有価証券報告書-第90期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/26 14:06
【資料】
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【項目】
150項目
② 戦略
多様性を認めた一人ひとりが働きやすい環境づくり
当社は、社員エンゲージメントを重要な指標と位置づけ、2025年からの新中期経営計画においてエンゲージメントポジティブスコア80%以上をグローバル共通の目標として設定しました。引き続き、エンゲージメントの向上を目指し、全社を挙げて取り組んでいきます。2022年からYamaha Motor Global Awardを導入し、2023年には、社員も投票に参加することができる「社員投票最優秀賞」を設置、そして2024年には、縁の下の力持ちとして事業継続やサステナビリティに欠くことのできない貢献をしている「影の貢献者賞」を新設しました。2024年度は国内・海外事業部門とグループ会社から挙がった39エントリーからヤマハ発動機らしさを体現する8つの優れたプロジェクトを表彰しています。このような、成功を祝う活動を通じて社員エンゲージメントの向上を図り、Yamaha Day(当社の創立記念日にあたる7月1日とヤマハ株式会社の設立記念日にあたる10月12日をYamaha Dayと定め、本社及び国内外グループ各社にて自律的なイベントを開催)と合わせて授賞式を行っていきます。
また、エンゲージメントを高める取組として、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンと人財育成に力を入れていきます。
ヤマハ発動機グループの企業理念である「感動創造企業」を実現するためには、さまざまなバックグラウンドで活躍する人々がお互いを認め合い、成長していくことでその価値を最大限発揮することが重要です。また、持続的な成長を実現しお客さまの期待を超える新しい価値を生み出し続けるためにも、多様な視点や価値観を持った人財の育成、活躍が不可欠であると考えています。
多様な人財が集まり、互いの異なる視点や価値観を尊重しながら、新たな気づきや発見を価値創造につなげていける組織風土を醸成するために、2023年9月に「ヤマハ発動機グループ ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針」を制定し、職場内及び子会社への周知を行っています。当方針の中で「ダイバーシティを通じて感動を創造する」ことをステートメントの中心に置き、「RESPECT.」(リスペクト ピリオド)を行動原則としています。「RESPECT.」とは、ヤマハ発動機グループの全員が、同僚、お客さま、サプライヤー、その他のステークホルダーに対して、他者の意見や権利を価値あるものとして認識し、接する責任を持つことを意味します。その上で 「重点領域とヤマハ発動機グループの姿勢」を定め、全ての役職員が年齢、性別、性的指向、性自認、障がい、国籍、人種、宗教・信条、価値観、経験などに関わらず自分の個性(強み・経験・考え方)を最大限に発揮できる職場を目指しています。
「性別」に関わる取組として、女性活躍推進の観点から、女性の管理職比率について目標を設定し取り組んでおり、ヤマハ発動機グループ全体では、女性管理職比率を2023年の11.1%から2027年に13%とする目標を設定しました。この目標の達成に向けて継続して取組を進めていきます。
さらに、重点領域の一つである「LGBTQ+」については、性自認や性的指向に関する働く上での悩みや困りごとを相談できる社外相談窓口を本社に新設しました。今後も、性自認や性的指向に関わらず、社員一人ひとりが安心して受け入れられ、自分らしく働くことができるような職場環境の整備を進めていきます。
本社におけるキャリア採用者(中途採用者)の管理職登用比率は、新卒採用者の同比率と同程度となっています。採用形態等の属性によらない人物・能力本位での管理職登用を今後も継続していきます。
人財育成方針
ヤマハ発動機グループでは、進化・変化していく市場ニーズに機敏に対応できる組織体制づくりに加え、個人と会社が高い志を共有し、事業の発展及び個人の成長の実現に向けて協力し合うことで、感動を創造し続けることを「人事の目指す姿」として設定しています。具体的な項目として以下の3つを掲げ、多様性が尊重される職場づくりを進めています。
1. 性別・年齢・国籍・人種・価値観等にとらわれず、一人ひとりがそれぞれのチャレンジへ果敢に挑める施策を構築し、挑戦する風土を醸成すること
2. 個人が自らの手で、生涯にわたり啓発する意欲を持つ役職員に対し、適宜その機会と支援を提供すること
3. 「発、悦、信、魅、結」の共有価値を基本とし、「ヤマハらしさ」を開発・育成することで人財における他社との差別化を図ること
そして、目指す姿に向けて次のような人財とともに働きたいと考えています。
1. 自己価値向上に努力する自立・自律型の人財
2. チームワークを大切にした行動ができる人財
3. ヤマハブランドの価値を高められる人財
上記のような職場づくりを実現するためヤマハ発動機グループでは人材マネジメントグループ業務指針を定め、さまざまな取組を行っています。
グローバル人財の活用
人財のグローバル化については、性別・年齢・国籍及び原籍等を問わず優秀な人財の早期発掘、キャリアプランの検討、育成、登用を進めています。具体的には、以前から進めてきたグローバルコアポジションの後継者管理に加え、グローバルでの次世代経営人財の発掘と育成強化、人財の可視化を目的としたグローバル人財データベースの拡充に着手しました。
また、2020年からグローバル人事異動を促すGAP(Global Assignment Policy 旧:Yamaha Assignment Policy)を導入し、優秀な人財の国際間異動を推進しています。これまでに19件の実績があり、今後もさらなる拡大を図っていきます。
人財育成
階層に応じた研修をはじめ、ハイポテンシャル人財に対する選抜研修、機能面での専門スキルを磨く研修、世界で活躍できる人財を目指す海外トレーニー制度、チーム力を高めて組織としてのパフォーマンスを高めるコーチング研修やダイバーシティ研修などを整備しています。また、自ら学ぶ風土の定着に向けて、自己啓発への支援を拡充し、学びの選択肢を増やすとともにオンデマンド型教育を整備しています。
人財育成に関しては、成長を望めば誰しもが機会を与えられる仕組みの構築を目指し、Yamaha Motor Learning System(YLS)オンライン・オンデマンド型の学習プラットフォームの導入と、自己啓発講座の推進を進めてきました。YLSの利用者数は約2万人に達し、自己啓発講座は社員の多様な学びのニーズに対して豊富な選択肢を提供できるようカフェテリアプラン(注)の適用範囲を外部の自己啓発講座・セミナー・オンライン語学講座・オンライン学習サービス・自己啓発用テキスト・書籍購入にまで拡大しました。また、グローバルな経営人財を育成するための選抜研修プログラムを2015年から実施し、これまで延べ155人が参加しています。
(注) 『カフェテリアプラン』とは、それぞれのライフスタイルに合わせて、会社が設定した福利厚生メニューの中から好きなメニューを選び、補助を受けることができる『選択型福利厚生制度』です。
モノづくりの現場においては、「人が主役のモノづくり」をコンセプトとし、人財の獲得、育成、配置、維持・定着のサイクルを構築しています。特に、人財の維持・定着については、エンゲージメント向上施策やインターナルブランディング活動を積極的に展開し、当社で働く喜びや成長意欲を高め、「人が主役のモノづくり」を実現することで、「人財の価値」「社会の価値」「商品の価値」「つながる価値」の向上を目指しています。
モノづくりの現場においては社内だけではなく、グループ会社やお取引先も含めた人財の育成と協創が大変重要です。モノづくりの基本思想「ヤマハ発動機モノづくりWay」の海外・国内グループ会社やお取引先への体系的な導入に加え、人財育成、DXへの取組についても協業を進め、当社製品のさらなる価値向上を目指します。
健康かつ安心して働ける安全な環境づくり
当社グループでは、従業員の健康・安全を企業成長の基盤と考え、労働環境の向上に努めています。ヤマハ発動機グループ労働安全衛生基本方針、「安全・健康 最優先」の考えの下、従業員全員参加で安全と健康の確保に取り組むとともに、快適な職場環境の形成を促進しながら、業務遂行の円滑化を図り生産性の向上にもつなげています。
ヤマハ発動機においては、従来から推進してきた労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)を再構築し、2023年に国際規格であるISO45001を導入、認証を取得しています。マネジメントシステム運用の中軸である、職場におけるリスクアセスメント(危険性や有害性を特定・評価)の実施、その結果に基づく計画的な労働安全衛生リスクの除去・低減に取り組み、労働災害の未然防止を図っています。また、全従業員の安全意識向上のため、法規制上の教育・講習はもちろん、リスクアセスメントや実践的な危険予知トレーニング等、各種教育・研修の充実にも取り組んでいます。
なお、2023年5月、当社浜北工場(浜松市浜名区)にてエンジン部品加工作業に従事していた社員1名が死亡する労働災害事故が発生しました。このような重大な労働災害を二度と発生させないため、設備機械の安全総点検と対策、リスクアセスメント徹底によるリスク除去・低減、「安全の日」設定による安全意識の高揚など、再発防止の取組を継続的に進めています。
ヤマハ発動機グループ全体の労働安全衛生水準の向上に向けては、労働災害発生リスクが相対的に高いと考えられる製造拠点を中心に、ISO45001を基軸とした労働安全衛生マネジメントシステムの整備を進めるとともに、継続的な改善に取り組んでいきます。
健康に関しては、2020年にヤマハ発動機健康宣言を制定し、社員の健康を会社の発展に欠かせない重要な経営課題ととらえ、会社・社員が一体となって健康の保持・増進に取り組んでいます。
具体的には、ヤマハ発動機では健康診断受診率100%・メタボリックシンドローム(該当者+予備群)の低減・喫煙率の低減を三大課題とし、さまざまな取組を進めています。メタボリックシンドローム低減に関しては、若年層を含めリスクを抱えた社員への看護職・管理栄養士による継続的な保健指導、専門医の治療に早期につなぐための受診勧奨となるイエローペーパー制度の運用等を行っています。また、喫煙率低減に向けては従来から行ってきた禁煙支援に加え、2024年1月よりヤマハ発動機敷地内・就業時間中の全面禁煙化を開始、国内グループ会社にも順次展開を進めています。
社員のメンタル不調を未然に防止するため、ストレスチェック実施後には高ストレス者の希望者全員に産業医や看護職等によるフォロー面談を実施、集団分析結果を職場へフィードバックすることで職場環境改善につなげている他、セルフケア・ラインケア等のさまざまな教育・研修を実施しています。
フィジカル・メンタル共に休職者の復帰時には、復職前に社内リワークプログラムを実施、復帰後も所属長・人事部門・産業医が連携し1年ほど本人をフォローすることで、再発防止に努めています。
また、社内環境整備の一環として、人事部門と健康推進部門が連携して適正な労働時間管理を推進し、過重労働対策とワークライフバランスの確保を行っている他、女性社員特有の健康問題に対応するための専用相談窓口やセミナー等の整備など、さまざまな取組をきめ細かく展開しています。
これらの活動を通じ、ヤマハ発動機は健康経営を戦略的に取り組む法人を認定する「健康経営優良法人認定制度」において健康経営優良法人2025(大規模法人部門)・ホワイト500に認定されています。
コンプライアンスの遵守
ヤマハ発動機グループでは、グループ全体のコンプライアンス遵守の体制を構築する目的で、チーフ・リスク・コンプライアンス・オフィサー(CRCO)を2025年1月に任命し、CRCOが委員長となり指名する執行役員を委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会」において、コンプライアンス遵守のための計画を審議し、その実行状況やコンプライアンス遵守の風土についてモニタリングを行います。また、その下部委員会として、CRCOが指名する主要各地域を統括するリスク・コンプライアンス・オフィサーを委員とする「グローバルリスク・コンプライアンス推進委員会」を設置するとともに、本社各リスク主管部門長等による「リスク・コンプライアンス推進会議」を設置し、コンプライアンスについての方針や計画、モニタリングと対策などを専門的視点で審議することとしています。そしてこの結果は、グローバルリスク・コンプライアンス経営委員会での審議事項としてCRCOよりESGリスクとともに取締役会に適宜報告するものとされており、実効性を担保した体制を整備しています。具体的な活動は「コンプライアンス管理規程」に従って展開し、CRCOとコンプライアンス統括部門がグループ全体の活動を管理します。
また、コンプライアンス風土を測定する手段の一つとして、グループ会社共通のコンプライアンス意識調査を毎年実施し、「倫理行動規範」の理解度や規範の実践度合い、レポーティングラインやホットラインの利用度、教育の有効性などコンプライアンス施策の有効性を確認しています。また、調査の結果や社会の潮流も踏まえ、「倫理行動規範ガイドブック」の毎年の更新と「倫理行動規範」の定期的な見直しを行っています。
この倫理行動規範では、日々の活動の中で遵守すべき行動基準をコンプライアンスの視点から表していますが、中でも人権は重要なものと位置付けており、職場で人権を侵害し得る、職場でのセクシュアルハラスメントや、職場における地位や人間関係などの優位性を背景にした相手の人格・尊厳の侵害など、あらゆる種類のハラスメントを一切禁止しています。そのために主にマネジメント層に対して「人権・ハラスメント」研修を毎年開催しています。もしハラスメントの報告を受けた際には当事者から詳細なヒアリングを行い事実確認した上で、懲戒を含めた適正な対応を行うとともに、再発防止に向けた取組を進めています。
倫理行動規範に違反する行為に気付いた場合の通報先として「コンプライアンス・ホットライン」を設置し、国内外のグループ会社からの内部通報を受け付けるとともに、必要な調査・是正を実施しています。加えて、仕入先からの通報を対象にした「フェアビジネスホットライン」、社外ステークホルダー向けの「人権ホットライン」を設置し、課題の是正・救済に取り組んでいます。
ヤマハ発動機が受け付けたホットラインの件数
2022年2023年2024年
177件203件247件