訂正有価証券報告書-第117期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/09/28 11:01
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136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)中長期での成長に向けて
当社は、2030年、さらにその先を見据えた長期的視点に基づき、そこからバックキャスティングする形で「今何を成すべきか」を明確にしております。中長期には世界の人口増加、デジタル革命の進行、バイオテクノロジーの産業利用拡大、世界構造の多極化、気候変動・温暖化、といったトレンドが加速的に進行していくものと当社は考えております。このようなマクロ環境認識のもと、「組織や個人が、爆発的に増加するデータを活用して多様な価値を創造し、持続的に発展する自律分散型の社会」を当社が考えるこれからの世界観として定義しました。このような世界においては、組織や個人が求める豊かさが個別化・多様化し、それぞれの充足ニーズの加速的な高まりとともに、資源不足や気候変動による影響、社会保障費の増大、雇用や創造への機会格差といった社会課題の顕在化も進んでいきます。
当社は創業以来、イメージング技術をコアに世界中の顧客の「みたい」というニーズに応えてきました。当社の原点でもあり、DNAでもあるイメージング技術を用いて、顧客自身も気づかない課題を可視化することで顧客の様々な「みたい」欲求に応えて最適な解決策を見いだし、顧客のワークフローやバリューチェーンを俯瞰し継続的に顧客価値を提供していく「as a Service」モデルにより、様々な個人・社会の「みたい」に応え続けることで、「人間中心の生きがい追求(個別化・多様化への対応)」と「持続的な社会の実現(顕在化した社会課題の解決)」を高次に両立させるところに当社の社会的意義がある、という結論にたどり着きました。こうした考えを集約したのが「Imaging to the People」という新たな経営ビジョンステートメントです。
0102010_001.pngまた、当社は長期の経営ビジョン「Imaging to the People」の策定に伴い、フィロソフィーの再整理を行いました。当社は、コニカミノルタ発足以来不変の「経営理念」の下、価値創造の源泉としての企業文化・風土である「6つのバリュー」を基盤に経営ビジョン「Imaging to the People」の実現を目指します。
0102010_002.pngさらに当社は経営ビジョン実現に向け10年後の社会課題を想定し、当社が重視する解決すべき重要課題を5つのマテリアリティとして特定しました。「働きがい向上及び企業活性化」、「健康で高い生活の質の実現」、「社会における安全・安心確保」、「気候変動への対応」及び「有限な資源の有効活用」の5つです。このような将来的な社会課題を見据え、当社の強みである無形資産(顧客接点、技術、人財)と当社独自の画像IoTプラットフォームを組合せ、4つの事業領域を通して、世界中の顧客の「みたい」に応える顧客価値を提供します。顧客への価値提供を通じて社会課題を解決するとともに得られた財務・非財務資本は当社のガバナンスを通して無形資産を含む成長投資、株主様への還元につなげます。このようなコニカミノルタ流の価値創造プロセスにより、社会課題と向き合い、DX(デジタルトランスフォーメーション)により無形資産と事業の競争力を強化し、持続的な価値提供で企業価値を高めていきます。
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(2)新中期経営戦略「DX2022」
当社は当連結会計年度に2020年度から2022年度までの3カ年を対象にした新たな中期経営戦略「DX2022」を策定しました。当社は、前中期経営計画「SHINKA2019」において、基盤事業の収益最大化及び成長事業・新規事業の拡大に取り組んできました。個々の事業はそれぞれ意義・役割を持ち、その完遂に向けた取り組みを進めましたが、それぞれ出来たこと・出来なかったことがありました。新たな中期経営戦略「DX2022」ではこれまでの取組みを振り返り、事業ごとの意義・役割を更に先鋭化しつつ、長期ビジョンからバックキャスティングして、今なすべきことを目標に設定しています。
また、2019年度末に生じた新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、人々の働き方や生活様式、価値観に大きな変容をもたらしました。具体的にはテレワークの定着、非対面ワークフローの拡大といった働き方の変化を加速し、従業員や顧客の安全の確保、健康を守る動きや巣ごもり消費によるニーズの変容と個別化・多様化が生じました。特に働き方の変化はオフィス出社率の低下に伴うプリントレス化の加速、デジタルシフトによる販促・イベント印刷需要の減少を招き、当社が脅威として予測していたプリントボリューム減少の到来時期を早めました。しかしながら働き方の変化は、セキュリティ強化、ワークフロー効率化、デジタルコミュニケーションニーズ向上という当社にとっての機会も同時にもたらしました。さらに人々の生活様式の変容は、行動モニタリング、バイタルセンシング、検査の自動化といった現場での密回避ニーズをもたらし、安全・安心のための早期・個別診断ニーズの高まりなど、新たな機会の到来を早めました。このような社会の変容に伴い新たに顕在化した機会には「安全・安心」、「リモート・非接触」及び「個別化・分散化」といった共通する特徴があり、これらはイメージングやセンシングなどの当社が培ってきた技術が大きく活きる領域です。このように新型コロナウイルス感染症の拡大による社会の変容は、より多くの新たな機会をもたらしたものと捉えています。また、今後、ワクチンの普及とともに経済活動の回復は進むものの、従来の行動様式に戻るのではなく、新たな行動様式がその背景にある価値観の変容とともに社会に定着するものと想定しています。新たに定着するニューノーマルな行動様式と価値観は、個別化・多様化への対応による人間中心の生きがい追求と持続的な社会の実現の両立に貢献するという当社の存在意義、社会的意義とも合致するものと捉えています。
このような環境認識のもと、当社は中期経営戦略「DX2022」においてDXによる業容転換と事業ポートフォリオ転換を加速し、高収益ビジネスへと飛躍させていくとともに、真の社会課題解決企業へと転換をしてまいります。
0102010_004.png当社は中期経営戦略「DX2022」目標達成に向け、コニカミノルタ流DXの「as a Service」へのビジネスモデル転換を進めます。顧客のビジネスプロセスを俯瞰し、顧客自身も気づかない課題を見える化し、最適な解決策を共創するためには、継続的なデータの取得が必要です。当社の強みであるイメージング技術とAIやIoT技術を組み合わせた画像IoT技術により、顧客から継続的に取得するデータを解析し、顧客の課題解決を継続的に支援することで、顧客とその先の社会の人々の生きがい・幸せの追求と環境・社会課題の解決につなげていきます。
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「オフィス事業につづく柱となる事業の構築」
デジタルワークプレイス事業では、当社がこれまでに培ってきた顧客基盤を活用し、業種業態ごとのワークフローを見える化し、DX化、分散化を支援するデジタルソリューションを継続的に提供することで高収益ビジネスへの転換と事業拡大を進めます。加えて、プロフェッショナルプリント事業・ヘルスケア事業・インダストリー事業では、独自のイメージング技術を進化させることで、「計測・検査・診断」の領域での事業基盤を確立します。この領域では、業界のキープレーヤである顧客との密な関係性を活用して、産業・業界の変曲点を洞察することにより先回りした価値提供を行うことで顧客との信頼関係を深め、ビジネスの継続性と収益性を高めます。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記5 事業セグメント」に記載のとおりであります。
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「DXによるビジネスモデル進化」
人行動・検査・先端医療の領域にこだわった画像AI・IoT技術によりエッジ-クラウド型のプラットフォームをデジタルワークプレイス事業、インダストリー事業及びヘルスケア事業のそれぞれで立ち上げました。これらプラットフォームをベースに、多様な顧客・パートナーがつながるエコシステムを構築し、「as a Service」モデルでの価値提供を行うことで顧客ワークフローの変革を継続的に支援するビジネスへと進化させます。
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「事業評価の強化」
また、当社は資本効率を重要な経営指標と位置付け、事業ユニットごとのハードルレートを設定した資本効率の軸と成長性の軸を用いることで、各事業ユニットの位置づけを明確化し、改善、撤退・縮小などの事業評価を強化しました。このようなポートフォリオに基づく事業評価判断と新たな成長戦略の推進により、コア事業と安定収益事業の確実な事業成長に加え、DXによるビジネスモデルの進化をけん引する戦略的新規事業に投資・リソース投入を継続して行うことで全社として高収益ビジネスへの転換を進めていきます。
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「事業ポートフォリオ転換により当社が目指す姿」
中期経営戦略「DX2022」期間において、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ事業の売上回復、インダストリー事業やプレシジョンメディシンといった高付加価値事業の売上拡大、コロナ禍で需要が顕在化した事業の拡大による、収益力の強化により最終年度である2022年度には営業利益550億円の創出を目指します。また、2か年で得られた営業キャッシュ・フローは積極的な事業ポートフォリオ転換と株主還元を中心に配分します。このような各事業の拡大と柔軟な資本政策の実行により、全社営業利益を拡大させることで2019年度に全社営業利益の半分を占めていたオフィス事業(2020年度よりデジタルワークプレイス事業にセグメント区分を変更)への営業利益依存度を25%以下へ低減させていく考えです。
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(3)経営戦略を支える無形資産
持続的な企業価値向上を支える基盤として、当社は無形資産(顧客接点・技術・人財)を重要視し、継続的に磨き続けるとともにDXにより進化させることで競争優位を確立し、企業価値を高めていきます。
①顧客接点強化
デジタルワークプレイス事業ではオフィス事業で培った200万社の顧客基盤を有する強みを活かし、顧客のDX実現に向けて、継続的かつ長期的に価値を提供する仕組みを構築し、顧客との関係性を高めていきます。「計測・検査・診断」の領域ではバリューチェーンに深く突き刺さる顧客との関係性を活用して産業バリューチェーン全体の価値創出を推進します。また、顧客のDX体験レベル、顧客にDX体験を提供する自社の能力、顧客との関係性などを独自のDX推進指標によって可視化し、フィードバックすることで、継続的な強化を実現します。当社が培ってきた豊富な顧客接点は今後の成長の源泉となるものであり、今後はさらに事業の枠を越えたOne Konica Minoltaで当社ならではのソリューションを提供し、より大きな顧客価値の創出を図っていきます。
②技術強化
当社は4つのコア技術(材料・光学・微細加工・画像)をベースとした独自のイメージング技術を時代とともに変化する顧客の「みたい」に応えてきました。これら独自技術を継続的な価値提供モデルに変革するため、他社には実現できないレベルの高品位・高精度かつリアルタイムな価値を創出する「画像IoTプラットフォーム」を立ち上げます。また知財面では、精密機器業界で世界トップクラスの知的財産を保有しており、加えて画像IoT技術領域での知財ジャンルトップ戦略により成長事業の育成を支えていきます。また、全社の研究開発費を注力事業の成長を支える技術開発へと重点配分することで、持続的な企業価値向上・競争優位を実現します。
③人財強化
不確実性が高く未来予測が困難な状況のなか、人財の重要性はますます高まっています。当社は、このような時代に求められる人財像を、自律的に考え、能動的に動き、あらゆる環境の下で、多様な顧客価値を迅速に創出できる人財と定義し、獲得・育成のための場と機会を提供し、当社をプロフェッショナル人財の集団へと変貌させ、持続的成長のエンジンとします。場と機会の提供については自己啓発支援、副業解禁、職域を越えた行動を奨励するチャレンジ加点制度など、様々な観点から人財投資を実施しており、今後もこれを継続します。さらにこれまで各国・各地域の内部に限定されがちであった人財活用機会をグローバルレベルへ展開し、居住地、国籍、使用言語によらない適材適所の人財配置により、当社が持つ多様な人財の能力最大化と有効活用を推進します。DXビジネスの拡大に際して重要となるDXリーダーの育成については、既に専任部署を設けて選抜を行い、グローバルに社内外のプログラムを活用した育成を開始しました。また事業ポートフォリオ転換の実現に向けた育成プログラムとして、別職種転換のためのRe-Skillプログラムと同一職種内でのスキルレベルアップのためのUp-Skillプログラムを体系的に整備し、基盤領域から新規事業領域やDX領域への人財シフトを加速させます。
これらの無形資産は二つのDXレイヤー(オペレーショナルDXとビジネスDX)の調和を通じて経済価値と社会価値の創出につなげます。オペレーショナルDXは、無形資産を基盤とする現場力にDXを掛け合わせる組織・プロセスの全社共通・事業横串でのDXです。ビジネスDXは、顧客のプロセス・産業を俯瞰し、課題を見える化したうえで、それを解決するサービスを継続的に提供するために事業ごとにつきつめるDXです。将来の財務情報との関連では、ビジネスDXは付加価値の訴求として粗利額の絶対値に帰結され、オペレーショナルDXは生産性の向上として原価率、販管費率やキャッシュ・フローに反映されるものと想定しています。
0102010_010.pngDXを進める上で当社は「社員の実践と実感」、「顧客課題を解決する価値提供」及び「顧客価値の最大化」の3つが重要な要素であると捉えています。当社は3つの重要要素を軸とした当社独自の8つの推進指標の成熟度を可視化し、協調した推進を行うことにより、2つのDXレイヤーを調和させながら全社DX基盤の構築を加速します。なお、2021年3月現在、経済産業省が策定したDX推進指標の成熟度(レベル0からレベル5の6段階の定性評価指標)を当社に当てはめた場合、レベル2(一部での戦略的実施)に位置すると自己診断しております。当社は中期経営戦略「DX2022」の最終年度である2022年度には、この成熟度をレベル4(全社戦略に基づく持続的実施)に引き上げることを目標としています。
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(4)翌連結会計年度の重点方針
当連結会計年度は2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、世界的な経済活動の制限が継続される状況が続きました。当第4四半期連結会計期間にはワクチン接種による改善の兆しも見えてきましたが、現時点では新型コロナウイルス感染症の完全な収束時期の見通しは立っておりません。当社は、翌連結会計年度においても局地的なロックダウンなどにより人々の行動が一定の制約を受けながらも、地域や業種業態によって異なる速度で経済活動が回復していくことを前提とし、当連結会計年度に実行した施策の継続と中期経営戦略「DX2022」の完遂に向けたDXによる業容転換と事業ポートフォリオ転換の加速により、収益構造の変革を行っていきます。このような観点で、翌連結会計年度の重点方針として、以下の4点に取り組みます。
①オフィスユニットの営業利益を2018年度レベルまで一気に回復:
最新機種「bizhub-i(ビズハブアイ)シリーズ」の全機種上市を完了する一方、オフィスでの印刷需要減少を前提に、構造改革や複合機開発テーマの選択と集中による成長事業へのリソースシフトを2020年度中におおむね完了しました。2021年度にこれらの成果を出すことにより営業利益率水準を9%まで回復させます。
②新規事業の収益改善を加速:
ワークプレイスハブは、戦略変更により開発費を低減し、販売サービスの容易性と顧客提案の受容性の拡大を両立することで、売上の拡大と費用の抑制を行います。プレシジョンメディシンは、RNA検査や中枢神経系画像解析など当社の強みとする高精度な診断サービスに加え、健常者向けDNA検査やがん治験分野を強化することで売上の拡大を図るとともに、次世代シーケンサーやクラウド活用による検査コスト削減を進めます。
③2020年度の総固定費の水準を維持:
2019年度に実施した構造改革の効果により販売管理費を4,000億円未満に抑制したことなどにより損益分岐点を大幅に低下させました。更に2020年度に追加で実施した構造改革や各機能におけるDX化推進による生産性向上により、2021年度も総固定費水準の維持を図ります。
④オフィスユニットに続く柱となる事業を構築:
当社の強みであるイメージング技術を発展させ、センサーデバイス・画像AI・IoTプラットフォームを三位一体とした当社独自の画像IoT技術として、人行動・検査・先端医療の領域で多様なサービス展開を進めます。
上記重点方針の実行により収益性を大幅に改善すると同時に、ポートフォリオの転換を進めることにより、翌連結会計年度の営業利益はポートフォリオ転換に係る一過性の費用40億円を含み、360億円と予想しています。
(5)マテリアリティ特定プロセス
持続可能な開発目標(SDGs)やマクロトレンドから、2030年に想定される社会・環境課題を洞察し、「解決すべき社会・環境課題」と「当社グループの事業成長」の両評価軸でマテリアリティ分析を行い、当社が取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を新たに設定しました。
STEP1:課題のリストアップ
GRIスタンダードやSDGsなどの国際的なフレームワークやガイドライン、各専門分野のマクロトレンドなどを参照しながら環境・社会・経済面での課題を広範囲にリストアップしました。ストックホルム・レジリエンス・センターの「SDGsウェディングケーキモデル」をベースとし、「ECONOMY」「SOCIETY」「BIOSPHERE」の関係性を念頭に置きながら、課題を抽出しました。当社が関連する、あるいは関連する可能性がある事業領域、そのサプライチェーン/バリューチェーンを範囲として、社会・環境変化や規制・政策動向、ステークホルダーからの要請事項などを考慮して進めています。
STEP2:課題の抽出と重要度評価
リストアップした課題のなかから、特に当社に関連性の高い分野を抽出した上で、マテリアリティ分析(重要度評価)を行いました。当社のマテリアリティ分析は、リスクと機会の側面をそれぞれ評価している点に特徴があります。リスクと機会をそれぞれ評価することで、SDGsを進めるにあたり、企業に期待されている「社会課題を機会と捉えビジネスを通じて解決することで事業成長を図る」ことを実践しています。マテリアリティ分析は、それぞれ「ステークホルダーにとっての重要度(お客様、お取引先、株主・投資家、従業員など)」と「事業にとっての重要度(財務的な影響度)」の2軸で5段階評価し、優先順位を付けました。
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STEP3:妥当性確認、特定
グループサステナビリティ推進会議で議長を務めるグループサステナビリティ責任者(サステナビリティ担当役員)は、これらのマテリアリティの評価プロセス及び評価結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定します。特定したマテリアリティは、経営層による審議の上、取締役会による承認を受けます。今後も、マテリアリティを定期的にレビューし、必要に応じて見直すことにより、課題設定と計画の妥当性を担保していきます。
(6)気候関連財務情報開示の新しいフレームワークへの対応
①TCFDの提言に基づく4つのテーマに関する開示
当社は、事業運営における気候関連のリスクと機会を的確に評価し、投資家をはじめとする幅広いステークホルダーへ積極的に情報開示することが、持続的に成長できる企業の必須要件であると考えています。こうした考えから、G20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」に賛同し、TCFDのフレームワークに沿って気候変動問題への取り組みを開示します。
項目活動内容
ガバナンス当社は、2008年に「2050年までに自社製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量を2005年度比で80%削減する」という目標を設定し取締役会で承認しました。2017年には、パートナー企業とともに社会のCO2排出量をマイナスにしていくコミットメントとして「カーボンマイナス」を目標に追加しました。そして2020年には、長期の経営ビジョンにおいて当社が取り組むべき5つのマテリアリティの1つとして「気候変動への対応」を設定すること、気候変動への対応の目標としてカーボンマイナスの達成時期を2030年へ前倒しすることを取締役会で承認しました。また、当社では、代表執行役社長が気候変動問題に対する最高責任と権限を有し、気候変動を含む環境マネジメントの有効性について責任を負うものとしています。そして代表執行役社長から任命された役員(グループサステナビリティ責任者)が環境マネジメントを推進し、中期計画を作成するとともに、環境マネジメントの進捗状況や気候変動問題を含む課題について、代表執行役社長及び取締役会議長、取締役会に設置された監査委員会へ毎月報告します。監査委員会は代表執行役社長を中心とした環境マネジメント全体の執行状況を継続的に監視・検証しております。
戦略気候変動の影響が顕在化し地球環境が破壊されれば、経済や金融に混乱を引き起こします。これは、当社の事業にとってもリスクであると認識しています。一方、ビジネスを通じて環境課題を解決することで機会を創出することができ、企業の持続的な成長へつながると考えています。当社は、最先端の技術を積極的に取り込み、強みとする画像IoT技術とデジタル入出力の技術を融合させることで、気候変動を含む社会課題の解決に寄与するソリューションを生み出すデジタルカンパニーへの業容転換を進めています。そして、2020年度に策定した長期の経営ビジョンにおいて「気候変動への対応」をマテリアリティとして特定し、2030年までに「カーボンマイナス」を実現することを目標に設定しました。モノからコトへ、お客様への提供物が変化していく中で、製品プロダクツに関わるCO2排出量だけではなく、サービスを加えてCO2を削減し事業成長につなげることを目指します。この目標をバックキャスティングし、気候変動対策に関わる中期目標及び年度計画を、製品の企画・開発、生産・調達、販売などの事業中期計画と連動させることで、ビジネスを通じてカーボンマイナス目標の達成を目指しています。
気候変動に関するリスクと機会の詳細は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
リスク管理当社は、リスクマネジメントを「リスクのマイナス影響を抑えつつ、リターンの最大化を追求する活動」と位置づけ、中長期的な視点でリスクを評価しています。短期・中期的には、気候変動を含む環境リスクをグループ全体の経営リスクの一つとして位置づけ、リスクマネジメント委員会において管理しています。また、中長期的な観点から、「低炭素社会へ移行した場合」と「気候変動の影響が顕在化した場合」の2つのシナリオで気候変動リスクの影響度と不確実性を評価し、管理しています。気候変動への対応に関する計画や施策について、四半期ごとにグループサステナビリティ推進会議において審議するほか、リスクの変化度合いを見直すローリング作業を同会議にて毎年2回行い、リスクを再評価しています。計画の進捗状況については、グループサステナビリティ責任者から代表執行役社長に毎月報告されています。また重要な環境課題についても、グループサステナビリティ責任者から執行側の基幹会議、リスクマネジメント委員会等に報告されています。取締役会では、気候変動への対応に関する経営計画の進捗について定期的に報告を受け、その執行状況を監督しています。
指標と目標当社では、気候変動のリスクと機会を管理する指標として、製品ライフサイクルCO2排出量、及びカーボンマイナス目標を「エコビジョン2050」で定めています。2050年までに自社の製品ライフサイクルにおけるCO2排出量を2005年度比で80%削減することを目標としています。2020年度は、約82万トンで60%削減まで到達しております。また、当社が考えるカーボンマイナス目標とは、顧客や取引先の環境課題解決の支援を通じてスコープ1・2・3のCO2排出量の範囲を超えるCO2排出量を削減し、自社製品のライフサイクル全体におけるCO2排出量を上回るCO2削減貢献量を生み出していくコミットメントです。当社は2030年にカーボンマイナスを実現することを目標としています。また、気候関連リスク対応として、化石燃料を利用できなくなる将来予測を踏まえ、自社の事業活動で使用する電力の調達を100%再生可能エネルギー由来にすること、再生可能エネルギー利用率を2050年までに100%、2030年までに30%とすることも目標として設定しています。

②当社の気候関連リスクと機会
地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定の合意のもと、世界全体が加速的かつ野心的に低炭素社会へ移行する可能性があります。一方、移行が思うように進まず世界各地で気候変動の著しい影響が顕在化してしまうおそれもあります。当社では、この2つのシナリオを想定し、将来にわたり当社グループの業績に悪影響を及ぼす事業リスクと、気候変動における課題の解決に先手を打って対応することで創出できる事業機会を、それぞれ特定しています。
なお、当社のリスク管理体制・リスクマネジメントプロセスは、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
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