた場合の財源につきましては、金融機関からの借入や短期社債等を利用するなどの体制を整えており、既存の手許資金も含めて十分な流動性を確保しております。
今後についても資本財源は事業活動を通じて獲得した資金を基盤とする方針であり、継続的なイノベーションへの投資を通じ、持続的な企業価値の向上を目指す方針です。なお、資本配分としての配当につきましては、継続的で安定的な配当の実施を目標としており、Core EPS 対比45%(5年平均)を目安としております。
③ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度においては、Core売上収益は、主にヘムライブラやアクテムラのロシュ向け輸出の増加や、国内における新製品・主力品の好調な市場浸透に加え、ロナプリーブの政府納入もあり11,680億円(公表予想比1.6%増)となり、当社として初めて1兆円を超えました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により45.7%(同1.1%増)、経費は2,413億円(同3.5%減)となりました。この結果、Core営業利益は、公表予想を上回る4,517億円(同2.7%増)となり、6期連続で過去最高の売上収益・営業利益を達成しました。また、長期にわたる投資効率の指標として重点的に管理することとしているCore ROICの実績は、ロナプリーブ政府納入に伴う期中平均純営業資産の大幅な増加により、前年を下回る36.1%となりました。
2021年に開始した成長戦略「TOP I 2030」の2年目となる2022年は、創薬、開発、製薬、Value Delivery、成長基盤という5つの改革分野で設定している中期マイルストン(3~5年後の目標)に対し、着実な進展が見られました。
創薬においては、抗体、低分子に続く第3のモダリティとして注力する中分子医薬品について、初のプロジェクトである抗がん剤LUNA18の臨床試験が進行するとともに、製造体制の構築も着実に進展しております。後続プロジェクトの継続的な創出や競争優位性を高める新技術の開発についても中期マイルストン目標達成に向けて、着実に進展しております。また、自社の強みとする抗体医薬品においても、次世代抗体技術の開発とプロジェクトの創出が進んでおります。こうした自社の技術基盤を強化するとともに、本年はCAR-T細胞療法であるPRIME(Proliferation inducing and migration enhancing)技術に関しノイルイミューン・バイオテック社とライセンス契約を締結するなど、外部連携の活用等により革新的なモダリティの開発も進捗しています。加えて、10月には当社の新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」が竣工しました。これまで富士御殿場研究所及び鎌倉研究所の二カ所に分散していた創薬研究拠点を統合し、一カ所に集約することで、創薬力を最大限に発揮する体制が整いました。
開発については、2022年は合計12プロジェクトが承認・発売され、新薬・適応拡大を含め3プロジェクトが承認申請に移行しました。また、ロシュ品・自社品含めて計6プロジェクトの第Ⅲ相国際共同治験、6プロジェクトの第Ⅰ相臨床試験を開始しました。引き続き、画期的な医薬品をより速く、より多くの患者さんにお届けできるよう、臨床予測性の向上や複数疾患の同時開発、後期臨床開発オペレーションの進化に向けた活動も進展しています。
製薬では、R&Dアウトプット倍増への対応及び効率的な生産体制の実現を目指し、7月に製薬技術本部・生産技術本部の二本部に分割しました。生産機能においては、効率的で質の高い生産プロセスを支えるデジタル基盤を構築し、グループ会社である中外製薬工業株式会社の浮間工場にて稼働しました。また、両機能強化を目指し浮間事業所の隣接用地の購入契約を締結いたしました。これらに加え、バイオ原薬開発・製造体制や効率的な生産体制の構築に向けて、順調に進展しております。
Value Deliveryにおいては、多様化する顧客ニーズに対応すべく、リアル・リモート・デジタルを組み合わせた最適な顧客エンゲージメントモデルを構築し、医療従事者や患者さんが求める情報を的確かつ迅速に提供できる体制の強化が進んでいます。7月には営業本部の組織改正を行い、より高度・専門的な情報提供を行うべく、オンコロジー/スペシャリティの2領域体制に再編しました。加えて、デジタルMSL・オンラインMR等の取組みを開始し、新たな情報提供チャネルも拡充しております。また、個別化医療に資する独自エビデンスの創出を目指し、社内外データの統合的な活用にも取り組んでいます。
成長基盤は、D&Iの推進とともに、会社のビジョンや目標の達成に向けて自発的・能動的に行動できる人財の増加を目指す「人・組織」について、2022年は社員意識調査を実施し、グループ全体で活躍社員の出現率は高水準を維持していることを確認いたしました。引き続き中期マイルストン目標であるグローバル好業績企業と同水準まで向上できるよう、取り組んでまいります。また、女性活躍推進に優れた上場企業として2年連続で「なでしこ銘柄」に選定されております。新薬創出力の高度化・効率化や全てのバリューチェーン効率化の柱である「デジタル」については、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に3年連続で選定されるとともに、「DXグランプリ2022」に初選定されました。世界水準でのサステナブル基盤としての「環境」については、世界の代表的なESG評価指数である「Dow Jones Sustainability Index World」の3年連続選定(医薬品企業で世界最高の評価)など、当社の事業活動を通じたESGの取り組みが高く評価されました。その他、新モダリティ・新ビジネスプロセスを見据えた質と効率を両立する次世代クオリティマネジメントを目指す「クオリティ」、そして事業化を目指す「インサイトビジネス」など、イノベーション創出に必要な成長基盤の強化を図っています。なお、10月には関係会社変革の一環として人財マネジメント改革を実施し、関係会社への出向者が各関係会社に転籍しております。これにより、関係会社における自律的な事業運営が加速し、オペレーションの高度化・効率化が実現するとともに、中外製薬グループ全体での生産性向上とイノベーション創出に貢献すると考えております。
※ROICについて
投下資本利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを知ることができます。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループはIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 1.重要な会計方針等 (2)重要な会計上の判断、見積り及び前提」に記載のとおりです。