有価証券報告書-第84期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 13:40
【資料】
PDFをみる
【項目】
125項目

研究開発活動

当社グループは、持続的成長と社会貢献に資する先端材料研究開発テーマに継続的に投資しております。また、AI
やマテリアルズインフォマティクスなど、デジタル技術を活用することで開発期間の短縮を進めております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費総額は、次のとおりであります。
(単位:百万円)

当連結会計年度
(自 2020年4月1日
至 2021年3月31日)
研究開発費14,475

また、当連結会計年度のセグメント毎の研究主要課題及び研究開発費は、次のとおりであります。
(単位:百万円)

セグメントの名称研究主要課題研究開発費
特殊鋼製品金型・工具、電子材料、産業機器材料、航空機・エネルギー関連材料等の分野に向けた高級特殊鋼、各種圧延用ロール等の開発4,486
素形材製品高級ダクタイル鋳鉄製品、輸送機向け鋳鉄製品、排気系耐熱鋳鋼部品、アルミニウム部品及び管継手・バルブその他の設備配管機器の開発3,145
磁性材料・パワー
エレクトロニクス
高性能磁石、情報端末用高周波部品部材、アモルファス金属材料・ナノ結晶軟磁性材料、その他各種磁石及びセラミックス製品並びにそれらの応用製品等の開発2,199
電線材料産業用・車輌/自動車用・機器用、医療用等の各種電線及び巻線に関連する材料、製造プロセス技術及び接続技術、並びに自動車用電装部品・ホース、工業用ゴム等の開発4,645


なお、当連結会計年度のセグメント毎の研究開発活動の主要な成果は、次のとおりであります。当社は、これらの成果が、これから電動化(xEV)*への転換が進んでいくことが見込まれる自動車関連分野のほか、産業インフラ及びエレクトロニクス関連分野における製品の軽量化、低燃費・省エネルギー化といった環境課題及び社会課題に貢献することを期待しております。
セグメントの名称主要な成果
特殊鋼製品・高温強度を引き出す合金設計に鋼種独自の組織制御プロセスを組み合わせることで、高い高温強度と靭性を兼ね備えた高性能ダイカスト金型用鋼「ZHD®492」を開発しました。本品は、熱負荷の高い用途においてヒートクラック寿命を延長することで、金型補修工数の低減、ダイカスト製品の生産性・品質の向上に貢献することが期待できます。
・大型テレビ向けやスマートフォンなど中小型端末向け有機ELパネルの性能向上や採用機種拡大に向けた圧延材料開発に取り組んでいるほか、車載リチウムイオンバッテリー及び新分野向けのクラッド材開発活動も強化しており、20年度に新製品の開発も完了し、21年度から量産を開始します。
・3Dプリンター用金属粉末の高耐食・高強度合金「ADMUSTER®-C00P」、高耐食ニッケル基合金「ADMUSTER®-C21P」、低Coマルエージング鋼「ADMUSTER®-W285P」、及び鉄クロムコバルト磁石の積層造形レシピを開発しました。特徴ある金属材料での積層造形品の提供が期待できます。
素形材製品・海水淡水化などで使われる逆浸透膜の目詰まりやダメージを抑制するセラミックス吸着フィルタの実証実験をシンガポールで開始しました。海水淡水化だけではなく一部の産業廃水再利用でも効果を確認しており、逆浸透膜の洗浄や交換頻度を低減できる見込みを得ています。これにより造水コスト低減や水処理プラントの運転コスト低減が期待できます。
・新圧力センサーを搭載した「圧力式MFC(PS200 シリーズ)」を開発しました。新圧力センサーは、受圧部の金属製ダイアフラム(金属製隔膜)と、圧力検出部の半導体ダイアフラム(半導体隔膜)の二重ダイアフラム構造を有しており、高耐食性と再現性、長期安定性を兼ね備えた精密流体制御機器であり、高品質な半導体製造装置への採用が期待できます。
磁性材料・パワー
エレクトロニクス
・自動車、鉄道、産業機器等に搭載されるパワーデバイス用SiC(炭化ケイ素)基板の高精度研磨技術「Hi-LoDe LapTM」及び低欠陥SiCエピタキシャル膜「Hi-LoDe EpiTM」を開発しました。本技術によりパワー半導体モジュールの小型化、高効率化に寄与することが期待できます。
・xEVのインバータに使用されるパワー半導体モジュール実装用高熱伝導窒化ケイ素基板を開発しました。当社従来製品比で熱伝導率を約30%向上したものであり、Si-IGBT、SiC-MOSFET等、大電力パワー半導体の高い信頼性が要求される絶縁基板に適しています。
電線材料・高い耐屈曲性とカテゴリー6A規格を満足する信号伝送特性を兼ね備えた産業用ロボット用ケーブルを開発しました。本品は、産業用ロボットのロボットビジョン等に活用され、工場の省人化、自動化に大きく寄与することが期待できます。
・高い滑り性と耐薬品性を兼ね備えた医療用シリコーンケーブルを開発しました。シリコーンの表面に独自の表面処理を施すことによって、シリコーン特有の粘着性の問題を解消しました。感染症患者の診断に使用される医療機器は頻繁に消毒する必要があるため、耐薬品性能に優れたシリコーンケ―ブルの採用拡大が期待できます。

※電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)の総称です。