有価証券報告書-第98期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/23 15:01
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【項目】
138項目
3 重要な会計方針
(1) 連結の基礎
① 子会社
子会社は、当社グループが支配する企業である。支配とは、投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー又は権利を有し、かつ、その投資先に対するパワーを通じてそれらのリターンに影響を及ぼす能力を有している場合をいう。
子会社の財務諸表は、支配獲得日から支配喪失日までの間、連結財務諸表に含まれている。支配を喪失した場合には、支配の喪失に関連した利得及び損失を純損益で認識している。支配の喪失を伴わない当社グループの持分変動は、資本取引として会計処理し、非支配持分の修正額と支払又は受取対価の公正価値との差額を資本に直接認識し、親会社の所有者に帰属させている。
子会社が適用する会計方針が当社グループの会計方針と異なる場合には、必要に応じて当社グループの会計方針と整合させるため当該子会社の財務諸表に調整を加えている。当社グループ内の債権債務残高、取引高、及びグループ会社間取引によって発生した未実現損益は、全額を相殺消去している。ただし、未実現損失については、回収不能と認められる部分は消去していない。
② 関連会社に対する投資
関連会社とは、当社グループが投資先の財務及び経営の方針決定等に対し、支配には至らないものの重要な影響力を有している企業である。通常、当社グループが投資先の議決権の20%以上50%以下を保有する場合には、原則として該当する企業に対して重要な影響力を有していると推定される。保有状況のほかにも経営機関への参画等の諸要素を総合的に勘案し、重要な影響力を行使し得る場合には関連会社に含めている。
関連会社に対する投資は、当社グループが重要な影響力を有することとなった日からその影響力を喪失する日まで、持分法を用いて会計処理している。持分法では、当初認識時に関連会社に対する投資は取得原価で認識され、投資日における投資が、これに対応する被投資会社の資本を超える場合には、当該差額はのれんとして投資の帳簿価額に含めている。それ以降は投資先である関連会社の純損益及びその他の包括利益の持分の変動に応じて当社グループ持分相当額を認識している。損失に対する当社グループの負担が、持分法適用会社に対する投資を上回った場合には、当該投資の帳簿価額をゼロまで減額し、当社グループが持分法適用会社に代わって債務を負担又は支払を行う場合を除き、それ以上の損失を認識していない。
関連会社に該当しなくなり、持分法の適用を中止した場合には、持分法の適用を中止したことから生じた利得又は損失を純損益として認識している。
関連会社に対する投資の帳簿価額の一部を構成するのれんは区別して認識されないため、個別に減損テストを行っていない。その代わり、関連会社に対する投資額が減損している可能性が示唆される場合には、投資全体の帳簿価額について減損テストを行っている。減損については「(10) 非金融資産の減損」に記載のとおりである。
③ 共同支配の取決め
共同支配の取決めとは、複数の当事者が共同支配を有する取決めをいう。当社グループは共同支配の取決めへの関与を、当該取決めの当事者の権利及び義務に応じて、共同支配事業(共同支配を行う参加者が、契約上の取決めに関連する資産に対する権利及び負債に係る義務を有するもの)と共同支配企業(取決めに対して契約上合意された支配を共有し、関連性のある活動に関する意思決定が、支配を共有している当事者の全員一致の合意を必要とし、かつ、当社グループが当該取決めの純資産に対する権利を有しているもの)に分類している。共同支配事業については、共同支配の営業活動から生じる資産、負債、収益及び費用のうち、連結会社の持分相当額のみを認識している。共同支配企業については、持分法を用いて会計処理している。
④ 連結の範囲・持分法等の適用に関する事項
連結子会社の数 360社
主要な連結子会社の名称については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載している。
なお、当連結会計年度より2社を新たに連結の範囲に加えている。その要因は新規設立(1社)、取得(1社)である。また、20社を連結の範囲から除外している。その要因は清算(11社)、合併(7社)等である。
持分法適用関連会社等(関連会社・共同支配事業・共同支配企業)の数 97社
主要な持分法適用関連会社等の名称については、「第1 企業の概況 4 関係会社の状況」に記載している。
なお、当連結会計年度より関連会社8社を持分法適用の範囲から除外している。
(2) 企業結合
企業結合は、支配が獲得された時点で取得法を用いて会計処理している。被取得企業における識別可能資産及び負債は、取得日の公正価値で認識している。
当社グループは、取得対価及び被取得企業の非支配持分の金額の合計額が、支配獲得日における被取得企業の識別可能な取得資産から引受負債を差し引いた正味金額を上回る場合には、その超過額をのれんとして認識している。反対に下回る場合には、その下回る金額を純損益として認識している。
移転された対価は、取得企業が移転した資産、取得企業に発生した被取得企業の旧所有者に対する負債及び取得企業が発行した資本持分の公正価値の合計で算定される。なお、段階取得の場合には当社グループが支配獲得日以前に保有していた被取得企業の資本持分の公正価値を含む。
取得関連費用は、発生した期間において費用として認識している。
非支配持分は、個々の企業結合取引ごとに、公正価値又は被取得企業の識別可能な純資産に対する非支配持分の比例的持分として測定している。
当社グループは、純損益及びその他の包括利益の各内訳項目を、当社の所有者と非支配持分に帰属させている。
(3) 外貨換算
① 機能通貨及び表示通貨
当社グループの各企業の個々の財務諸表は、その企業が事業活動を行う主たる経済環境の通貨である機能通貨で表示している。当社グループの連結財務諸表は、当社の機能通貨である日本円を表示通貨としている。
② 外貨建取引
外貨建取引は、取引日における直物為替レートまたそれに近似するレートを用いて当社グループの各機能通貨に換算している。
各報告期間の末日において、外貨建の貨幣性項目は、各報告期間の末日現在の為替レートで機能通貨に換算している。取得原価で測定される外貨建の非貨幣性項目は、取引日の為替レートにより機能通貨に換算している。公正価値で測定される外貨建の非貨幣性項目は、公正価値が決定された日の為替レートにより機能通貨に換算している。当該換算及び決済により生じる換算差額は、その他の包括利益として認識する場合を除き、純損益として認識している。
③ 在外営業活動体
表示通貨とは異なる機能通貨を使用しているすべての在外営業活動体の業績及び財政状態は、下記の方法で表示通貨に換算している。
(ⅰ)資産と負債は、期末日現在の決算日レートで換算
(ⅱ)収益及び費用は、平均レートで換算
(ⅲ)結果として生じるすべての為替差額はその他の包括利益で認識
在外営業活動体の処分時には、その他の包括利益に認識された為替差額は利得又は損失として純損益に振り替えている。
(4) 金融商品
① デリバティブを除く金融資産
(ⅰ)認識及び測定
当社グループは、契約の当事者となった時点で金融資産を認識している。通常の方法で売買される金融資産は取引日に認識している。当社グループは、デリバティブを除く金融資産を、償却原価で測定される金融資産、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産に分類しており、当初認識時において分類を決定している。
償却原価で測定される金融資産及びその他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産は、取得に直接起因する取引コストを公正価値に加算した金額で当初認識している。ただし、重大な金融要素を含まない営業債権は取引価格で当初認識している。
(a) 償却原価で測定される金融資産
契約上のキャッシュ・フローを回収するために金融資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて金融資産が保有されていること、また契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じることという条件がともに満たされる場合にのみ、償却原価で測定される金融資産に分類している。
(b) その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産
投資先との取引関係の維持又は強化等を主な目的として保有する株式などの資本性金融商品について、その保有目的に鑑み、当初認識時にその他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産に指定している。
その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産は、当初認識後の公正価値の変動をその他の包括利益として認識している。金融資産の認識を中止した場合又は公正価値が著しく下落した場合には、その他の包括利益を通じて認識された利得又は損失の累計額を利益剰余金に振り替えている。なお、その他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産から生じる配当金については、配当を受領する権利が確立された時点で純損益として認識している。
(ⅱ)認識の中止
金融資産から生じるキャッシュ・フローに対する契約上の権利が消滅した場合、あるいは金融資産を譲渡し、実質的に所有に伴うすべてのリスクと経済価値のほとんどすべてを他の企業に移転した場合に、金融資産の認識を中止している。
(ⅲ)償却原価で測定される金融資産の減損
当社グループは、償却原価で測定される金融資産の減損の認識に関し、期末日ごとに予想信用損失の見積りを行っている。
営業債権及び当初認識後に信用リスクが著しく増大している金融商品については、全期間の予想信用損失を見積り、貸倒引当金として認識・測定している。
信用リスクが著しく増大しているかどうかは、債務不履行発生リスクの変動に基づき判断しており、債務不履行発生リスクに変動があるかどうかの判断にあたっては、以下を考慮している。
・発行体又は債務者の著しい財政状態の悪化
・利息又は元本の支払不履行又は延滞などの契約違反
・債務者が破産又は他の財務的再編成に陥る可能性が高くなったこと
② デリバティブを除く金融負債
(ⅰ)認識及び測定
当社グループは、デリバティブを除く金融負債について、償却原価で測定している。
(ⅱ)認識の中止
当社グループは、契約上の義務が免責、取消し又は失効となった時に、金融負債の認識を中止している。
③ 金融商品の相殺
金融資産及び金融負債は、認識された金額を相殺する法的に強制力のある権利を有しており、かつ、純額で決済するか、資産の実現と負債の決済を同時に実行する意図を有する場合にのみ相殺し、連結財政状態計算書において純額で表示している。
④ デリバティブ及びヘッジ会計
当社グループは、為替変動リスク、金利変動リスク等をヘッジする目的で為替予約、金利スワップ、通貨スワップ等のデリバティブを利用している。これらのデリバティブは、契約が締結された時点の公正価値で当初認識され、その後も公正価値で事後測定している。
デリバティブの公正価値の変動は純損益に認識している。ただし、キャッシュ・フロー・ヘッジの有効部分はその他の包括利益として認識している。
当社グループは、ヘッジ手段とヘッジ対象の関係、リスク管理目的及び種々のヘッジ取引の実施に関する戦略について「金融取引及びデリバティブ取引に係る規程・規則」として正式に文書化している。当該規程にてデリバティブ取引は事業活動の一環(当社事業活動により現実に行われる取引のリスクヘッジの目的)としての取引(予定取引を含む)に限定し実施することとしており、トレーディング目的(デリバティブ自体の売買により利益を得る目的)での取引は一切行わない方針としている。
なお、当社グループは、ヘッジ取引に使用されているデリバティブがヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フローの変動を高い程度で相殺しているか否かについて、ヘッジ取引開始時及びそれ以降も継続的に評価している。
ヘッジ会計に関する要件を満たすヘッジは、次のように分類し、会計処理している。
(ⅰ)公正価値ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値の変動は、純損益として認識している。ヘッジ対象の公正価値の変動は、ヘッジ対象の帳簿価額を調整するとともに、純損益として認識している。
(ⅱ)キャッシュ・フロー・ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値の変動額のうち、有効な部分はその他の包括利益にて認識し、非有効部分は純損益に認識している。
その他の包括利益に認識されたヘッジ手段に係る金額は、ヘッジ対象である取引が純損益に影響を与える時点で純損益に振り替えている。ヘッジ対象が非金融資産又は非金融負債の認識を生じさせるものである場合には、その他の資本の構成要素として認識されている金額は、非金融資産又は非金融負債の当初の帳簿価額の修正として振り替えている。
⑤ 複合金融商品
当社グループが発行した複合金融商品は、保有者の選択により株主資本に転換可能である転換社債型新株予約権付社債である。複合金融商品の負債要素は、資本への転換オプションがない類似の負債の公正価値により当初認識している。資本要素は、複合金融商品全体の公正価値と負債要素の公正価値との差額として当初認識している。取引に直接関連する費用は、負債部分と資本部分のそれぞれ当初の帳簿価額に比例して按分している。
当初認識後、複合金融商品の負債部分は実効金利法を用いて償却原価で測定している。複合金融商品の資本部分は、当初認識後の再測定は行っていない。

(5) 現金及び現金同等物
現金及び現金同等物は、手許現金、随時引き出し可能な預金及び容易に換金可能であり、かつ価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3カ月以内に償還期限の到来する短期投資から構成されている。
(6) 棚卸資産
棚卸資産は、取得原価と正味実現可能価額のうち、いずれか低い方の金額で測定している。取得原価は、主として総平均法に基づいて算定し、購入原価、加工費及び、現在の場所及び状態に至るまでに要したすべての費用を含んでいる。正味実現可能価額は、通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する原価の見積額及び販売に要するコストの見積額を控除したものをいう。
(7) 有形固定資産
① 認識及び測定
有形固定資産は、原価モデルを採用し、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示している。
有形固定資産の取得原価には、当該資産の取得に直接関連する費用、解体、除去及び原状回復費用が含まれている。
② 減価償却
土地等の減価償却を行わない有形固定資産を除き、各資産の取得原価から残存価額を差し引いた償却可能限度額をもとに、有形固定資産の各構成要素の見積耐用年数にわたり主として定額法で減価償却を行っている。
主な有形固定資産の見積耐用年数は以下のとおりである。
・建物 主として31年
・機械装置 主として14年
減価償却方法、見積耐用年数及び残存価額は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定している。
(8) のれん及び無形資産
無形資産は、原価モデルを採用している。耐用年数を確定できる無形資産は、取得原価から償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示している。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産は、取得原価から減損損失累計額を控除して表示している。
① のれん
当社グループは、移転された対価及び被取得企業の非支配持分の金額の合計額が、支配獲得日における被取得企業の識別可能な取得資産から引受負債を差し引いた正味金額を上回る場合には、その超過額をのれんとして認識している。
のれんは償却を行わず、資金生成単位又は資金生成単位グループに配分している。
減損については「(10)非金融資産の減損」に記載のとおりである。
② 無形資産
個別に取得した無形資産は、当初認識時に取得原価で測定しており、企業結合において取得した無形資産は、取得日現在における公正価値で測定している。また、自己創設の無形資産については、資産化の要件を満たす開発費用を除き、その支出額をすべて発生した期の費用として認識している。
③ 償却
耐用年数を確定できる無形資産は、当該資産が使用可能な状態になった日から見積耐用年数にわたり、定額法で償却している。償却方法及び見積耐用年数は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定している。
主な無形資産の見積耐用年数は以下のとおりである。
・ソフトウェア 主として5年
・鉱業権 主として25年
耐用年数を確定できない無形資産、未だ使用可能でない無形資産は償却を行っていない。
(9) リース
契約がリースであるか否か、又は契約にリースが含まれているか否かについては、法的にはリースの形態をとらないものであっても、契約の実質に基づき判断している。
当社グループは、リース又は契約にリースが含まれていると判定したリース契約の開始時に使用権資産とリース負債を認識している。リース負債は、リース開始日におけるリース料総額の未決済分の割引現在価値として測定を行っている。使用権資産については、リース負債の当初測定額に当初直接コスト、前払リース料等を調整し、契約に基づき要求される原状回復義務等のコストを加えた額で当初の測定を行っている。使用権資産は、リース期間にわたり主として定額法により減価償却を行っている。金融費用は連結損益計算書上、使用権資産に係る減価償却費と区分して表示している。
なお、当社グループは、リース期間が12か月以内の短期リース及び少額資産リースについて、IFRS第16号の免除規定を適用し、使用権資産及びリース負債を認識しないことを選択している。これらのリースに関連したリース料を、リース期間にわたり主として定額法により費用として認識している。
(10)非金融資産の減損
当社グループは、棚卸資産及び繰延税金資産等を除く非金融資産について、毎期末日に各資産又は資産が属する資金生成単位に対して減損の兆候の有無を判断している。減損の兆候が存在する場合には、当該資産又は資金生成単位の回収可能価額を見積り、減損テストを実施する。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産、並びに未だ使用可能でない無形資産については、少なくとも年1回又は減損の兆候がある場合にはその都度、減損テストを実施している。
資産又は資金生成単位の回収可能価額は、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としている。個別資産についての回収可能価額の見積りが不可能な場合には、当該資産が属する資金生成単位又は資金生成単位グループの回収可能価額を見積っている。使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算定しており、使用する割引率は、貨幣の時間的価値、及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前の割引率を用いている。
当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでいる。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想される。
のれんの減損テストを行う際には、のれんが配分される資金生成単位又は資金生成単位グループは、当該のれんを内部報告目的で管理している最小の単位であり、かつ事業セグメントよりも大きくならないようにしている。
全社資産は独立したキャッシュ・インフローを生み出していないため、全社資産に減損の兆候がある場合、当該全社資産が帰属する資金生成単位又は資金生成単位グループの回収可能価額に基づき減損テストを行っている。
資産又は資金生成単位の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合に、当該資産の帳簿価額をその回収可能価額まで減額し、減損損失として認識している。資金生成単位に関連して認識した減損損失は、まず、その単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額するように配分し、次に資金生成単位内のその他の資産の帳簿価額を比例的に減額するように配分している。
のれん以外の非金融資産に係る減損損失の戻入れは、過去の期間に認識した減損損失を戻し入れる可能性を示す兆候が存在し、回収可能価額の見積りを行った結果、回収可能価額が帳簿価額を上回る場合に行っている。戻し入れる金額は、過年度に減損損失を認識した時点から戻入れが発生した時点まで減価償却又は償却を続けた場合における帳簿価額を上限としている。のれんに係る減損損失の戻入れは行っていない。
(11)従業員給付
従業員給付には、短期従業員給付、退職給付及びその他の長期従業員給付が含まれている。
① 短期従業員給付
短期従業員給付については、割引計算を行わず、関連するサービスが提供された時点で費用として認識している。
賞与については、当社グループが、従業員から過去に提供された労働の結果として支払うべき現在の法的及び推定的債務を負っており、かつその金額が信頼性をもって見積ることができる場合、それらの制度に基づいて支払われると見積られる額を負債として認識している。
② 退職給付
退職給付制度は、確定給付企業年金制度と確定拠出年金制度、及び退職一時金制度からなっている。退職給付制度の会計処理は以下のとおりである。
(ⅰ)確定給付企業年金制度及び退職一時金制度
確定給付制度に関連する資産又は負債の純額は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値を控除した金額で認識している。
確定給付制度債務の現在価値は、毎年、年金数理人によって予測単位積増方式を用いて算定している。この算定に用いる割引率は、将来の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の利回りに基づいている。
数理計算上の差異を含む確定給付負債(資産)の純額の再測定は、発生時に即時にその他の包括利益として認識し、直ちに利益剰余金に振り替えている。過去勤務費用は純損益として認識している。
(ⅱ)確定拠出年金制度
確定拠出年金制度への拠出は、従業員が役務を提供した期間に費用として認識している。
(12)資本
① 普通株式
普通株式は資本に分類している。普通株式の発行に直接関連して発生した費用(税効果考慮後)を資本から控除して認識している。
② 自己株式
自己株式を取得した場合には、直接関連して発生した費用(税効果考慮後)を含めた支払対価を資本から控除して認識している。自己株式を処分した場合には、受取対価と自己株式の帳簿価額との差額を資本として認識している。
(13)収益
収益は、次の5つのステップを適用し認識される。
ステップ1:顧客との契約を識別する。
ステップ2:契約における履行義務を識別する。
ステップ3:取引価格を算定する。
ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分する。
ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する。
製鉄、ケミカル&マテリアルの各セグメントの売上収益は概ね物品の販売、エンジニアリングセグメントの売上収益は概ね工事契約、システムソリューションセグメントの売上収益は主としてサービスの提供及び工事契約(受注制作によるソフトウェア)によるものである。
① 一時点で充足される履行義務
物品の販売については、当該物品の出荷時点で収益を認識している。これは、当該物品を出荷した時点で当社グループが物理的に占有した状態ではなくなること、顧客に対し請求権が発生すること、法的所有権が顧客に移転すること等から、その時点で顧客が当該物品に対する支配を獲得し、履行義務が充足されるとの判断に基づくものである。
履行義務が一時点で充足されるサービスについては、サービス提供完了時点で収益を認識している。
収益は、受領する対価から、値引き及び割戻しを控除した金額で測定している。
取引の対価は履行義務を充足してから概ね1年以内に回収している。なお、重大な金融要素は含んでいない。
② 一定期間にわたり充足される履行義務
工事契約及び受注制作のソフトウェアについては、支配が一定期間にわたり移転することから、履行義務の進捗に応じて収益を認識している。進捗度は、原価の発生が工事の進捗度を適切に表すと判断しているため、見積総原価に対する累積実際発生原価の割合で算出している(インプット法)。
履行義務が一定期間にわたり充足されるサービスについては、サービス提供期間にわたり定額で収益を認識している。

(14)法人所得税
法人所得税は、当期税金と繰延税金から構成されている。これらは、直接資本又はその他の包括利益で認識される項目を除き、純損益として認識している。
当社グループの当期税金は、期末日時点において施行又は実質的に施行されている税率を使用し、税務当局に納付又は税務当局から還付されると予想される額で算定している。
当社グループの繰延税金は、会計上の資産及び負債の帳簿価額と税務上の資産及び負債の金額との一時差異等に基づいて、期末日に施行又は実質的に施行される法律に従い一時差異等が解消される時に適用されることが予測される税率を用いて算定している。
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内ですべての将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について認識し、毎期末日に見直しを行い、税務上の便益が実現する可能性が高い範囲内でのみ認識している。
ただし、繰延税金資産は、企業結合以外の取引で、会計上の利益にも課税所得にも影響を与えない取引における資産又は負債の当初認識から生じる場合には認識していない。
子会社等に対する持分に係る将来減算一時差異については、以下の両方を満たす可能性が高い範囲内でのみ繰延税金資産を認識している。
・当該一時差異が、予測し得る期間内に解消される場合
・当該一時差異を使用することができ、課税所得が稼得される場合
繰延税金負債は、以下の場合を除き、すべての将来加算一時差異について認識している。
・のれんの当初認識時
・企業結合以外の取引で、会計上の利益にも課税所得にも影響を与えない取引における資産又は負債の当初認識から生じる場合
・子会社等に対する持分に係る将来加算一時差異で、親会社が一時差異を解消する時期をコントロールでき、かつ予測可能な期間内に一時差異が解消しない可能性が高い場合
当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定を織り込んだ中長期経営計画及び最新の事業計画に基づく将来における課税所得の見積り等の予想など、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断している。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識しているが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正などにより回収可能額が変動する可能性がある。
繰延税金資産及び繰延税金負債は、当期税金資産及び当期税金負債を相殺する法律上強制力のある権利を有しており、かつ以下のいずれかの場合に相殺している。
・法人所得税が同一の税務当局によって同一の納税主体に課されている場合
・異なる納税主体に課されているものの、これらの納税主体が当期税金資産及び当期税金負債を純額ベースで決済することを意図している、もしくは当期税金資産を実現させると同時に当期税金負債を決済することを意図している場合
(会計方針の変更)
当社グループは当連結会計年度より、「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号「法人所得税」の改訂)(2023年5月公表)」を適用しており、第2の柱の法人所得税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の認識及び情報開示に関しては、本基準書に定められた例外を適用している。
(15)1株当たり利益
基本的1株当たり当期利益は、親会社の普通株主に帰属する当期利益を、その期間の自己株式を調整した普通株式の期中平均株式数で除して算定している。
希薄化後1株当たり当期利益は、希薄化効果を有するすべての潜在株式の影響を調整して計算している。