有価証券報告書-第94期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/24 14:37
【資料】
PDFをみる
【項目】
63項目

研究開発活動

(1)目 的
当社グループでは、市場からの要求や将来を展望した戦略を実現させていくために、「KYBグループ機能一体活動により、世界のお客様の信頼と受注を獲得 ~決め事遵守・スピード・挑戦~」のスローガンの下、研究開発活動を精力的に推進しております。個々の製品の性能向上はもとより、製品の高機能化・システム化への対応や軽量化・省エネ・環境負荷物質削減などエネルギーや環境に関わる諸条件についても十分に配慮した製品開発を進めるとともに、これらを支える生産技術力の強化も図っております。また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成や、標準化されたマネジメントシステムの構築を含めた戦略的なグローバル生産・販売・技術体制の完成を目指しております。
(2)体 制
当社では、基盤技術・生産技術の2つの技術研究所を中心に独創性に優れた先行技術等の研究開発を行っております。研究所は基礎研究を担当し、各事業の技術部門はモデル製品の開発、性能向上・低コスト化など商品力向上のための開発を担当しており、これらの技術力を結集して研究所・技術部門が一体となり全社を横断したプロジェクト活動も実施しております。また、工機センターに生産技術研究所ならびに各工場で培われた生産設備設計のノウハウを集約し、先進性および信頼性の向上を図った設備、治工具の内製化を強化・推進しております。同時に、電子技術センターに、電子機器の設計・評価技術の集約を行い、開発力を高め、製品開発から試作評価、そして量産までがスムーズかつスピーディに実施できるような体制を整えております。
更に、航空機器事業をハイドロリックコンポーネンツ事業から新たに分離独立し、航空産業の市場トレンドとお客様のニーズに機動性を上げて対応し、将来の基幹事業の一つとして経営基盤の強化と拡大を図ってまいります。
当社グループを構成する関係会社は、主に自動車機器・油圧製品・電子機器の製造販売を行っております。関係会社におきましては現行製品の改良開発を中心に実施しておりますが、技術課題の解決にあたっては当社の2つの研究所、2つのセンターおよび各技術部門が支援する体制をとっております。製品の高機能化・システム化に対しましては、独自開発のほかに、お客様あるいは関連機器メーカとの共同研究開発を推進しております。また、産学交流による先端技術開発にも積極的に取り組んでおります。
(3)成 果
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は77億60百万円であります。
①AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業
四輪車用緩衝器部門では、開発から製造に至るまでの製品ライフサイクルの主要プロセスにおける変更管理、品質管理をすべてカバーできる体制を目指し、製品開発業務を支援するソリューションツールを導入しました。また、新製品開発においては、電子制御を用いてリアルタイムに減衰力(地面からタイヤを介して衝撃を吸収する力)を変化させて乗り心地と操縦安定性を両立させるセミアクティブサスペンション用緩衝器の量産化に向けた開発を行っております。
二輪車用緩衝器では、以前よりモータースポーツのモトクロスの分野で、世界選手権および全日本選手権などで活躍する主要チームに弊社製品を使っていただき、技術・製品開発のマイルストーンにしてきました。2015年よりロードレースの分野にも活動を拡大し、弊社サスペンションを装着したヤマハファクトリーチーム殿が、国内最大のイベントである鈴鹿8時間耐久レースにおいて優勝しました。今後は、このロードレースの活動を世界選手権にも照準を合わせ拡大してまいります。
四輪車用パワーステアリング機器では、自動車向け機能安全規格ISO26262のプロセスに準拠した安全性に優れた高性能な2ピニオンタイプの電動パワーステアリングの量産を開始しました。また、四輪車変速機用油圧ポンプを世界各地域で生産しております。2015年は新規開発した軽量、高効率のポンプを中国の工場で生産を開始しました。
生産技術開発の分野では、ストラット式ショックアブソーバの軽量化のため、主要構成部品であるピストンロッド(軸部品)を中空化し内製化いたしました。内製化した生産ラインの高い生産性と安定した品質は、リアルタイムに製造品質を監視できるシステムにより実現します。このピストンロッドを使用したショックアブソーバをトヨタ自動車株式会社殿の新型プラットホームに採用して頂きました。
当セグメントにおける研究開発費の金額は51億21百万円であります。
②HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
建設機械用油圧機器では5t油圧ショベル向けに、車両のエンジン回転数が低い省エネモード運転時でも掘削作業における負荷の大小にかかわらず、一定のレバー操作で作業できる機能により、作業性の低下を最小に抑えることが可能なロードセンシング制御用ポンプPSVL-54、PSVL2-27の2機種を開発いたしました。また、8t油圧ショベル向けには、従来品に比べ約7%の効率の向上および静粛性の改善に加え、省エネモードと通常モードの設定が可能な2段階の出力特性と、エンスト防止としてポンプの消費馬力を一定とする可変馬力制御機能等の高機能を付加したポンプPSVL-84を開発し、これらを株式会社クボタ殿およびVOLVO殿へ納入いたしました。
当セグメントにおける研究開発費の金額は22億80百万円であります。
③その他
ビル用免制震製品では、ビルと土地の間に配置された免震ゴムと中規模地震用および巨大地震用のダンパを併設して小さな揺れでは中規模地震用ダンパだけが作用し、それだけではビルの揺れを吸収しきれない巨大地震が発生した場合には、その揺れの大きさを検知して自動的に巨大地震用ダンパへの接続を行なう「ダンパ接続装置」を開発いたしました。巨大地震発生時には、この装置が作動してビルの大きな揺れを二つのダンパ全体で吸収します。巨大地震だけを対象とすると中規模地震の場合にはダンパの力が強力すぎて地面と一緒にビルが大きく揺れてしまうため、これを防止する目的で開発いたしました。小さな揺れから巨大地震、長周期地震動などの大きな揺れにも対応するために、東海・東南海地震等の影響が懸念されている愛知県内の市庁舎に納入させていただきました。
マイクロポンプでは、世界最小クラスの高圧アキシアルピストンポンプで、必要な時に必要な場所で油圧を発生させ、省エネ機器やアシスト機器として、環境問題の改善など社会に貢献しております。現在搭載いただいている、フォークリフトのハンドル操作ではフィーリングの向上や低騒音・省エネなど環境問題で効果を発揮しております。また、油圧機器と関わりの少なかったロボット市場、医療、介助機器など様々な分野で注目を浴び、2015年度は7件のテスト評価が開始されました。少子高齢化社会が進む今日、人々の助けになる商品化の早期実現を目指します。
当セグメントにおける研究開発費の金額は3億60百万円であります。