有価証券報告書-第38期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 9:00
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、生物の生命維持に不可欠である免疫機構「抗体」について研鑽することによって、人類が病気から安全に免れるような治療用医薬品、診断用医薬品の開発や生活習慣病領域での検査サービスができるよう、独自の研究開発と大学・研究機関などとの共同研究の成果を製品の品質向上に結びつけるべく、研究開発活動を行っております。また、当社グループの成長戦略の柱とするカイコ繭中に、抗体を始めとした様々な安全性の高いタンパク質を発現させる技術を用いた、新しい生産系の確立に向けた研究開発活動を行っております。本技術では高い安全性を有する抗体医薬品等の生産開発など、医療に直接貢献できる事業を目標にしております。
このように、世界で難病に苦しむ人々が、1日も早く病気を克服し、明るく豊かな暮らしを営めるよう社会に貢献することを経営理念としております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、医薬品開発を目標とする創薬系バイオベンチャーであり、研究開発費が先行して発生いたしますが、当社グループの技術力から生産される独創的な製品の販売やサービスを国内外に提供し、安定的に黒字化を継続できる経営を目指してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループのセグメント別中長期経営戦略は、次のとおりであります。
・ 試薬・診断事業
研究用関連においては、積極的に海外プロモーションを実施するとともに、信頼出来る海外パートナーを獲得し、自社ブランドの抗体製品やキット製品の海外での販売ネットワークの拡大を目指してまいります。
医薬用関連については、牛海綿状脳症に対する動物用体外診断用医薬品ニッピブルBSE検査キットの販売が縮小していく中、認知症関連タンパク質として、アミロイドβと並び重要なターゲット分子であるタウタンパク質の測定系開発を進めておりましたが、体外診断用医薬品「Tauタンパク-IBL」「pTauタンパク-IBL」をリリース(2019年11月7日付)致しました。今後につきましては、診断・試薬事業のさらなる基盤強化を図ることを目的に、新規体外診断用医薬品・研究用試薬の開発における臨床研究を実施するために認可を取得した衛生検査所において、自社で開発した抗体を研究用試薬に留めることなく、診断薬や医薬品としての有用性を検証し、有用性が高いシーズについては自社での診断薬開発に着手してまいります。また、グローバルパートナーとの連携を強化し、広く世界で使用される診断薬製品の上市を目指してまいります。
・ 遺伝子組換えカイコ事業
遺伝子組換えカイコ事業においては、カイコの繭中に目的タンパク質を効率よく大量生産できる技術を改善・改良し、診断薬や化粧品原料への利用を拡大します。さらに医薬品への実用化を目指し、前橋研究所におけるGMP製造技術の開発に注力してまいります。
・ 検査事業
当事業の主な検査領域は、生活習慣病関連であり、そのユニークな技術を利用した詳細な検査に対する需要は、国内にとどまらず、海外においても今後も増加するものと予想されます。当事業は、現在、株式会社スカイライト・バイオテックの秋田ラボにおいて検査業務を行っておりますが、海外展開を視野に入れ、検査業務自体の海外導出を図ってまいります。また、当事業は、診断・試薬事業における研究開発の推進及び開発製品の需要拡大を目的とし、臨床検査事業の設立も視野に入れた、設備投資及び人材の育成を実施してまいります。
・ 化粧品関連事業
当事業は、遺伝子組換えカイコ事業により開発された化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンI」を使用した化粧品の製品開発、販売が主な事業となっております。製品開発におきましては、動物由来原料を一切使用しない「今までにない安心・安全を提供し、消費者の皆様が満足できる化粧品」をモットーに基礎化粧品をはじめ、消費者の皆様の要望される化粧品の開発を順次進めてまいります。販売におきましては、消費者の皆様へ直接お届けする通信販売により展開しておりますが、さらに、北関東・信州・東北を中心とするドラッグストアへのテスト販売も開始され、海外への展開も視野に入れ、世界中の化粧品業界及び消費者の皆様に向けて展開してまいります。また、今後につきましては、「ネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンI」の安全性を周知徹底し、化粧品業界に新風を吹き込み「すべての化粧品にネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンI」を実現していく所存です。
(4) 当社グループをめぐる業界や市場の動向等の経営環境
・ 医薬品業界
世界の医薬品関連事業を取り巻く環境は大きく変化し、高齢化社会、高ストレス社会の進展により、医薬品や診断薬に対する需要が伸び続けております。さらに、エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)や重症熱性血小板減少症候群などの、治療法がない、もしくは治療満足度の低い疾患が多数あり、そのような疾患に対する治療薬の開発が待たれており、医薬品事業の重要性は、ますます高まっているといえます。
しかしながら、創薬技術の高度化や医薬品承認要件の厳格化などにより、治療用医薬品あるいは診断用医薬品の開発には、多額の研究開発費と長い年月が必要であり、経営環境は厳しさを増しています。従って、これら医薬品や診断薬の開発には、当社グループの人的資源と効率を鑑み、自社では製品化するまでの全過程を行うことが可能かどうか注意深く検討し、製品開発においては、選択と集中により積極的な投資によって、抗体に付加価値を付け、パイプラインを充実させることで企業価値の最大化を追求いたします。
・ 化粧品業界
近年の化粧品業界は、訪日外国人の増加により好調な業績が続いています。また、カテゴリー別に見てみると、スキンケア市場が半数を占める主要マーケットとして化粧品業界を牽引する存在となっております。当社グループが販売する化粧品「フレヴァンシリーズ」につきましては、スキンケア製品を中心に安全・安心をコンセプトに製造販売を行っております。
一方で、高齢社会や人口縮小の日本では今後市場の縮小が懸念されていることから、日本の化粧品メーカーは生き残りを賭けて海外進出を図っておりますが、当社グループにおきましても中国や欧州を中心に海外販路の開拓を行っております。
・ コロナウイルス感染症の影響について
今般、新型コロナウイルス感染症が世界規模で感染拡大しております。こういった状況の中、我が国における緊急事態宣言は解除されてはおりますが、状況は予断を許さない状況にあります。また、国内及び海外の経済状況についても、影響が見通すことがむずかしい中、当社グループの業績への影響額を合理的に見積もることが困難な状況となっております。
(5) 会社の対処すべき課題
・ 研究開発の重点投資
当社グループは、治療用医薬品及び診断用医薬品のさらなるパイプラインの充実が、事業の安定化のためには必要となります。そのため、資源投入の集中と研究開発の効率化を図り、また、現行の共同研究先である大学などに加え、優秀な人材を採用し、研究開発のスピードアップを図ってまいります。さらに、海外企業が保有する有用なシーズの発掘も積極的に行ってまいります。
・ 体外診断用医薬品への取り組み
診断・試薬事業の領域は、非常に流動的であり、競争が激しいグローバル社会において、安定した収益を生み出すことが困難な領域となっております。安定した収益を生み出すためには、体外診断用医薬品の領域の製品化が必要であると認識し、体外診断用医薬品の研究開発に注力してまいります。
・ 遺伝子組換えカイコ事業への取り組み
カイコの繭中に目的タンパク質を産生する生産技術は、現在の生産方法に比較して製造コストを低減させることが可能です。短期的には、研究用試薬・体外診断用医薬品にて使用する抗体をはじめとした目的タンパク質の置換え利用や化粧品原料等への産業利用を推進し、具体的な生産受注を目指してまいります。中長期的には、動物用医薬品等の原料の実用化や株式会社CUREDとの抗HIV抗体の共同研究等、医薬品原料の研究開発を積極的に進めております。今後の課題として、研究開発項目の製品化や製品化されているラミニン及びネオシルクⓇ-ヒト型コラーゲンⅠの生産に必要な遺伝子組換えカイコの飼育頭数が劇的に増加するため、大量飼育による人工飼料のコスト増が予想され、桑の葉の確保及び人工飼料のコスト低減を図るための事業化に向けた取り組みを進めてまいります。また、現在、進めている抗HIV抗体の医薬品原薬の商業化へ向けた取り組みにおいては、GMP等の高度な規制への対応に関し、当事業が十分な設備やノウハウを保有しているとは言えない状況で、製造コストの削減が課題となっております。
・ 化粧品関連事業における中国向け販売の取り組み
当事業は、中国に向けて、遺伝子組換えカイコ事業により開発された新規化粧品原料「ネオシルクⓇ-ヒトコラーゲンⅠ」及び同原料配合化粧品「フレヴァン」シリーズを完全子会社の株式会社ネオシルク化粧品で販売しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染の影響により、中国での商標登録問題の解決及び化粧品市場へのアプローチが出来ませんでしたが、徐々に社会活動も再開され、現地代理人との情報交換も始まっております。
なお、商標(フレヴァン)につきまして、中国向け販売代理店により、フレヴァンの中国語名の商標登録が完了(一度は拒絶されましたが、再審請求の結果、取得)しました。一方、アルファベット名「frais vent」の商標につきましては、現地代理人より連絡があり、下期中の取得を目指してまいります。さらに、化粧品の本格的な販売活動につきましては、第4四半期の開始に向け準備を進めてまいります。
・ 人材の確保及び教育
当社グループは、各事業に精通した研究員及びプロジェクトを推進できる人材の確保が必要不可欠と考えており、研究開発の効率を上げるため、ハード面とソフト面の両面から研究開発に適した環境作りを行い、企業価値の最大化を目指してまいります。
研究開発型企業である当社グループにおいては、自由な発想が生み出される柔軟な組織がふさわしいと考えております。組織が硬直化し、研究開発活動が滞ることがないように、常に問題意識をもって物事に対処する集団として組織を維持運営いたします。
・ 財務安定性の確保
当社グループは、研究開発型企業として、積極的かつ継続的に研究開発に投資していく方針であります。投資の源泉は事業からの収益をもって行われることが望ましいと考えておりますが、研究開発テーマにより多額の先行投資が見込まれる場合には、株式の発行等により資金を調達してまいります。当社グループは、引き続き、収益確保のため、現製品の見直しや間接部門コストの削減に努めてまいります。また、研究テーマの選択を行い、経営資源を集中して効率的な経営を行うことが重要であると認識しております。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。