有価証券報告書-第14期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/30 14:02
【資料】
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【項目】
126項目

事業等のリスク

当企業グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、当企業グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)世界的な展開及び競合について
当企業グループは、米州、欧州及びアジア(日本含む)の各地域で、自動車安全部品の開発、製造、販売を行っているため、業績は、これらの地域における自動車産業の動向に強く影響を受けます。
各地域での市場動向は、受注数量の増減、販売価格を通じて、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また当企業グループは、各地域で少数寡占の競合他社と激しい競争を行っております。この競争に勝ち抜くため、コスト低減の一層の推進、欧米アジアでの三極体制による研究開発活動の充実、M&Aの積極的な検討等を行っております。しかし何らかの要因により、これらの施策の効果が上がらず、相対的に当企業グループの競争力が低下した場合、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、各地域における自動車の販売動向は、原油価格、金利動向、税制等の経済情勢の他、法的規制等に影響を受けております。また、一般的に海外における事業展開の成否は、現地での紛争、テロや災害の発生、感染症の流行、社会・労働慣行の相違、社会設備(インフラ)の整備状況、移転価格税制等の影響を受けます。
(2)特定の販売先への依存について
当企業グループが対象としている各国の自動車市場は少数寡占の市場であるため、当企業グループの売上高は上位販売先への依存度が高くなっております。実質的な販売先上位5社グループで、当企業グループ連結売上高に占める割合は、前期は52.9%(本田グループ、Renault日産グループ、Fordグループ、General Motorsグループ、Fiat Chryslerグループ)、当期は52.9%(本田グループ、Renault日産グループ、General Motorsグループ、トヨタグループ、Volks Wagenグループ)となっております。
当企業グループは、新規販売先の開拓等により、特定の販売先への依存度を低減するよう努めております。また、実際には、当企業グループの売上高は、当社製品が搭載されている車種の販売動向に影響を受けているため、主要顧客の売上高の変動が直ちに当企業グループの売上高の減少要因となるとは限りません。
ただし、主要顧客における販売の減少、車種別販売動向の変化、及び経営戦略の変更等は、当企業グループの業績変動要因となる可能性があります。
(3)価格競争への対応について
自動車部品業界は価格競争が厳しく、また自動車メーカーからも恒常的に厳しい販売価格低減要請がなされており、全体として販売価格低減の圧力が、非常に厳しい業界であります。
このような事業環境への対策として、当企業グループは、常に原価低減活動を行い、また高付加価値製品投入による差別化に努めております。しかし、これら活動を上回る販売価格の低減があった場合、当企業グループの業績へ影響を及ぼします。
(4)原材料価格の変動について
当企業グループの製品であるシートベルト、エアバッグ等に用いられる部品は、原糸、樹脂、鉄、非鉄金属等を原材料としており、これらの原材料については、世界規模での需給バランスや各生産地域における経済情勢等により価格が変動しております。
当企業グループでは、部品の標準化や仕入先の絞込みによるスケールメリットの追求など、仕入コスト増加の回避に努めておりますが、使用している原材料の価格が高騰し、販売価格に転嫁できない場合には、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)為替変動による影響について
当企業グループにおきましては、米ドル及びユーロを中心に多額の外貨建て取引を行っております。
米州子会社は現地通貨建てにより決算書類を作成しており、連結決算時において円貨に換算する必要があるため、当企業グループの業績は、為替の動向に影響を受ける傾向にあります。
また、通貨の異なる国・地域間の仕入・販売取引に関して、為替動向によっては、為替予約等を実施することにより為替ヘッジを行っております。しかし、為替変動のリスクを完全に排除することは困難であり、為替変動は当企業グループの業績に影響を及ぼしております。
(6)金利変動リスクについて
当企業グループは、生産設備投資資金、運転資金等を金融機関からの借入及び社債により賄っております。
当企業グループは、固定金利借入やデリバティブ等の活用により、金利変動に係るリスクの低減を図っております。しかし今後、金利が変動した場合には、利払い負担の増減という形で当企業グループの業績に影響を及ぼします。
(7)供給責任について
当企業グループでは、最適地生産の考え方に基づき、欧米アジアの各地域内に生産拠点を配備しており、各地域内外の生産拠点間で部品、半製品を相互に供給することが可能であるため、特定の生産拠点に過度に依存しない体制となっております。
また、主要原材料、部品について、特定の仕入先に依存しているものもありますが、仮にこれら仕入先が操業停止等に陥り、当企業グループの調達活動に影響を及ぼした場合でも、上記のとおり各地域内外の相互供給により、対応可能と認識しております。
ただし、地震、火災等の災害を含む何らかの理由により、特定の生産拠点において一定期間生産が停止した場合には、賠償責任の発生、当企業グループに対する顧客の信用の失墜等に伴う取引関係の停止等により、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)製品の欠陥について
当企業グループは、安全に係る製品を取り扱っているという認識に基づき、品質第一主義を徹底し、製品品質の確保、及び品質保証体制の充実に努めております。
しかしながら、これらの製品について品質上の問題が発生し、大規模なリコール、製造物責任に関わる係争、関連法令に基づく調査、手続等が発生する可能性があります。当社では、製造物責任賠償については、保険に加入することにより、また、リコールや不具合対応としては引当金を計上することにより、将来の補償費用発生に備えておりますが、引当金の範囲内または当該保険の補償限度内で企業グループが負担する補償額を十分にカバーできるという保証はありません。このため、重大な品質上の問題の発生は、当企業グループの信用力の低下のみならず、補償等の発生により、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の米国子会社TK HOLDINGS INC.(以下”TKH”)が過去に製造したエアバッグ製品の一部に関して、自動車メーカーが市場措置の届出を行っており、現在当社は、不具合の原因が特定されていないものにつき、自動車メーカーと調査中であります。
上記市場措置及びそれに関連する米国及びカナダにおける複数の集団訴訟、米国の連邦大陪審からの召喚令状及び米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)からの特別命令につきましては、注記事項(連結貸借対照表関係)5 偶発債務(1)、(2)をご参照ください。
また、TKHは、2015年11月3日(米国時間)、NHTSAとの間で、タカタ製エアバッグに係る一連のリコール問題に関し、同意指令(Consent Order)に合意しております。
本同意指令に基づいて、TKHは、1966年国家交通・自動車安全法の通知規定を満たさなかったことなどもあり、70百万米ドルの民事制裁金(前第2四半期連結会計期間に特別損失に計上)を、2020年10月末までに6回に分けて支払うことに合意しております。また、2018年末までに乾燥剤を含まない相安定化硝酸アンモニウム(PSAN)を使用したタカタ製インフレータの製造販売を一定の計画に従って段階的に中止すること、PSANを使用したタカタ製インフレータの供給について乾燥剤の有無を問わず新規の契約を締結しないこと、その他各種の義務を負い又は取り組みを進め、当該義務に違反した場合には別途最大総額130百万米ドルの民事制裁金の支払いを行うことに合意しております。
(9)知的財産権について
当企業グループは、他社と差別化できる技術とノウハウの蓄積に努めており、自社が保有する技術等については特許権等の取得による保護を図る他、他社の知的財産権に対する侵害のないようリスク管理に取り組んでおります。
しかしながら、当企業グループが従来から販売している製品や、今後販売する製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性もあります。また、当企業グループが認識していない特許権等が成立することにより、当該第三者より損害賠償等の訴訟を起こされる可能性もあります。これらの要因により、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的手続きについて
当企業グループは全世界で事業活動を展開しており、各国でコンプライアンスの実践に努めております。しかし、様々な訴訟及び当局による法的手続の当事者となるリスクを有しており、その場合には当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)重要事象等について
当企業グループは、当連結会計年度におきまして、2017年1月13日(米国時間)に米国司法省と合意した司法取引に関連して多額の特別損失を計上したことなどにより、3期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上しました。また、米国司法省と合意した司法取引に関連して未払金を計上したことなどにより、連結会計年度末におきまして流動負債が流動資産を超過する状況になりました。さらに、当社米国子会社及び欧州子会社の一部事業を売却すること等でキャッシュ・フローはプラスとなったものの、返済期限を迎えた借入金について、1カ月未満の短い借入期間による借換え実行となる等の状況が継続している他、米国司法省と合意した司法取引に基づく10億ドルの支払のうち支払済みの1億5千万ドルを除く8億5千万ドルの支払が今後発生することや、連結財務諸表に関する注記事項(連結貸借対照表関係)5 偶発債務記載の(1)市場措置、(2)エアバッグ製品に関連する訴訟等に関連して多額の費用等を負担する可能性があることなどから、当企業グループには継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。一方、売上高、営業利益は好調を維持しており、また、これらの継続企業の前提に疑義を生じさせるような事象又は状況に対応すべく、以下の対応策を実施してまいりました。
①関係当局への協力、自動車メーカー及び取引金融機関との取引継続に向けた活動、外部専門家委員会の活動
当企業グループは、当企業グループ製エアバッグを搭載した自動車の市場措置に関連し、製品ユーザーの皆様の安全・安心の確保、信頼回復に向け、自動車メーカーと協力して調査・分析を行うとともに、市場措置の対応、並びに米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)と2015年11月3日(米国時間)に合意した同意指令(Consent Order)、及び2016年5月4日(米国時間)に合意した同修正合意をはじめとする関係当局からの要請等にも全面的に協力し、エアバッグの品質に関する問題の解決、及びユーザーの皆様の安全確保に向けて、全力で取り組んでまいりました。このような品質問題の解決とともに、革新的な製品開発と最高の品質とサービスでお客様のニーズに応えながら、豊かで安全な社会の発展に貢献できるよう、確かな安全を追求していくことが当企業グループの社会的使命と考え、当企業グループ製品の安定的な供給及びその継続の前提である事業基盤の安定を維持するために自動車メーカーとの協議を継続してまいりました。また、そのような事業活動を資金面で担保するため、取引金融機関との協議も併せて継続し、借入残高維持についてご理解をいただいてまいりました。さらに、これら関係者の皆様にとって透明性のある手続となるよう、当企業グループのガバナンス再構築、資本・財務政策、調達政策等の施策を含む当企業グループの再建計画を策定すること等を目的として企業外部の有識者で構成される外部専門家委員会を平成28年2月に発足させ、再建に向けての活動を行ってまいりました。なお、当該再建計画の策定作業の一環として、エアバッグのリコール問題への対処を目指すべく、外部専門家委員会の下で当社に対する新たな出資者(スポンサー)を募集し、再建計画の提案内容について自動車メーカーと協議してまいりました。
②設備投資及びコストの削減
今後の売上計画に応じた設備投資削減、低コスト国への生産及び主要機能移管によるコスト削減等により、キャッシュ・フローの改善を図ってまいりました。
③保有有価証券の売却
保有有価証券売却に伴うキャッシュ・フローの改善を実行しました。
④ノンコア事業売却の検討
自動車安全部品の製造・販売というコア事業以外の事業の売却を検討してまいりましたが、2016年9月28日(米国時間)に当社の米国子会社の一部事業を売却しました。また、2017年2月22日(米国時間)に、当社の米国子会社2社及び欧州子会社の一部事業を売却しました。
⑤インフレータ事業の見直し
エアバッグ事業の継続及び将来の拡大を目指して、インフレータ部門の抜本的な見直しを検討してまいりました。
しかしながら、財政状態の悪化に歯止めをかけることができませんでした。そのため、当社は、当企業グループの事業の再生のために資金支援等を受けることが不可欠であるとの判断に至り、2017年6月25日(米国時間)、スポンサー候補であったキー・セイフティー・システムズ社との間で、当企業グループが全世界で保有する資産及び事業を、実質的に全て同社へ譲渡する旨の基本合意に至りました。また、平成29年6月26日開催の取締役会において、民事再生法の規定による再生手続開始の申立てを行うことを決議し、東京地方裁判所に申立てを行い、同日受理され、直ちに同裁判所より弁済禁止の保全命令及び監督命令が発令されました。また、平成29年6月28日に同裁判所より民事再生手続開始決定がなされました。さらに、同時に当社の国内連結子会社であるタカタ九州株式会社及びタカタサービス株式会社についても、民事再生手続開始の申立てを行い、また、当社の米国子会社であるTKHを含む米州子会社12社についても、2017年6月25日(米国時間)、米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続開始の申立てを行うことを決議し、同日付けで米国デラウェア州連邦破産裁判所に申立てを行いました。
今後、当社では再生計画案を作成し、裁判所の認可を受けて再生計画を遂行することとなりますが、再生計画案は現時点では未確定であり、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。