有価証券報告書-第125期(2024/04/01-2025/03/31)
② 戦略
当社グループは「環境保全と利益創出の同時実現」という考えに基づき、環境と事業成長の両立を目指す事業活動を展開してきました。環境経営活動を展開するにあたっては、気候変動、資源循環、生物多様性という環境課題が密接に関連しあっていることから、包括的な対応が不可欠であるという認識のうえ、シナリオ分析やリスク・機会の評価を行い、環境負荷の低減と事業成長の両立を目指しています。
a. シナリオ分析の考え方
2018年、当社グループはTCFD提言に賛同表明して以降、TCFDのフレームワークに沿ってシナリオ分析、及び、気候変動リスク・機会について評価を進め、ESG委員会による承認を経て毎年、開示を行ってきています。TCFD提言における気候変動のリスク・機会、「サーキュラーエコノミーへの移行」、更にはTNFD*1における「自然資本に関する依存*2と影響」等、気候変動、資源循環、生物多様性を統合的なアプローチで対処する考え方がG7にて議論され、日本政府も、環境分野におけるリスク・機会を統合的に評価することを推奨しています。当社グループでは2024年からこれらの環境分野を俯瞰的に捉え、TCFDに加え、TNFDのフレームワークを活用して評価を行った上で、気候変動、資源循環、生物多様性を統合したリスクと機会を特定しています。
シナリオ分析は「重要性評価」「シナリオの特定」「事業インパクト評価」「シナリオ分析によるリスクと機会の特定」の4つのステップで進めました。重要性評価のステップでは、TNFDフレームワークによって抽出された依存とインパクトについて、生物多様性への重要性が高い領域と、バリューチェーンを通じた影響の重大さを評価しました。2040年における社会動向や規制動向等を予測し、環境分野におけるリスク・機会の項目を幅広に列挙しました。また、シナリオの特定では不確実な未来に対応するために、既存の主要ビジネスであるプリンティング事業の継続、デジタルサービスの会社に向けた事業戦略等を鑑みて、1.5℃シナリオを含む複数の気温変化のシナリオを参照し、分析を行いました。
*1 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):自然関連のリスク管理と開示の枠組みを提供するために2021年6月に設立されたタスクフォース。2023年9月にTNFDの最終提言(v1.0)として、企業と金融機関が自然関連課題を特定、評価、管理、開示するための枠組みを公表した
*2 依存:事業活動に不可欠な自然資本や生態系サービス、またはこれらが不可欠である状態
b. 自然関連の依存とインパクトの評価
気候変動、資源循環、生物多様性に対するリスクと機会の特定、及び、シナリオ分析を行うにあたり、以下のステップにて依存とインパクトを評価しました。
評価プロセスの詳細は、「Ricoh Group Environmental Report 2024」をご参照ください。
https://jp.ricoh.com/sustainability/report/environment
Step1: 依存とインパクトの抽出
依存とインパクトが重大と推定した以下の事業プロセスをENCORE*により評価
•バリューチェーン上流:紙の製造
•直接操業:画像機器とその消耗品の製造、サーマルペーパーの製造
→水関連、土壌汚染、GHG排出等を抽出
* ENCORE:国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター等が中心となって開発された、自然関連リスクの特定ツール
Step2: 直接操業における優先地域*の特定
依存とインパクトの抽出段階で影響度が高いと推定された水と、自然資本を生産・回復する主体である生物多様性について評価した結果、優先地域を有する国・地域として、日本・中国・東南アジア・北米が挙げられました。これらの国・地域、操業拠点について、今後、より具体的な評価を進めていく予定です。
* 優先地域:事業活動が重要な生態系に接している、または、事業活動の依存やインパクトの度合いが高い地域
Step3: 依存とインパクトの重要性評価
日本国内におけるA3カラー複合機とサーマルペーパー(粘着ラベル)の使用をモデルシナリオとして、LCA(Life Cycle Assessment)によりバリューチェーンにおける重要性を評価した結果、以下のことが分かりました。
•紙に起因する依存とインパクトが大きい
•いずれの依存とインパクトについても、バリューチェーン上流の影響が大きい
•生物多様性(種の絶滅)に対する比較では、森林資源消費とGHG排出の影響が大きい
•水資源利用に対する生物多様性への影響は定量的に評価できないが、紙や段ボール使用による影響が大きいと予想される
したがって、シナリオ分析においては、紙や森林資源の観点での検討を通したリスクと機会の特定が重要であると結論付けました。
c. シナリオ分析の結果
気候変動のみならず生物多様性、資源循環の側面も含めシナリオ分析を実施した結果、当社グループには、環境分野における様々なリスクがあり、特に環境規制・規格への対応を怠ると収益への大きな影響があること、また自然災害リスクに関しては先送りすると大きな事業インパクトが発生しかねない喫緊の課題であることが分かりました。これらのリスクに対する当社グループの対応は以下のとおりです。
一方で、環境問題に対する緩和、適応への積極的な対応は将来の財務効果を生み出す可能性があることが改めて確認できました。
d. リスクの緊急度・影響度(移行リスク・物理リスク)
シナリオ分析に基づき、当社グループにおいて財務にも影響を与えうる重要なリスクを特定しました。気候変動、資源循環、生物多様性それぞれのリスクを洗い出し、重複するリスクについては統合したうえで移行リスクと物理リスクに分類し、全社リスクマネジメントシステムの考え方に則って緊急度(発現可能性)と影響度(財務インパクト)を見積もりました。また、EUサステナビリティ規制簡素化や米国の政策転換の影響についても検討しましたが、シナリオ分析のステップにおいて想定していた範囲内であるため、大きな影響がないことを確認できました。
この影響レベルに基づいた対応を着実に実践することで環境リスクに対するレジリエンスを高めていきます。
移行リスク(1.5℃シナリオ*1)
*1 1.5℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられている世界
*2 SBTi(Science Based Targets initiative):企業の温室効果ガス(GHG)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
物理リスク(4℃シナリオ*3)
*3 4℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が4℃上昇する世界
e. 機会の財務効果
気候変動、資源循環、生物多様性における環境影響は単に事業リスクだけではなく、自社製品・サービスの提供価値及び企業価値を高める機会につながると認識しています。
省エネルギー、省資源技術、創エネサービス等を活かしたお客様の環境負荷削減につながる商品やソリューションの提供、DXを支援するソリューション等、様々な機会をもたらし、現時点で環境配慮のオフィス機器、DXを支援するソリューション、環境・エネルギー事業は1兆円規模の売上に貢献しています。
当社グループは「環境保全と利益創出の同時実現」という考えに基づき、環境と事業成長の両立を目指す事業活動を展開してきました。環境経営活動を展開するにあたっては、気候変動、資源循環、生物多様性という環境課題が密接に関連しあっていることから、包括的な対応が不可欠であるという認識のうえ、シナリオ分析やリスク・機会の評価を行い、環境負荷の低減と事業成長の両立を目指しています。
a. シナリオ分析の考え方
2018年、当社グループはTCFD提言に賛同表明して以降、TCFDのフレームワークに沿ってシナリオ分析、及び、気候変動リスク・機会について評価を進め、ESG委員会による承認を経て毎年、開示を行ってきています。TCFD提言における気候変動のリスク・機会、「サーキュラーエコノミーへの移行」、更にはTNFD*1における「自然資本に関する依存*2と影響」等、気候変動、資源循環、生物多様性を統合的なアプローチで対処する考え方がG7にて議論され、日本政府も、環境分野におけるリスク・機会を統合的に評価することを推奨しています。当社グループでは2024年からこれらの環境分野を俯瞰的に捉え、TCFDに加え、TNFDのフレームワークを活用して評価を行った上で、気候変動、資源循環、生物多様性を統合したリスクと機会を特定しています。
シナリオ分析は「重要性評価」「シナリオの特定」「事業インパクト評価」「シナリオ分析によるリスクと機会の特定」の4つのステップで進めました。重要性評価のステップでは、TNFDフレームワークによって抽出された依存とインパクトについて、生物多様性への重要性が高い領域と、バリューチェーンを通じた影響の重大さを評価しました。2040年における社会動向や規制動向等を予測し、環境分野におけるリスク・機会の項目を幅広に列挙しました。また、シナリオの特定では不確実な未来に対応するために、既存の主要ビジネスであるプリンティング事業の継続、デジタルサービスの会社に向けた事業戦略等を鑑みて、1.5℃シナリオを含む複数の気温変化のシナリオを参照し、分析を行いました。
*1 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):自然関連のリスク管理と開示の枠組みを提供するために2021年6月に設立されたタスクフォース。2023年9月にTNFDの最終提言(v1.0)として、企業と金融機関が自然関連課題を特定、評価、管理、開示するための枠組みを公表した
*2 依存:事業活動に不可欠な自然資本や生態系サービス、またはこれらが不可欠である状態
b. 自然関連の依存とインパクトの評価
気候変動、資源循環、生物多様性に対するリスクと機会の特定、及び、シナリオ分析を行うにあたり、以下のステップにて依存とインパクトを評価しました。
評価プロセスの詳細は、「Ricoh Group Environmental Report 2024」をご参照ください。
https://jp.ricoh.com/sustainability/report/environment
Step1: 依存とインパクトの抽出
依存とインパクトが重大と推定した以下の事業プロセスをENCORE*により評価
•バリューチェーン上流:紙の製造
•直接操業:画像機器とその消耗品の製造、サーマルペーパーの製造
→水関連、土壌汚染、GHG排出等を抽出
* ENCORE:国連環境計画 世界自然保全モニタリングセンター等が中心となって開発された、自然関連リスクの特定ツール
Step2: 直接操業における優先地域*の特定
依存とインパクトの抽出段階で影響度が高いと推定された水と、自然資本を生産・回復する主体である生物多様性について評価した結果、優先地域を有する国・地域として、日本・中国・東南アジア・北米が挙げられました。これらの国・地域、操業拠点について、今後、より具体的な評価を進めていく予定です。
* 優先地域:事業活動が重要な生態系に接している、または、事業活動の依存やインパクトの度合いが高い地域
Step3: 依存とインパクトの重要性評価
日本国内におけるA3カラー複合機とサーマルペーパー(粘着ラベル)の使用をモデルシナリオとして、LCA(Life Cycle Assessment)によりバリューチェーンにおける重要性を評価した結果、以下のことが分かりました。
•紙に起因する依存とインパクトが大きい
•いずれの依存とインパクトについても、バリューチェーン上流の影響が大きい
•生物多様性(種の絶滅)に対する比較では、森林資源消費とGHG排出の影響が大きい
•水資源利用に対する生物多様性への影響は定量的に評価できないが、紙や段ボール使用による影響が大きいと予想される
したがって、シナリオ分析においては、紙や森林資源の観点での検討を通したリスクと機会の特定が重要であると結論付けました。
c. シナリオ分析の結果
気候変動のみならず生物多様性、資源循環の側面も含めシナリオ分析を実施した結果、当社グループには、環境分野における様々なリスクがあり、特に環境規制・規格への対応を怠ると収益への大きな影響があること、また自然災害リスクに関しては先送りすると大きな事業インパクトが発生しかねない喫緊の課題であることが分かりました。これらのリスクに対する当社グループの対応は以下のとおりです。
一方で、環境問題に対する緩和、適応への積極的な対応は将来の財務効果を生み出す可能性があることが改めて確認できました。
d. リスクの緊急度・影響度(移行リスク・物理リスク)
シナリオ分析に基づき、当社グループにおいて財務にも影響を与えうる重要なリスクを特定しました。気候変動、資源循環、生物多様性それぞれのリスクを洗い出し、重複するリスクについては統合したうえで移行リスクと物理リスクに分類し、全社リスクマネジメントシステムの考え方に則って緊急度(発現可能性)と影響度(財務インパクト)を見積もりました。また、EUサステナビリティ規制簡素化や米国の政策転換の影響についても検討しましたが、シナリオ分析のステップにおいて想定していた範囲内であるため、大きな影響がないことを確認できました。
この影響レベルに基づいた対応を着実に実践することで環境リスクに対するレジリエンスを高めていきます。
移行リスク(1.5℃シナリオ*1)
| 分野 | リスクタイプ リスク項目 | リスクシナリオ (当社グループへの影響) | 緊急度 | 影響度 | 当社グループの 対応 |
| 気候変動資源循環 | 政策・規制 ① 政策強化による調達コストの上昇 | ・サプライヤーへのカーボンプライシング(炭素税・排出量取引)やサーキュラーエコノミー政策(再生材利用促進、プラ包装材課税等)により原材料への価格転嫁が進み調達コストが上昇 | 5年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・サプライヤーにおける脱炭素活動支援 ・小型、軽量化、再生材活用等による新規資源使用率の削減 |
| 気候変動 資源循環 | 政策・規制 ②規制強化、顧客要求への対応遅れ | ・1.5℃目標達成、循環型社会構築に向けた製品/企業の環境規制の強化、顧客要求も厳格化。対応遅れにより商機を逃し、収益減少 | 3年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・SBTi1.5℃目標*2に資する省エネルギー・再生可能エネルギー施策の積極展開 ・CFP、SuMPO EPD、製品再生材含有率等の情報開示 ・サステナビリティの取り組みを活用した資金調達 |
| 気候変動 資源循環 | 市場 ③消費者行動の変化に伴う 業績影響 | ・リモートワークの増加やペーパーレス化が進むことによる収益減 | 3年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・既存オフィスプリンティング事業の顧客基盤の維持・拡大と社内プロセスの効率化による収益性の向上 ・他社との協業による複合機を含むエッジデバイス供給体制の最適化・商品競争力強化による利益率の向上 ・オフィスサービス事業のストック収益の積み上げ加速 |
| 気候変動 資源循環 生物多様性 | 評判 ④社会的信用の失墜、ブランド価値の毀損 | ・不法投棄等の環境関連法の違反、森林破壊への関与、グリーンウォッシュ等による社会的信用の失墜 | 1年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・環境マネジメントシステムの徹底 ・産業廃棄物管理体制の強化 ・持続可能な原材料調達の促進 ・社員へのグリーンウォッシュ啓発教育 |
*1 1.5℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が1.5℃未満に抑えられている世界
*2 SBTi(Science Based Targets initiative):企業の温室効果ガス(GHG)削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアチブ
物理リスク(4℃シナリオ*3)
| 分野 | リスクタイプ リスク項目 | リスクシナリオ (当社グループへの影響) | 緊急度 | 影響度 | 当社グループの 対応 |
| 気候変動 | 急性 ①自然災害の 急激な増加 | ・気候変動により異常気象の激甚化が進み、 自社生産拠点やサプライヤーにて想定以上の風水害が発生することでサプライチェーンの寸断等により生産停止、販売機会の損失が拡大、気候変動対応費用(災害対策、事業所移転、電力費)の増大 | 5年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・サプライチェーンにおける水害リスクの評価・分析と対策 ・国内拠点における水害対策強化 |
| 気候変動 | 急性 ②感染症の 地域性流行 | 感染症の拡大による不測の事態より以下の事象が発生 ・部品供給、製品工場の製造、輸送機関の遅延や停止 ・販売会社への供給遅延や停止 | 10年 以内 | 10億円~ 200億円 | ・有事を想定したBCP対応 ・重要部品の複数仕入先選定又は代替品の選定 ・リモートワーク等の新しい働き方を想定したBCP訓練 |
| 気候変動 資源循環 生物多様性 | 急性 ③森林資源の 減少 | ・温暖化により森林火災、害虫等の森林被害が増えるとともに、規制が強化され、紙の調達コストが上昇 | 10年 以内 | ~ 10億円 | ・剥離紙を用いないシリコーントップライナーレスラベルによる原紙利用の削減 ・森林保全活動強化(100万本未来の森プロジェクト) |
*3 4℃シナリオ:2100年までの平均気温上昇が4℃上昇する世界
e. 機会の財務効果
気候変動、資源循環、生物多様性における環境影響は単に事業リスクだけではなく、自社製品・サービスの提供価値及び企業価値を高める機会につながると認識しています。
省エネルギー、省資源技術、創エネサービス等を活かしたお客様の環境負荷削減につながる商品やソリューションの提供、DXを支援するソリューション等、様々な機会をもたらし、現時点で環境配慮のオフィス機器、DXを支援するソリューション、環境・エネルギー事業は1兆円規模の売上に貢献しています。
| 分野 | 2024年度実績の概要 | 2024年度 財務貢献効果 | |
| 緩和への貢献 | 気候変動資源循環生物多様性 | ① 環境配慮商品の売上 省エネ機能強化、再生材活用、化学物質管理強化 シリコーントップライナーレスラベル ラベルレスサーマル | 約13,170億円 |
| 気候変動資源循環 | ② 製品再生・部品再生事業 リサイクル設計、再生機販売 | 約310億円 | |
| 気候変動資源循環 | ③ ESG対応を伴う商談売上 入札、商談対応 | 約370億円 | |
| 気候変動資源循環 | ④ 省エネ、省資源、創エネ関連事業 Smart MES、EV、蓄電池の利活用 太陽光発電O&M(オペレーション&メンテナンス) | 約250億円 | |
| 適応への貢献 | 気候変動資源循環 | DXを支援するソリューション スクラムパッケージ等対応 | 約2,620億円 |