有価証券報告書-第204期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/24 11:32
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有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
■古河電工グループの理念体系
当社グループは、古河電工グループ パーパス(以下、パーパス)「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」を軸とした経営を推進しています。当社グループのパーパスは、「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)に向けた全社戦略及び全ての経営判断・戦略立案の起点となる概念です。
古河電工グループ理念体系において、「パーパス」は私たちの存在意義、「ビジョン」は目指す姿を示し、「Core Values」は全社員が共有する共通の価値観として基盤を形成するものです。これらは、全体が関係し合い、当社グループの持続的成長を支える枠組みです。

■古河電工グループ パーパス*
当社グループのパーパスは、経営の判断軸となり、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。創業以来磨き続けてきた技術力と提案力を強みとし、さまざまな社会課題に向き合い挑戦することで、よりよい未来へとつながる「つづく」をつくることが当社グループの存在意義である、との思いを込めています。また、創業者である古河市兵衛の「日本を明るくしたい」という思いを継承しつつ、グローバルに事業を展開していることを鑑みた表現にしています。

*「古河電工グループ パーパス」は、2024年3月に制定され、2024年4月19日から施行されています。
■古河電工グループ ビジョン2030
ビジョン2030は、当社グループが目指す姿を示しています。急速に大きく変化する社会に貢献し続けるには、どう変わっていけばよいか、グループが一丸となって何をしていくべきか、そのゴールを明確に共有できるように、将来社会像やパーパスを踏まえて描いた当社グループの将来のありたい姿の時間軸と領域を明確にしたものです。ビジョン2030で当社グループは「地球環境を守り」「安全・安心・快適な生活を実現する」ため、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域において社会基盤を創り、また、更なる成長に向けては、新領域におけるこれまでにない新たな事業の創出にも取り組み、社会課題の解決を目指しています。

古河電工グループは
「地球環境を守り」「安全・安心・快適な生活を実現する」ため、情報 / エネルギー / モビリティが融合した社会基盤を創る。

■Core Values(コア・バリュー)
パーパスを体現し、当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観として⦅正々堂々⦆⦅革新⦆⦅本質追究⦆⦅主体・迅速⦆⦅共創⦆の5つを定め、「Core Values」としています。

■古河電工グループのサステナビリティ基本方針
当社グループは、パーパスのもと、ビジョン実現に向けた取組みを実行し、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指します。こうした基本的な考え方を、「古河電工グループ サステナビリティ基本方針」と制定しています。
古河電工グループ サステナビリティ基本方針
古河電工グループは、
「古河電工グループ パーパス」に基づき、収益機会とリスクを踏まえて設定した経営上の重要課題に取組み、社会課題の解決を通じて持続的な成長を目指します。
社会課題を解決する事業の強化・創出に向けて、資本効率を重視しつつ、技術力と提案力を強みとした絶え間ないイノベーションや多様なステークホルダーとの共創により事業を変革し続けます。
国内外の法令、社会規範や倫理に従うとともに、適切な情報開示と積極的なコミュニケーションを通じて、全てのステークホルダーとの健全で良好な関係を維持・向上させ、社会の持続的な発展に貢献します。


(2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
本項は、当社グループの経営全体の方向性を示すものです。25中計の振り返り、外部環境認識と当社が取り組むべき課題(対処すべき課題)、パーパスを軸としたサステナブルな経営、ビジョン2030実現及び持続的な成長に向けた経営方針と取組み、実行を支える体制、を記載しております。
また、これらのうち、サステナビリティ関連のリスク及び機会として重要性が高い「気候変動」及び「人的資本」については、「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」において詳細を記載しております。
1)25中計振り返り
当社グループでは、ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義し、その実現に向け2025年度を最終年度とする4か年の中期経営計画「Road to Vision 2030 -変革と挑戦-」(以下、25中計)を2022年度に策定し、各施策に取り組んでまいりました。
具体的には、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出を掲げ、収益の拡大に向けた取組みとして、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進、また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでまいりました。

また、ビジョン2030を実現するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、収益機会とリスクの両面でマテリアリティを特定し、それぞれに指標・目標を「サステナビリティ指標・目標」と設定しました。この目標達成により、ビジョン2030を実現するとともに、SDGsの達成にも寄与すること、さらには、当社グループの中長期的な企業価値向上を目指して取り組んでまいりました。

(ⅰ)資本効率重視による既存事業の収益最大化
成長性と収益性の指標を用いて事業の位置付けを可視化し、その結果に応じて経営資源を成長が見込まれる分野に集中して配分することにより、資本効率性を意識した経営管理を推進するとともに事業ポートフォリオの見直しを図ってまいりました。
事業ポートフォリオ最適化のため、事業の再編・撤退、企業買収等の事業ポートフォリオの変革を推進し、戦略投資枠の活用による積極的なM&Aや資本提携などを実施してまいりました。
[主な事業ポートフォリオの最適化の取組み]
・光ファイバ・ケーブル事業の運営体制を刷新し、各地域における事業を統合。新ブランド「Lightera*」のもと、一体となったグローバル経営により効率的かつ迅速な意思決定を可能とする体制を整備。
・メタル電線事業を再編し、事業運営の効率化による相乗効果を発揮することで、多様化・高度化するニーズに迅速に対応。
・光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社を子会社化し、シナジーの発揮による成長市場における当社の優位性を確立。
・一部の関係会社に関する株式売却により、成長分野への再投資に向けてノンコア事業や不採算事業を切り離すことで、資本効率を改善。
また、拡大が続くデータセンタ関連需要を確実に取り込むため、高速大容量・低遅延通信等の実現に貢献する製品群、及びサーバ等の高発熱化に対応する放熱・冷却製品群の製造能力を増強するとともに、これらの高付加価値製品の開発や増産、拡販を通じた収益基盤の拡大に取り組んでまいりました。このほか、販売価格の適正化及び業務プロセス改善の取組みによる原価低減を図ってまいりました。
* Lightera: 当社グループの光ファイバ・ケーブル事業におけるブランド名称。
(ⅱ)開発力・提案力の強化による新規事業創出に向けた基盤整備
素材力を核として長年培ってきた「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を活用するとともに、デジタル技術やデータの利活用を推進し、課題解決を起点とした製品・サービスの開発・提供を通じて、新たな社会課題解決型事業創出に向けた基盤整備を図ってまいりました。
情報領域において、B5G*社会に対応するため、データトラフィックの増加への対応やデータセンタの高速大容量化・低消費電力化の推進が求められるなか、当社のコア技術であるフォトニクス技術及び高周波技術を生かし、光電融合を実現する高機能なフォトニクス製品を開発することにより、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現を図ってまいりました。
加えて新領域においては、市場視点でのマーケティング活動を通じて、自社技術に基づく知見を生かし国内外のパートナー企業と共創するとともに、部門横断的な事業開発を促進してまいりました。具体的なテーマとして「ライフサイエンス」、「レーザ応用」、「超電導」及び「グリーンLPガス*」に注力し、事業化に向けた取組みを加速してまいりました。「ライフサイエンス」については、医療・産業機器向け光ファイバ及び光関連部品を製造する会社を子会社化してフォトニクス技術の活用による非通信領域に関する事業の強化を進めてまいりました。「レーザ応用」については、環境負荷の低減及び作業環境の安全性・快適性向上に貢献し、金属表面の塗膜や錆を非接触で除去できるレーザ施工システムに関して、複数の顧客との共同開発や実証実験を進め、大手鉄道会社において実運用が開始されました。「超電導」については、次世代のエネルギー源として期待される核融合*炉の開発を進める英国の顧客に対する高温超電導線材の供給や同社への出資を通じたパートナーシップの強化などを推進してまいりました。「グリーンLPガス」については、独自開発したラムネ触媒®をはじめとする複数の触媒及びこれらを用いたバイオガスの分子構造を変更するプロセスを開発することにより、高効率にグリーンLPガスを合成できる基盤技術の構築に取り組んでおり、さらに世界に先駆けてグリーンLPガスの量産に向けた実証プラントの建設を進めてまいりました。
* B5G(Beyond5G):5G(第5世代移動通信システム)を引き継ぎ高度化した次世代移動通信システム。5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。
* グリーンLPガス:バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミなどを発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素の混合ガス)やDAC(Direct Air Capture(直接空気回収技術))から得られる二酸化炭素、再生可能エネルギーを用いた水電解による水素など、これらの環境負荷の低い原料をもとに生成したLPガスのこと。
* 核融合:強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO₂)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。
(ⅲ)ESG経営の基盤強化
環境(Environment)に関する取組みとして、脱炭素社会及び水・資源循環型社会への貢献等を掲げた「古河電工グループ環境目標2030」の各目標を達成するための施策に取り組んでまいりました。太陽光発電設備の導入を進めるなど電力消費量に占める再生可能エネルギー比率の向上への取組みなどにより、温室効果ガス排出量削減率に関する目標値の早期達成につながりました。このような施策への取組みが認められ、企業や自治体の環境情報開示を促進する国際的な非営利団体であるCDPから、2025年度に気候変動と水セキュリティの2分野で「Aリスト」、サプライヤーエンゲージメント評価で「リーダーボード(A)」に選定をされたほか、2026年1月には、環境省から非鉄金属業界初となる「エコ・ファースト企業」の認定を受けました。
社会(Social)に関する取組みとして、当社グループの存在意義を表す古河電工グループ パーパス「『つづく』 をつくり、世界を明るくする。」を2024年3月に制定し、このパーパスについて従業員の理解促進及び共感の醸成を目的とした活動を実施し、これにより従業員が当社グループで働くことへの誇りをもつことにつなげることで従業員エンゲージメントの向上を推進してまいりました。また、従業員個々人と組織がともに実行力を向上させ成長するため、現状をモニタリングする調査を実施し、その結果を踏まえた改善施策に取り組んでまいりました。これらの取組みにより、「人材・組織実行力の強化」を着実に進め、人的資本投資を通じた持続的な企業価値向上を図ってまいりました。
ガバナンス(Governance)に関する取組みとして、コーポレートガバナンスの一層の充実を推進するため、2025年6月に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しました。また、ESGの取組みを一層推進するための仕組みとして、ESG連動報酬を加えた役員報酬制度を2023年7月から運用しております。さらに、国際的な行動規範に基づき人権デューディリジェンスの仕組みを構築し、従業員及びサプライチェーンにおける人権リスクの再評価により新たに特定したリスクについて、それらを低減させる施策に取り組んでまいりました。
[経営指標の振り返り]
25中計において、資本効率を意識した事業の強化と創出を行うため、投下資本利益率(ROIC)や自己資本利益率(ROE)等を経営指標として重視してまいりました。これらの取組みの結果、2025年度に達成すべき基準として設定した各財務目標値は全て達成いたしました。また、サステナビリティ目標値(25中計期間において毎年度達成すべき基準として設定した目標値を含む)についても概ね達成いたしました。なお、目標が未達となった「従業員エンゲージメントスコア」についてはその改善に向けてパーパスの浸透活動を通じた組織風土の醸成を、「管理職層に占める女性比率」については管理職層の労働環境改善及びキャリアデザインに関する教育機会の提供等の取組みを、引き続き実施してまいります。
2025年度の財務目標値及び実績値
目標値実績値
ROIC(税引後)6%以上12.2%
ROE11%以上19.1%
Net D/Eレシオ0.8以下0.6
自己資本比率35%以上39.1%
連結売上高1.1兆円以上1.3兆円
連結営業利益580億円以上639億円
親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上725億円


2025年度のサステナビリティ目標値及び実績値
サステナビリティ指標2025年度 目標2025年度 実績結果 (*7)
環境調和製品売上高比率70%72.1%達成
新事業研究開発費増加率 (2021年度基準)(※)125%156%3年間達成
事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率100%(*1)100%(*1)達成
温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)(2021年度基準)(*2)△18.7%△44%
(見込)
達成見込
電力消費量に占める再生可能エネルギー比率(*2)30%53%
(見込)
達成見込
従業員エンゲージメントスコア(*3)8076未達成
(単体)管理職層に占める女性比率7.0%6.3%未達成
(単体)新規採用者に占めるキャリア採用比率
(管理職層、総合職、一般職)(※)
30% (*4)52.8%毎年達成
全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率(※)100%100%毎年達成
主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ(*5)実施率100%100%達成
管理職に対する人権リスクに関する教育実施率(※)(*6)100%100%毎年達成

※:単年度別目標型の指標。その他は2025年度到達目標型の指標。
*1:2022年度に設定したテーマに関して全件実施を意味する100%を目標としたが、2024年度において達成済み。
*2:環境目標2030改定(2022年度)に伴い基準年度や目標値を改定。
*3:2022年度に目標値設定。2023年度に対象範囲を国内外グループ会社に拡大、単体目標からグループ目標に変更。
*4:各年度30%程度を維持する事を意味する。
*5:SAQ(Self-Assessment Questionnaire):自己評価アンケート。
*6:2022年度に国内開始を目標として開始したが、毎年グループで100%達成。
*7:到達目標の場合は2025年度時点、各年目標の場合は達成年数を記載。
2)外部環境認識と当社グループが取り組むべき課題(対処すべき課題)
(ⅰ)外部環境認識
当社グループを取り巻く外部環境は、大きな変化が生じています。これらは当社グループにとって大きな成長機会である一方、供給責任・人材確保などの重大リスクの増大を意味すると捉えています。

(ⅱ)経営上の重要課題
これらを踏まえ、ビジョン2030を実現する経営戦略を具体化すべく、当社グループでは、約2年間にわたり、経営会議及び取締役会メンバーで約20回の討議機会を設け議論してまいりました。その議論を経て、収益機会とリスク、財務と非財務の双方で、ビジョン2030の実現やその先の持続的な成長に大きく影響を与える可能性のある課題として優先的に対処すべき経営上の重要課題を、社会課題解決による価値創造を推進するための2項目、その価値創造を持続可能にする経営基盤を確立するための4項目、合わせて6項目に設定しました。
[社会課題解決による価値創造を推進するための経営上の重要課題]
▷ 情報をベースとした社会基盤の創出
▷ 社会課題解決に資する新しい事業への挑戦
[価値創造を持続可能にする経営基盤を確立するための経営上の重要課題]
▷ 事業・製品ポートフォリオの最適化
▷ 労働生産性の向上
▷ 人的資本の最大化
▷ ガバナンスの強化・リスク耐性の向上
[経営上の重要課題特定プロセス]
経営上の重要課題の特定は、Step1~Step4のプロセスで行いました。まず、Step1では「外部要因」と「内部要因」に基づき社会課題を洗い出し、重要項目リストを作成しました。Step2では「株主・投資家にとっての重要度」を高・中・低 で評価しました。Step3では「ビジョン2030実現にとっての重要度」 をリスクと機会の発生可能性や時期、財務影響度などで高・中・低で評価しました。Step4では、Step2~3で評価した優先度の高い項目を、「ビジョン2030実現にとっての重要課題」と「企業の社会的責任を果たしステークホルダーとの信頼関係強化に向けた重要課題」に分類し、さらに前者を整理し、ビジョン2030実現に向けた経営上の重要課題を特定しました。なお、今後は定期的にこれらのステップを行い必要に応じて重要課題の見直しを行います。

※なお、従来当社グループでは、ビジョン2030を実現するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義してまいりましたが、このたび、ビジョン2030の実現や持続的な企業価値向上に大きく影響を与える可能性のある課題(機会とリスク)(財務・非財務)を優先すべき「経営上の重要課題」と設定しました。

3)パーパスを軸としたサステナブルな経営
当社グループは、25中計期間において、資本効率を重視した収益最大化のための事業構造改革、新事業創出の基盤整備を進めてまいりました。また、ESG経営の基盤強化を重点施策の1つとし、価値創造プロセス設計のなかで、財務目標に加えて、環境・社会・ガバナンスに関する非財務項目についても目標を掲げ、持続可能な企業価値向上に向けて取り組んでまいりました。
2026年度以降は、パーパスに基づくサステナブルな経営を実践してまいります。近年の外部環境変化を踏まえると、企業価値に影響する要素は財務・非財務の両面にまたがり、また、収益機会とリスクは一体的に追求していく必要性が増していることから、経営上の重要課題ごとに機会とリスク双方の戦略・施策・指標を明確化し、また、財務だけでなく非財務事項の将来財務価値を踏まえて総合的に管理し、企業価値向上に結び付けてまいります。
これらの考え方は、サステナビリティ基本方針に則るものであり、当社グループのパーパスに基づく経営の実践そのものでもあります。当社グループはESG経営を超え、パーパスに基づいた経営を実現し、ビジョン2030の実現と持続的な成長を目指します。
4)ビジョン2030実現及び持続的な成長に向けた経営方針
急速に変化する外部環境、それに伴う社会課題、そして当社グループの特徴、事業機会・リスクを総合的に勘案し、優先的に対処すべき経営上の重要課題を選定し、それらに注力することで、社会課題解決による価値創造の推進と持続的な価値創造の経営基盤の確立を目指します。具体的には以下の通りです。
(ⅰ)基本戦略(26年度以降の価値創造戦略)
当社グループは、4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を保有し、それら個々の領域に加え、特定市場に限定されない融合領域で社会課題解決に貢献できることを強みとしています。またそれら幅広い領域でのステークホルダーとの信頼関係構築により、長年開発力・提案力を磨いてまいりました。これらが当社グループの競争力の源泉です。そこで、当社グループの持続的な事業成長のため、特に2030年に向けては、需要拡大が続くデータセンタ領域に経営資源を集中し、高速・大容量通信基盤の構築、情報の高度化とエネルギー問題の両立に貢献することによる価値創造を通じて、企業価値を向上します。加えて、2030年以降のさらなる成長に向けて新領域での新事業創出にも果敢に挑戦し、社会課題解決による価値創造を継続してまいります。
また、これら注力領域の事業拡大を実現するため、競争力強化につながる様々な対応や長期的な視点での資本効率向上、資本コスト低減、ガバナンス体制・リスク耐性の強化を徹底し、2030年以降にもつづく価値創造を持続可能とする経営基盤を確立してまいります。
そして、これらの実効性を高めるため、2026年度から執行力を強化する組織体制に変更しました。事業の組み替えや研究開発や営業などの本部機能を事業部門へ大幅移管するとともに、CXO*制を導入し経営上の重要課題ごとに担当CXOを置きました。各重要課題には2030年の到達状態を示す成果指標とその実現のために日常的に管理・改善すべき行動・プロセス・結果を測る指標を設定します。各CXOが経営者として経営全体に責任を持ちつつ、実効性ある取組みをスピード感を持って推進し、担当する経営上の重要課題の解決にあたります。
* CXO(Chief X Officer):各機能・重要課題に責任を持つ役員体制。


(ⅱ)経営上の重要課題に対する取組み
ビジョン2030の実現やその先の持続的な成長に大きく影響を与える可能性のある課題として優先的に対処すべき経営上の重要課題に設定した全6項目の考え方や具体的な取組みは次の通りです。「社会課題解決による価値創造」と「価値創造を持続可能にする経営基盤確立」に分けて記載します。
[社会課題解決による価値創造]
AIの急速な拡大・普及により世界のデータセンタ市場は高成長が見込まれ、大容量化・高密度化が加速しています。これに伴い、電力消費量の増加も課題になっています。こうした社会課題解決に貢献できる当社グループは、データセンタ関連市場を重要な収益機会と捉え、当該領域における事業の拡大を重点的に推進します。加えて増加する電力消費量に伴うエネルギー問題の解決に資する領域への取組みも加速します。さらに、中長期的な成長事業を一層強化・創出するため、人と社会の「つづく」をつくる、社会課題解決に資する新たな価値の創出、事業化を進めます。

① 情報をベースとした社会基盤の創出
データセンタ市場拡大を捉えることが当面の競争力の源泉です。具体的には、データセンタ向け光関連製品等の拡販を継続するとともに、高付加価値製品へのシフト及びソリューション提供の拡充を進め、付加価値の向上を図ります。また、データ処理量の爆発的増加に伴う電力需要拡大を背景とした脱炭素・電力レジリエンス強化の潮流が加速する中で、HVDC*や再エネ系統の大型投資が見込まれています。当社グループは長期視点で、送電インフラ強化需要を捉えこの領域への貢献を進め、2030年以降の持続的成長の柱も構築します。
一方で、市場環境の変動リスクが大きいため、市況をいち早く捉え即座にアクションを起こせるように、主要顧客からの信頼感を一層高め共創関係の構築を強化します。また、生産量拡大基調でも温室効果ガス排出量は抑制されている状態が主要顧客との取引前提条件となりつつあることや、炭素税や証書購入などによるコスト増抑制のため、生産体制の強化とともに温室効果ガス排出量抑制や再エネ比率向上などにも取り組みます。こうして足元の成長機会を確実に収益拡大につなげます。
本課題の進捗については、注力領域における事業拡大、収益性、顧客基盤、供給体制、技術開発の進捗等を総合的に確認し、成長機会の獲得と資本効率の向上につながっているかを継続的にモニタリングしています。
* HVDC(High Voltage Direct Current):長距離・大容量送電に適した高電圧直流送電方式。
データセンタ領域の圧倒的拡大に関する施策:
当社グループは、データセンタ関連市場の拡大を着実に取り込むため、ヒートシンク、 DFBレーザ*チップ・モジュール、超多心RRケーブルソリューション*、高周波基板用銅箔等、データセンタ領域の製品群を中心に、供給能力の増強及び事業基盤の強化を進めています。25中計期間中には、サーマル製品の水冷モジュール工場拡張投資(フィリピン・平塚)や、ファイテルのDFBレーザチップ工場新設投資(FFTタイ)等を決定しました。今後も、投資効果を確認しつつ必要な投資を段階的に実施していきます。加えて、大手クラウド事業者(ハイパースケーラー)を含む主要顧客との直接的な接点を拡大し、製品仕様の検討段階から当社の技術・製品を提案することで、採用機会の拡大及び取引関係の強化を図ります。さらに、CPO*(光電融合)や次世代サーマル等については、需要動向を踏まえた先行的な取り組みを進め、中長期の成長機会に備えた基盤整備を行ってまいります。
* DFB(Distributed Feedback):レーザ:特定波長の安定した発振に適した半導体レーザ。
* 超多心RR(Rollable Ribbons):ケーブルソリューション:細径高密度ケーブルソリューション。
* CPO(Co-Packaged Optics):半導体と光通信部品を近接実装し高速大容量通信と低消費電力化
を図る技術。
再エネ・HVDC領域の成長基盤構築に関する施策:
当社グループは、データセンタにおける情報の高度化とエネルギー問題の両立にも貢献すべく、再エネ・HVDC領域における事業成長基盤の構築も進めています。広域系統・HVDC案件の需要拡大を見据え、25中計期間中には、HVDCケーブルの国内生産拠点の新設(千葉県富津市)を決定しました。新工場の立上げを進めるにあたっては、主要工程に係る設備投資を機動的に実施し、AI/DX技術の適用による工程の自動化等による抜本的な生産性の向上と生産能力の増強、及び超長尺直流海底ケーブルの技術確立を進めていきます。同時に、布設・工事に係るパートナー体制の確立を進め、供給から施工までの遂行力の向上を図ります。
② 社会課題解決に資する新しい事業への挑戦
当社グループは、中長期全社戦略の実現に向け、社会課題の解決を起点として新たな事業を創出・育成し、中長期での持続的な成長を支える新たな収益源の確立を目指しております。25中計期間中は、ソーシャルデザイン統括部の新設、IPランドスケープ*の活用、外部連携・M&A・コーポレート・ベンチャー投資の活用等により、新規事業創出に向けた基盤整備を進めました。今後は、有望な注力テーマとして設定したスケールアップテーマ(ライフサイエンス、超電導、レーザ応用)について事業化を加速するとともに、将来のスケールアップテーマへの移行を企図するインキュベーションテーマ(グリーンLPガス他)についても事業性の仮説検証と判断ゲート管理を通じて育成を進めてまいります。
本課題の進捗については、研究開発、顧客・パートナーとの共創、事業化に向けた検証、知的財産の活用、投資判断の進捗等を確認し、将来の事業化可能性と中長期的な企業価値への貢献を見極めながら管理しています。
* IPランドスケープ:経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること(引用:特許庁「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」)。
スケールアップテーマ候補に関する施策:
医療機器CDMO*への進化を通じて成長加速を図るライフサイエンス
ライフサイエンス領域では、当社グループの光・メタル技術を基盤として、医療用部材の供給にとどまらず、医療機器CDMO(開発製造受託)事業への展開を進めております。25中計期間中は、MFオプテックスの子会社化、ISO13485*の取得、製造能力及び設計開発能力の強化等を進め、品質・開発・製造を一体で担う体制整備を推進しました。今後は、形状記憶合金や光技術を活かして医療機器メーカーとの共創を深めるとともに、必要に応じてM&Aも活用しながら、従来にない事業成長の加速を図ってまいります。
* CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization):製品の開発から製造までを受託す
る事業形態。
* ISO13485:医療機器に関する品質マネジメントシステムの国際規格。
核融合関連需要と応用市場の拡大を捉える超電導
超電導領域では、高温超電導(HTS)線材、HTS応用製品及び低温超電導(LTS)線材を中心に事業展開を進めております。各国における核融合発電実現に向けた技術検証の進展に伴い、高温超電導線材の需要拡大が見込まれており、当社グループは、米国Super Power Inc.社を中心にHTS線材供給能力の拡充と高性能差別化の両立を図っております。25中計期間中には、トカマクエナジー社への出資を通じて市場開拓を加速するとともに、コイル事業の強化や関連用途の開発を進めました。今後は、核融合発電関連の市場創成と需要伸長に貢献し続けるとともに、高磁場マグネットや電力供給ケーブル用途等への展開を通じて適用市場の拡大を図り、事業化を加速してまいります。
インフラ保全と産業高度化の両面で市場を拓くレーザ応用
レーザ応用領域では、インフラ保全向けの「インフラレーザ®」と産業用途向けレーザ装置の双方を成長機会として捉え、事業展開を進めております。インフラレーザ®は、環境負荷が低く母材を傷めにくい高精度加工技術を特徴に、鉄道、電力、船舶等の分野で採用拡大が進んでおります。また、日亜化学工業(株)殿との共同運営ラボ「CELL」の設置により、顧客との共創体制を強化しました。今後は、グループ内商流も活用しながら注力市場での拡販を進めるとともに、道路・橋梁等への適用に向けた高出力機開発、海外展開、レンタル等を含む新たなビジネスモデルの構築を通じて、事業のスケールアップを図ってまいります。
インキュベーションテーマ候補に関する施策:
実証を通じて商用化への移行を見極めるグリーンLPガス
グリーンLPガス領域では、脱炭素化と地産地消型エネルギー供給の実現に向け、グリーンLPガス製造プロセスの事業化を目指しております。25中計期間中は、北海道においてベンチプラント建設を進めるとともに、道内製バイオガスを原料としたフィールド実証に着手し、実証段階への移行を進めました。今後は、実証実験を通じて技術成立性及び事業性を見極めるとともに、パートナーとの連携によりビジネスモデルの構築を進め、商用化に向けた基盤整備を進めてまいります。
新規テーマ探索と知財戦略の活用により将来の成長機会を育成するその他インキュベーション
上記テーマに加え、当社グループは、中長期での収益源を継続的に創出するため、新規テーマ探索を進めております。25中計期間中は、全テーマでのIPランドスケープ活用の他、次世代フォトニクス事業創造プロジェクトの推進等により、新規テーマの探索・選別・育成基盤を強化しました。また、知財を単なる権利保全の手段としてではなく、市場・競争環境の把握、注力領域の見極め、外部との連携先探索、事業化シナリオの具体化に活用することで、新規事業創出の実効性向上を図っております。加えて、コーポレート・ベンチャー投資枠を活用し、スタートアップとの出資・提携を通じて必要な技術・人材・市場接点の獲得を進めております。
現時点でその他のインキュベーションテーマとしては、ソーシャルDX(「みちてん」「てつてん」*等)やエアロ・スペース(LiDAR*、ヒートパイプ等)の育成を進めております。今後も、事業開発・知財・研究開発・外部連携を一体的に運用しながら、将来のスケールアップテーマにつながるテーマの継続的な創出を進めてまいります。
*「みちてん」「てつてん」:当社グループ独自のソーシャルDX関連事業。道路付帯物や鉄道沿線
設備の維持管理ソリューションを提供。
* LiDAR(Light Detection and Ranging):レーザ光を用いて距離や形状を計測する技術。
[価値創造を持続可能にする経営基盤確立]
注力領域へのリソース確保のため、全事業での製品ポートフォリオ最適化を徹底し資本効率の向上を図ってまいります。また、労働人口減少傾向下でも事業拡大を実現するため、生産性向上や人的資本最大化に取り組み、さらにはガバナンス強化、リスク耐性の向上などにより、長期的な資本コスト低減や持続的な価値創造につながる経営基盤を強化します。
① 事業・製品ポートフォリオの最適化
市場環境の変化への対応や成長戦略の推進のため、事業や製品ごとの収益性・成長性の強化と全社視点での経営資源の最適配分を進めます。
本課題の進捗については、各事業の収益改善、資本効率、投資回収、成長領域へのリソース配分状況等を確認し、全社として最適なポートフォリオの実現に向けてモニタリングしています。
資本効率化のためのポートフォリオに関する施策:
当社グループにおける多様な事業のなかで、2030年に向けて成長が加速することが見込まれるデータセンタ関連事業を注力分野と位置付け経営資源を集中するとともに、全社の事業ポートフォリオ最適化に向けた検証を不断に続けてまいります。製品ポートフォリオについては、既存事業を中心に環境の変化を先取りした新製品の創出と低収益化・不採算化した製品の縮小・撤退を実施することで、最も良好な状態を維持し、収益の最大化を図ってまいります。
② 労働生産性向上
注力領域における事業機会獲得と事業規模拡大を、人員増加のみに依存せずに実現するため、DX/AIの活用により工場の次世代化、設備の自動化、間接業務の効率化を強力に進め、労働生産性を抜本的に向上します。
本課題の進捗については、生産体制、業務効率、設備稼働、品質、安全、人的リソースの活用状況等を総合的に確認し、成長戦略の実行力向上と収益性改善につながっているかを管理しています。
労働生産性の抜本的向上に関する施策:
DXと技術をフル活用した次世代工場の実現による生産性の飛躍的向上、安全・保全機能の強化を前提とした既存設備の稼働率最大化、生産ルールやプロセス改革を通じた品質・生産性向上、生成AI活用やAIエージェント強化、作業の見直しや自動化によるスタッフ業務効率化を進めます。また、グローバル市場における営業チャネルの最適化を図り、営業生産性の向上にも取り組んでまいります。
③ 人的資本の最大化
注力領域の急拡大に対応するため、事業戦略と人材戦略を連動させ注力領域への人員確保や組織実行力の向上を進めます。また、ジョブ型制度導入などによりマネジメント機能を強化、パーパスの共感・行動促進、従業員エンゲージメント向上などにより、多様な人材が各々の役割期待を理解し能力を発揮して事業拡大に貢献する人的資本の最大化を進めます。
本課題の進捗については、従業員エンゲージメント、採用・配置・育成の状況、人材定着、組織課題、働きやすい職場環境の整備状況等を総合的に確認し、経営戦略と人材戦略の連動を高めています。
人的資本の最大化と組織実行力の強化に関する施策:
注力領域における事業機会の獲得と事業規模拡大を実現するため、事業戦略に基づく人事戦略を計画的に進めてまいります。具体的には、HRBP*体制に変更し人事部門が各職場へ入り込み、パフォーマンス向上に向けて注力事業の人員確保とリソースシフトを機動的に運用、生成AIと人の最適な役割分担を前提とした業務再設計等を進めていきます。さらに、ジョブ型人材マネジメントの基盤整備を進め、事業戦略の達成に必要な役割・職務を明確化し、適材適所の人材配置や計画的な育成を行うとともに、人材の能力発揮を高めます。
また、パーパス浸透活動を「認知・理解」から「行動・体現」フェーズへ転換し、パーパスと組織や一人ひとりとのつながりを示していくことで、持続的な企業価値向上に貢献しチームで成果を上げていく人材・組織実行力の強化を図っていきます。
詳細は「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」を参照してください。
* HRBP(Human Resources Business Partner):事業部門に入り込み、人材配置・育成・組織課
題解決を支援する人事機能。
④ ガバナンスの強化、リスク耐性の向上
2026年度よりCXO制を導入し、各CXOが経営者として経営全体に責任を持ちつつ、担当する経営上の重要課題の解決に向け、スピード感ある意思決定と実効性の高い取組みを推進する体制へ変更しました。これに伴い会議体も見直し、ガバナンスを強化します。具体的には、各CXOが責任と権限を持って諸施策を遂行するとともに、新たにCXO会議を設置し、重要案件に関する論点整理と全社的視点での議論、リスク認識を考慮した課題解決策等の検討を行います。CXO会議の結果を経営会議に提言することで、経営会議における意思決定の迅速化及び高度化を図ります。
また、不確実性が高まる環境下においても重大リスクを顕在化させず価値創造を継続・推進するため、変化を先取りした重要リスクの特定や是正、適切なリスクテイクの促進などを行います。役員・従業員においてはCSR行動規範の徹底を継続し、さらに、調達・生産・物流などサプライチェーン全体でも人権尊重のための人権デューディリジェンスの実施やコンプライアンス対応力強化、安全衛生・品質・情報セキュリティ等の重要リスク領域の管理水準の向上を図り、強靭かつ安定したサプライチェーンの構築に取り組みます。
以上により、安定的な事業運営を支える組織基盤の強化を図り、成長フェーズにおける迅速で適切な意思決定とリスク耐性の向上を図ります。
本課題の進捗については、事業戦略・設備投資等の実施状況や、重要リスクの識別・評価及び対応策の実施状況、内部統制・コンプライアンス・サステナビリティ関連課題の進捗等を確認し、経営会議及び取締役会においてモニタリングを行っています。
(ⅲ)執行力強化のための体制
ビジョン2030実現に向けた施策・目標の解像度を高めるとともに、注力分野で勝ち切るための実行力を確保する必要があるとの認識のもと、2026年度より執行力強化に向けた組織の見直しと会議体の再設計を実施しました。
① 事業の組み換え・新事業の部門化
データセンタ事業への取組み強化と新規事業育成加速のため、より迅速な対応を可能にする執行体制に変更しました。事業の組み換えを通じて、事業ポートフォリオを柔軟に再編し、成長領域へのリソース集中を加速します。具体的には、ビジョン2030で掲げる社会課題ごとに領域(セグメント)として組成し、事業戦略と組織体制の整合性を高めました。また、各領域長及び各組織に明確なミッションを設定することで、事業・製品ポートフォリオの最適化を進めます。加えて、新規事業育成を加速し注力領域の新事業部門化により、中長期での持続的な成長を支える新たな収益源を確立します。これらにより、収益機会の最大化、新事業の育成を実現してまいります。

② 本部機能の事業直結化
注力領域の事業収益最大化のため、経営戦略や研究開発、営業や人事機能の一部を本部から事業部門へ移管しました。従来の本部機能は全社的な視点で全体最適を推進できる一方で、顧客ニーズや市場変化への即応性に課題がありました。そのため、事業戦略との一体化を図り、市場や顧客起点の計画立案や製品開発、スピード感ある提案や施策実行を実現し、価値創造を拡大していきます。
③ CXO制導入と権限移譲による執行力強化
経営上の重要課題は、事業部門・本部機能・サステナビリティ・リスク管理を横断する論点であり、従来の組織単位管理のみでは責任の所在や意思決定が曖昧になりやすかったことが課題でした。そこで、各重要課題に対して担当CXOを置き役割とミッションを明確にしました。経営上の重要課題の解決に向け、戦略立案から実行、モニタリング、軌道修正までの執行権限と、成果指標達成の責任を各CXOが一貫して担います。各CXOが経営者として経営全体に強い責任感を持ちグループ全体最適の視点で重要課題を解決する責任者としてこれにあたります。また、経営会議における意思決定の迅速化及び高度化のため、CXO会議を設置し、重要案件に関する論点整理と全社的視点での議論、リスク認識を考慮した課題解決策等の検討を行います。これにより、データセンタ領域の伸長、再エネ・HVDCの推進、新規事業育成、生産性向上・人的資本最大化・ガバナンス強化を、横串で推進してまいります。
CXOと名称
CEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)
CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)
CFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)
CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)
CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)
CHRO(チーフ・ヒューマンリソース・オフィサー)
CPO(チーフ・プロダクティビティー・オフィサー)
CSCO(チーフ・サプライチェーン・オフィサー)
CGO(チーフ・ガバナンス・オフィサー)
④ サステナビリティ委員会とリスクマネジメント委員会
当社グループでは、サステナビリティに関する事項と、コンプライアンス・リスクを含むリスク管理事項について、実行の質・スピードを高めることを目的に、それぞれ「サステナビリティ委員会」「リスクマネジメント委員会」を設置し議論を集約しています。
サステナビリティ委員会には、経営上の重要課題の成果指標の進捗状況確認機能を付与しました。審議または確認した事項について経営会議へ報告、必要に応じてCXO会議へ課題提起を行います。経営会議が必要な議論や意思決定を行い取締役会に提案・報告、取締役会による監督を受けています。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、副委員長をCSO、委員を全CXOで構成し、原則年に2回開催します。
リスクマネジメント委員会は、リスクアセスメント結果を踏まえたリスク評価によりリスクを俯瞰し、経営上の重要課題と関連性の強いリスクを全社的に対応すべき重要リスクと定め、サステナビリティ委員会と連携して対応しています。また、企業の社会的責任を果たし、ステークホルダーとの信頼関係の強化に向けた重要課題につながるリスクについては、個別に委員会を設置して重点的に管理しています。リスクマネジメント委員会は、委員長を社長、副委員長をCGO、委員を経営層で構成し、当社グループのリスク管理・内部統制・コンプライアンスについての課題を審議し、監督・推進する体制をとっています。原則年に2回開催し、その活動内容を定期的に経営会議、取締役会に報告し、取締役会による監督を受けています。
経営上の重要課題は、機会とリスク両方の影響を捉えて特定しており、想定される阻害要因や、戦略遂行に伴い発生する可能性のあるリスク等も経営上の重要課題の各施策に盛り込んで対応しています。リスク項目を担当する各部門は、年間の取組み計画と活動実績をリスクマネジメント委員会へ半期ごとに報告し、リスクマネジメント委員会はその取組み内容について、リスク管理が適切に行われているかを評価、必要に応じて指導を行っています。これまでも、適切なリスク認識と優先的に対応すべきリスクを見極めるために定期的にリスクアセスメントを実施し、それらを通じて経営視点とオペレーショナル視点でリスクを俯瞰して全社的に対応すべき重要リスクを定め取り組んでまいりましたが、加えて、経営上の重要課題の各施策の達成、成果指標の進捗確認も行うことで、一層のリスクマネジメントに取り組んでまいります。
詳細については、「4[コーポレートガバナンスの状況等]」を参照してください。また、気候関連、人的資本のリスクマネジメント及びリスクマネジメント委員会の詳細についてはそれぞれ「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」「3[事業等のリスク]」を参照してください。
(3)2030年度財務到達水準、資本政策
2030年度財務到達水準は、営業利益2,500億円、自己資本利益率(ROE)20%、投下資本利益率(ROIC)15%としています。パーパスを軸とした経営戦略のもと、データセンタ市場の伸張に合わせて関連事業を中心とした成長分野への投資を加速していきます。投下資本利益額(FVA*)をモニターしながら事業・製品ポートフォリオが常に最適化された状態を目指し、営業利益水準やROE、ROICのさらなる向上を目指します。なお、経営環境、財務状況を継続的に点検することで、その変化を経営上の重要課題に対する各施策の優先順位や資本配分に適切に反映し、必要に応じて、財務到達水準も見直してまいります。
* FVA(Furukawa Value Added):EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。
[2030年度財務到達水準]
営業利益 2,500億円
ROE 20%
ROIC 15%
(ご参考)2028年度の営業利益・営業利益率の見通し
※ データセンタ関連事業には、Lightera、サーマル、ファイテル、AT(半導体製造用テープ)、MD(メモリーディスク)、銅箔、光電融合デバイスが含まれます。

[資本政策]
2030年度までの5年間合計の投資額は6,500億円(うち注力分野投資は5,000億円)を予定しています。また、フリーキャッシュフローは5年間合計2,400億円です。2026、2027年度については、大型投資の実行のため一時的に資金調達が拡大する見込みですが、2030年度以降は、先行投資分の刈り取り等を踏まえて投下資本の増加を抑制しつつ収益性を高めます。

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