有価証券報告書-第84期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/26 14:05
【資料】
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【項目】
145項目
③戦略
当社グループは、気候関連のリスク及び機会を検討する上での「短期・中期・長期」の時間軸について、①産業の特性、②意思決定や資本配分計画に通常用いられる期間、③主要な利用者が企業の評価を行う時間軸を検討・整理しました。その結果、短期を1年以内、中期は2-3年、長期を3年超と整理しています。
⦅気候関連のリスク及び機会⦆気候関連のリスク (A)
気候変動に起因する災害による物流インフラや生産への影響、甚大な損失の発生及び事業機会の喪失
(ビジネスモデル及びバリューチェーンに与える影響)
気候変動に起因する自然災害は、自社及びサプライチェーンにおける生産の停止、物流インフラの遮断、工場や機械などの自社資産の毀損等、当社グループの事業活動へ影響を与えることが想定されます。
(財務的影響)
・現在の財務的影響
気候変動に関連する災害に起因した保有資産の毀損・事業機会の喪失は当連結会計年度において発生しておらず、当該リスクによって報告日現在の財務諸表に影響は生じておりません。
一方で、日本国内の拠点の一部において、気候変動に関連する災害に対する防災対策を当連結会計年度に実施しております。防水板の設置等の対策を実施したことにより、約130百万円の有形固定資産を取得しているとともに、約138百万円の費用を支出しています。
・将来の予想される財務的影響
当社グループは、気候変動に関連した災害が発生することによって保有資産を毀損する可能性及び各事業拠点における操業に困難が生じることで事業機会を喪失する可能性を気候関連の物理的リスクと識別しています。
気候関連の物理的リスクが将来に与える影響の評価にあたっては、世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct」を用い、50年に一度、また、100年に一度の確率で発生するような激甚洪水の発生可能性とその浸水深予測を評価のベースシナリオとしました。また、国土交通省発行「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」も参照しました。
当該シナリオでは、日本及びマレーシアに所在する一部生産拠点において浸水被害が生じる可能性があり、その結果、建物・設備等の固定資産や生産・保守用機材等の棚卸資産を毀損する可能性があると認識しています。さらに、被災した拠点における設備復旧や代替地生産の準備が整うまでの期間において、売上機会の喪失が発生する可能性も同時に認識しています。なお、前連結会計年度の有価証券報告書において浸水被害が生じる可能性があると判断したEssai, Inc.については、最新のデータに基づき分析を行った結果、浸水被害が生じる可能性はなくなったと判断しています。
これらの物理的リスクに伴う財務的影響の把握にあたっては、当社グループの事業拠点及び当社グループのサプライチェーン主要拠点における激甚洪水の発生確率と、当該拠点に有する資産規模(有形固定資産)を評価指標とし、高リスク拠点の特定と影響評価を行っています。
当連結会計年度においては日本及びマレーシアの一部生産拠点と外注先を高リスク拠点として特定いたしました。当該高リスク拠点において激甚洪水が同時に発生する場合、総資産において約96億円を毀損する可能性、売上高において約467億円が減少する可能性があると試算しております。
(戦略及び意思決定に与える影響)
・浸水防止措置の実施
識別した洪水リスクについて、その影響を回避、若しくは最小限にすることを目的とし、日本における複数の拠点にて、水害対策を行いました。なお、今後、サプライチェーン全体における影響評価及び対策の検討も進めていきます。
・体制強化
2025年9月、全社的な危機における意思決定をより迅速に行うため、危機管理本部をCxO体制のもとで対応を行う体制へと再編しました。また、従来型BCPからオールハザード型BCP(注)への移行を通じ、気候変動による影響を含めたあらゆる災害に対応できるよう対策を行い、レジリエンスの向上に努めています。今後、当社グループの重要拠点や重要部門における緊急対応計画、危機管理計画、事業継続計画等の文書作成、維持管理を進めていきます。
(注)オールハザード型BCP:特定の危機事象に対するアプローチではなく、従業員や設備の被災・本社機能の一時停止など、経営資源の毀損に焦点を当て、事業を継続・復旧させるための計画
気候関連のリスク(B)
気候関連規制への対応や再生可能エネルギー導入拡大に伴う事業コスト増加
(ビジネスモデル及びバリューチェーンに与える影響)
当社グループは、気候変動の深刻化に伴い、各国において気候関連規制が強化され、また、主要得意先から、グリーンエネルギーを用いた製造に関する要請が増加する中、これらの規制対応や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、事業コストが増加するリスクを識別しています。
(財務的影響)
・現在の財務的影響
当社グループ全体で使用するエネルギーの再生可能エネルギーへの転換を進めており、再生可能エネルギーの調達のために費用を支出しています。
・将来の予想される財務的影響
当社グループは、各国・地域における気候関連規制の強化や、参入市場でのバリューチェーンにおける要請から事業コストが将来増加する可能性を、気候関連の移行リスクのひとつと識別しています。当社グループにおいて発現可能性が高いと現時点で予想している気候関連の追加的な事業コストは、主に炭素税です。また、当社グループが気候関連規制の強化やバリューチェーンにおける要請から生じるコストのすべてを直接的に負担するものではありませんが、バリューチェーン内の負荷移転による間接的なコスト上昇の可能性を認識しています。当社グループが直接的に負担する可能性が高い炭素税については、中長期的に、当社グループの年間営業利益に16百万円-85百万円の影響が生じる可能性があると試算しています。
これら法規制あるいは社会的・産業的要請に端を発する移行リスクについては、各国・地域における規制内容や市場要請自体の将来の不確実性が高く、網羅的なリスクシナリオの策定及びその財務的影響度予測は困難です。
当社グループは、法規制あるいは社会的・産業的要請に端を発する移行リスクに対し、次項(戦略及び意思決定に与える影響)に記載のとおり、先駆的にリスク低減に取り組むことでその影響を最小限にする対策を講じています。
(戦略及び意思決定に与える影響)
当社グループは、当該リスクに対し、自社のGHG排出量の削減や製造工程における生産効率の改善、生産拠点における再生可能エネルギー設備の導入、再生可能エネルギーの購入、物流・輸送の脱炭素化推進等を通じて、その影響を最小限にする対策を講じています。また、当社グループは、炭素税の賦課や製品に対する環境基準の設定等を含む気候関連規制への対応を見据え、GHG排出量削減に向けた活動を推進しています。
・スコープ1+2に関する目標及び取り組み
当社グループは、自社の事業活動におけるスコープ1+2のGHG排出量を2050年度にゼロにするという目標を掲げています。また、2026年度までにスコープ1+2GHG排出量を2018年度比で65%削減することを中間目標として設定しており、この中間目標を2024年度に前倒しで達成しました(2024年度実績:2018年度比76%削減)。
当社グループは、国際イニシアチブ「RE100」に参画しており、事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。グループ全体における再生可能エネルギー導入率を2026年度までに80%とすることを目標として、各拠点で取り組みを進めた結果、2024年度にグループ全体として再生可能エネルギー導入率87%を達成し、2025年度は再生可能エネルギー導入率88%(提出日現在の概算値)を達成しています。
再生可能エネルギー導入に関する今後の取り組みとしては、非化石証書の購入や再生可能エネルギー設備の導入を予定しています。
・スコープ3に関する考え方
サプライチェーンを含めた、当社グループが関与するGHG排出量の一層の削減に向けて、新たな目標設定を含め取り組みを今後強化していく予定です。
気候関連のリスク(C)
製品のエネルギー効率が顧客要求水準を満たさない、あるいは他社に劣る場合、販売への悪影響
気候関連の機会(A)
当社グループ製品の高いエネルギー効率の実現を通じた、顧客の信頼向上と事業機会の拡大
(ビジネスモデル及びバリューチェーンに与える影響)
当社グループは、環境性能向上のための研究開発活動を推進しております。これにより、既存製品の消費電力等の環境性能が向上するとともに、環境性能の高い新製品の開発・展開が可能となると考えております。これらの取り組みにより、顧客からの信頼性向上や当社グループ製品の選定につながり、売上高の増加に寄与する可能性があります。
一方、当社グループ製品のエネルギー効率が顧客の要求水準を満たさない場合や、競合他社製品と比較してエネルギー効率で劣る場合には、顧客からの信頼性が低下する可能性があります。また、顧客の社内選定基準を満たさないことにより、当社グループ製品が選定されなくなることも想定されます。その結果、製品の販売台数が減少し、売上高が減少する可能性があります。
(財務的影響)
・現在の財務的影響
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は78,140百万円であります。環境パフォーマンスの改善に係る投下費用と、それ以外の性能改善に係る投下費用を明確に区分することが困難であることから、研究開発費の総額を開示しています。
・将来の予想される財務的影響
当社グループは、当社グループの顧客を含む半導体サプライチェーン全体においてエネルギー効率改善に向けた取り組みが進展している中、当社グループ製品のエネルギー効率が顧客の期待を満たさない場合、又は競合他社製品に比して劣る場合、当社グループ製品の販売に影響が生じるリスクを、気候関連の移行リスクのひとつと識別しています。
一方、当社グループ製品のエネルギー効率が優れる場合には、顧客からの信頼向上や市場からのレピュテーション向上を通じ、当社グループ製品の販売機会がさらに拡大する可能性があります。とりわけ近年、AIサーバーやデータセンタ向けの高性能半導体の需要が旺盛に拡大する中、それらの半導体が消費する電力量に対して社会的注目が集まっています。こうした背景のもと、半導体サプライチェーンにおいても一層の環境負荷低減を目指す取り組みが今後進展すると予想しています。半導体テスト工程においても、環境パフォーマンスの高いソリューション、すなわち環境負荷に対し、テスト性能とテスト効率を従来製品よりも改善した製品への期待がハイエンド製品を中心に今後さらに高まっていくと考えられます。
したがって、半導体バリューチェーンにおける脱炭素化推進意欲やエネルギー効率向上目標、及び環境パフォーマンスに関する当社グループ製品の顧客訴求力が、当社グループの将来の売上高や研究開発費に影響を及ぼす可能性が高いと見込んでいます。
当該リスク及び機会がもたらす将来の財務的影響を合理的に見積もることは、現時点では困難です。半導体需要の根源をなすマクロ経済に今後の不確実性が高いこと、半導体市場及び半導体テスト市場への影響度の強いAI産業やデータセンタの今後の投資規模や技術進化ペースを予見し難いことに加え、半導体バリューチェーンにおける脱炭素化推進意欲やエネルギー効率向上目標がどのように半導体テスト需要に影響するかを定量的に予測することが困難であることが理由です。
当社グループの半導体テスト製品は、大規模電子計測システムとして、計測精度、スループット、消費電力、フットプリント等のスペックを総合的・一体的に引き上げるべく開発が行われています。そのため、環境パフォーマンスの改善に向けた取り組みに関する投下費用と、それ以外の性能改善に向けた取り組みに関する投下費用を、明示的に区分することが困難です。
これらの理由により、気候変動に関する将来の製品需要及び研究開発費用の見積もりは、その測定不確実性の程度があまりにも高く、有用な定量的情報の提供が非常に困難であると判断しています。
(戦略及び意思決定に与える影響)
当社グループは、将来の市場動向や技術進展に先駆的に対応するための投資を今後増強していく方針です。具体的には、研究開発関連使途として、売上高に対し10%以上を投下することを目途としています。製品のエネルギー効率を向上する取り組み、あるいは半導体製造における環境負荷低減の取り組みは、この研究開発関連投資の対象に含まれます。具体的には以下のような活動を展開しています。
当社グループは、すべての製品を対象に製品環境アセスメントを実施しており、省エネルギー・省部材・小型化、リサイクル設計、有害物質の排除等の観点から審査を行っています。さらに、主要な製品については「グリーン製品自主基準」を設定し、通常の製品環境アセスメントに加え、新製品を対象とした評価を実施しています。当該基準では、従来製品と比較して、「省エネルギー・省資源対策」「リサイクル性の向上」「有害物質の排除」の各観点において環境性能が優れている製品をグリーン製品として認定しています。製品設計にあたっては、省エネルギー、省部材及び小型化を重視しており、各製品群において、グリーン製品として認定するための基準を設定しています。
このような研究開発投資が、当該リスクの影響を将来軽減するとともに今後の事業機会の拡大をもたらすと見込んでいます。また、製品の開発・製造に係る事業活動においても、省エネルギー設備の導入、再生可能エネルギーの活用、製品・部材輸送の物流最適化、サプライチェーンのローカライゼーション等を通じて、GHG排出量の削減を推進しています。
⦅翌連結会計年度において、関連する財務諸表に計上する資産及び負債の帳簿価額に重要性がある影響を与える重大なリスク⦆
前述の気候関連のリスク(A)、(B)、(C)及び機会(A)については、いずれも資産の毀損・事業コストの増加・事業機会の喪失及び獲得等に関連する重大な事象の発生を翌連結会計年度において見込んでいるものではありません。したがって、関連する財務諸表に計上される資産及び負債の帳簿価額に重要な影響を与えるリスクは、現時点において認識していません。
⦅測定の不確実性の程度が高い情報が含まれる場合⦆
当社グループは、気候関連のリスク及び機会に関する財務的影響の定量的情報を開示するにあたり、将来の半導体需要、環境負荷低減への市場要求、当社グループの研究開発の進展等について合理的な仮定や概算、判断を行う必要がある旨を認識しています。一方で、一部の気候関連のリスク及び機会については、気候関連の要因とその他の要因の影響を明確に区分することが困難であり、影響を見積もる際の測定の不確実性の程度が非常に高いことから、もたらされる定量的情報が有用でないと判断し、現時点では、以下の項目については、財務的影響の定量的情報の開示は行っておりません。
・製品のエネルギー効率が顧客要求水準を満たさない、あるいは他社に劣る場合、販売に影響する可能性
・当社グループ製品の高いエネルギー効率の実現を通じた、顧客の信頼向上と事業機会の拡大
こうした判断の背景として、短期、中期及び長期における、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の変化に影響を及ぼす可能性のあるサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する見積値は、主に、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリー及びテストハウスの設備投資に依存すること、また、これらの設備投資の将来動向は不確実であることがあります。これらの設備投資は、半導体に対する将来需要の大きな影響を受けるほか、半導体製造における環境負荷低減に対する要求の高まり、テスト効率の高いテスタへの需要の増加、並びに当社グループの研究開発力等の要因にも左右されます。これらの要因が、当該見込み数値に係る測定の不確実性の源泉となっております。特に、半導体に対する将来需要及びテスト効率の高いテスタ需要は、ボラティリティの高い世界経済のもとで無数のシナリオが存在するため、その不確実性は極めて高いと認識しております。
⦅気候レジリエンス⦆
気候レジリエンスとは、気候関連の変化、進展又は不確実性に対応する企業の能力と定義されています。当社グループは、気候変動が事業活動に与えるリスク及び機会を把握するため、複数の将来像を想定した気候関連のシナリオ分析を実施しています。なお、今後も最新の科学的知見や社会・経済動向を踏まえ、シナリオ分析及び気候レジリエンス評価の手法や前提条件について継続的な見直しを行ってまいります。
当社グループは、気候レジリエンスを高めるため、「サステナビリティ行動計画」において気候変動対策に関連する重点テーマを設定し、課題ごとに設定した目標の達成に向け、戦略的に活動を推進しています。
気候変動対策の推進においては、顧客や取引先などの社外ステークホルダーとの協働が不可欠であることから、当社グループは、⦅気候関連のリスク及び機会⦆に記載のとおり、GHG排出量削減と再生可能エネルギー導入を中心に、気候関連の課題ごとに中期的な目標を定めています。これらの目標を達成し、気候変動対策に貢献するため、社内外のステークホルダーと協力して検討・実行するタスクフォース(TF)を設置し、気候変動課題に対する責任ある取り組みを推進しています。半導体業界の市場における脱炭素に向けた取り組みの規模や速度は依然として不確実ですが、様々な環境の変化に柔軟に対応できるよう、複数のシナリオに基づいて取り組みを検討しています。
気候レジリエンスの評価の結果、気候関連のリスク及び機会は包括的に対処されており、当社グループは、気候変動に対して、短期、中期及び長期にわたり戦略及びビジネスモデルを調整する能力を有していると認識しています。

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