有価証券報告書-第65期(平成27年3月1日-平成28年2月29日)

【提出】
2016/05/27 16:12
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【項目】
121項目

研究開発活動

当社グループは、多年にわたる研究により培った、超音波、電磁波を中心としたセンサー技術の一層の深耕、拡大をはかるとともに、それをより幅広く展開活用するため、長期的視野にたって、無線通信技術、情報処理技術、画像処理技術、メカトロニクス技術などの研究開発を進めております。これらの研究開発は当社の技術研究所及び各事業部門の開発部署で行っております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は47億8千6百万円であり、売上高に対する比率は5.3%であります。
セグメント別の主な研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(1)舶用事業
①商船市場向け機器
IMO(国際海事機関)の性能基準に適合したカテゴリー3(500総トン以下)の商船・官公庁船に搭載可能な航海用レーダー「型式:FAR-15x8」シリーズを開発しました(総務省型式検定・国交省型式承認取得予定)。海況に応じて表示映像を最適化する自動クラッタ除去機能(Automatic Clutter Elimination、ACE)や、従来に比べて格段に速く物標を捕捉・表示できるターゲットトラッキング(TT)機能といったハイエンド機で好評を博している各種機能を標準搭載しております。
国際船舶自動識別装置(Automatic Identification System、AISクラスA)では、最新の国際規格(IMO MSC.74(69) ANNEX3、ITU-R M.1371-5、IEC61993-2 Ed.2)に対応した「型式:FA-170」を開発しました。本商品は、識別符号、船名、位置、針路、船速、行き先などの船舶のデータを自動的にVHF電波で送受信し、周辺船舶の動静を把握するための装置です。今回の新商品は、電子海図情報表示システム(ECDIS)などの航海機器とネットワーク連携した拡張性の高い運用を可能とした点に特徴があります。
②漁業市場向け機器
魚群探知機の新商品として、「型式:FCV-1900」シリーズ3機種を同時開発しました。標準仕様の「型式:FCV-1900」では、幅広い周波数に対応したフリーシンセサイザー技術によって40種類以上の送受波器(オプション選択)が接続可能であり、オプションのネットワーク魚探(DFF1/BBDS1/DFF3)を接続すると最大4周波を同時表示することが出来るようになりました。また、動画/静止画の収録再生機能、サイドルッキングモードなど従来機種には無かった新機能や、探見丸(株式会社シマノ製)の親機として使用できるなど、ユーザーの利便性を向上させる機能を充実させています。上位機種の「型式:FCV-1900B」は、「型式:FCV-1900」の機能に加えて、独自のパルス圧縮技術TruEcho CHIRP(TM)採用により高分解能映像を実現しました。最上位機種の「型式:FCV-1900G」では、TruEcho CHIRP(TM)の応用によって単体魚分離精度を向上させた魚体長グラフ機能を具備しています。
テレサウンダーでは、「型式:TS-85」を開発しました。テレサウンダーとは、主にまき網漁船の従船(探索船や作業船)に搭載する魚群探知機、航法装置、ネットゾンデの情報を、本船に無線伝送する通信装置です。本船で従船の魚群探知反応などを把握できるため、漁場での船団操業の効率化に貢献します。新商品では、伝送信号のデジタル化によって耐ノイズ性を向上させ、従来商品に比べてより遠方の通達距離であっても、安定した魚群探知映像の表示が可能になりました。
③プレジャーボート市場向け機器
マルチファンクションディスプレイ「NavNet TZtouch」「NavNet TZtouch2」向けの新型レーダーセンサーを2機種開発しました。「型式:DRS6A X-Class」は、スポーツフィッシングでも鳥群を見つけることで「なぶら」を探し当てたいという要望に応えるために開発した、小型プレジャーボートに設置可能な小型・業界最軽量のレーダーセンサーです。従来機種に比べて受信性能を大幅に改善した他、漁業向けのバードレーダーで長年培ったノウハウを盛り込むことで、遠距離の海鳥の群れや、近距離の単体の鳥の動きを確認できるようになりました。Xバンド固体化レーダーセンサー「型式:DRS4D-NXT」は、固体化技術の導入によって、雨、接近物標、静止物標といった安全航海に有用な情報を即座に把握できる機能(ターゲットアナライザー表示機能)を搭載できた結果、海外のプレジャーボート市場における商品競争力を飛躍的に向上させることができました。
④その他
小型気象レーダーシステムについては、都市域の水害対策や鉄道・道路などの運行管理に貢献することを目的に、多数の小型気象レーダーを設置して雨などの状況を面的かつ高精細に把握するため、ネットワークで接続した小型気象レーダーのデータを一元的に管理するネットワークシステムの開発に取り組んでいます。また、漁業用の無線海岸局については、少人数で広範囲の船の状況を効率的に監視できるように、離れた場所にある複数の無線設備をネットワークで結び、集中運用局で統合して運用する無線海岸局ネットワークシステムを開発しています。
当セグメントに係る研究開発費は30億6千4百万円であります。

(2)産業用事業
①医療機器分野
生化学自動分析装置「型式:CA-800」を開発しました。生化学自動分析装置とは、全血、血清、血漿(けっしょう)や尿などの検体に含まれる酵素、脂質、たんぱく質、糖などを試薬と反応させて、その反応過程を分光光度計で吸光度を測定する検査機器です。本商品は、1時間あたり800テストから最大1,200テスト(電解質ユニット付)の処理速度で高精度・多機能・高効率という点に特徴を有しております。また、微量分析を実現し、最小反応液量は50μLまで可能としました。
②ITS機器分野
次世代ETC規格であるETC2.0のうち、GPS付き発話型車載器のプラットフォーム開発を実施しました。本プラットフォームは、基本機能以外にも応用展開が可能なプラットフォームとなっており、ユーザー要望に応じた新機種を短期間かつ低コストで開発することができるようになりました。また、前連結会計年度に市場投入した「動物位置通報システム」のDogNaviでは、ユーザーニーズにこたえるべく改良設計を実施することで、日本の技術基準に準拠した特性を維持したまま、低消費化と地図表示の改良及び通信距離の拡大化を短期間で実現しました。
③GNSS機器分野
放送局や携帯電話の基地局で使用される周波数発生器のシリーズ開発(5機種)を行いました。プラットフォーム開発によって短期間で開発費用を抑えながら、ローエンドからルビジウム発振器を使用したハイエンド機までのラインナップを取り揃えることで、ユーザーの要望に応じて最適な機種提案ができるようになりました。
当セグメントに係る研究開発費は6億3千6百万円であります。
上記以外に、事業セグメントに帰属しない本社管理部門の研究開発費として10億8千5百万円を支出しております。