臨時報告書

【提出】
2023/05/30 15:50
【資料】
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提出理由

当社は、2023年5月30日開催の取締役会において、当社及び三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」といいます。)間の経営統合(以下「本経営統合」といいます。)について基本合意書(以下「本基本合意書」といいます。)を締結することを決議し、当社、三菱ふそう、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」といいます。)及び三菱ふそうの親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」といいます。)の4社で本基本合意書を同日付で締結いたしました。なお、本基本合意書は本経営統合に関する法的拘束力のない合意であり、今後、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において、本経営統合を実現するための取引の諸条件に関する法的拘束力のある契約(以下「最終契約」といいます。)を締結することを目指して協議・検討を進めてまいります。
これに伴い、当社及び当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象が発生する見込みとなりましたので、金融商品取引法第24条の5第4項並びに企業内容等の開示に関する内閣府令第19条第2項第12号及び第19号の規定に基づき、本臨時報告書を提出するものであります。なお、現時点で本経営統合の具体的な方法は決まっておりませんが、当該方法が今後決まった場合には、当該方法に係る提出事由に基づき改めて臨時報告書を提出する予定であります。

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象

Ⅰ.当該事象の発生年月日
2023年5月30日(本基本合意書締結に係る取締役会決議日)
Ⅱ.当該事象の内容
(1)本経営統合の相手会社についての事項
① 商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
商号三菱ふそうトラック・バス株式会社
本店の所在地神奈川県川崎市中原区大倉町10番地
代表者の氏名代表取締役社長 CEO カール・デッペン
資本金の額35,000百万円(2022年12月31日現在)
純資産の額243,886百万円(2022年12月31日現在)
総資産の額504,895百万円(2022年12月31日現在)
事業の内容トラック・バス、産業エンジンなどの開発、設計、製造、売買、輸出入、その他取引業

(注) 三菱ふそうの財務状態については三菱ふそう単体の財務状態を記載しておりますが、本経営統合の対象は三菱ふそう単体に限定されるものではなく、本経営統合の対象となる三菱ふそうの事業の財務状態の全てを表示するものではありません。
② 最近3年間に終了した各事業年度の売上高、営業利益、経常利益及び純利益
(単位:百万円)

事業年度2020年12月期2021年12月期2022年12月期
売上高595,654657,357699,316
営業利益1,31330,66917,192
経常利益1,86834,38821,028
当期純利益1,25424,03616,012

(注) 三菱ふそうの経営成績については三菱ふそう単体の経営成績を記載しておりますが、本経営統合の対象は三菱ふそう単体に限定されるものではなく、本経営統合の対象となる三菱ふそうの事業の経営成績の全てを表示するものではありません。
③ 大株主の名称及び発行済株式の総数に占める大株主の持株数の割合
(2022年9月30日現在)

大株主の名称発行済株式の総数に占める大株主の持株数の割合
ダイムラートラック社89.29%
株式会社三菱UFJ銀行2.38%
三菱重工業株式会社2.38%
三菱商事株式会社2.38%
東京海上日動火災保険株式会社0.71%
明治安田生命保険相互会社0.71%
三菱UFJ信託銀行株式会社0.71%
AGC株式会社0.71%
日本郵船株式会社0.36%
三菱電機株式会社0.36%
三菱マテリアル株式会社0.36%

④ 当社との間の資本関係、人的関係及び取引関係
資本関係該当事項はありません。
人的関係該当事項はありません。
取引関係当社グループ会社から三菱ふそうへの部品供給等を行っております。

(2)本経営統合の目的
当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社の企業理念に共通するのは、「移動を通じて、豊かな社会に貢献したい」という想いです。これからも私たちが世の中で必要な存在であり続けるために、地球環境に優しいクルマを普及させ、社会システムの中で移動の価値を高めていきたいと考えております。
人やモノの移動を通じて、暮らしを支えている商用車は、「社会インフラ」ともいえる重要なモビリティです。商用車を通じた豊かなモビリティ社会を実現するためには、カーボンニュートラルや物流の効率化など、直面している課題を解決していかなければなりませんが、それには多大な投資がかかります。商用車は乗用車に比べて台数も少なく、日本市場で商用車メーカー各社が単独で対応するのは大変難しい状況です。当社を含む日本・アジアにおける自動車産業や雇用を守るためには、開発・生産など事業効率を高め、競争力を強化しなければなりません。
当社と三菱ふそうが一緒になり、開発・生産など事業効率を上げ、日本の商用車メーカーの競争力を磨くことで、日本・アジアの自動車産業の基盤を守り、お客様、ステークホルダー、そして日本の自動車産業に貢献してまいります。
ダイムラートラックとトヨタは両社とも、地域に合わせた「グローバル・フルラインアップ」を強みとし、カーボンニュートラルに向け、地域の事情、お客様の使われ方に応じた多様な選択肢を提供する「マルチパスウェイ」を大切にしています。「CASE技術は普及して初めて社会の役に立つ」との思いのもと、ダイムラートラックとトヨタは力を合わせ、その技術開発力を高め、コストを削減し、CASE技術の普及に努めてまいります。
なお、協業内容は以下のとおりです。
<協業内容>ダイムラートラック、三菱ふそう、当社及びトヨタは、グローバルでのCASE技術開発・商用車事業の強化を通じたカーボンニュートラルの実現、豊かなモビリティ社会の創造に向けて協業
■ 当社と三菱ふそうは対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産分野で協業。グローバルな競争力のある日本の商用車メーカーを構築
■ ダイムラートラックとトヨタは、両社統合の持株会社(上場)の株式を同割合で保有。水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支える
(3)本経営統合の方法、本経営統合に係る割当ての内容その他の本経営統合の内容
① 本経営統合の方法
本経営統合は、当社及び三菱ふそう(又はそれぞれの事業を営む会社)が統合会社(以下「本統合会社」といいます。)の完全子会社となる方法により実施する予定です。
また、トヨタ及びダイムラートラックの本統合会社の持分比率に関して、それぞれトヨタ及びダイムラートラックで別途合意する比率を保有し、その持分比率は同割合とする予定です。そのため、本経営統合の実施後、トヨタは当社の親会社でなくなる見込みです。なお、本統合会社の株式については東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されることを想定しております。詳細については下記「③ その他の本経営統合の内容 ウ 本経営統合後の株式の上場に関する事項」をご参照ください。
本統合会社の事業範囲及び持分比率を含む経営統合の具体的な形態及びその方法については、競争法当局との協議も踏まえ、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後も引き続き協議の上で、下記「② 本経営統合に係る割当ての内容」に記載の原則に基づき、最終的に決定する予定です。
また、本経営統合の日程に関しては、2024年3月の最終契約締結、及び2024年12月末までの本経営統合の実施を目指して、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において引き続き協議の上で決定する予定です。なお、かかる日程は、最終契約の交渉、競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等の取得手続の進捗、当社のエンジンの排出ガス及び燃費を含む認証に関する問題(以下「エンジン認証問題」といいます。)についての当局調査及び訴訟等の状況その他の理由により今後変更される可能性があります。
② 本経営統合に係る割当ての内容
本経営統合の統合比率は、現時点では確定しておらず、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で合意する予定です。
当社は、エンジン認証問題について従前から開示をしておりますが(2022年6月23日付第110期有価証券報告書等をご参照ください。)、エンジン認証問題にかかるリスクについては、三菱ふそうの株主は負担すべきではないとの基本的な考え方から、本経営統合の統合比率算定のベースとなる当社の株式価値については、大要以下の方法により、算定することを予定しております。
より具体的には、当社及び三菱ふそうの株式価値は、今後実施される予定のデュー・ディリジェンスの結果や、当社及び三菱ふそうがそれぞれ起用する第三者算定機関による価値算定の結果等の諸要素を踏まえて当事者間で協議・合意された当社及び三菱ふそうの企業価値(当社については、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響を織り込まずに合意された企業価値)を基準として、本経営統合の実施日前の一定時点(具体的には、本経営統合の承認に係る当社の株主総会開催日から遡った直前四半期末日を想定しており、以下「本基準日」といいます。)において、純有利子負債及び運転資本等による調整を行い、最終的に確定する予定です。なお、今後の各種手続の進捗にもよるものの、当社のエンジン認証問題にかかる潜在債務の相当部分については、本基準日時点において合理的な見積に基づく引当てを行うことができる可能性があり、本基準日までに引き当てられた金額(以下「本引当金」といいます。)は、本基準日における純有利子負債の調整等による当社の株式価値算定に際して、当社の企業価値から控除されることになります。
③ その他の本経営統合の内容
ア エンジン認証問題に関する特別補償
本基準日以降に、本引当金に含まれないエンジン認証問題に起因する潜在債務が顕在化し、これにより本統合会社、当社又は三菱ふそうの株主が損害を被った場合、本統合会社及び当社は、当該株主が一定の条件に関し同意することを条件として、三菱ふそうの株主に対して、その損害につき一定の金銭補償義務を負う旨を最終契約に規定することを予定しています。
イ 本経営統合の成否及び条件等に関するリスク
従前に開示しましたとおり(2022年6月23日付第110期有価証券報告書等をご参照ください。)、当社の米国市場向け2010年モデルから2019年モデルのエンジン認証に関する法令違反の疑いについて、米国司法省及び他の当局による調査が行われております。これに関し、当社及び当社子会社に対し、2004年から2021年に米国で販売された車両に関する損害の賠償を求める訴訟が暫定的な集団訴訟として、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で提起されております。当該調査及び訴訟は、引き続き継続中です(なお、当社は2020年エンジンモデル以降米国向けに自社製エンジン搭載車は販売しておりません。)。また、オーストラリアにおいても当社及び当社子会社に対する訴訟が集団訴訟として提起されており、今後もこれらと同様の訴訟を提起される可能性があります。さらに、米国以外の欧州法規等の対象エンジンについても認証手続の総点検を継続中です。これらに関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難ですが、上記の当局調査の結果科される罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当該金銭負担の金額規模及びそれが判明するタイミング次第では、①本経営統合に関する最終契約の締結に至らないおそれ、②最終契約の締結に至った場合であっても、統合比率の決定内容又は調整の結果、当社株主の株式保有割合に著しい希薄化が生じるおそれ、③最終契約の実行に関する前提条件を充足せず、その結果、本経営統合の実施に至らないおそれ、及び④本経営統合の最終契約の規定に基づき、三菱ふそうの株主が一定の条件に同意することを条件として、当社が三菱ふそうの株主に対して特別補償の責任を負うおそれがあり、本経営統合の成否及び条件等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、最終的に競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等が取得できないことにより、本経営統合の実施に至らない可能性があります。
ウ 本経営統合後の株式の上場に関する事項
2023年5月30日現在、当社の株式は東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されております。本経営統合を実施した場合にも、本統合会社の株式は、東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されることを想定しておりますが、本経営統合は非上場会社である三菱ふそうとの間で行われるため、本経営統合の方式等によっては、当社の株式が東京証券取引所の上場廃止基準(プライム市場)及び名古屋証券取引所の上場廃止基準(プレミア市場)に基づき「合併等による実質的存続性に係る猶予期間入り銘柄」となる可能性があるほか、本統合会社の株式をテクニカル上場申請することとなる可能性もあります。当社は、本統合会社の株式の上場維持のための施策を、トヨタ、ダイムラートラック及び三菱ふそうと協議の上、講じていく予定です。
エ 公正性を担保するための措置
本経営統合は当社と三菱ふそうの間の統合でありますが、本経営統合を推進するにあたり、当社の親会社であるトヨタも関与していることから、当社において、本経営統合は支配株主との取引等に準じた扱いをするのが相当であり、公正性を担保する必要があると判断し、以下のとおり、本経営統合の公正性を担保するための措置を実施しております。
(a)独立したファイナンシャル・アドバイザーからの助言
当社は野村證券株式会社を本経営統合に関するファイナンシャル・アドバイザーとして選任し、財務的見地からの助言を受けております。今後、野村證券株式会社を第三者算定機関として、本経営統合の統合比率に関する算定書を取得する予定です。なお、野村證券株式会社は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で重要な利害関係を有しておりません。
(b)独立した法律事務所からの助言
当社は長島・大野・常松法律事務所を本経営統合に関するリーガル・アドバイザーとして選任し、本経営統合に関する諸手続並びに意思決定方法及び意思決定過程等に関する法的助言を受けております。なお、長島・大野・常松法律事務所は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で重要な利害関係を有しておりません。
オ 利益相反を回避するための措置
上記「エ 公正性を担保するための措置」に記載のとおり、当社において、本経営統合は支配株主との取引等に準じた扱いをするのが相当であり、当社とトヨタの間で利益相反が生じ得る構造が存在することから、利益相反を回避するための措置として、以下の措置を実施しております。
(a)当社における利害関係を有しない特別委員会からの答申書の取得
当社は、本経営統合の是非を審議及び決議するに先立って、本経営統合の推進に係る当社の意思決定に慎重を期し、また、本経営統合の取締役会の意思決定過程における恣意性及び利益相反のおそれを排除し、その公正性を担保するとともに、当社の取締役会において本経営統合を推進する旨の決定をすることが当社の少数株主にとって不利益なものであるかどうかについての意見を取得することを目的として、トヨタグループとの重要な取引について妥当性を判断する目的で2022年度より継続して設置されている当社の特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)に対して諮問を行いました。本特別委員会は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で利害関係を有しない社外取締役であり、かつ、独立役員である吉田元一氏、武藤光一氏及び中島正博氏の3名によって構成されています。当社は、本特別委員会に対し、(a)本経営統合の目的の正当性・合理性、(b)本経営統合の条件の妥当性、(c)本経営統合の手続の公正性、並びに(d)上記(a)乃至(c)を前提に、当社取締役会における本経営統合の推進が、当社の少数株主にとって不利益なものでないかを検討・判断し、当社取締役会に意見を述べること(以下「本諮問事項」といいます。)について、諮問いたしました。当社は2022年度に本特別委員会を設置した当初から吉田元一氏、武藤光一氏及び中島正博氏の3名を本特別委員会の委員として選定しており(本特別委員会の委員長は吉田元一氏であります。)、本経営統合に関する諮問を行うに際して本特別委員会の委員を変更した事実はありません。また、各委員の職務の対価には、本経営統合の公表、決定及び実施等を条件とする成功報酬は含まれておりません。
なお、当社は、当社取締役会における本経営統合に関する意思決定については、本特別委員会の意見を最大限尊重して行うものとし、本特別委員会が、本経営統合が当社の少数株主にとって不利益であると判断した場合には、当社取締役会は本経営統合の推進・実施を決定しないものとすることを併せて決議しております。また、当社取締役会は、本特別委員会に対し、(a)本特別委員会が独自のアドバイザーを選任することができるものとし、その場合の当該アドバイザーに係る合理的な費用は当社が負担するものとする権限を与えること、並びに(b)当社は、本特別委員会に適時に交渉状況の報告を行うとともに、重要な局面で本特別委員会の意見を聴取し、本特別委員会からの要請を勘案して交渉を行うなど、本特別委員会に対し、取引条件に関する交渉過程に実質的に影響を与え得る状況を確保することを決議しております。
本経営統合に関する本特別委員会は2023年5月9日から2023年5月29日までに、合計8回開催したほか、情報収集を行い、必要に応じて随時協議を行う等して、本諮問事項に関し、慎重に検討を行いました。また、本特別委員会は、複数の候補者の独立性及び専門性・実績等を検討の上、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックから独立した独自のファイナンシャル・アドバイザーとして株式会社プルータス・コンサルティングを、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックから独立した独自のリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を、それぞれ選定しました。
その上で、本特別委員会は、当社、当社のファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社及び当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所から、本経営統合の意義、想定されるシナジー、本経営統合のスキーム、本経営統合の統合比率の決定方法を含む本経営統合の諸条件の交渉経緯及び決定過程等についての説明を適時に受け、質疑応答等を行った上で、その合理性について検証を行っております。さらに、本特別委員会は、そのファイナンシャル・アドバイザーである株式会社プルータス・コンサルティング及びリーガル・アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所の助言を踏まえて、重要な局面で意見を述べ、当社に対して指示や要請を行うこと等の方法により、交渉過程に関与しております。
本特別委員会は、このような経緯のもと、上記の各説明、アドバイザーからの助言その他の検討資料を前提として、本諮問事項について慎重に審議及び検討を行い、(a)本経営統合の目的には一定の正当性及び合理性があると認められ、(b)本経営統合の条件が、妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められず、(c)本経営統合の手続は公正なものであると認められ、また、(d)上記(a)乃至(c)を踏まえると、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる旨の答申書を、2023年5月29日付で、当社の取締役会に対して提出しております。当該答申書の概要については、以下のとおりです。
I.答申の内容
(a)本経営統合は当社の企業価値向上に資し得るものであり、その目的には一定の正当性及び合理性があると認められ、かかる正当性・合理性を失わせる特段の事情は認められない。
(b)本経営統合の条件が、妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められない。
(c)本経営統合の手続は公正なものであると認められる。
(d)上記(a)乃至(c)を踏まえると、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる。
Ⅱ.答申の理由
(a)本経営統合の目的の正当性・合理性
ア 本経営統合の目的
・本経営統合の目的は、当社及び三菱ふそうの両社の知識と能力を活用し、トヨタ及びダイムラートラックの両株主がゼロエミッション及び自動運転への変革を後押しすることで、両社のブランドが存続し、顧客、株主及び日本の自動車産業に貢献する真の日本のトラック企業を構築することにある。
イ 当社における現状認識
・当社における事業環境の認識としては、トラック業界が大変革期にある中、既存技術に加え、CASE技術等の新たな領域へのリソースの投入が必須となっている。また、商用車におけるCASE技術の普及が乗用車におけるCASE技術に比べ、より早く進むと推測される。加えて、トラック業界においては主要部品のモジュール化、システム化が加速しており、現在、主要なユニットについては欧州や中国が主たるプレイヤーとなっている。さらに、商用車市場においては、加速する技術開発投資のためのリソース確保及び国際競争力の向上等を目指し、各社による商用車連合が完成しつつあるところ、当社は現時点において、そのような連合に参加できていない状況にある。
・当社における経営課題の認識としては、エンジン認証問題に関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難であるものの、罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性が否定できない状況である。また、これまでのエンジン認証問題によりCASE技術へのリソースシフトが進められない状況にある。上記の状況及び業界における新技術の出現、普及等の急速な変化に鑑みると、当社単独で上記経営課題を解決することは難しい。
・上記の経営課題の解決、並びにその実現へ向けた戦略の一環としての上記の施策に寄与する方策を講じることは、個別に当該方策のメリット・デメリットやリスクを検討する必要はあるものの、一般論としては当社の企業価値の向上に資するものであると考えることができる。
ウ 本経営統合により想定されるシナジー
・当社が想定する本経営統合のシナジーは次のとおりであり、これらのシナジーの内容は合理的なものである。
① 当社及び三菱ふそう両社の得意分野を補完的に活かしつつ、分担・効率化を図り、大変革期における既存事業の強化とCASE技術開発へのリソース投入の両立を実現。加えて、両社を掛け合わせたスケールメリットを活かし、競争力を強化。
② 電動化・自動運転等のCASE技術で先行するダイムラートラック及びトヨタ両社からのサポートを受け、商用車におけるカーボンニュートラル、人流・物流に関する社会課題の解決に貢献。
・上記シナジーは、いずれも上記イに記載の当社の経営課題の解決に資するものと認められる。
・当社の経営課題の解決及び当社が必要とする施策の実施に当たり、本経営統合による経営課題の解決が喫緊に必要であることを考えるならば、本経営統合を白紙に戻して、新たな相手との間で、少数株主の利益を考慮しつつ当社の企業価値の向上を実現することができる形での経営統合等を目指すことは現実的な方策であるとは考えられない。したがって、本経営統合の推進を目指すという判断は、合理的なものと考えられる。
エ 本経営統合に関する懸念点
・本経営統合については各国当局から競争法上のクリアランスを取得する必要があるところ、各国当局の判断がどのようなものになるかは現時点では不明であるが、その内容によっては、厳しい問題解消措置を求められる可能性も現時点では否定できない。しかしながら、最終契約の締結までに各国当局から問題解消措置を求められ、その結果、当該問題解消措置を行うと本経営統合の目的を十分に達成することができないと判断される場合には、当社として最終契約を締結せず本経営統合を実行しないという判断をすることも可能であることから、この点が直ちに現時点における本経営統合の目的の正当性・合理性を失わせるものではない。
・本経営統合の実施によりトヨタが当社の親会社ではなくなることによる事業運営への影響が考えられるが、今後の交渉や代替策を講じることで当社の事業への影響を一定程度低減することが可能であると考えられ、この点が直ちに本経営統合の目的の正当性・合理性を失わせるものではない。
・最終契約は2024年3月を目指して締結することが予定されているところ、本基本合意書を2023年5月30日時点で締結することの合理性が問題となるが、当社として上記の事業環境及び経営課題に直面する中で、最終契約締結の可否を早期に判断するためには、デュー・ディリジェンスや、各国の競争法上の対応等を加速させる必要があるところ、本経営統合を早期に公表することにより当該対応を加速することが可能となる。加えて、本経営統合の重要性に鑑みれば、当社の株主に対する説明責任という観点からも、当社の定時株主総会の開催前に本経営統合を公表し、当社株主に対し十分な説明を果たすことが望ましい。したがって、当社が上記のエンジン認証問題を抱えながらも2023年5月30日時点で本基本合意書を締結し、本経営統合を推進する旨の決定をすることを公表するという判断は不合理であるとはいえない。
・なお、本経営統合について早期に公表した場合には、本経営統合の条件よりも実質的に有利な条件による別の相手との経営統合等を今後模索する際の制約要因となる可能性があるが、既に述べたように、現状別の相手との経営統合等の模索は現実的な選択肢とはいえない状況であることから、このデメリットは本経営統合を早期に公表するという判断の合理性を否定するほどのものとはいえない。
オ 小括
・以上を踏まえると、本経営統合は、当社の企業価値向上に資し得るものであると認められ、また、本経営統合の目的には正当性・合理性があると認められる。
(b)本経営統合の条件の妥当性
ア 交渉状況の確保
・当社は、当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所及びファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社の助言を受けながらトヨタ及びダイムラートラックと複数回にわたり交渉をし、一定の範囲において当社の主張が反映された基本合意書の内容となっている。また、一連の交渉経緯については、本特別委員会に対して説明が行われ、本特別委員会のリーガル・アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所も含め議論が行われており、本特別委員会が必要又は望ましいと考える条件を本基本合意書に反映するための交渉も行われている。その結果、当初にトヨタ及びダイムラートラックが提示した条件から一定の範囲で変更が加えられており、当社として、当社及び一般株主にとってできる限り有利な取引条件で本経営統合が行われることを目指して交渉がされた経緯が認められる。
・以上からすれば、本基本合意書に関する交渉は、当社とトヨタとの間においても、独立当事者間に相当する客観的かつ整合性のある議論を踏まえてなされたものであることが推認され、合意プロセスの透明性や公正性を疑わせるような事情は特段見当たらない。
イ 統合比率について
・統合比率の算定のベースとなる当社及び三菱ふそうの株式価値は、今後実施される予定のデュー・ディリジェンスの結果や、当社及び三菱ふそうがそれぞれ起用する第三者算定機関による価値算定の結果等の諸要素を踏まえて当事者間で協議・合意された当社及び三菱ふそうの企業価値(当社については、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響を織り込まずに合意した企業価値)を基準として、本基準日において、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響、純有利子負債及び運転資本等による調整を行い、最終的に確定する。かかる算定の枠組みの合理性に疑念を差し挟むべき事情は見当たらなかった。
ウ 本基本合意書における条件について
・本基本合意書における重要な事項として、統合比率の調整及びエンジン認証問題に関する特別補償が定められている。
・エンジン認証問題に関する特別補償請求が三菱ふそうの株主から当社及び本統合会社に対して行われた場合、追加的に当社及び本統合会社から金銭が流出することにより、本統合会社の一時的な企業価値の低下につながることから、これを通じて本経営統合前の時点における当社の株主に悪影響を与える可能性がある。この点、当社が抱える経営課題の解決に対して、本経営統合が寄与することが認められることに鑑みれば、なお本経営統合を実行することにより当社の中長期的な企業価値が維持、向上することが見込まれるとする当社の説明には一定の合理性が認められる。本経営統合を推進しない場合、当社の採るべき途は、当社単独で経営課題の解決に努めるか、別の相手との経営統合を模索するかであるが、後者については現実的ではなく、前者については極めて困難であるというのが当社の判断であり、その判断には一定の合理性を認めざるを得ない。また、最終契約の締結までに上記の見込みに変更が生じ、本経営統合前の時点における当社の株主に対してのみ悪影響が生じることが合理的ではないと判断される状況に至った場合には、当社として最終契約の条件の変更を求める、又は最終契約を締結しないという判断をすることも妨げられない。
・したがって、現時点において本基本合意書に定める条件で基本合意を行い、最終契約の締結及び本経営統合の実行に向けて、引き続き検討作業、交渉を継続することが不合理であるとまでいうことはできない。
エ 小括
・本経営統合の交渉状況、統合比率の枠組み及び本基本合意書に定める条件について、それぞれ不合理であるとまでいうことはできないことを踏まえれば、本経営統合の条件が妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められない。
(c)本経営統合の手続の公正性
ア 特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得
・本特別委員会は、当社の独立した社外取締役により構成される委員会である。また、本特別委員会は、本諮問事項の検討に当たって、特別委員会が果たすべきとされる役割を実施している。
・このほか、本特別委員会については、以下の点への配慮が認められることから、公正性担保措置として有効に機能していると認められる。
① 本特別委員会は、当社において、トヨタとの利益が相反する重要な取引・行為に対する透明性を確保するために取引全体を監督する体制を構築することを目的に設置されていたものであり、本経営統合に当たっても、当社、トヨタ及びダイムラートラックとの間の本基本合意書に係る実質的な交渉が継続している段階で諮問がなされている。
② 本特別委員会の委員は社外取締役で構成されており、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立していることが確認されている。
③ 本特別委員会は、本経営統合の取引条件に関する交渉について事前に方針を確認し、適時にその状況の報告を受け、重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行うことなどにより、本経営統合の取引条件に関する交渉過程に実質的に関与する権限を与えられており、取引条件に関する交渉過程に実質的に影響を与え得る状況を確保している。
④ 本特別委員会は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立した独自のリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を、ファイナンシャル・アドバイザーとして株式会社プルータス・コンサルティングを選任している。また、当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所及びファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社の高い専門性及び独立性に問題がないことを確認した上で、本特別委員会として、必要に応じてそれらの意見も聴取している。
⑤ 本特別委員会は、一般株主には公開されていない本基本合意書に係る交渉の状況についても説明を受けるとともに必要に応じて情報提供を求めた。
⑥ 本特別委員会の委員の報酬については、既存の当社社外取締役としての報酬のみとしており、成功報酬は採用していない。
イ 意思決定のプロセス
・当社の取締役のうち、トヨタの取締役を兼務する近健太氏については、本経営統合に関して利害が相反し又は相反するおそれがあるため、意思決定過程における公正性、透明性及び客観性を高めるために、当社における本経営統合に関する協議及び交渉に参加しておらず、今後開催される本経営統合に関する取締役会の審議及び決議にも参加しない予定であることなど、意思決定過程における恣意性の排除に努めているといえる。
ウ 独立した法律事務所からの助言の取得
・当社は、意思決定過程の公正性を確保する観点から、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立したリーガル・アドバイザーとして長島・大野・常松法律事務所から助言を受けている。
エ 独立したファイナンシャル・アドバイザーからの助言
・当社は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立したファイナンシャル・アドバイザーとして野村證券株式会社を選任し、統合比率の算定の枠組みや当社及び三菱ふそうの企業価値の検討に関して財務的見地からの助言を受けている。今後、本経営統合に係る統合比率の公正性を担保するために、野村證券株式会社を第三者算定機関として、本経営統合の統合比率に関する算定書を取得する予定である。
オ 一般株主への情報提供の充実とプロセスの透明性の向上
・本プレスリリースにおいて、本特別委員会に付与された権限の内容、本特別委員会における検討経緯やトヨタ及びダイムラートラックとの間の本基本合意書に係る条件の交渉過程への関与状況、答申書の内容及び本特別委員会の委員の報酬体系等、本基本合意書の合意に至るプロセスや交渉経緯並びに本基本合意書の内容等について充実した情報開示がなされる予定となっており、当社の株主に対し、取引条件の妥当性等についての判断に資する重要な判断材料は提供されていると認められる。
カ 小括
・本経営統合の条件を検討・交渉する体制、本経営統合の統合比率の枠組みの交渉経緯及び決定過程等において、公正性を疑わせる事情はなく、本経営統合の推進に際して公正性を担保するための措置が取られていることからすると、本経営統合の手続は公正なものであると認められる。
(d)上記(a)乃至(c)を前提に、当社取締役会における本経営統合の推進が、当社の少数株主にとって不利益なものでないか
・上記(a)乃至(c)において、本経営統合の目的の正当性・合理性、本経営統合の条件の妥当性及び本経営統合の手続の公正性が確認され、また、いずれも問題があるとは認められない。以上より、本基本合意書を締結し、最終契約の締結及び本経営統合の実行に向けて、引き続き検討作業及び交渉を継続することが不合理とはいえないことから、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる。
なお、当社は、本経営統合後の統合比率に関する協議及び合意を含め、最終契約の締結に向けて、今後も本特別委員会に本経営統合に関する諮問を行う予定です。
(b)当社における利害関係を有しない取締役全員の承認
2023年5月30日に開催した当社の取締役会においては、近健太氏を除く当社の取締役の全員が出席し、全員一致で、本基本合意書の締結に関する審議及び決議を行いました。なお、当社の取締役のうち、トヨタの取締役を兼務する近健太氏は、本経営統合に関し利害が相反し又は相反するおそれがあるため、本経営統合に関する協議及び交渉に参加しておらず、また上記当社取締役会における本基本合意書の締結に関する審議には参加しておりません。
(4)本経営統合に係る割当ての内容の算定根拠
本経営統合の統合比率は、現時点では確定しておらず、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で合意する予定です。
(5)本経営統合後の本統合会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
本統合会社の概要その他の本経営統合後の状況については、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で決定する予定です。
Ⅲ.当該事象の損益及び連結損益に与える影響額
当該事象による2024年3月期以降の業績に与える影響につきましては現在精査中であります。
以 上

連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象

Ⅰ.当該事象の発生年月日
2023年5月30日(本基本合意書締結に係る取締役会決議日)
Ⅱ.当該事象の内容
(1)本経営統合の相手会社についての事項
① 商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
商号三菱ふそうトラック・バス株式会社
本店の所在地神奈川県川崎市中原区大倉町10番地
代表者の氏名代表取締役社長 CEO カール・デッペン
資本金の額35,000百万円(2022年12月31日現在)
純資産の額243,886百万円(2022年12月31日現在)
総資産の額504,895百万円(2022年12月31日現在)
事業の内容トラック・バス、産業エンジンなどの開発、設計、製造、売買、輸出入、その他取引業

(注) 三菱ふそうの財務状態については三菱ふそう単体の財務状態を記載しておりますが、本経営統合の対象は三菱ふそう単体に限定されるものではなく、本経営統合の対象となる三菱ふそうの事業の財務状態の全てを表示するものではありません。
② 最近3年間に終了した各事業年度の売上高、営業利益、経常利益及び純利益
(単位:百万円)

事業年度2020年12月期2021年12月期2022年12月期
売上高595,654657,357699,316
営業利益1,31330,66917,192
経常利益1,86834,38821,028
当期純利益1,25424,03616,012

(注) 三菱ふそうの経営成績については三菱ふそう単体の経営成績を記載しておりますが、本経営統合の対象は三菱ふそう単体に限定されるものではなく、本経営統合の対象となる三菱ふそうの事業の経営成績の全てを表示するものではありません。
③ 大株主の名称及び発行済株式の総数に占める大株主の持株数の割合
(2022年9月30日現在)

大株主の名称発行済株式の総数に占める大株主の持株数の割合
ダイムラートラック社89.29%
株式会社三菱UFJ銀行2.38%
三菱重工業株式会社2.38%
三菱商事株式会社2.38%
東京海上日動火災保険株式会社0.71%
明治安田生命保険相互会社0.71%
三菱UFJ信託銀行株式会社0.71%
AGC株式会社0.71%
日本郵船株式会社0.36%
三菱電機株式会社0.36%
三菱マテリアル株式会社0.36%

④ 当社との間の資本関係、人的関係及び取引関係
資本関係該当事項はありません。
人的関係該当事項はありません。
取引関係当社グループ会社から三菱ふそうへの部品供給等を行っております。

(2)本経営統合の目的
当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社の企業理念に共通するのは、「移動を通じて、豊かな社会に貢献したい」という想いです。これからも私たちが世の中で必要な存在であり続けるために、地球環境に優しいクルマを普及させ、社会システムの中で移動の価値を高めていきたいと考えております。
人やモノの移動を通じて、暮らしを支えている商用車は、「社会インフラ」ともいえる重要なモビリティです。商用車を通じた豊かなモビリティ社会を実現するためには、カーボンニュートラルや物流の効率化など、直面している課題を解決していかなければなりませんが、それには多大な投資がかかります。商用車は乗用車に比べて台数も少なく、日本市場で商用車メーカー各社が単独で対応するのは大変難しい状況です。当社を含む日本・アジアにおける自動車産業や雇用を守るためには、開発・生産など事業効率を高め、競争力を強化しなければなりません。
当社と三菱ふそうが一緒になり、開発・生産など事業効率を上げ、日本の商用車メーカーの競争力を磨くことで、日本・アジアの自動車産業の基盤を守り、お客様、ステークホルダー、そして日本の自動車産業に貢献してまいります。
ダイムラートラックとトヨタは両社とも、地域に合わせた「グローバル・フルラインアップ」を強みとし、カーボンニュートラルに向け、地域の事情、お客様の使われ方に応じた多様な選択肢を提供する「マルチパスウェイ」を大切にしています。「CASE技術は普及して初めて社会の役に立つ」との思いのもと、ダイムラートラックとトヨタは力を合わせ、その技術開発力を高め、コストを削減し、CASE技術の普及に努めてまいります。
なお、協業内容は以下のとおりです。
<協業内容>ダイムラートラック、三菱ふそう、当社及びトヨタは、グローバルでのCASE技術開発・商用車事業の強化を通じたカーボンニュートラルの実現、豊かなモビリティ社会の創造に向けて協業
■ 当社と三菱ふそうは対等な立場で統合し、商用車の開発、調達、生産分野で協業。グローバルな競争力のある日本の商用車メーカーを構築
■ ダイムラートラックとトヨタは、両社統合の持株会社(上場)の株式を同割合で保有。水素をはじめCASE技術開発で協業、統合会社の競争力強化を支える
(3)本経営統合の方法、本経営統合に係る割当ての内容その他の本経営統合の内容
① 本経営統合の方法
本経営統合は、当社及び三菱ふそう(又はそれぞれの事業を営む会社)が統合会社(以下「本統合会社」といいます。)の完全子会社となる方法により実施する予定です。
また、トヨタ及びダイムラートラックの本統合会社の持分比率に関して、それぞれトヨタ及びダイムラートラックで別途合意する比率を保有し、その持分比率は同割合とする予定です。そのため、本経営統合の実施後、トヨタは当社の親会社でなくなる見込みです。なお、本統合会社の株式については東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されることを想定しております。詳細については下記「③ その他の本経営統合の内容 ウ 本経営統合後の株式の上場に関する事項」をご参照ください。
本統合会社の事業範囲及び持分比率を含む経営統合の具体的な形態及びその方法については、競争法当局との協議も踏まえ、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後も引き続き協議の上で、下記「② 本経営統合に係る割当ての内容」に記載の原則に基づき、最終的に決定する予定です。
また、本経営統合の日程に関しては、2024年3月の最終契約締結、及び2024年12月末までの本経営統合の実施を目指して、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において引き続き協議の上で決定する予定です。なお、かかる日程は、最終契約の交渉、競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等の取得手続の進捗、当社のエンジンの排出ガス及び燃費を含む認証に関する問題(以下「エンジン認証問題」といいます。)についての当局調査及び訴訟等の状況その他の理由により今後変更される可能性があります。
② 本経営統合に係る割当ての内容
本経営統合の統合比率は、現時点では確定しておらず、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で合意する予定です。
当社は、エンジン認証問題について従前から開示をしておりますが(2022年6月23日付第110期有価証券報告書等をご参照ください。)、エンジン認証問題にかかるリスクについては、三菱ふそうの株主は負担すべきではないとの基本的な考え方から、本経営統合の統合比率算定のベースとなる当社の株式価値については、大要以下の方法により、算定することを予定しております。
より具体的には、当社及び三菱ふそうの株式価値は、今後実施される予定のデュー・ディリジェンスの結果や、当社及び三菱ふそうがそれぞれ起用する第三者算定機関による価値算定の結果等の諸要素を踏まえて当事者間で協議・合意された当社及び三菱ふそうの企業価値(当社については、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響を織り込まずに合意された企業価値)を基準として、本経営統合の実施日前の一定時点(具体的には、本経営統合の承認に係る当社の株主総会開催日から遡った直前四半期末日を想定しており、以下「本基準日」といいます。)において、純有利子負債及び運転資本等による調整を行い、最終的に確定する予定です。なお、今後の各種手続の進捗にもよるものの、当社のエンジン認証問題にかかる潜在債務の相当部分については、本基準日時点において合理的な見積に基づく引当てを行うことができる可能性があり、本基準日までに引き当てられた金額(以下「本引当金」といいます。)は、本基準日における純有利子負債の調整等による当社の株式価値算定に際して、当社の企業価値から控除されることになります。
③ その他の本経営統合の内容
ア エンジン認証問題に関する特別補償
本基準日以降に、本引当金に含まれないエンジン認証問題に起因する潜在債務が顕在化し、これにより本統合会社、当社又は三菱ふそうの株主が損害を被った場合、本統合会社及び当社は、当該株主が一定の条件に関し同意することを条件として、三菱ふそうの株主に対して、その損害につき一定の金銭補償義務を負う旨を最終契約に規定することを予定しています。
イ 本経営統合の成否及び条件等に関するリスク
従前に開示しましたとおり(2022年6月23日付第110期有価証券報告書等をご参照ください。)、当社の米国市場向け2010年モデルから2019年モデルのエンジン認証に関する法令違反の疑いについて、米国司法省及び他の当局による調査が行われております。これに関し、当社及び当社子会社に対し、2004年から2021年に米国で販売された車両に関する損害の賠償を求める訴訟が暫定的な集団訴訟として、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で提起されております。当該調査及び訴訟は、引き続き継続中です(なお、当社は2020年エンジンモデル以降米国向けに自社製エンジン搭載車は販売しておりません。)。また、オーストラリアにおいても当社及び当社子会社に対する訴訟が集団訴訟として提起されており、今後もこれらと同様の訴訟を提起される可能性があります。さらに、米国以外の欧州法規等の対象エンジンについても認証手続の総点検を継続中です。これらに関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難ですが、上記の当局調査の結果科される罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当該金銭負担の金額規模及びそれが判明するタイミング次第では、①本経営統合に関する最終契約の締結に至らないおそれ、②最終契約の締結に至った場合であっても、統合比率の決定内容又は調整の結果、当社株主の株式保有割合に著しい希薄化が生じるおそれ、③最終契約の実行に関する前提条件を充足せず、その結果、本経営統合の実施に至らないおそれ、及び④本経営統合の最終契約の規定に基づき、三菱ふそうの株主が一定の条件に同意することを条件として、当社が三菱ふそうの株主に対して特別補償の責任を負うおそれがあり、本経営統合の成否及び条件等に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、最終的に競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等が取得できないことにより、本経営統合の実施に至らない可能性があります。
ウ 本経営統合後の株式の上場に関する事項
2023年5月30日現在、当社の株式は東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されております。本経営統合を実施した場合にも、本統合会社の株式は、東京証券取引所プライム市場及び名古屋証券取引所プレミア市場に上場されることを想定しておりますが、本経営統合は非上場会社である三菱ふそうとの間で行われるため、本経営統合の方式等によっては、当社の株式が東京証券取引所の上場廃止基準(プライム市場)及び名古屋証券取引所の上場廃止基準(プレミア市場)に基づき「合併等による実質的存続性に係る猶予期間入り銘柄」となる可能性があるほか、本統合会社の株式をテクニカル上場申請することとなる可能性もあります。当社は、本統合会社の株式の上場維持のための施策を、トヨタ、ダイムラートラック及び三菱ふそうと協議の上、講じていく予定です。
エ 公正性を担保するための措置
本経営統合は当社と三菱ふそうの間の統合でありますが、本経営統合を推進するにあたり、当社の親会社であるトヨタも関与していることから、当社において、本経営統合は支配株主との取引等に準じた扱いをするのが相当であり、公正性を担保する必要があると判断し、以下のとおり、本経営統合の公正性を担保するための措置を実施しております。
(a)独立したファイナンシャル・アドバイザーからの助言
当社は野村證券株式会社を本経営統合に関するファイナンシャル・アドバイザーとして選任し、財務的見地からの助言を受けております。今後、野村證券株式会社を第三者算定機関として、本経営統合の統合比率に関する算定書を取得する予定です。なお、野村證券株式会社は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で重要な利害関係を有しておりません。
(b)独立した法律事務所からの助言
当社は長島・大野・常松法律事務所を本経営統合に関するリーガル・アドバイザーとして選任し、本経営統合に関する諸手続並びに意思決定方法及び意思決定過程等に関する法的助言を受けております。なお、長島・大野・常松法律事務所は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で重要な利害関係を有しておりません。
オ 利益相反を回避するための措置
上記「エ 公正性を担保するための措置」に記載のとおり、当社において、本経営統合は支配株主との取引等に準じた扱いをするのが相当であり、当社とトヨタの間で利益相反が生じ得る構造が存在することから、利益相反を回避するための措置として、以下の措置を実施しております。
(a)当社における利害関係を有しない特別委員会からの答申書の取得
当社は、本経営統合の是非を審議及び決議するに先立って、本経営統合の推進に係る当社の意思決定に慎重を期し、また、本経営統合の取締役会の意思決定過程における恣意性及び利益相反のおそれを排除し、その公正性を担保するとともに、当社の取締役会において本経営統合を推進する旨の決定をすることが当社の少数株主にとって不利益なものであるかどうかについての意見を取得することを目的として、トヨタグループとの重要な取引について妥当性を判断する目的で2022年度より継続して設置されている当社の特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)に対して諮問を行いました。本特別委員会は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックとの間で利害関係を有しない社外取締役であり、かつ、独立役員である吉田元一氏、武藤光一氏及び中島正博氏の3名によって構成されています。当社は、本特別委員会に対し、(a)本経営統合の目的の正当性・合理性、(b)本経営統合の条件の妥当性、(c)本経営統合の手続の公正性、並びに(d)上記(a)乃至(c)を前提に、当社取締役会における本経営統合の推進が、当社の少数株主にとって不利益なものでないかを検討・判断し、当社取締役会に意見を述べること(以下「本諮問事項」といいます。)について、諮問いたしました。当社は2022年度に本特別委員会を設置した当初から吉田元一氏、武藤光一氏及び中島正博氏の3名を本特別委員会の委員として選定しており(本特別委員会の委員長は吉田元一氏であります。)、本経営統合に関する諮問を行うに際して本特別委員会の委員を変更した事実はありません。また、各委員の職務の対価には、本経営統合の公表、決定及び実施等を条件とする成功報酬は含まれておりません。
なお、当社は、当社取締役会における本経営統合に関する意思決定については、本特別委員会の意見を最大限尊重して行うものとし、本特別委員会が、本経営統合が当社の少数株主にとって不利益であると判断した場合には、当社取締役会は本経営統合の推進・実施を決定しないものとすることを併せて決議しております。また、当社取締役会は、本特別委員会に対し、(a)本特別委員会が独自のアドバイザーを選任することができるものとし、その場合の当該アドバイザーに係る合理的な費用は当社が負担するものとする権限を与えること、並びに(b)当社は、本特別委員会に適時に交渉状況の報告を行うとともに、重要な局面で本特別委員会の意見を聴取し、本特別委員会からの要請を勘案して交渉を行うなど、本特別委員会に対し、取引条件に関する交渉過程に実質的に影響を与え得る状況を確保することを決議しております。
本経営統合に関する本特別委員会は2023年5月9日から2023年5月29日までに、合計8回開催したほか、情報収集を行い、必要に応じて随時協議を行う等して、本諮問事項に関し、慎重に検討を行いました。また、本特別委員会は、複数の候補者の独立性及び専門性・実績等を検討の上、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックから独立した独自のファイナンシャル・アドバイザーとして株式会社プルータス・コンサルティングを、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックから独立した独自のリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を、それぞれ選定しました。
その上で、本特別委員会は、当社、当社のファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社及び当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所から、本経営統合の意義、想定されるシナジー、本経営統合のスキーム、本経営統合の統合比率の決定方法を含む本経営統合の諸条件の交渉経緯及び決定過程等についての説明を適時に受け、質疑応答等を行った上で、その合理性について検証を行っております。さらに、本特別委員会は、そのファイナンシャル・アドバイザーである株式会社プルータス・コンサルティング及びリーガル・アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所の助言を踏まえて、重要な局面で意見を述べ、当社に対して指示や要請を行うこと等の方法により、交渉過程に関与しております。
本特別委員会は、このような経緯のもと、上記の各説明、アドバイザーからの助言その他の検討資料を前提として、本諮問事項について慎重に審議及び検討を行い、(a)本経営統合の目的には一定の正当性及び合理性があると認められ、(b)本経営統合の条件が、妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められず、(c)本経営統合の手続は公正なものであると認められ、また、(d)上記(a)乃至(c)を踏まえると、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる旨の答申書を、2023年5月29日付で、当社の取締役会に対して提出しております。当該答申書の概要については、以下のとおりです。
I.答申の内容
(a)本経営統合は当社の企業価値向上に資し得るものであり、その目的には一定の正当性及び合理性があると認められ、かかる正当性・合理性を失わせる特段の事情は認められない。
(b)本経営統合の条件が、妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められない。
(c)本経営統合の手続は公正なものであると認められる。
(d)上記(a)乃至(c)を踏まえると、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる。
Ⅱ.答申の理由
(a)本経営統合の目的の正当性・合理性
ア 本経営統合の目的
・本経営統合の目的は、当社及び三菱ふそうの両社の知識と能力を活用し、トヨタ及びダイムラートラックの両株主がゼロエミッション及び自動運転への変革を後押しすることで、両社のブランドが存続し、顧客、株主及び日本の自動車産業に貢献する真の日本のトラック企業を構築することにある。
イ 当社における現状認識
・当社における事業環境の認識としては、トラック業界が大変革期にある中、既存技術に加え、CASE技術等の新たな領域へのリソースの投入が必須となっている。また、商用車におけるCASE技術の普及が乗用車におけるCASE技術に比べ、より早く進むと推測される。加えて、トラック業界においては主要部品のモジュール化、システム化が加速しており、現在、主要なユニットについては欧州や中国が主たるプレイヤーとなっている。さらに、商用車市場においては、加速する技術開発投資のためのリソース確保及び国際競争力の向上等を目指し、各社による商用車連合が完成しつつあるところ、当社は現時点において、そのような連合に参加できていない状況にある。
・当社における経営課題の認識としては、エンジン認証問題に関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難であるものの、罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性が否定できない状況である。また、これまでのエンジン認証問題によりCASE技術へのリソースシフトが進められない状況にある。上記の状況及び業界における新技術の出現、普及等の急速な変化に鑑みると、当社単独で上記経営課題を解決することは難しい。
・上記の経営課題の解決、並びにその実現へ向けた戦略の一環としての上記の施策に寄与する方策を講じることは、個別に当該方策のメリット・デメリットやリスクを検討する必要はあるものの、一般論としては当社の企業価値の向上に資するものであると考えることができる。
ウ 本経営統合により想定されるシナジー
・当社が想定する本経営統合のシナジーは次のとおりであり、これらのシナジーの内容は合理的なものである。
① 当社及び三菱ふそう両社の得意分野を補完的に活かしつつ、分担・効率化を図り、大変革期における既存事業の強化とCASE技術開発へのリソース投入の両立を実現。加えて、両社を掛け合わせたスケールメリットを活かし、競争力を強化。
② 電動化・自動運転等のCASE技術で先行するダイムラートラック及びトヨタ両社からのサポートを受け、商用車におけるカーボンニュートラル、人流・物流に関する社会課題の解決に貢献。
・上記シナジーは、いずれも上記イに記載の当社の経営課題の解決に資するものと認められる。
・当社の経営課題の解決及び当社が必要とする施策の実施に当たり、本経営統合による経営課題の解決が喫緊に必要であることを考えるならば、本経営統合を白紙に戻して、新たな相手との間で、少数株主の利益を考慮しつつ当社の企業価値の向上を実現することができる形での経営統合等を目指すことは現実的な方策であるとは考えられない。したがって、本経営統合の推進を目指すという判断は、合理的なものと考えられる。
エ 本経営統合に関する懸念点
・本経営統合については各国当局から競争法上のクリアランスを取得する必要があるところ、各国当局の判断がどのようなものになるかは現時点では不明であるが、その内容によっては、厳しい問題解消措置を求められる可能性も現時点では否定できない。しかしながら、最終契約の締結までに各国当局から問題解消措置を求められ、その結果、当該問題解消措置を行うと本経営統合の目的を十分に達成することができないと判断される場合には、当社として最終契約を締結せず本経営統合を実行しないという判断をすることも可能であることから、この点が直ちに現時点における本経営統合の目的の正当性・合理性を失わせるものではない。
・本経営統合の実施によりトヨタが当社の親会社ではなくなることによる事業運営への影響が考えられるが、今後の交渉や代替策を講じることで当社の事業への影響を一定程度低減することが可能であると考えられ、この点が直ちに本経営統合の目的の正当性・合理性を失わせるものではない。
・最終契約は2024年3月を目指して締結することが予定されているところ、本基本合意書を2023年5月30日時点で締結することの合理性が問題となるが、当社として上記の事業環境及び経営課題に直面する中で、最終契約締結の可否を早期に判断するためには、デュー・ディリジェンスや、各国の競争法上の対応等を加速させる必要があるところ、本経営統合を早期に公表することにより当該対応を加速することが可能となる。加えて、本経営統合の重要性に鑑みれば、当社の株主に対する説明責任という観点からも、当社の定時株主総会の開催前に本経営統合を公表し、当社株主に対し十分な説明を果たすことが望ましい。したがって、当社が上記のエンジン認証問題を抱えながらも2023年5月30日時点で本基本合意書を締結し、本経営統合を推進する旨の決定をすることを公表するという判断は不合理であるとはいえない。
・なお、本経営統合について早期に公表した場合には、本経営統合の条件よりも実質的に有利な条件による別の相手との経営統合等を今後模索する際の制約要因となる可能性があるが、既に述べたように、現状別の相手との経営統合等の模索は現実的な選択肢とはいえない状況であることから、このデメリットは本経営統合を早期に公表するという判断の合理性を否定するほどのものとはいえない。
オ 小括
・以上を踏まえると、本経営統合は、当社の企業価値向上に資し得るものであると認められ、また、本経営統合の目的には正当性・合理性があると認められる。
(b)本経営統合の条件の妥当性
ア 交渉状況の確保
・当社は、当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所及びファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社の助言を受けながらトヨタ及びダイムラートラックと複数回にわたり交渉をし、一定の範囲において当社の主張が反映された基本合意書の内容となっている。また、一連の交渉経緯については、本特別委員会に対して説明が行われ、本特別委員会のリーガル・アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所も含め議論が行われており、本特別委員会が必要又は望ましいと考える条件を本基本合意書に反映するための交渉も行われている。その結果、当初にトヨタ及びダイムラートラックが提示した条件から一定の範囲で変更が加えられており、当社として、当社及び一般株主にとってできる限り有利な取引条件で本経営統合が行われることを目指して交渉がされた経緯が認められる。
・以上からすれば、本基本合意書に関する交渉は、当社とトヨタとの間においても、独立当事者間に相当する客観的かつ整合性のある議論を踏まえてなされたものであることが推認され、合意プロセスの透明性や公正性を疑わせるような事情は特段見当たらない。
イ 統合比率について
・統合比率の算定のベースとなる当社及び三菱ふそうの株式価値は、今後実施される予定のデュー・ディリジェンスの結果や、当社及び三菱ふそうがそれぞれ起用する第三者算定機関による価値算定の結果等の諸要素を踏まえて当事者間で協議・合意された当社及び三菱ふそうの企業価値(当社については、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響を織り込まずに合意した企業価値)を基準として、本基準日において、エンジン認証問題に関する潜在債務の影響、純有利子負債及び運転資本等による調整を行い、最終的に確定する。かかる算定の枠組みの合理性に疑念を差し挟むべき事情は見当たらなかった。
ウ 本基本合意書における条件について
・本基本合意書における重要な事項として、統合比率の調整及びエンジン認証問題に関する特別補償が定められている。
・エンジン認証問題に関する特別補償請求が三菱ふそうの株主から当社及び本統合会社に対して行われた場合、追加的に当社及び本統合会社から金銭が流出することにより、本統合会社の一時的な企業価値の低下につながることから、これを通じて本経営統合前の時点における当社の株主に悪影響を与える可能性がある。この点、当社が抱える経営課題の解決に対して、本経営統合が寄与することが認められることに鑑みれば、なお本経営統合を実行することにより当社の中長期的な企業価値が維持、向上することが見込まれるとする当社の説明には一定の合理性が認められる。本経営統合を推進しない場合、当社の採るべき途は、当社単独で経営課題の解決に努めるか、別の相手との経営統合を模索するかであるが、後者については現実的ではなく、前者については極めて困難であるというのが当社の判断であり、その判断には一定の合理性を認めざるを得ない。また、最終契約の締結までに上記の見込みに変更が生じ、本経営統合前の時点における当社の株主に対してのみ悪影響が生じることが合理的ではないと判断される状況に至った場合には、当社として最終契約の条件の変更を求める、又は最終契約を締結しないという判断をすることも妨げられない。
・したがって、現時点において本基本合意書に定める条件で基本合意を行い、最終契約の締結及び本経営統合の実行に向けて、引き続き検討作業、交渉を継続することが不合理であるとまでいうことはできない。
エ 小括
・本経営統合の交渉状況、統合比率の枠組み及び本基本合意書に定める条件について、それぞれ不合理であるとまでいうことはできないことを踏まえれば、本経営統合の条件が妥当性を欠くとすべき特段の事情は認められない。
(c)本経営統合の手続の公正性
ア 特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得
・本特別委員会は、当社の独立した社外取締役により構成される委員会である。また、本特別委員会は、本諮問事項の検討に当たって、特別委員会が果たすべきとされる役割を実施している。
・このほか、本特別委員会については、以下の点への配慮が認められることから、公正性担保措置として有効に機能していると認められる。
① 本特別委員会は、当社において、トヨタとの利益が相反する重要な取引・行為に対する透明性を確保するために取引全体を監督する体制を構築することを目的に設置されていたものであり、本経営統合に当たっても、当社、トヨタ及びダイムラートラックとの間の本基本合意書に係る実質的な交渉が継続している段階で諮問がなされている。
② 本特別委員会の委員は社外取締役で構成されており、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立していることが確認されている。
③ 本特別委員会は、本経営統合の取引条件に関する交渉について事前に方針を確認し、適時にその状況の報告を受け、重要な局面で意見を述べ、指示や要請を行うことなどにより、本経営統合の取引条件に関する交渉過程に実質的に関与する権限を与えられており、取引条件に関する交渉過程に実質的に影響を与え得る状況を確保している。
④ 本特別委員会は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立した独自のリーガル・アドバイザーとしてアンダーソン・毛利・友常法律事務所を、ファイナンシャル・アドバイザーとして株式会社プルータス・コンサルティングを選任している。また、当社のリーガル・アドバイザーである長島・大野・常松法律事務所及びファイナンシャル・アドバイザーである野村證券株式会社の高い専門性及び独立性に問題がないことを確認した上で、本特別委員会として、必要に応じてそれらの意見も聴取している。
⑤ 本特別委員会は、一般株主には公開されていない本基本合意書に係る交渉の状況についても説明を受けるとともに必要に応じて情報提供を求めた。
⑥ 本特別委員会の委員の報酬については、既存の当社社外取締役としての報酬のみとしており、成功報酬は採用していない。
イ 意思決定のプロセス
・当社の取締役のうち、トヨタの取締役を兼務する近健太氏については、本経営統合に関して利害が相反し又は相反するおそれがあるため、意思決定過程における公正性、透明性及び客観性を高めるために、当社における本経営統合に関する協議及び交渉に参加しておらず、今後開催される本経営統合に関する取締役会の審議及び決議にも参加しない予定であることなど、意思決定過程における恣意性の排除に努めているといえる。
ウ 独立した法律事務所からの助言の取得
・当社は、意思決定過程の公正性を確保する観点から、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立したリーガル・アドバイザーとして長島・大野・常松法律事務所から助言を受けている。
エ 独立したファイナンシャル・アドバイザーからの助言
・当社は、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラック並びに本経営統合の成否から独立したファイナンシャル・アドバイザーとして野村證券株式会社を選任し、統合比率の算定の枠組みや当社及び三菱ふそうの企業価値の検討に関して財務的見地からの助言を受けている。今後、本経営統合に係る統合比率の公正性を担保するために、野村證券株式会社を第三者算定機関として、本経営統合の統合比率に関する算定書を取得する予定である。
オ 一般株主への情報提供の充実とプロセスの透明性の向上
・本プレスリリースにおいて、本特別委員会に付与された権限の内容、本特別委員会における検討経緯やトヨタ及びダイムラートラックとの間の本基本合意書に係る条件の交渉過程への関与状況、答申書の内容及び本特別委員会の委員の報酬体系等、本基本合意書の合意に至るプロセスや交渉経緯並びに本基本合意書の内容等について充実した情報開示がなされる予定となっており、当社の株主に対し、取引条件の妥当性等についての判断に資する重要な判断材料は提供されていると認められる。
カ 小括
・本経営統合の条件を検討・交渉する体制、本経営統合の統合比率の枠組みの交渉経緯及び決定過程等において、公正性を疑わせる事情はなく、本経営統合の推進に際して公正性を担保するための措置が取られていることからすると、本経営統合の手続は公正なものであると認められる。
(d)上記(a)乃至(c)を前提に、当社取締役会における本経営統合の推進が、当社の少数株主にとって不利益なものでないか
・上記(a)乃至(c)において、本経営統合の目的の正当性・合理性、本経営統合の条件の妥当性及び本経営統合の手続の公正性が確認され、また、いずれも問題があるとは認められない。以上より、本基本合意書を締結し、最終契約の締結及び本経営統合の実行に向けて、引き続き検討作業及び交渉を継続することが不合理とはいえないことから、本基本合意書を締結し本経営統合を推進する旨の取締役会決議を行うことは、当社の少数株主にとって不利益ではないと考えられる。
なお、当社は、本経営統合後の統合比率に関する協議及び合意を含め、最終契約の締結に向けて、今後も本特別委員会に本経営統合に関する諮問を行う予定です。
(b)当社における利害関係を有しない取締役全員の承認
2023年5月30日に開催した当社の取締役会においては、近健太氏を除く当社の取締役の全員が出席し、全員一致で、本基本合意書の締結に関する審議及び決議を行いました。なお、当社の取締役のうち、トヨタの取締役を兼務する近健太氏は、本経営統合に関し利害が相反し又は相反するおそれがあるため、本経営統合に関する協議及び交渉に参加しておらず、また上記当社取締役会における本基本合意書の締結に関する審議には参加しておりません。
(4)本経営統合に係る割当ての内容の算定根拠
本経営統合の統合比率は、現時点では確定しておらず、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で合意する予定です。
(5)本経営統合後の本統合会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金の額、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
本統合会社の概要その他の本経営統合後の状況については、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において今後協議の上で決定する予定です。
Ⅲ.当該事象の損益及び連結損益に与える影響額
当該事象による2024年3月期以降の業績に与える影響につきましては現在精査中であります。
以 上