有価証券報告書-第21期(2023/01/01-2023/12/31)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当社は、創薬事業においてはアンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため営業活動に取り組んでおります。
当連結会計年度のセグメント別の事業活動は以下のとおりです。
① 創薬事業
がん領域では、ベストインクラスの可能性を有する次世代非共有結合型BTK阻害剤AS-1763に注力して、現在、患者様を対象とした臨床試験を米国で実施しています。またファーストインクラスを目指して、CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の開発も進めており、患者様を対象とした臨床試験を日本で実施しています。免疫・炎症疾患領域では、当社が創出した、もう1つの非共有結合型BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の開発を進め、健康成人を対象としたフェーズ1試験が2023年第4四半期に完了しました。sofnobrutinibの導出活動を本格的に開始するために、当該結果を基にした導出パッケージの作成も完了しています。また、当社は、米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)に、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤のプログラムを導出しており、ギリアド社は現在、本プログラムから見出された開発中のDGKα阻害剤GS-9911について、固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中です。当社は、2023年12月にフェーズ1試験が開始されたことに伴い、2回目のマイルストーン・ペイメント500万ドル(707百万円)を受領いたしました。契約一時金、マイルストーン・ペイメントを合わせて最大で合計470百万ドルのうち、これまでに契約一時金、1回目のマイルストーン・ペイメントと合わせて計35百万ドル(約40億円)を受領しております。さらに、住友ファーマ株式会社とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。
AS-1763の中華圏における開発・商業化の権利については、中国BioNova Pharmaceuticals Limited(以下、バイオノバ社)に供与し、同社が開発を進めていましたが、中国の医薬品市場の重要性を考慮し、2023年3月に当該ライセンス契約を解除し、同権利を再取得いたしました。これにより、当社が中華圏を含めた全世界の開発・商業化の権利を保持することで、ベストインクラスの可能性を有するAS-1763の導出活動における選択肢が広がり、株主価値を最大化できると考えています。また、2022年2月に当社が創製したSTING(Stimulator of Interferon Genes)アンタゴニストを米国フレッシュ・トラックス・セラピューティクス社(旧社名 ブリッケル・バイオテック社、以下「FRTX社」)に導出するライセンス契約を締結いたしましたが、FRTX社は2023年9月に、清算・解散計画を発表いたしました。本ライセンス契約の取扱いについて協議を行い、2024年3月に本ライセンス契約の終了について合意いたしました。
臨床試験段階にある3つの医薬品候補化合物の進捗は以下のとおりです。
BTK阻害剤AS-1763(血液がん)
AS-1763は、フェーズ1試験として健康成人を対象とした単回投与用量漸増(SAD)パートおよび新製剤を用いたバイオアベイラビリティ(BA)パートをオランダで実施し、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されましたので、2023年8月に、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験の投与を開始しました。当該フェーズ1b試験は2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、用量漸増パートと拡大パートから構成されています。現時点で、8つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。すでに、用量漸増パートの最初の2用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、2024年1月に3用量目に移行しております。また本フェーズ1bの試験デザインおよびAS-1763の特徴づけを目的とした非臨床研究に関する結果に関して、2023年12月に開催された第65回アメリカ血液学会年次総会(American Society of Hematology Annual Meeting & Exposition)で発表いたしました。
BTK阻害剤 sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)
sofnobrutinibのフェーズ1試験は、オランダで健康成人を対象として2021年中に完了したSAD試験および2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験として実施しました。SAD試験においては、全ての用量でsofnobrutinibの安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されました。また、SAD試験においては簡易製剤を用いましたが、MAD試験では新たに開発した新製剤を用いており、MAD試験はこの新製剤を用いた相対的BAを評価するBAパート、および反復投与時の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学的作用を評価するMADパートで構成されています。新製剤として開発したカプセル製剤およびタブレット型製剤を用いたBA試験での比較で、タブレット型製剤がより良い薬物動態を示したため、2023年1月末から当該タブレット型製剤を用いてMADパートを開始しました。2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化され、これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。sofnobrutinibについては、フェーズ2以降をライセンスアウトもしくは共同開発により実施することを目指しており、フェーズ1試験の結果を受けて、パートナリング活動を本格的に開始しています。
CDC7阻害剤 monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん/血液がん)
monzosertibは日本国内で切除不能進行・再発または遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を2021年から実施しています。当該フェーズ1試験は用量漸増パートおよび拡大パートの2段階に分かれており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、加速漸増デザイン (accelerated titration design)を採用し、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート6(300 mg BID)まで用量漸増しましたが、Grade 2以上の有害事象(AE)が発現したため、試験計画に基づき、加速漸増デザインから3+3デザインに移行しました。その後、同用量において用量制限毒性が3名中2名で発現したため用量を下げて症例を追加しておりました。その結果、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されました。現在、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更して用量漸増パートを開始し、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。また、成功確度を上げるため、非臨床試験より有効性が期待されている血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、安全性、忍容性並びに探索的な有効性を確認する予定です。
以上の結果、当連結会計年度の創薬事業の売上は707,650千円(前連結会計年度比147.4%増)となりました。臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、同事業の研究開発費は1,773,348千円(前連結会計年度比0.7%増)であり、営業損失は1,342,546千円(前連結会計年度は1,722,641千円の営業損失)となりました。
② 創薬支援事業
創薬支援事業では、収益の柱の一つに成長したビオチン化タンパク質の更なる品揃えを積極的に推し進めるとともに、売上が順調に拡大しているNanoBRETサービスの市場への浸透に取り組んでいます。また、プロファイリングサービスにおいては、開発に成功した次世代アッセイ機器を用いたプロファイリングシステムによるサービス開始に向けて順調に準備が進んでいます。さらに、各地域において、技術営業を中心としたきめ細やかな営業により、既存顧客のフォローを行うとともに新規顧客の獲得を目指しています。
当連結会計年度においては、海外向けのキナーゼタンパク質の販売が好調に推移しました。米国及び中国向けのタンパク質の販売が昨年に引き続き堅調に推移するとともに、欧州においては、AI創薬企業を含むバイオベンチャーからのキナーゼタンパク質の高い需要により、売上が大幅に伸びました。
以上の結果、当連結会計年度における創薬支援事業の売上高は918,239千円(前連結会計年度比16.6%減)、営業利益は225,567千円(前連結会計年度比50.2%減)となりました。売上高の内訳は、国内売上が223,306千円(前連結会計年度比2.1%増)、北米地域は426,935千円(前連結会計年度比32.0%減)、欧州地域は112,948千円(前連結会計年度比56.8%増)、その他地域は155,049千円(前連結会計年度比14.9%減)です。
なお、前年度は、米国において、ギリアド社とのライセンス契約に関連し、当社の特定の創薬基盤技術を独占的に供与したことに関連した売上が含まれていたことから、対前年では減収となりました。
以上の結果、2023年12月期の連結売上高は1,625,889千円(前連結会計年度比17.2%増)となりました。地域別の売上は、連結ベースで国内売上高が223,306千円(前連結会計年度比2.1%増)、海外売上高は1,402,583千円(前連結会計年度比20.1%増)となりました。損益面につきましては、営業損失が1,116,978千円(前連結会計年度は1,269,888千円の営業損失)、経常損失は1,126,283千円(前連結会計年度は1,278,820千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,152,895千円(前連結会計年度は1,349,539千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
第18期、第19期、第20期及び第21期のセグメントごとの売上、研究開発費及び営業損益は、以下の通りです。
(単位:千円)
(2) 財政状態の状況
当社グループの連結の財政状態の概要につきましては、以下のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は4,349,891千円となり、前連結会計年度末に比べて83,437千円の増加となりました。その内訳は、現金及び預金の減少489,947千円、売掛金の増加605,769千円等であります。
負債は472,356千円となり、前連結会計年度末と比べて152,252千円の減少となりました。その内訳は、長期借入金の減少120,000千円等であります。
純資産は3,877,535千円となり、前連結会計年度末と比べて235,690千円の増加となりました。その内訳は、株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加1,388,455千円、親会社株主に帰属する当期純損失1,152,895千円の計上等であります。
また、自己資本比率は89.1%(前連結会計年度85.0%)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ489,947千円減少し、2,889,101千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は1,677,464千円(前年は708,390千円の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失1,130,846千円の計上、売上債権の増加599,720千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は11,376千円(前年は125,696千円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出11,530千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は1,182,027千円(前年は367,006千円の増加)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出119,988千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,343,338千円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、キナーゼ阻害薬等を創製するための研究開発ならびにその基盤となる技術である「創薬基盤技術」を強化するための研究開発へ積極的に先行投資し、将来の飛躍的な成長を目指しております。そのための研究開発に係る費用は、創薬支援事業が生み出すキャッシュ・フロー及び創薬事業における導出契約やマイルストーン達成に基づく収入、ならびに資本市場等から調達した資金等により充当しております。
創薬支援事業の業績は黒字を継続し安定的に推移しているものの、創薬事業からの収益は、導出契約の成否、導出先製薬企業等における開発の進捗、導出活動の進捗及び当社の研究開発の進捗等により影響を受け安定的でないことから、当社グループの短期的な損益については赤字となる傾向があります。
しかしながら、当社グループは、中長期的な経営方針に基づき、積極的に創薬事業に先行投資を行い、研究開発を推し進めることで、当社の企業価値を高めてまいります。そのための資金を獲得するために、創薬支援事業からの収益力をさらに高めるとともに、当社にとって最適な資金調達方法を検討し、研究開発資金の確保に努めてまいります。
(5) 生産、受注及び販売の状況
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、販売価格によっております。
2. 創薬事業については、生産を行っていないため記載しておりません。
2) 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 創薬事業については、商品仕入を行っていないため記載しておりません。
3) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度におけるShanghai Universal Biotech Co., Ltd.の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(6) 経営方針・経営戦略または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、創薬支援事業については、安定的に収益を獲得する基盤事業として、継続的な事業成長と収益基盤の拡大を図るため、売上高、営業利益率の改善を重要な経営指標としております。
当連結会計年度においては、前年度に引き続き、自社開発品で原価率の低いキナーゼタンパク質製品の売上が好調に推移いたしました。しかしながら、前年度は、ギリアド社とのライセンス契約に関連し、当社の特定の創薬基盤技術を独占的に供与したことに関連した売上が含まれていたことから、創薬支援事業の営業利益率は下落いたしました。
(7) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当社は、創薬事業においてはアンメット・メディカル・ニーズの高い未だ有効な治療方法が確立されていない疾患を中心に、特にがん、免疫・炎症疾患を重点領域として画期的な新薬の開発を目指して研究開発に取り組み、また、創薬支援事業においては新たなキナーゼ阻害薬創製のための製品・サービスを製薬企業等へ提供するため営業活動に取り組んでおります。
当連結会計年度のセグメント別の事業活動は以下のとおりです。
① 創薬事業
がん領域では、ベストインクラスの可能性を有する次世代非共有結合型BTK阻害剤AS-1763に注力して、現在、患者様を対象とした臨床試験を米国で実施しています。またファーストインクラスを目指して、CDC7阻害剤monzosertib(AS-0141)の開発も進めており、患者様を対象とした臨床試験を日本で実施しています。免疫・炎症疾患領域では、当社が創出した、もう1つの非共有結合型BTK阻害剤sofnobrutinib(AS-0871)の開発を進め、健康成人を対象としたフェーズ1試験が2023年第4四半期に完了しました。sofnobrutinibの導出活動を本格的に開始するために、当該結果を基にした導出パッケージの作成も完了しています。また、当社は、米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「ギリアド社」)に、当社が創出した新規脂質キナーゼDGKα阻害剤のプログラムを導出しており、ギリアド社は現在、本プログラムから見出された開発中のDGKα阻害剤GS-9911について、固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を実施中です。当社は、2023年12月にフェーズ1試験が開始されたことに伴い、2回目のマイルストーン・ペイメント500万ドル(707百万円)を受領いたしました。契約一時金、マイルストーン・ペイメントを合わせて最大で合計470百万ドルのうち、これまでに契約一時金、1回目のマイルストーン・ペイメントと合わせて計35百万ドル(約40億円)を受領しております。さらに、住友ファーマ株式会社とは、精神神経疾患を標的とした創薬プログラムの共同研究を行っています。
AS-1763の中華圏における開発・商業化の権利については、中国BioNova Pharmaceuticals Limited(以下、バイオノバ社)に供与し、同社が開発を進めていましたが、中国の医薬品市場の重要性を考慮し、2023年3月に当該ライセンス契約を解除し、同権利を再取得いたしました。これにより、当社が中華圏を含めた全世界の開発・商業化の権利を保持することで、ベストインクラスの可能性を有するAS-1763の導出活動における選択肢が広がり、株主価値を最大化できると考えています。また、2022年2月に当社が創製したSTING(Stimulator of Interferon Genes)アンタゴニストを米国フレッシュ・トラックス・セラピューティクス社(旧社名 ブリッケル・バイオテック社、以下「FRTX社」)に導出するライセンス契約を締結いたしましたが、FRTX社は2023年9月に、清算・解散計画を発表いたしました。本ライセンス契約の取扱いについて協議を行い、2024年3月に本ライセンス契約の終了について合意いたしました。
臨床試験段階にある3つの医薬品候補化合物の進捗は以下のとおりです。
BTK阻害剤AS-1763(血液がん)
AS-1763は、フェーズ1試験として健康成人を対象とした単回投与用量漸増(SAD)パートおよび新製剤を用いたバイオアベイラビリティ(BA)パートをオランダで実施し、全ての用量で安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されましたので、2023年8月に、米国において患者を対象としたフェーズ1b試験の投与を開始しました。当該フェーズ1b試験は2ライン以上の全身治療歴を有する慢性リンパ性白血病(CLL)・小リンパ球性リンパ腫(SLL)およびB細胞性非ホジキンリンパ腫(B-cell NHL)の患者を対象としており、用量漸増パートと拡大パートから構成されています。現時点で、8つの治験実施施設において患者の募集を行っており、今後、12施設まで拡大する予定です。すでに、用量漸増パートの最初の2用量群において、安全性、忍容性が確認されたため、2024年1月に3用量目に移行しております。また本フェーズ1bの試験デザインおよびAS-1763の特徴づけを目的とした非臨床研究に関する結果に関して、2023年12月に開催された第65回アメリカ血液学会年次総会(American Society of Hematology Annual Meeting & Exposition)で発表いたしました。
BTK阻害剤 sofnobrutinib(AS-0871、対象疾患:免疫・炎症疾患)
sofnobrutinibのフェーズ1試験は、オランダで健康成人を対象として2021年中に完了したSAD試験および2021年12月から開始した反復投与用量漸増(MAD)試験の2つの試験として実施しました。SAD試験においては、全ての用量でsofnobrutinibの安全性、忍容性および良好な薬物動態プロファイルが確認されました。また、SAD試験においては簡易製剤を用いましたが、MAD試験では新たに開発した新製剤を用いており、MAD試験はこの新製剤を用いた相対的BAを評価するBAパート、および反復投与時の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学的作用を評価するMADパートで構成されています。新製剤として開発したカプセル製剤およびタブレット型製剤を用いたBA試験での比較で、タブレット型製剤がより良い薬物動態を示したため、2023年1月末から当該タブレット型製剤を用いてMADパートを開始しました。2023年11月にMAD試験の臨床試験報告書が最終化され、これまで実施したフェーズ1試験の結果から、sofnobrutinibの安全性、忍容性、並びに良好な薬物動態プロファイルと薬力学作用が確認され、フェーズ2への移行が支持されました。sofnobrutinibについては、フェーズ2以降をライセンスアウトもしくは共同開発により実施することを目指しており、フェーズ1試験の結果を受けて、パートナリング活動を本格的に開始しています。
CDC7阻害剤 monzosertib(AS-0141、対象疾患:固形がん/血液がん)
monzosertibは日本国内で切除不能進行・再発または遠隔転移を伴う固形がん患者を対象としたフェーズ1試験を2021年から実施しています。当該フェーズ1試験は用量漸増パートおよび拡大パートの2段階に分かれており、現在、用量漸増パートを実施しています。用量漸増パートでは、加速漸増デザイン (accelerated titration design)を採用し、1日2回、5日間連日経口投与、2日間休薬する投与スケジュールで、コホート6(300 mg BID)まで用量漸増しましたが、Grade 2以上の有害事象(AE)が発現したため、試験計画に基づき、加速漸増デザインから3+3デザインに移行しました。その後、同用量において用量制限毒性が3名中2名で発現したため用量を下げて症例を追加しておりました。その結果、コホート3(80 mg BID)において、安全性、忍容性が確認されました。現在、薬効を最大化するために、投与スケジュールを、2日間の休薬をしない連日投与に変更して用量漸増パートを開始し、最大耐用量(MTD)および拡大パートでの推奨用量・用法を決定する予定です。また、成功確度を上げるため、非臨床試験より有効性が期待されている血液がん患者の登録も可能となるようにプロトコールを変更し、安全性、忍容性並びに探索的な有効性を確認する予定です。
以上の結果、当連結会計年度の創薬事業の売上は707,650千円(前連結会計年度比147.4%増)となりました。臨床試験費用を中心に研究開発へ積極的に投資したことにより、同事業の研究開発費は1,773,348千円(前連結会計年度比0.7%増)であり、営業損失は1,342,546千円(前連結会計年度は1,722,641千円の営業損失)となりました。
② 創薬支援事業
創薬支援事業では、収益の柱の一つに成長したビオチン化タンパク質の更なる品揃えを積極的に推し進めるとともに、売上が順調に拡大しているNanoBRETサービスの市場への浸透に取り組んでいます。また、プロファイリングサービスにおいては、開発に成功した次世代アッセイ機器を用いたプロファイリングシステムによるサービス開始に向けて順調に準備が進んでいます。さらに、各地域において、技術営業を中心としたきめ細やかな営業により、既存顧客のフォローを行うとともに新規顧客の獲得を目指しています。
当連結会計年度においては、海外向けのキナーゼタンパク質の販売が好調に推移しました。米国及び中国向けのタンパク質の販売が昨年に引き続き堅調に推移するとともに、欧州においては、AI創薬企業を含むバイオベンチャーからのキナーゼタンパク質の高い需要により、売上が大幅に伸びました。
以上の結果、当連結会計年度における創薬支援事業の売上高は918,239千円(前連結会計年度比16.6%減)、営業利益は225,567千円(前連結会計年度比50.2%減)となりました。売上高の内訳は、国内売上が223,306千円(前連結会計年度比2.1%増)、北米地域は426,935千円(前連結会計年度比32.0%減)、欧州地域は112,948千円(前連結会計年度比56.8%増)、その他地域は155,049千円(前連結会計年度比14.9%減)です。
なお、前年度は、米国において、ギリアド社とのライセンス契約に関連し、当社の特定の創薬基盤技術を独占的に供与したことに関連した売上が含まれていたことから、対前年では減収となりました。
以上の結果、2023年12月期の連結売上高は1,625,889千円(前連結会計年度比17.2%増)となりました。地域別の売上は、連結ベースで国内売上高が223,306千円(前連結会計年度比2.1%増)、海外売上高は1,402,583千円(前連結会計年度比20.1%増)となりました。損益面につきましては、営業損失が1,116,978千円(前連結会計年度は1,269,888千円の営業損失)、経常損失は1,126,283千円(前連結会計年度は1,278,820千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,152,895千円(前連結会計年度は1,349,539千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
第18期、第19期、第20期及び第21期のセグメントごとの売上、研究開発費及び営業損益は、以下の通りです。
(単位:千円)
| 回次 | 第18期(連結) | 第19期(連結) | 第20期(連結) | 第21期(連結) |
| 決算年月 | 2020年12月期 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 |
| 売上高 | 1,133,346 | 2,017,529 | 1,386,748 | 1,625,889 |
| 創薬支援事業 | 1,080,321 | 889,529 | 1,100,703 | 918,239 |
| 創薬事業 | 53,025 | 1,128,000 | 286,045 | 707,650 |
| 研究開発費 | 1,474,452 | 1,841,854 | 1,882,319 | 1,903,859 |
| 創薬支援事業 | 103,774 | 128,620 | 122,041 | 130,511 |
| 創薬事業 | 1,370,678 | 1,713,234 | 1,760,278 | 1,773,348 |
| 営業利益(△損失) | △1,057,067 | △531,135 | △1,269,888 | △1,116,978 |
| 創薬支援事業 | 458,741 | 289,021 | 452,752 | 225,567 |
| 創薬事業 | △1,515,809 | △820,156 | △1,722,641 | △1,342,546 |
(2) 財政状態の状況
当社グループの連結の財政状態の概要につきましては、以下のとおりであります。
当連結会計年度末における総資産は4,349,891千円となり、前連結会計年度末に比べて83,437千円の増加となりました。その内訳は、現金及び預金の減少489,947千円、売掛金の増加605,769千円等であります。
負債は472,356千円となり、前連結会計年度末と比べて152,252千円の減少となりました。その内訳は、長期借入金の減少120,000千円等であります。
純資産は3,877,535千円となり、前連結会計年度末と比べて235,690千円の増加となりました。その内訳は、株式の発行による資本金及び資本剰余金の増加1,388,455千円、親会社株主に帰属する当期純損失1,152,895千円の計上等であります。
また、自己資本比率は89.1%(前連結会計年度85.0%)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ489,947千円減少し、2,889,101千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により減少した資金は1,677,464千円(前年は708,390千円の減少)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失1,130,846千円の計上、売上債権の増加599,720千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は11,376千円(前年は125,696千円の減少)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出11,530千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により増加した資金は1,182,027千円(前年は367,006千円の増加)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出119,988千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入1,343,338千円によるものであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、キナーゼ阻害薬等を創製するための研究開発ならびにその基盤となる技術である「創薬基盤技術」を強化するための研究開発へ積極的に先行投資し、将来の飛躍的な成長を目指しております。そのための研究開発に係る費用は、創薬支援事業が生み出すキャッシュ・フロー及び創薬事業における導出契約やマイルストーン達成に基づく収入、ならびに資本市場等から調達した資金等により充当しております。
創薬支援事業の業績は黒字を継続し安定的に推移しているものの、創薬事業からの収益は、導出契約の成否、導出先製薬企業等における開発の進捗、導出活動の進捗及び当社の研究開発の進捗等により影響を受け安定的でないことから、当社グループの短期的な損益については赤字となる傾向があります。
しかしながら、当社グループは、中長期的な経営方針に基づき、積極的に創薬事業に先行投資を行い、研究開発を推し進めることで、当社の企業価値を高めてまいります。そのための資金を獲得するために、創薬支援事業からの収益力をさらに高めるとともに、当社にとって最適な資金調達方法を検討し、研究開発資金の確保に努めてまいります。
(5) 生産、受注及び販売の状況
1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
| 創薬支援事業 | 980,431 | 74.4 |
(注) 1. 金額は、販売価格によっております。
2. 創薬事業については、生産を行っていないため記載しておりません。
2) 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 仕入高(千円) | 前年同期比(%) |
| 創薬支援事業 | 55,917 | 113.5 |
(注) 1. 金額は、仕入価格によっております。
2. 創薬事業については、商品仕入を行っていないため記載しておりません。
3) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 受注高 (千円) | 前年同期比 (%) | 受注残高 (千円) | 前年同期比 (%) |
| 創薬支援事業 | 899,878 | 99.8 | 39,758 | 68.4 |
| 創薬事業 | 707,650 | 247.4 | ― | ― |
| 合計 | 1,607,528 | 135.4 | 39,758 | 68.4 |
4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
| 創薬支援事業 | 918,239 | 83.4 |
| 創薬事業 | 707,650 | 247.4 |
| 合計 | 1,625,889 | 117.2 |
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) | ||
| 販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
| Gilead Sciences, Inc. | 175,507 | 12.7 | 719,660 | 44.3 |
| Fresh Tracks Therapeutics, Inc. (旧社名 Brickell Biotech, Inc.) | 227,420 | 16.4 | ― | ― |
| Shanghai Universal Biotech Co., Ltd. | 144,292 | 10.4 | ― | ― |
(注) 当連結会計年度におけるShanghai Universal Biotech Co., Ltd.の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(6) 経営方針・経営戦略または経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、創薬支援事業については、安定的に収益を獲得する基盤事業として、継続的な事業成長と収益基盤の拡大を図るため、売上高、営業利益率の改善を重要な経営指標としております。
当連結会計年度においては、前年度に引き続き、自社開発品で原価率の低いキナーゼタンパク質製品の売上が好調に推移いたしました。しかしながら、前年度は、ギリアド社とのライセンス契約に関連し、当社の特定の創薬基盤技術を独占的に供与したことに関連した売上が含まれていたことから、創薬支援事業の営業利益率は下落いたしました。
(7) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成において、損益または資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり採用した会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
(注) *を付している専門用語については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に用語解説を設け、説明しております。