四半期報告書-第107期第2四半期(2023/07/01-2023/09/30)
6.金融分野における保険契約
(1) 残存カバーに係る負債及び発生保険金に係る負債の変動
2022年度第2四半期連結累計期間及び2023年度第2四半期連結累計期間における残存カバーに係る負債及び発生保険金に係る負債の変動は以下のとおりです。
(注)*1 保険契約資産は、要約四半期連結財政状態計算書上、その他の流動資産又はその他の非流動資産に含まれています。
*2 保険契約負債の流動部分は、要約四半期連結財政状態計算書上、その他の流動負債に含まれています。
*3 2022年4月1日、2022年9月30日、2023年4月1日及び2023年9月30日現在の保険契約負債の流動部分の帳簿価額は、それぞれ141,796百万円、165,132百万円、145,057百万円及び156,723百万円です。また、保険契約負債の非流動部分の帳簿価額は、それぞれ13,042,875百万円、12,002,463百万円、12,364,973百万円及び12,226,559百万円です。
*4 保険料配分アプローチで測定される保険契約の非金融リスクに係るリスク調整は、金額に重要性がないため、将来キャッシュ・フローの現在価値の見積りと区分せずに発生保険金に係る負債に含めて表示しています。
(2) 保険契約に関する補足情報
2023年3月31日現在における保険契約に関する主要な情報は以下のとおりです。
① 保険契約における重要な判断及び見積り
ⅰ)保険契約の測定方法及びインプット
保険契約を測定するために使用した方法及び主なインプットは以下のとおりです。
ソニーは、過去及び直近の実績にもとづいて死亡率及び罹患率の見積りを行っており、過去の経験及びデータの傾向を統計的手法により分析しています。保険契約グループごとの死亡率及び罹患率の算出にあたっては、ソニーは、性別、健康状態及び喫煙習慣などの保険契約者の特性や経過期間による選択効果の影響など、当該保険契約グループの特性を考慮しています。また、生活習慣の変化及び将来における死亡率及び罹患率の改善などの社会的状況の変化を反映するため、適時に見積りの見直しを行っています。
ソニーは、過去及び直近の実績にもとづいて解約率及び失効率の見積りを行っており、過去の経験及びデータの傾向を統計的手法により分析し、確率加重された解約率及び失効率を保険契約グループごとに算出しています。解約率及び失効率の見積りにあたっては、通常の解約に加え、動的解約を考慮しており、一部の保険契約において契約に付与する利回りが上昇する場合や、最低保証水準を上回る場合には、解約率が上昇する傾向を反映させています。解約率及び失効率の算出にあたっては、過去における実績データを考慮しており、実績データがない、又は少ない場合には、類似商品の実績や国内外の実務動向を参考にしています。
ソニーは、当期の経費水準にもとづいて将来における経費の見積りを行っています。当該経費は、固定間接費及び変動間接費の配分を含む、保険契約グループに直接起因する経費から構成されます。また、将来の経費の見積りについては、インフレの調整を行っています。
ⅱ)将来キャッシュ・フローにおける裁量権
直接連動有配当保険契約以外の一部の有配当保険契約について、裁量的な変更が履行キャッシュ・フローに与える影響は、CSMにおいて調整されています。こうした契約の投資方針については、ソニーに裁量権があるものの、市場状況に応じて設定されることから、金融リスクに関する仮定の変更が投資方針に与える影響を、保険金融収益又は費用に含めています。また、配当方針については、ソニーの裁量により変更することが可能であることから、配当方針の変更が履行キャッシュ・フローに与える影響は、CSMにおいて調整されています。
ⅲ)非金融リスクに係るリスク調整
非金融リスクに係るリスク調整は、各保険子会社ごとに、非金融リスクを負担することに対する報酬を反映して決定しており、保険契約グループのリスク・プロファイルの分析を基礎として各保険契約グループに配分しています。また、非金融リスクに係るリスク調整には、当該保険会社が要求する報酬と整合的で、かつリスク回避の程度を反映する方法によって、分散効果を反映しています。
ソニーは、非金融リスクに係るリスク調整を、主に資本コスト法により算定しています。資本コスト法においては、将来の各報告日における必要資本額に資本コスト率を乗じ、非流動性を調整したリスクフリーレートで割り引くことにより、非金融リスクに係るリスク調整を決定しています。当該必要資本額は、将来の各報告日において保険契約から生じる将来キャッシュ・フローの現在価値の確率分布を見積もった上で、保有期間1年、信頼水準99.5%において保険金及び経費支払に関する契約上の義務の履行のためにソニーが必要とする資本を計算することによって決定しています。資本コスト率は、投資家が非金融リスクに対するエクスポージャーに対して要求する追加的な報酬を表しており、2022年度におけるソニーの加重平均資本コスト率は、3.0%です。
なお、2022年度において、資本コスト法により計算されたリスク調整額は、86.0%の信頼水準(保有期間:保有契約の保険期間)に対応します。
ⅳ)割引率
全てのキャッシュ・フローは、当該キャッシュ・フローの特性と保険契約の流動性特性を反映するように調整したリスクフリーのイールド・カーブを用いて割り引いています。ソニーは、国債利回りを用いてリスクフリーのイールド・カーブを算定しています。当該イールド・カーブは、長期の実質金利とインフレ予想を反映して算定していますが、市場データのない期間の補外については、終局金利を用いて算定しています。具体的には、ソニーは、終局金利を3.5%、補外開始年度を40年目(米ドルの場合は30年目)とし、41年目(米ドルの場合は31年目)以降のフォワードレートは、30年間で終局金利の水準に収束するようにSmith-Wilson法により補外しています。保険契約の流動性特性を反映するために、リスクフリーのイールド・カーブは非流動性プレミアムによって調整しています。非流動性プレミアムは、ソニーの資産から参照ポートフォリオを設定して算定しています。
以下の表は、主要通貨別の保険契約のキャッシュ・フローを割り引く際に用いたイールド・カーブ(スポット・レート換算)を示したものです。
ⅴ)投資要素
ソニーは、保険契約の投資要素を識別する際には、保険事故が発生するかどうかにかかわらず、全ての状況において、保険契約者に返済することが要求される金額を算出しています。かかる状況には、保険事故が発生する場合や、保険事故が発生せずに契約が満期を迎えたり解除されたりする場合も含まれます。投資要素については、保険収益及び保険サービス費用から除外しています。
vi)カバー単位の決定
各期間において保険収益として認識される保険契約グループのCSMの金額は、当該グループのカバー単位を識別し、当期に提供したカバー単位に配分したCSMの金額を純損益として認識することによって決定しています。カバー単位の数は、各契約について提供する給付の量及びカバーの予想存続期間を考慮して決定しています。具体的には、ソニーは以下を基礎として給付の量を決定しています。
・期間に応じて死亡保障の金額が逓増又は逓減する契約(例えば終身保険、定期保険、変額保険):死亡保険金額
・主契約と特約のカバー種類が異なる契約(例えば疾病・医療保険):保険期間で平準化した保険料
・投資関連サービスを有する年金契約(例えば変額個人年金保険):解約返戻金額(年金支払期間は保険料積立金額)
ソニーは、保険契約者に提供される保険カバー、投資リターン・サービス、投資関連サービスの給付の相対的なウェイト付けの決定において、保険契約の特性を考慮し、それぞれの保険契約サービスに関連する給付の量を合算しています。
② CSMを純損益に認識すると予想している時期について
2023年3月31日現在、保険料配分アプローチを適用せずに測定している保険契約について、CSMを純損益に認識すると予想している時期は以下のとおりです。
③ IFRS第17号の経過措置に関する開示
ソニーは、2022年4月1日のIFRS第17号への移行に際し、一部の保険契約グループについては、過去における契約データやシステム上の制約により必要な情報を入手できないこと、又は、過去における見積りについて事後的判断を使用せずに再現することができないことなどから、完全な遡及適用は実務上不可能と判断しました。移行日時点で完全な遡及適用が実務上不可能な保険契約グループについては、代替的な移行アプローチである修正遡及アプローチ又は公正価値アプローチを適用しています。
ソニーは、IFRS第17号への移行に関して、以下のアプローチを適用しました。
修正遡及アプローチ
修正遡及アプローチの目的は、過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報を用いて、可能な限り遡及適用に最も近い結果を得ることにあります。ソニーは、IFRS第17号を遡及適用するための合理的かつ裏付けのある情報を有していない範囲でのみ、以下の各修正を行っています。
ソニーは、一部の保険契約グループに対して以下の修正を行っています。
・1993年度から2014年度の間に発行、開始又は取得した契約グループの場合、当初認識時の将来キャッシュ・フローは、遡及的に決定可能な2015年4月1日現在の金額を、同日以前に発生したことが判明しているキャッシュ・フローを調整することによって見積もっています。
・1993年度から2012年度の間に発行、開始又は取得した契約グループの場合、当初認識時に観察可能なリスクフリーのイールド・カーブに適用する非流動性プレミアムは、観察可能なリスクフリーのイールド・カーブと遡及的に決定可能な2013年4月1日から2022年3月31日までの期間に係る割引率との間の平均スプレッドを算定することによって見積もっています。なお、2022年4月1日における累積その他の包括利益に認識される保険金融収益又は費用の金額は、当該割引率を使用して算定しています。
・当初認識時の非金融リスクに係るリスク調整は、2022年4月1日現在の金額を同日以前の予想されるリスクの解放額で修正することによって算定しています。
このような履行キャッシュ・フローの修正を行った上で、当初認識時のCSM(又は損失要素)を以下のように算定しています。
・2022年4月1日以前に純損益として認識したCSMの金額は、2022年4月1日現在の残存カバー単位を同日以前の保険契約グループにもとづいて提供されたカバー単位と比較することによって算定しています。
・2022年4月1日以前に損失要素に配分した金額は、当初認識時の将来キャッシュ・アウトフローの現在価値の見積りに、非金融リスクに係るリスク調整を加算した合計額に対する損失要素の割合を用いることによって算定しています。
公正価値アプローチ
公正価値アプローチに従い、2022年4月1日時点のCSM(又は損失要素)は、同日現在の保険契約グループの公正価値と履行キャッシュ・フローとの差額として算定しています。
公正価値アプローチを適用して測定する全ての保険契約について、ソニーは、2022年4月1日時点で利用できる合理的で裏付け可能な情報を使用して以下の事項を判断しています。
・契約グループを識別する方法
・契約が直接連動有配当保険契約の定義を満たすか否か
・直接連動有配当保険契約以外の契約についての裁量的なキャッシュ・フローを識別する方法
公正価値アプローチで測定された契約グループの当初認識時の割引率は、当初認識日ではなく2022年4月1日現在において決定されています。
公正価値アプローチを適用して測定する全ての保険契約について、2022年4月1日における累積その他の包括利益に認識される保険金融収益又は費用の金額は、ゼロとしています。
IFRS第17号の経過措置が連結財務諸表に与える影響は以下のとおりです。
(ⅰ)移行アプローチ別のCSMの残高
ソニーは、IFRS第17号への移行に際して、遡及適用が実務上不可能な保険契約グループについては、修正遡及アプローチ又は公正価値アプローチを適用しています。2023年3月31日現在における移行アプローチ別のCSMの残高は以下のとおりです。
(ⅱ)IFRS第17号適用時における金融資産の再指定
IFRS第17号の適用にあたり、保険ビジネスにおける資産及び負債から発生する会計上のミスマッチを軽減する目的で、一部の金融資産の測定方法の再指定を行っています。主に、生命保険ビジネスにおいて、ソニーは一部の変額保険及び変額個人年金保険から生じる保険金融収益又は費用と整合させて、一部の負債性証券を純損益を通じて公正価値で測定するものと指定することにより、会計上のミスマッチを軽減しています。
ソニーは、IFRS第17号の適用開始前にIFRS第9号「金融商品」を適用しており、IFRS第17号の適用開始日(2023年4月1日)に存在する事実及び状況にもとづいて金融資産の再指定を行っています。なお、ソニーは、IFRS第17号の移行日(2022年4月1日)から適用開始日までの期間に認識の中止を行った金融資産についても、分類上書きを適用し再指定後の測定方法で会計処理をしています。再指定の影響を受ける金融資産について、2023年4月1日現在におけるIFRS第17号の適用前及び適用後の測定方法及び帳簿価額は以下のとおりです。
(注)*1 IFRS第17号適用前はその他の包括利益を通じて公正価値で測定していました。
*2 IFRS第17号適用前は償却原価で測定していました。
(1) 残存カバーに係る負債及び発生保険金に係る負債の変動
2022年度第2四半期連結累計期間及び2023年度第2四半期連結累計期間における残存カバーに係る負債及び発生保険金に係る負債の変動は以下のとおりです。
金額(百万円) | ||||
残存カバーに係る負債 | 発生保険金に係る負債 *4 | 合計 | ||
損失要素以外 | 損失要素 | |||
2022年4月1日残高 | ||||
保険契約資産 *1 | △84,000 | - | 28,670 | △55,330 |
保険契約負債 *2*3 | 13,004,073 | 53,820 | 126,778 | 13,184,671 |
帳簿価額純額 | 12,920,073 | 53,820 | 155,448 | 13,129,341 |
保険収益 | △272,913 | - | - | △272,913 |
保険サービス費用 | 53,752 | △1,656 | 138,792 | 190,888 |
保険サービス損益 | △219,161 | △1,656 | 138,792 | △82,025 |
保険金融費用(収益) | △1,150,923 | 3,728 | 134 | △1,147,061 |
包括利益に認識した金額合計 | △1,370,084 | 2,072 | 138,926 | △1,229,086 |
保険収益及び保険サービス費用から除外した投資要素 | △380,526 | - | 380,526 | - |
当期のキャッシュ・フロー | 694,098 | - | △495,900 | 198,198 |
その他 | 422 | 68 | △206 | 284 |
2022年9月30日残高 | ||||
保険契約資産 *1 | △100,136 | - | 31,278 | △68,858 |
保険契約負債 *2*3 | 11,964,119 | 55,960 | 147,516 | 12,167,595 |
帳簿価額純額 | 11,863,983 | 55,960 | 178,794 | 12,098,737 |
金額(百万円) | ||||
残存カバーに係る負債 | 発生保険金に係る負債 *4 | 合計 | ||
損失要素以外 | 損失要素 | |||
2023年4月1日残高 | ||||
保険契約資産 *1 | △93,283 | - | 32,532 | △60,751 |
保険契約負債 *2*3 | 12,331,738 | 51,840 | 126,452 | 12,510,030 |
帳簿価額純額 | 12,238,455 | 51,840 | 158,984 | 12,449,279 |
保険収益 | △286,427 | - | - | △286,427 |
保険サービス費用 | 58,272 | △225 | 134,539 | 192,586 |
保険サービス損益 | △228,155 | △225 | 134,539 | △93,841 |
保険金融費用(収益) | △281,291 | 2,507 | △640 | △279,424 |
包括利益に認識した金額合計 | △509,446 | 2,282 | 133,899 | △373,265 |
保険収益及び保険サービス費用から除外した投資要素 | △410,803 | - | 410,803 | - |
当期のキャッシュ・フロー | 780,012 | - | △536,090 | 243,922 |
その他 | △62 | △31 | △156 | △249 |
2023年9月30日残高 | ||||
保険契約資産 *1 | △96,120 | - | 32,525 | △63,595 |
保険契約負債 *2*3 | 12,194,276 | 54,091 | 134,915 | 12,383,282 |
帳簿価額純額 | 12,098,156 | 54,091 | 167,440 | 12,319,687 |
(注)*1 保険契約資産は、要約四半期連結財政状態計算書上、その他の流動資産又はその他の非流動資産に含まれています。
*2 保険契約負債の流動部分は、要約四半期連結財政状態計算書上、その他の流動負債に含まれています。
*3 2022年4月1日、2022年9月30日、2023年4月1日及び2023年9月30日現在の保険契約負債の流動部分の帳簿価額は、それぞれ141,796百万円、165,132百万円、145,057百万円及び156,723百万円です。また、保険契約負債の非流動部分の帳簿価額は、それぞれ13,042,875百万円、12,002,463百万円、12,364,973百万円及び12,226,559百万円です。
*4 保険料配分アプローチで測定される保険契約の非金融リスクに係るリスク調整は、金額に重要性がないため、将来キャッシュ・フローの現在価値の見積りと区分せずに発生保険金に係る負債に含めて表示しています。
(2) 保険契約に関する補足情報
2023年3月31日現在における保険契約に関する主要な情報は以下のとおりです。
① 保険契約における重要な判断及び見積り
ⅰ)保険契約の測定方法及びインプット
保険契約を測定するために使用した方法及び主なインプットは以下のとおりです。
2023年3月31日 | |
加重平均(%) | |
死亡率 | 1.03% |
解約・失効率 | 3.15% |
ソニーは、過去及び直近の実績にもとづいて死亡率及び罹患率の見積りを行っており、過去の経験及びデータの傾向を統計的手法により分析しています。保険契約グループごとの死亡率及び罹患率の算出にあたっては、ソニーは、性別、健康状態及び喫煙習慣などの保険契約者の特性や経過期間による選択効果の影響など、当該保険契約グループの特性を考慮しています。また、生活習慣の変化及び将来における死亡率及び罹患率の改善などの社会的状況の変化を反映するため、適時に見積りの見直しを行っています。
ソニーは、過去及び直近の実績にもとづいて解約率及び失効率の見積りを行っており、過去の経験及びデータの傾向を統計的手法により分析し、確率加重された解約率及び失効率を保険契約グループごとに算出しています。解約率及び失効率の見積りにあたっては、通常の解約に加え、動的解約を考慮しており、一部の保険契約において契約に付与する利回りが上昇する場合や、最低保証水準を上回る場合には、解約率が上昇する傾向を反映させています。解約率及び失効率の算出にあたっては、過去における実績データを考慮しており、実績データがない、又は少ない場合には、類似商品の実績や国内外の実務動向を参考にしています。
ソニーは、当期の経費水準にもとづいて将来における経費の見積りを行っています。当該経費は、固定間接費及び変動間接費の配分を含む、保険契約グループに直接起因する経費から構成されます。また、将来の経費の見積りについては、インフレの調整を行っています。
ⅱ)将来キャッシュ・フローにおける裁量権
直接連動有配当保険契約以外の一部の有配当保険契約について、裁量的な変更が履行キャッシュ・フローに与える影響は、CSMにおいて調整されています。こうした契約の投資方針については、ソニーに裁量権があるものの、市場状況に応じて設定されることから、金融リスクに関する仮定の変更が投資方針に与える影響を、保険金融収益又は費用に含めています。また、配当方針については、ソニーの裁量により変更することが可能であることから、配当方針の変更が履行キャッシュ・フローに与える影響は、CSMにおいて調整されています。
ⅲ)非金融リスクに係るリスク調整
非金融リスクに係るリスク調整は、各保険子会社ごとに、非金融リスクを負担することに対する報酬を反映して決定しており、保険契約グループのリスク・プロファイルの分析を基礎として各保険契約グループに配分しています。また、非金融リスクに係るリスク調整には、当該保険会社が要求する報酬と整合的で、かつリスク回避の程度を反映する方法によって、分散効果を反映しています。
ソニーは、非金融リスクに係るリスク調整を、主に資本コスト法により算定しています。資本コスト法においては、将来の各報告日における必要資本額に資本コスト率を乗じ、非流動性を調整したリスクフリーレートで割り引くことにより、非金融リスクに係るリスク調整を決定しています。当該必要資本額は、将来の各報告日において保険契約から生じる将来キャッシュ・フローの現在価値の確率分布を見積もった上で、保有期間1年、信頼水準99.5%において保険金及び経費支払に関する契約上の義務の履行のためにソニーが必要とする資本を計算することによって決定しています。資本コスト率は、投資家が非金融リスクに対するエクスポージャーに対して要求する追加的な報酬を表しており、2022年度におけるソニーの加重平均資本コスト率は、3.0%です。
なお、2022年度において、資本コスト法により計算されたリスク調整額は、86.0%の信頼水準(保有期間:保有契約の保険期間)に対応します。
ⅳ)割引率
全てのキャッシュ・フローは、当該キャッシュ・フローの特性と保険契約の流動性特性を反映するように調整したリスクフリーのイールド・カーブを用いて割り引いています。ソニーは、国債利回りを用いてリスクフリーのイールド・カーブを算定しています。当該イールド・カーブは、長期の実質金利とインフレ予想を反映して算定していますが、市場データのない期間の補外については、終局金利を用いて算定しています。具体的には、ソニーは、終局金利を3.5%、補外開始年度を40年目(米ドルの場合は30年目)とし、41年目(米ドルの場合は31年目)以降のフォワードレートは、30年間で終局金利の水準に収束するようにSmith-Wilson法により補外しています。保険契約の流動性特性を反映するために、リスクフリーのイールド・カーブは非流動性プレミアムによって調整しています。非流動性プレミアムは、ソニーの資産から参照ポートフォリオを設定して算定しています。
以下の表は、主要通貨別の保険契約のキャッシュ・フローを割り引く際に用いたイールド・カーブ(スポット・レート換算)を示したものです。
年限 | 2023年3月31日 | |
イールド・カーブ(%) | ||
JPY | USD | |
1年 | △0.10% | 4.73% |
5年 | 0.11% | 3.65% |
10年 | 0.40% | 3.54% |
20年 | 1.10% | 4.00% |
30年 | 1.36% | 3.71% |
40年 | 1.50% | 3.54% |
ⅴ)投資要素
ソニーは、保険契約の投資要素を識別する際には、保険事故が発生するかどうかにかかわらず、全ての状況において、保険契約者に返済することが要求される金額を算出しています。かかる状況には、保険事故が発生する場合や、保険事故が発生せずに契約が満期を迎えたり解除されたりする場合も含まれます。投資要素については、保険収益及び保険サービス費用から除外しています。
vi)カバー単位の決定
各期間において保険収益として認識される保険契約グループのCSMの金額は、当該グループのカバー単位を識別し、当期に提供したカバー単位に配分したCSMの金額を純損益として認識することによって決定しています。カバー単位の数は、各契約について提供する給付の量及びカバーの予想存続期間を考慮して決定しています。具体的には、ソニーは以下を基礎として給付の量を決定しています。
・期間に応じて死亡保障の金額が逓増又は逓減する契約(例えば終身保険、定期保険、変額保険):死亡保険金額
・主契約と特約のカバー種類が異なる契約(例えば疾病・医療保険):保険期間で平準化した保険料
・投資関連サービスを有する年金契約(例えば変額個人年金保険):解約返戻金額(年金支払期間は保険料積立金額)
ソニーは、保険契約者に提供される保険カバー、投資リターン・サービス、投資関連サービスの給付の相対的なウェイト付けの決定において、保険契約の特性を考慮し、それぞれの保険契約サービスに関連する給付の量を合算しています。
② CSMを純損益に認識すると予想している時期について
2023年3月31日現在、保険料配分アプローチを適用せずに測定している保険契約について、CSMを純損益に認識すると予想している時期は以下のとおりです。
2023年3月31日 | ||||||||
金額(百万円) | ||||||||
1年以内 | 1年超 | 2年超 | 3年超 | 4年超 | 5年超 | 10年超 | 合計 | |
2年以内 | 3年以内 | 4年以内 | 5年以内 | 10年以内 | ||||
CSM | 120,412 | 112,562 | 105,060 | 97,082 | 89,903 | 367,009 | 1,160,589 | 2,052,617 |
③ IFRS第17号の経過措置に関する開示
ソニーは、2022年4月1日のIFRS第17号への移行に際し、一部の保険契約グループについては、過去における契約データやシステム上の制約により必要な情報を入手できないこと、又は、過去における見積りについて事後的判断を使用せずに再現することができないことなどから、完全な遡及適用は実務上不可能と判断しました。移行日時点で完全な遡及適用が実務上不可能な保険契約グループについては、代替的な移行アプローチである修正遡及アプローチ又は公正価値アプローチを適用しています。
ソニーは、IFRS第17号への移行に関して、以下のアプローチを適用しました。
発行年度(会計年度) | 経過措置 |
2015年度以降 | 全ての保険契約グループ:完全遡及アプローチ |
1993~2014年度 | 直接連動有配当保険契約のグループ及び直接連動有配当保険契約以外の保険契約のグループの一部:公正価値アプローチ |
上記以外の保険契約のグループ:修正遡及アプローチ | |
1992年度以前 | 全ての保険契約グループ:公正価値アプローチ |
修正遡及アプローチ
修正遡及アプローチの目的は、過大なコストや労力を掛けずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報を用いて、可能な限り遡及適用に最も近い結果を得ることにあります。ソニーは、IFRS第17号を遡及適用するための合理的かつ裏付けのある情報を有していない範囲でのみ、以下の各修正を行っています。
ソニーは、一部の保険契約グループに対して以下の修正を行っています。
・1993年度から2014年度の間に発行、開始又は取得した契約グループの場合、当初認識時の将来キャッシュ・フローは、遡及的に決定可能な2015年4月1日現在の金額を、同日以前に発生したことが判明しているキャッシュ・フローを調整することによって見積もっています。
・1993年度から2012年度の間に発行、開始又は取得した契約グループの場合、当初認識時に観察可能なリスクフリーのイールド・カーブに適用する非流動性プレミアムは、観察可能なリスクフリーのイールド・カーブと遡及的に決定可能な2013年4月1日から2022年3月31日までの期間に係る割引率との間の平均スプレッドを算定することによって見積もっています。なお、2022年4月1日における累積その他の包括利益に認識される保険金融収益又は費用の金額は、当該割引率を使用して算定しています。
・当初認識時の非金融リスクに係るリスク調整は、2022年4月1日現在の金額を同日以前の予想されるリスクの解放額で修正することによって算定しています。
このような履行キャッシュ・フローの修正を行った上で、当初認識時のCSM(又は損失要素)を以下のように算定しています。
・2022年4月1日以前に純損益として認識したCSMの金額は、2022年4月1日現在の残存カバー単位を同日以前の保険契約グループにもとづいて提供されたカバー単位と比較することによって算定しています。
・2022年4月1日以前に損失要素に配分した金額は、当初認識時の将来キャッシュ・アウトフローの現在価値の見積りに、非金融リスクに係るリスク調整を加算した合計額に対する損失要素の割合を用いることによって算定しています。
公正価値アプローチ
公正価値アプローチに従い、2022年4月1日時点のCSM(又は損失要素)は、同日現在の保険契約グループの公正価値と履行キャッシュ・フローとの差額として算定しています。
公正価値アプローチを適用して測定する全ての保険契約について、ソニーは、2022年4月1日時点で利用できる合理的で裏付け可能な情報を使用して以下の事項を判断しています。
・契約グループを識別する方法
・契約が直接連動有配当保険契約の定義を満たすか否か
・直接連動有配当保険契約以外の契約についての裁量的なキャッシュ・フローを識別する方法
公正価値アプローチで測定された契約グループの当初認識時の割引率は、当初認識日ではなく2022年4月1日現在において決定されています。
公正価値アプローチを適用して測定する全ての保険契約について、2022年4月1日における累積その他の包括利益に認識される保険金融収益又は費用の金額は、ゼロとしています。
IFRS第17号の経過措置が連結財務諸表に与える影響は以下のとおりです。
(ⅰ)移行アプローチ別のCSMの残高
ソニーは、IFRS第17号への移行に際して、遡及適用が実務上不可能な保険契約グループについては、修正遡及アプローチ又は公正価値アプローチを適用しています。2023年3月31日現在における移行アプローチ別のCSMの残高は以下のとおりです。
2023年3月31日 | |
金額(百万円) | |
移行時に修正遡及アプローチを適用した契約 | 864,530 |
移行時に公正価値アプローチを適用した契約 | 58,008 |
新契約及び移行時に完全遡及アプローチを適用した契約 | 1,130,079 |
合計 | 2,052,617 |
(ⅱ)IFRS第17号適用時における金融資産の再指定
IFRS第17号の適用にあたり、保険ビジネスにおける資産及び負債から発生する会計上のミスマッチを軽減する目的で、一部の金融資産の測定方法の再指定を行っています。主に、生命保険ビジネスにおいて、ソニーは一部の変額保険及び変額個人年金保険から生じる保険金融収益又は費用と整合させて、一部の負債性証券を純損益を通じて公正価値で測定するものと指定することにより、会計上のミスマッチを軽減しています。
ソニーは、IFRS第17号の適用開始前にIFRS第9号「金融商品」を適用しており、IFRS第17号の適用開始日(2023年4月1日)に存在する事実及び状況にもとづいて金融資産の再指定を行っています。なお、ソニーは、IFRS第17号の移行日(2022年4月1日)から適用開始日までの期間に認識の中止を行った金融資産についても、分類上書きを適用し再指定後の測定方法で会計処理をしています。再指定の影響を受ける金融資産について、2023年4月1日現在におけるIFRS第17号の適用前及び適用後の測定方法及び帳簿価額は以下のとおりです。
項目 | 2023年4月1日 | |
金額(百万円) | ||
適用前 | 適用後 | |
帳簿価額 | 帳簿価額 | |
負債性証券 | ||
純損益を通じて公正価値で測定するものとして 再指定した金融資産 *1 | ||
日本国債及び地方債・社債 | 1,277,090 | 1,277,090 |
外国国債及び地方債・社債 | 20,570 | 20,570 |
その他の包括利益を通じて公正価値で測定するものとして 再指定した金融資産 *2 | ||
日本国債及び地方債・社債 | 84,651 | 88,497 |
(注)*1 IFRS第17号適用前はその他の包括利益を通じて公正価値で測定していました。
*2 IFRS第17号適用前は償却原価で測定していました。