有価証券報告書-第109期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:40
【資料】
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【項目】
158項目

研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)は、IH(誘導加熱)技術を基幹として、ニーズに沿った商品や技術をスピーディーに市場に提供できるよう、また、次世代ニーズを先取りできるよう研究開発に取り組んでおります。
研究開発体制は、中長期的な開発テーマの推進や誘導加熱に関する基礎研究など当社グループ全体に係わる研究開発、技術課題への対応及び調査分析・試験を広範に実施する研究開発本部とオリジナルブランド製品の設計や開発機能の強化など当社グループにおける新規技術案件の起案から開発、FS、事業化を目指した活動を実施する製品技術本部を中心とした組織で構成されております。この両組織と各事業部門が密接に連携、情報共有することで、より効果的かつスピーディーな研究開発活動が実施できると考えております。
また、当社グループの研究開発活動においては、大学及び研究機関等との共同研究も多数行っております。
なお、当連結会計年度における研究開発費は944百万円となり、その内訳は製品事業部関連事業が296百万円、IH事業部関連事業が88百万円、当社グループ全体に係わる研究開発が559百万円となっております。
当社グループ全体及び各セグメントにおける研究開発の主な成果は以下のとおりであります。
(研究開発本部)
部材の高強度、高機能、定・低(ダブル・テイ)変形焼入れの技術開発進化を目指し、高周波熱処理と他の表面改質技術を組み合わせた複合熱処理技術など、種々の高周波熱処理技術の開発と実用化を進めております。
「多周波電源」については、社内工場での実用化により対象部品を拡大しております。電源開発においては、次世代のパワー半導体素子SiCを用いた高性能電源を開発し、従来の半導体素子Siを用いた電源に対し、大幅な小型化、軽量化、高効率化が図れており、販売を開始いたしました。さらに、適用周波数拡大開発を引き続き進めております。また、当社の固有技術のひとつの直接通電加熱(DH)についても、種々の薄鋼板などを対象にした実用化を目指しております。
省エネ省資源が特徴の「軸肥大」加工技術では、長尺品や特殊部材などの受託加工で実績を積み重ねており、さらに温間での加工により適用範囲の拡大や生産性の向上のための開発を行っております。
高周波熱処理シミュレーション(CAE)技術は、温度や焼入硬化層分布に加えて変形や残留応力予測も可能なことを活用し、実物品データとリンクした適用例を増やしながら高精度化を進めており、現業での活用が進むだけでなくお客様からの依頼も多く、当社グループ各部門の技術開発と営業活動を支えております。また、IT技術を今まで蓄積してきた技術情報と技術技能の伝承に役立てております。
(製品技術本部)
従来の高周波加熱技術以外を進化させ、無酸化焼入れ、非鉄金属の加熱、融着等の従来とは異なる新しい工法開発に取り組んでおります。自動車のEV化による部品軽量化ニーズに応えるため、EPS(電動パワーステアリング)用の各種中空ラックバーの開発も継続して実施しております。
また、各種開発案件の成果を当社グループの生産現場へ供給するとともに、その技術を用いた自動化、工程改善を実施し、新製品の工程検討、設備製作、生産ラインの工程検討、設備導入等により各事業所の収益改善を支援しております。当連結会計年度はビジョンセンサーを使用した自動ピッキングシステムを導入して、IoT/AIと組み合わせた工程改善にも取り組んでおります。
(製品事業部関連事業)
当分野におきましては、材料・IH熱処理・機械加工の各技術を組み合わせ、高強度による省資源化、高耐久性化による信頼性向上を図り、お客様のニーズにお応えできる研究開発を進めております。
土木・建築分野では、既存製品の適用分野拡大を目指す新たな工法の開発、新しい機能を付与した高強度製品の開発、更に高強度製品の長期耐久性を保証する理論的裏付けとその実験的検証といった基礎研究など、既存製品の機能向上のみならず新たな製品の開発を継続的に取り組んでおります。
当連結会計年度は、前連結会計年度後半に市場投入した高強度せん断補強筋に関する新たな工法を展開し、受注量の確保に貢献しました。
自動車・建設機械分野では、高度化する顧客ニーズを実現すべく、高強度・高耐久性を目指した材料・熱処理・工法開発、また戦略的にグローバル展開を視野に入れた生産技術・性能保証技術の開発を進めております。
機械部品分野では、さらなる高精度化・高生産性を実現する熱処理・機械加工技術の開発に継続的に取組んでおります。
(IH事業部関連事業)
当分野におきましては、あらゆる産業分野において、様々な形状・寸法・鋼種の機械部品、自動車部品、建設機械部品の高周波熱処理への対応を行っております。CAE(熱処理シミュレーションシステム)技術やFTC(ファインテクノセンター)での最先端での熱処理技術を活用し、高周波熱処理の幅広い用途開発を製品技術本部・研究開発本部と協働しながら実施しております。更に高周波熱処理だけでなく浸炭など、他の表面処理技術との複合熱処理や塗装、機械加工等の前後工程を含めた付加価値のある工程開発にも取り組んでいます。
IH熱処理装置に関する研究開発では、より高効率化と省スペース化を実現したSiC半導体を用いた高周波電源を実用化して販売を開始しました。
熱処理装置ではお客様の多種多様なご要望にお答えし、さらに長寿命、高効率な加熱コイルの技術開発と実用化で信頼性の高いIH熱処理装置がお客様の満足度を高めると同時に、当社グループの海外展開でも重要な役割を果たしております。