有価証券報告書-第72期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 9:00
【資料】
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【項目】
166項目

研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発活動のほとんどは、当社の開発部門及び技術研究部門で行われており、両部門では国内及び海外の市場ニーズに即したクレーン車、高所作業車及びそれらの応用製品、新技術・先端技術の研究開発活動を行っております。開発部門では近年、国内外での次期排ガス規制対応と更なるグローバル化について、営業部門や生産部門等の他部署と一体となり、その実現目指して取組んでおります。一方、技術研究部門では大学や他企業との共同研究等を通じ、AI等の最新ICT技術を活用して、作業容易化、自動化、省力化等に関する技術開発に取組むことで、より安全で迅速、効率的な作業の実現を目指しております。
また、米国Terex社が所有していたDemagブランドのクレーン事業について、2019年7月に買収が完了しました。同事業の買収により、オールテレーンクレーン事業の更なる拡充を図り、新たにクローラクレーンを当社グループの製品ラインナップに加えることで、今後はさらに幅広いお客様ニーズに対応することが可能になります。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動に要した金額は、研究材料費、人件費等、総額7,822百万円であります。
当連結会計年度における各セグメント別の主な研究開発活動は、次のとおりであります。
(1)日本
①技術研究部門の取り組み
技術研究部門は、当社製品が使われる建設業現場でのより安全な作業環境確保の要請や、少子高齢化による生産年齢人口の減少を背景に、建設施工の安全性と生産性の向上を目指し、未来を見据えた新技術開発に取り組んでおります。その取り組みの一例として、世界有数規模の建機展bauma 2019(ドイツ)やCONEXPO 2020(アメリカ)において、クレーン作業の可視化をテーマに、VR(バーチャル・リアリティ)体験等による技術展示を実施し、来場者から多くの反響を得ました。
こうした新技術への取組みを加速させるために、部門員の人員増、人財の強化に更に注力し、現在では工学・理学の博士も多数在籍しております。
加えて、企業や大学との共同研究開発にも積極的に取り組んでおり、例えば、前田建設工業株式会社とは共同で、バーチャルな施工シミュレーションに連動したクレーン自動運転システムの研究を行っております。包括連携共同研究を行っている京都大学とは、研究のみに留まらず、学内のみで実施されていた講義を当社内で実施する等、イノベーションを起こす人財の開発においても、積極的に協業を図っております。
②海外市場向けラフテレーンクレーン6機種の開発、発売
GR-1000XLL、GR-1000EX、GR-1000XL、GR-900EX、GR-800XL、GR-700EX
・特長
1)キャブのデザインと装備類を従来機から一新した結果、作業効率や操作性・視認性等が大幅に向上。新採用の大型マルチファンクション・ディスプレイは、10.4インチカラー・タッチパネルにクレーン作業情報や各種操作設定の機能を集約し、作業効率を大幅に向上。感圧式タッチパネルは、手袋装着状態で操作可能。更に運転席からの視認性向上や、20°キャブチルト機能の新採用により、長時間にわたるクレーン作業時のオペレーターの疲労を軽減
2)GR-1000XLL/1000XLに対して、カウンタウエイトの装着位置を移設可能とするラフテレーンクレーン初の新機構「Smart Counterweight」を採用。これにより、クレーンの安定性能が最大約22%向上
3)タダノビューシステム(カメラ映像の活用により、安全な作業と走行をアシストするシステム)の搭載により、クレーン作業時でのウインチドラム監視や、走行時の車両右前方・後方の視界確保を可能とし、安全な作業と走行をアシスト
4)車両真後ろの障害物を検知し、その存在を表示器のアイコン点滅とブザーでオペレーターへ知らせる、当社初の機能「クリアランス・ソナー」を装備
③大型トラック架装用カーゴクレーン TM-ZX500の開発、発売
・特長
1)日本クレーン協会規格の停止仕様に適合する、過負荷防止装置を標準装備
2)高さ制限装置やブーム・ジャッキインターロック、パーキングインターロック、ブーム・アウトリガ格納忘れ警報、油温上昇抑制装置を標準装備し、卓越した安全性を確保
3)新集中コントロールパネルを採用し、実荷重や空車時定格荷重、アウトリガ張出状態、稼働時間等の各情報を集約表示。更に各機能スイッチ類も集約して、見易さと操作し易さを両立
4)2.7インチ大画面の新型カラー液晶ラジコンを採用。実荷重、定格荷重、モーメント負荷率等の作業情報を常時手元で確認可能。また、晴天時の屋外においても高い視認性を確保
5)新型カラー液晶ラジコンには、調整可能なフィーリングオペレーション機能を備えることで、オペレーターが望む操作感覚により近付けることが可能となり、洗練された操作性を実現
6)荷振抑制機能の装備により、吊荷の動きとクレーンの動きがシンクロするように自動制御され、ブーム旋回起動時と停止時の荷振れを抑制
④新型高所作業車 AT-320XTG-1の開発、発売
・特長
1)従来の最大地上高27mの高所作業車と同等の、コンパクトな限定中型免許枠の車体でありながら、国産初の超軽量21面体ブームから成る5段同時伸縮ブームの開発によって、32mの最大地上高を実現
2)アクセル無段階制御・アイドリングストップ機能の環境対応機能により、作業燃費を改善
3)揺れ戻し抑制のための緩起動・緩停止制御の採用で、急操作時のブーム揺れと停止時流れ量を低減し、安全性と快適性を飛躍的に向上
4)安全装置の二重化によって、作業の安全性を向上
⑤一般工事用12mクラスの高所作業車 AT-121TG(F)-4(ブーム前方格納仕様)及びAT-121TG(R)-4(ブーム後方格納仕様)の開発、発売
・特長
1)従来モデルよりも高い安全性と利便性を備え、更に作業効率を向上
2)最大作業半径を従来機より拡大し、クラス最大の作業領域を確保
3)従来のリンク式ジャッキから車幅内設置が可能な直下式ジャッキへ変更し、壁際やガードレール脇での設置を容易にすると共に、設置時のコンパクトな車両専有面積を実現
4)バスケットへの昇降経路を、車両左側方から左後方へ変更し、壁際やガードレール脇での設置の際、バスケットへの容易なアクセスが可能
5)アクセル無段階制御・アイドリングストップ機能(オプション)を装備し、燃費を改善。更に緩起動・緩停止制御により、急操作時のブーム揺れと停止時流れ量を低減し、安全・快適な作業を実現
当事業セグメントに係る研究開発費は5,005百万円であります。
(2)欧州
海外市場向けオールテレーンクレーン5機種の開発、発売
ATF-100-4.1、ATF-120-5.1、ATF-140-5.1、ATF-200-5.1、ATF-220-5.1
・特長
1)現在、世界で最も厳しい排ガス規制のひとつである欧州排ガス規制EU StageⅤへの対応エンジンを搭載し、欧州排ガス規制をクリア
2)走行駆動系や排気系をリファインすることで、従来シリーズよりも安全性と作業性を更に向上
3)ATF-100/120においては、同クラスでトップレベルの60mブームを装備し、効率的な作業を実現
4)ATF-220においても、同クラストップレベルの68mブームを装備
5)HELLO-NET(車両の稼働状況や位置情報等をインターネットでサポートするシステム)を搭載
当事業セグメントに係る研究開発費は2,439百万円であります。
(3)米州
米ラスベガスにて開催された世界最大規模の建機展のひとつであるCONEXPO 2020において、新規開発中である160st吊りテレスコピックブームクローラクレーン(伸縮式ブームを装備したクローラクレーン 以下、TBC)のGTC-1600を対外発表しました。近年、プロジェクト大型化が進む中、TBCとして高い性能を有する本機は、顧客の大きな注目を集めました。新規発売を目指して、更に確認試験を進めています。
当事業セグメントに係る研究開発費は293百万円であります。
(4)その他
当事業セグメントに係る研究開発費は83百万円であります。