有価証券報告書-第45期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/08/06 14:20
【資料】
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【項目】
150項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループでは、下記の4項目を経営ビジョンとして掲げ、経営の基本方針としております。
①独自技術を保有し、自社ブランド製品を世界に供給する「開発型企業」を目指します。
②顧客に満足いただける製品を素早く提供する小回りの利いた会社を目指します。
③市場に常に「新しさと違い」を提供するイノベーターを目指します。
④各人が持っている個性・能力を力一杯発揮できる企業風土を目指します。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、潜在力の大きな市場を開拓して成長を続けることが、株主をはじめとするステークホルダーの皆様の期待に応えることであると考えております。これを踏まえ、中長期的な経営指標として「売上高成長率10%(為替相場の変動要因は除く)」を目標といたします。
(3)中長期的な経営戦略
当社グループでは、2017年3月期より連結売上高の目標を1000億円とするスローガン「M1000」を掲げ、中長期的に次の重点施策に取り組んでまいります。
①技術戦略
独自の技術を活用して、デジタルオンデマンド印刷やマスカスタマイゼーション、IoT(省人化、無人化)等に取り組んでまいります。並行して、設計品質の向上に努めるとともに、ソフトウェア・ファームウェア等の設計標準化を進めてまいります。
②営業戦略
地域密着型の販売・保守体制を構築してまいります。国内海外にかかわらず、地域特性に対応した明確かつ具体的な販売戦略の下で高速PDCAを循環させ、ソリューション提案とともに新たな市場の創造に向けた営業活動に取り組んでまいります。
③生産戦略
製品供給力とコスト力を実現するため、需要変動に追従できる生産システムと工場別ライン別コストの見える化に取り組んでまいります。
④経営基盤の強化
グローバル人材の育成や社内基幹システムの見直しのほか、部門別独立採算の考え方を、海外を含めたグループ全体に浸透させ、課題認識と解決に向けた方向性を全社で共有できる体制を構築してまいります。また、企業の信頼性向上に向けて内部統制や子会社管理の強化にも取り組んでまいります。
(4)経営環境
当社グループは、現在の産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタ事業を率先して立ち上げ、市場形成に貢献してきたと自負しております。昨今の社会インフラや生活環境においてデジタル化のニーズが高まる中で、産業用インクジェットプリンタやカッティングプロッタの事業は成長機会の大きい状況が続くものと想定しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、年商1,000億円を目標とする経営スローガン「M1000」を掲げて持続的成長を志向し、そのために必要な中期的課題を下記のとおり認識しております。但し、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大は多くの前提条件を揺るがすに至っており、当社グループの役職員を始めとした様々なステークホルダーの無事を最優先に考えた行動に注力するとともに、刻々と変化する状況に対し迅速かつ適切に対応してまいります。
①デジタルトランスフォーメーションへの対応
当社が開発型企業として持続的な成長を実現するためには、SDGsで定められた持続可能な開発目標への貢献という社会的な要請はもちろん、個々のお客様の困りごとやニーズに的確に対応する必要があります。そのために、当社グループが所有する競争優位性の高い独自技術を基盤とした製品、ソフトウエア、サービスの提供に加え、今後ますます進展するデジタルトランスフォーメーション(バリューチェーンを含めて新たな付加価値につながるデジタル化)を、中期的な観点から成長ドライバとして取り込んでまいります。
具体的には、当社グループは、産業用印刷市場で必要とされる「プリントだけでなくその前・後工程の処理装置も含めた幅広い製品ラインナップ」と「充実した機能性インク」のほか、当市場を開拓する過程で蓄積してきた「問題解決のノウハウ提供力」を保有しております。この有形・無形の資産を源泉とし、プリントの最終加工や色合わせに必要となる製品、ソフトウエア、ノウハウ等のご提供を通じて、お客様が制作する成果物の品質までをサポートする取り組みを進めています。また、プリント工程の自動化による省人化・無人化等のノウハウを安定して提供し、お客様の制作プロセスの変革支援や企業資源計画の策定支援につなげる提案を、積極的に行ってまいります。このように、産業印刷における前工程・プリント・後工程までの一貫システムによるトータルソリューションを提供する、ソリューションプロバイダーとしての役割を、特に以下の3領域にフォーカスして担ってまいります。
a.デジタルプリントのIoT
5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが開始され、当社が手掛けている産業用インクジェットプリンタ事業の可能性が大きく広がります。特に、TA(テキスタイル・アパレル)領域やIP(インダストリアルプロダクツ)領域では、当社が保有するデジタルプリントの前処理装置、プリンタ、インク、カッティングプロッタ、後処理装置、ワークフローソフトまでを含めた幅広い製品ラインナップと、プリント成果物制作プロセスの構築ノウハウを基盤に、プリント工程の自動化による省人化・無人化といった、デジタルプリントのIoTを推進してまいります。
b.3Dプリント市場
IP領域における3Dプリントビジネスにおいては、2017年に発売したUV硬化インクジェット方式の3DUJ-553を皮切りに、着実に製品ラインナップの拡大を進めてまいりました。今後も、お客様の多様なニーズにお応えする製品ラインナップの更なる拡充に取り組むとともに、多様な用途やアプリケーションの提案等を加速してまいります。
c.SG(サイン・グラフィックス)ビジネス
SG領域は、世界経済停滞等の影響を受け市場成長が鈍化している中、競争激化による収益環境不安定化への対応が必要です。一方で、当領域で使用される機能性インクは、従来主流であった有機溶剤系インクから、環境負荷が低いUV硬化型インクへの転換が始まっており、同インクは向こう数年間で市場規模が大幅に増加すると見込まれています。当社は、UV硬化型インクの開発とそれを使用するインクジェットプリンタの開発にいち早く取り組み、業界での競争優位性を確保しています。今後は、この優位性を生かした開発・販売活動を積極的に展開し、マーケットリーダーとしての地位を確実なものにしてまいります。
②インク品質の更なる向上
当社グループにおいて、競争力の源泉である機能性インクの品質安定・向上は最重要課題であります。そのため、機能性インクの開発工程の見直しに取り組んでまいります。具体的には、設計評価・サービス評価・営業評価における基準を明確化して評価項目を見直してまいります。また、製造現場においてもインクの材料単位での品質チェック強化などにより、製品品質を高めてまいります。以上の取り組みにより、インク品質の更なる向上による競争力強化を図ってまいります。
③生産・物流体制の改善
当社グループにおいて、グローバルなお客様が求める商品・サービスを最適なタイミングで効率的にご提供し、売上、利益、キャッシュフローの最大化を図ることは重要な経営課題です。そのために、グローバルでの需要変動に柔軟に対応できるよう、販売、物流、生産・調達などの各機能を密接に連携させるサプライチェーンの再構築を進め、コスト競争力の確保及び適正在庫の実現に取り組んでまいります。
④研究・開発体制の強化
当社グループは効率的な研究・開発体制のもとで優れた製品をタイムリーに市場投入するため、要求機能に対し、あらかじめ準備された製品・ユニット・部品・技術情報より適切なものを選び、組合せにより新しい製品を開発するモジュール開発に取り組んでまいります。また、要素技術の開発と量産開発のノウハウ蓄積により、デジタルプリントの技術革新(イノベーション)を起こせるよう努めてまいります。
⑤グローバル管理体制の強化
当社グループは販売拠点や製造拠点をグローバルベースで運営しているため、グローバル管理体制の強化が重要課題であると認識しております。具体的には、基幹システムや会計システム、人事制度等のグローバル展開に取り組んでまいります。また、為替リスクの低減に向けた施策にも取り組んでまいります。
⑥地域密着型営業活動の推進
当社グループはグローバルなお客様の多様なニーズにお応えするため、国内営業拠点及び海外販売子会社において、個々の地域特性に合致した販売戦略のもとで、新規ユーザーの開拓、製品の用途提案、製品導入後のアフターフォローや迅速な保守サービスの提供等、地域密着型の営業活動を推進し、顧客満足度の向上に努めてまいります。また、Webを通じてお客様へのご提案や商談などを実施したり、ネットを活用した販売の仕組みを構築するなど、ITの進化を活用した営業活動のオンライン化にも、積極的に取り組んでまいります。
⑦内部統制・コンプライアンスの強化
企業の社会的責任として、内部統制及びコンプライアンスに徹底して取り組んでまいります。関係法令・規則の遵守はもとより、お客様の情報管理等に対するセキュリティーポリシーを確立し、役職員一人ひとりの高い倫理観の醸成、社会的良識を持った責任ある行動を目指して社内教育を行ってまいります。また、反社会的勢力との関係に対しては、断固とした対応で臨むことにより一切の関係を遮断し、コンプライアンスに則った経営を行ってまいります。
⑧リスクマネジメントへの取組み
近年の事業環境下では、想定を上回る規模の自然災害や感染症の発生等により事業継続計画(BCP)の重要性が増しております。大規模な自然災害が発生した場合でも、被害を最小限にとどめ、復旧までの時間を最小限におさえて業務を継続できるよう、業務インフラ、緊急時連絡体制、本社屋をはじめとする各設備の見直しを行ってまいります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなパンデミックの発生に際しては社会全体での取り組みが必要となりますが、当社グループとしても、感染症の発生早期→感染拡大期→蔓延期→回復期を想定し、役職員に向けて適切な対策を検討・実施してまいります。
⑨SDGsへの取組み
2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」において、人間及び地球の繁栄のための行動計画として「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」が掲げられました。当社グループもこの目標に賛同し、さまざまな社会問題に真摯に向き合うとともに、事業を通じて社会や環境に良い影響をもたらすことで、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。