有価証券報告書-第81期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/22 16:13
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【項目】
154項目
<戦略>当社グループでは、気候変動が短期・中期・長期の視点で自社のバリューチェーンにもたらす政策・規制や市場変化による移行リスク、異常気象などの物理リスクの中で、特に事業への影響が大きいと想定されるリスクと機会を特定するためにシナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの気温上昇を1.5℃未満に抑える」ことを想定した政策移行の影響が大きいシナリオ(1.5℃シナリオ)、及び環境規制が強化されず物理的リスクが高まるシナリオ(4℃シナリオ)の2つの世界観を想定しています。この2つのシナリオにおいて気候変動がもたらすリスク及び機会を特定し、その財務影響を可能な限り定量化し、当社グループの環境戦略に反映させることで、事業の持続的成長や将来リスクの低減につなげ、企業としてのレジリエンスを高める取り組みを進めています。当連結会計年度は、気候変動との関連性の高い水や資源に関わる戦略との統合的な管理に着手しました。
気候変動を含む環境課題のリスクと機会
リスク移行①カーボンプライシング導入による操業コストの増加
②市場の変化による原材料・部材調達コストの増加
物理③台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失
④渇水等による自社工場の操業停止による売上機会の喪失
機会⑤日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の
省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加
⑥低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加
⑦災害対策・災害復興商材などの需要増加
⑧節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加

■主要な気候関連のリスクと機会への対応状況
① カーボンプライシング導入による操業コストの増加
事業所(特に製造拠点)のCO2排出量を削減するために、生産効率性の向上、不良率の良化、燃焼効率の改善、トップランナー機器への更新等を進めています。また、太陽光発電システムの設置や経済合理性のある再生可能エネルギーの調達を進めており、事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す企業イニシアティブ「RE100」に加盟しています。海外事業において、すべての水栓金具工場・物流センター(全10拠点)のほか、当連結会計年度には、メキシコの生産工場3拠点を100%再生可能エネルギーに切り替えています。国内では洗面化粧台の生産工場である大谷工場の屋根にPPAモデルによる太陽光発電設備の稼働を開始し、水栓金具の生産工場である尾道工場でも2023年8月から稼働する予定です。今後も再生可能エネルギーの調達方法において、PPAモデルをはじめとした“追加性”が高い手法の導入を積極的に検討していきます。また、国内の営業拠点やショールームを含むオフィスでは、8割以上がすでに再生可能エネルギーへの切り替えが完了しています。さらに、脱炭素社会の実現に向けて、2030年以降の実用化を目指した事業活動におけるイノベーションの取り組みのひとつとして、水素燃料への転換を見据えた製造技術検証を継続的に行ってきました。アルミ溶解工程、衛生陶器やタイルの焼成工程で使用する高温炉の検証として水素燃焼実験を行い、従来の天然ガスと同様に問題なく水素が使用可能であることを確認しました。また、アルミ形材の製造工程においては、高温の溶解工程以外でも水素への燃料転換を展開することを見据えて、品質影響が懸念されるアルミエージング処理工程において、当社グループの生産工場の量産設備で実証実験を行い成功しました。また、中長期での戦略的な省エネルギー投資を後押しするためのより実効性のあるインターナルカーボンプライシング制度の検証を進めています。
② 市場の変化による原材料・部材調達コストの増加
原材料・部材の調達によるCO2排出量を削減するために、より低炭素な原材料・部材への切り替え、製品の薄肉化、部品点数削減などを進めています。当連結会計年度から、バリューチェーン全体の現状を把握し、効果的なCO2排出削減活動に取り組めるよう、調達CO2総排出量の上位80%のサプライヤーの皆さまとのエンゲージメント活動を開始しました。調達CO2削減に影響の大きいサプライヤーの皆さまに対して、CO2排出量集計や削減目標設定の状況を把握するためのアンケート調査を実施しました。今後も、調査結果をもとにコミュニケーションを進め、原材料の安定供給や責任ある調達に加えて、調達CO2削減に向けた連携を強化していきます。
③ 台風や洪水等による自社工場の被災による売上機会の喪失
大規模自然災害を想定した際のリスクとして、当社の本社、事業所、工場含む全域における被害想定をもとに、各工場における事業継続計画(BCP)活動を実施し、災害リスクの最小化を進めています。また、製品供給における対策として調達先の適正化、適切な在庫確保、バックアップ生産体制の構築などを進めています。他にも、当社及び国内の連結子会社が所有・使用・管理する固定資産が火災や風水災等の不測かつ突発的な事故に遭った際に補償される保険プログラムに加入しています。
④ 渇水等による自社工場の操業停止による売上機会の喪失
世界で水不足が深刻化する中、地域の実情を把握し適切な施策を実行するため、当社グループでは、2017年3月期から製造プロセスで水を使用する生産拠点77拠点における水リスク調査を実施しています。リスク評価のプロセスでは、まず国際的な評価ツール(WWF Water Risk Filter)により地理的なリスク評価を行い、その中で高リスクと認定された拠点を対象とした調査を実施しています。当連結会計年度には、2031年3月期までに自社の事業プロセスにおける水の使用効率を、2019年3月期を基準年として20%改善する目標を掲げ、今後、自然関連情報開示タスクフォース(TNFD)が示す生物多様性の保全の観点から、水不足拠点における水使用量の削減に取り組んでいきます。
⑤ 日本の家庭部門CO2削減目標実現に向け、新築住宅のZEH普及や既築住宅の省エネリフォーム拡大に向けた高断熱・省エネ・創エネ商材などの需要増加
世界の最終エネルギー消費のうち、約3割が建築に起因し、日本での一般的な住宅における消費エネルギーのうち約6割を冷暖房と給湯が占めています。また、日本の住宅の高性能化は欧州などに比べて遅れており、日本の既存住宅の約9割は現行の省エネ基準を満たしておらず、断熱効果の高い「窓」の果たす役割は非常に大きく、地球温暖化対策に向けたドライバーになり得ます。
当社グループは、高い断熱性能や節湯・節水性能、創エネ機能などCO2排出量の削減に貢献する製品・サービスを提供する企業として、住宅・建築物のCO2排出削減に果たす責任は大きいものと認識しています。特に、国内の新築市場は縮小傾向のため、既築住宅の高性能化リフォーム推進が重要な課題となります。住宅1棟をまるごと断熱改修する高性能住宅工法、開口部を簡単に断熱改修できるリフォーム窓・ドア、節湯・節水に貢献する節湯水栓・シャワーや節水型トイレなどの水回り製品を通じてリフォーム活性化に貢献していきます。また、新築戸建て住宅向けの製品についても、前連結会計年度にすべての窓シリーズ製品の刷新を行い、2026年3月期までに日本の新築戸建住宅向けの高性能窓比率100%を目指しています。
⑥ 低炭素材料の利用や資源の環境性に配慮した商材などの需要増加
調達・製造時にCO2を多く排出する原材料・部品の価格高騰、石油由来のプラスチックに関する規制強化、サーキュラー・エコノミーの台頭による消費者嗜好の変化等の市場変化に対応していくために、製品の原材料として可能な限りリサイクル素材や再生可能な素材を使用し、長寿命化とリサイクル性を考慮した設計を進めています。当社グループが展開するGROHEブランドでは、資源の有効活用を促進する「Cradle to Cradle」認証製品を拡充しており、さらに環境製品宣言(EPD)に対応した製品は、18商品群、777品目に達しています。また、国内市場では、ハウジングテクノロジー事業で使用されるアルミ形材について、2031年3月期までにリサイクルアルミニウムを100%使用するという新たな中期目標を設定し、2022年12月には、「エコリーフ環境ラベル」を取得した低炭素型アルミ形材「プレミアル(PremiAL)」シリーズを発売しました。第1弾商品の「プレミアルR70」は原材料の70%にアルミリサイクル材を使用しており、新地金を使用した製品と比べてCO2排出量を55%削減することができます。さらに、原材料すべてにアルミリサイクル材を使用する技術開発に既に成功しており、2023年秋にアルミリサイクル率100%の低炭素型アルミ形材「プレミアル R100」の発売をビル向け建材から予定しています。また、これまで焼却や埋め立てによって処理されていた廃プラスチックと廃木材を融合した新しい循環型素材「レビア」を開発し、「レビア」を使用した第1弾製品として、歩道・広場・公園・建築外構など幅広い用途に使用可能な舗装材「レビアペイブ」を、2023年1月に販売しました。調達から生産、販売、施工、回収に至るエコシステムを構築することで、廃プラスチックの循環利用を促す持続可能なビジネスモデルを確立し、廃棄物とCO2排出量の削減、土壌や水、社会全体に有害な廃プラスチックによる汚染の低減に取り組んでいきます。その他にも樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品よりも約3倍に拡大した樹脂窓、再生樹脂及び再生木粉を利用した人工木デッキ、スパウト(吐水口部分)だけを後から浄水機能付きスパウトに取り替えられるアップグレード可能なキッチン用水栓など、消費者の選択肢を広げサステナブルな暮らしを提案する製品・サービスの開発と提供を進めていきます。
⑦ 災害対策・災害復興商材などの需要増加
台風や豪雨といった自然災害被害の増加や猛暑による熱中症の増加に伴い、今の窓に簡単に取り付け可能で台風時の強い風による飛来物から窓を守るシャッター・雨戸、強い日差しを窓の外側でカットする「スタイルシェード」、断水時には洗浄水量を5リットルから1リットルに切り替えられるパブリック向け衛生陶器「レジリエンストイレ」等の気候変動への適応に資する製品の開発と提供を進めていきます。
また、熱中症やヒートショックを引き起こす一因である室内温度と冷暖房の効率の重要性についてステークホルダーとともに考える多様な活動「Think Heat」や、災害から家族を守る家をつくるための活動「減災プロジェクト」を推進しています。
⑧ 節水・水質改善などに貢献する商材などの需要増加
水の効率的な利用を促進する製品やソリューションの提供を通じて、エンドユーザーの責任ある水利用をサポートし、日常生活における節水につなげています。節水型トイレや水栓、スマートコントローラーなどの製品の提供を通じて、2025年3月期までに、世界で年間20億㎥の水使用量の削減に貢献することを目指しています。また、より良い住まいには、シャワーや手洗い、飲料水など、清潔で安全な水が不可欠です。当社グループは、製品の提供だけにとどまらず、消費者や地域社会と連携することで行動変容を促し、より安全な水の提供と水の汚染リスクの低減にも取り組んでいます。さらにパートナーとの協働を通じて、地域や文化によって異なる課題に対応するソリューションを開発し、より効率的で責任ある水利用を促進するため、水不足への対応、使用効率の改善、安全性の向上、再利用の促進といった様々な水の課題に関する議論を活性化し、政策提言を行っていきます。

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