有価証券報告書-第14期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/30 14:02
【資料】
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【項目】
126項目

対処すべき課題

(1)経営方針
当企業グループの「社是」は、下記のとおりであります。
・ 革新的な製品開発と、最高の品質とサービスで顧客満足に徹する。
・ 多様な個性と文化を尊重し、タカタ人の誇りをもって夢を実現する。
・ コミュニティの積極的な一員として、よりよい社会に貢献する。
この社是に基づき、「“交通事故の犠牲者ゼロ”の実現に向け、確固たるチームワークで真のパートナーシップを築き上げ“安全と安心を提供し続けるタカタ”を作る。」というビジョンのもと、より具体的には下記を経営の基本方針として定めております。
① 三現(現場、現物、現実)主義に則り、積極的に海外展開を進め、お客様に喜ばれる供給体制を整え、グローバルに品質第一を徹底していく。
② 一貫して「人の命を守る」製品作りにこだわり続け、「安全」を追求し、常に革新的な製品開発と最高の品質、サービスで顧客満足に徹していく。
③ 全世界に展開をしていく以上、多様な個性と文化を尊重していき、更には各拠点コミュニティの積極的な一員として、より良い社会作りに貢献していく。
④ 常に地球環境に配慮した製品開発、事業活動に努める。
(2)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当企業グループを取り巻く経営環境につきましては、特に中国やインドなどのアジア市場での成長が見込まれ、中長期的には世界自動車生産台数の安定的な伸びが予想されます。当企業グループは、市場が拡大する自動車生産市場で既存安全部品事業の拡大、さらに新興国向け製品の開発、生産能力増強を進め売上、シェア拡大を目指します。
また、アクティブセーフティに代表される「次世代安全部品事業展開」に対しては、基礎研究を含めた研究開発体制を充実させ、社会ニーズを具現化できるアプリケーションの提案力を一層強化します。顧客ニーズへの対応においては、当企業グループではグローバル最適の意思決定を迅速に行っていくため、人材の育成も含め組織力を強化していきます。
一方、当企業グループでは、原価低減努力や現地調達化の推進、コスト管理の強化を推進し経営基盤の強化とコスト競争力の強化を進めていきます。
(3)目標とする経営指標
当企業グループは、グローバル自動車安全システムメーカーとして世界No.1を目標としています。その為に、成熟市場に加えて成長する新興市場でも更なるシェアの拡大を達成し、またエレクトロニクス事業などその他事業の拡大により、主要製品でのマーケットシェア「30%」、売上高営業利益率「10%」を目指します。
(4)対処すべき課題
当企業グループは、これまで自動車メーカー各社により実施された当企業グループ製エアバッグに係る一連の市場措置に端を発する諸事象への対応を最重要の課題と位置付け、ユーザーの皆様の安全とステークホルダーの皆様の安心を確保するため、全力をあげて取り組んでまいります。
市場措置の対応としては、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)との間で2015年11月3日(米国時間)及び2016年5月4日(米国時間)にそれぞれ合意した同意指令(Consent Order)及び同修正合意の内容をはじめとする、各国関係当局からの要請等に全面的に協力し、市場措置の実施にあたり必要となる交換用のインフレータ(ガス発生装置)及びエアバッグの供給のため、最大限の経営資源を投入しております。
不具合の原因については、自動車メーカー等と協力して調査・分析を行うとともに、この分野で世界的に実績のある研究機関であるフラウンホーファー研究所にも調査・分析を依頼し、精力的な取り組みを行ってまいりました。その結果、インフレータが長期間高温多湿の環境下にさらされ、かつ、製造上の精度のばらつき等その他の要因が複合的に重なり合う場合、一部のインフレータが想定外の強い内圧を受けて破損する可能性があることなどが示唆されております。当企業グループとしては今後も安全性等の検証のための試験分析を継続してまいります。
一連の市場措置の対象となった当企業グループ製エアバッグに関連して、米国及びカナダにおいて、経済的損失の賠償等を求める集団訴訟及びインフレータの不具合により人身傷害を負ったことによる賠償等を求める個別訴訟が、複数提起されております。米国においては、それらの集団訴訟及び一部の個別訴訟が米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所に移送され、広域係属訴訟となっているほか、ハワイ州、米領ヴァージン諸島及びニューメキシコ州の司法長官等から民事制裁金等の支払を求める訴訟を提起されました。さらに、メキシコにおいては、当社の米国子会社及びメキシコ子会社に対して経済的損失の賠償等を求める集団訴訟が提起されております。こうした各種の訴訟に関しても、事実関係を明らかにしつつ、真摯な対応を継続してまいります。
また、当社は、2017年1月13日(米国時間)に、米国司法省との間で、当企業グループ製インフレータの性能検証試験に係る報告の不備の問題に関して、司法取引に合意し、同年2月27日(米国時間)に、かかる司法取引に従い有罪の答弁をいたしました。
当該司法取引により、当企業グループは罰金25百万米ドルを支払ったほか、不備のあった試験データ及び報告を受けた自動車メーカーまたは相安定化硝酸アンモニウムを使用した当企業グループ製インフレータ(以下「PSANインフレータ」といいます。)を購入した自動車メーカーのため、ならびにPSANインフレータの不具合による人身傷害の被害者のために、それぞれ850百万米ドル及び125百万米ドルの補償基金を設立いたします。これを受け、多額の特別損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しました。また、米国司法省と合意した司法取引に関連して未払金を計上したことなどにより、当連結会計年度末において流動負債が流動資産を超過する状況になりました。
当社は、これらの事実を真摯に受け止め、コンプライアンス体制の強化及び独立監査人の設置等、司法取引に基づく義務を誠実に履行するとともに、再発防止に努めてまいります。
前述した諸課題への対応を含めた今後の事業活動を行うにあたり、当社は経営の建て直しと資金の確保の必要性に迫られております。
社内的には、自動車安全部品の製造・販売を除くノンコア事業の売却を検討してまいりました。その一環として、当社は、2016年9月28日(米国時間)に米国子会社の全株式を売却いたしました。また、2017年2月22日には米国子会社2社の事業の全部を譲渡するとともに、欧州子会社の全株式を売却いたしました。さらに、保有有価証券の売却も当連結会計年度中に実施し、キャッシュ・フローの改善を図っております。あわせて、当社は、取引金融機関との協議も継続しており、借入残高の維持についてご理解をいただいております。
さらに、当社は、平成28年2月に発足させた外部の有識者で構成される外部専門家委員会の下で、出資者(スポンサー)を選定するプロセスを進めた結果、2017年6月25日(米国時間)、キー・セイフティー・システムズ社との間で、当企業グループが全世界に保有する資産及び事業を、実質的に全て同社へ譲渡する旨の基本合意に至り、今後は最終合意に向けたプロセスを継続してまいります。
(5)株式会社の支配に関する基本方針
当社は、当社株式の大量買付行為が行われた場合、大量買付行為を受け入れるか否かの最終的な判断は、当社株式を保有する株主の皆様に委ねられるべきものと考えております。そして、大量買付行為に際して、株主の皆様にその判断を適切に行っていただくためには、大量買付行為を行う者から一方的に提供される情報のみならず、当該大量買付行為に対する中立的な立場からの評価・意見等も含めた十分な情報が提供されることが、不可欠であると考えております。
もとより、当社は、株式の大量買付であっても、当社の社会的使命、そこから生まれる企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。そもそも、株主は市場の自由な取引によって決まるものであり、原則として、財務及び事業の方針の決定を支配する者は株主全体の意思に基づき決定されることになります。しかしながら、近年の株式市場におきまして、株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が株式の大量買付行為について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。
当社としましては、上記のような企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大規模買付提案またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。