有価証券報告書-第126期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/29 16:32
【資料】
PDFをみる
【項目】
155項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 基本方針
当社グループは、企業活動を行う上での軸・拠り所として企業理念「JGC's Purpose and Values」を制定しております。
「JGC's Purpose and Values」は日揮グループのパーパス(存在意義)及びValues(価値観)の2つの要素から構成され、日揮グループのパーパス(存在意義)として、「Enhancing planetary health」を掲げ、当社グループ共通のValuesとして、4つのちから、即ち、「挑戦」、「創造」、「結集」、「完遂」を定め、さらに「尊重」、「誠実」を2つの誓いとして明らかにしております。
当社グループは、企業理念「JGC's Purpose and Values」に基づき企業活動を進めていくことで、企業価値の一層の向上を図り、以て人と地球の健やかな未来づくりに貢献してまいります。
(2) 目標とする経営指標、経営環境、中長期的な経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは、2021年度から2025年度の5ヶ年を長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の1stフェーズ、挑戦の5年間と位置づけ、中期経営計画「Building a Sustainable Planetary Infrastructure 2025(BSP2025)」において、「EPC事業のさらなる深化」、「高機能材製造事業の拡大」、「将来の成長エンジンの確立」を重点戦略とし、戦略投資に積極的に取り組むことで収益の拡大、多様化を進めております。財務目標として、2025年度に売上高8,000億円、営業利益600億円、親会社株主に帰属する当期純利益450億円、自己資本利益率(ROE)10%を掲げております。
ご参考:BSP2025「3つの重点戦略」
(1)EPC事業のさらなる深化
① 大型EPCプロジェクトの競争力・収益力をさらに強化
2025年度の海外の大型EPCプロジェクトの売上高目標を3,500億円に設定し、リスク管理・プロジェクト折衝力の強化を通じたプロジェクト粗利益率の向上と、JV組成戦略・デジタル技術・建設工法の最適化による受注競争力の向上を推し進め、大型EPCプロジェクトにおける当社グループの強みをさらに深化させていきます。
② EPC事業の成長市場・分野への拡大
大型EPCプロジェクトに加え、EPC事業を成長市場・成長分野に拡大し、ポートフォリオの多様化を推進していくことで、2025年度の成長市場・分野におけるEPC事業の売上高目標として3,000億円の達成を目指します。今後案件の増加するLNG受入基地、ガス火力発電、太陽光発電、バイオマス発電、医薬品、病院、ケミカル分野の強化による収益拡大と並行して、成長著しいアジア地域におけるリージョナル経営体制の強化並びに、国内市場への対応も見据えた人員増強を図ります。
(2)高機能材製造事業の拡大
高機能材製造事業においては、事業規模を拡大し、2025年に売上高600億円の達成を目指します。その実現に向け、既存主力事業においてプロパーケミカル触媒、ハードディスク用研磨材、半導体製造装置関連素材等の製品ラインナップを増やし、収益の拡大に取り組みます。また、将来を見据えた戦略投資と次世代事業の開発にも取り組みます。戦略投資ではファインケミカル新製品開発や高熱伝導窒化ケイ素基板生産設備、次世代事業の開発ではカーボンリサイクル向け触媒、全固体電池用電解質、骨再生材料等が対象となります。
(3)将来の成長エンジンの確立
「2040年ビジョン」で定めた5つのビジネス領域について、特に将来の成長エンジンとして期待する以下のビジネスの確立に取り組みます。2025年度は売上高500億円を計画し、10年後には売上高5,000億円規模のビジネスに育成していく方針です。
・エネルギートランジション領域:
カーボンマネジメント支援、洋上風力、スマートO&M、水素・燃料アンモニア、小型モジュール原子炉(SMR)
・ヘルスケア・ライフサイエンス領域:
スマートホスピタル、スマート工場、デジタルヘルスケア
・資源循環領域:
廃プラスチック、廃繊維リサイクル、SAF(Sustainable Aviation Fuel:次世代航空燃料)製造
・産業・都市インフラ領域:
水処理、鉄道

BSP2025の計画初年度である2021年度においては、「EPC事業のさらなる深化」では、2023年4月から海外案件でEPC役務の一貫したデジタル遂行のために必要となるAWP(Advanced Work Packaging)を現在遂行中の複数の海外プロジェクトに導入したほか、デジタル技術を活用した建設工事現場のリモートオペレーションの推進を図るなどしました。「高機能材製造事業の拡大」では、セラミック事業の拡大のために、自動車、半導体などの用途向けに高密度炭化ケイ素(SiC)セラミックスやアルミナセラミックスを生産・販売している昭和電工マテリアルズ株式会社のセラミック事業の譲受に関する契約を締結するなどしました。「将来の成長エンジンの確立」では、水素・燃料アンモニア分野の拡大に向けて、NEDOによるグリーン・イニシアティブ基金事業として、旭化成株式会社と共同で再生可能エネルギー由来の水素を活用したグリーンケミカル実証プロジェクトを進めております。本プロジェクトでは、2024年に日本初のグリーンアンモニアの準商業規模の実証運転開始を目指しております。
総合エンジニアリング事業のエネルギーソリューションズ分野においては、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」という。)の感染拡大の状況や、需給逼迫による幅広い資源価格の高騰、さらに足元ではウクライナ情勢が資源価格上昇を加速させていることなどによって先行き不透明な事業環境が続くことが想定されます。一方で、2021年後半に発生した欧州における天然ガス需給の逼迫や、世界的な脱ロシアの動きによるエネルギー不足や調達先の多様化などによって、低・脱炭素社会の実現に向けた移行期間における安定的なエネルギー源、すなわちトランジションエネルギーとしての天然ガス及びLNGの重要性が高まっており、中・長期的なエネルギーの安定供給を見据えた顧客の設備投資が今後再開していくことが期待されます。
同事業のファシリティインフラストラクチャー分野においても、新興国を中心とする人口増加と経済成長、さらには脱炭素化のニーズを背景に、エネルギーやインフラ需要は引き続き拡大していくことが見込まれており、顧客の設備投資は着実に実行されていくことが期待されます。
同事業の国内分野では、既存製油所の保全工事、ヘルスケア・ライフサイエンス、及び水素をはじめとする脱炭素関連分野での顧客の設備投資が期待されます。
なお、現在遂行中のプロジェクトにおけるCOVID-19の感染拡大による工事遅延等の業績への影響、並びにウクライナ情勢などを背景とする資機材価格及び輸送コストの高騰の影響については、今後の動向を注視してまいります。
機能材製造事業では、触媒分野においては、FCC触媒の国内シェア拡大及び海外展開に加え、水素化処理触媒の協業先企業との体制維持と収益性向上、ケミカル触媒の新規案件獲得、環境保全触媒におけるクリーンエネルギーに対応した材料開発及び新分野への展開を目指します。ファインケミカル分野では、シリカゾルの新規研磨材の立上げ、機能性塗料材の拡販及び多用途展開、化粧品材のプラスチックビーズ代替拡大とオプト材の拡販、多用途展開に注力してまいります。
ファインセラミックス分野では、光通信用回路基板の新規顧客獲得や新分野参入のほか、半導体関連製品及び高熱伝導窒化ケイ素基板では、更なる品質向上とともに設備投資や人財補強による受注拡大に取り組んでまいります。
なお、COVID-19の感染拡大による本事業への影響、並びにウクライナ情勢などを背景とする原材料及び燃料費高騰の影響については、今後の動向を注視してまいります。