有価証券報告書-第58期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:19
【資料】
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【項目】
143項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「社業を通じて医療進歩の一翼を担い、人々の健やかな生命と幸福に尽くし、もって社会の繁栄に寄与する」を社是とし、患者・医療従事者等の安全と医療機関等の経営の合理化・省力化に貢献できる製商品群を製造・販売しております。
(2)経営戦略等
当社グループでは、特に働き方改革に役立つ「プレミアムキット」戦略を積極的に展開しております。当社の「オペラマスター」と「プレミアムキット」は、少子高齢化や人口減少による労働力の縮小と、急性期病院への手術の集中化への対応を迫られる医療機関に対して継続的に大きく貢献できる製品であり、当社グループの柱となる製品となっております。
「オペラマスター」につきましては、2012年より、既存機能の強化ならびに追加機能を備えた新システム「手術室マネジメントサービス」をご紹介しております。本システムは、お客様のご意見・ご要望を元に、現行のオペラマスターのシステム部分に様々な情報収集ツールを追加し、さらに機能を拡張・進化させたもので、そこから得られるデータによって、手術室スタッフの業務状況や手術コストなどの実績管理データを、以前より総合的かつ詳細に分析できる仕組みです。
労働者人口が減少する中で集約する手術への対応が迫られ、より高度な運営効率化の提案を必要とする病院群に対しては、「オペラマスター」の提案(製品、情報、改善)を集中し、将来的には手術に必要なすべての医療材料をジャスト・イン・タイムで提供するSCM(サプライチェーンマネジメント)構想の提案対象として予定しております。
今後も引き続き、特に将来患者が集中すると予想される高度急性期・一般急性期病院への「オペラマスター」及び「プレミアムキット」を中心としたキット製品導入による経営改善の提案に注力いたします。
また並行して、販売力強化のための営業員の増員や教育訓練の充実等に必要となる費用を十分に投下し、引き続き高い提案力による「プレミアムキット」製品の定着を図ってまいります。
特に高度急性期・一般急性期病院へは、「プレミアムキット」でさらなる効率化に貢献してまいります。そして、医療機関における「働き方改革」と「医療安全」へのソリューションとして「プレミアムキット」のご提案を行い、「プレミアムキット」が手術準備のスタンダードとなることを目指してまいります。
新工場で製造される「プレミアムキット」は、術前から術中・術後までの手術材料をトータルでカバーするオールインワンキットとなっております。
従来のキットと比べてより多くの材料を投入することを可能にし、新形状が採用された画期的なキット製品です。
誰でも安全でスムーズに、過不足なく統一された手術準備ができるだけでなく、術前のピッキング作業が大幅に削減されるため、手術準備時間が短縮できます。
また、手術準備の効率化によって本来の業務に集中できる環境を整備することで、安全性の向上に寄与いたします。
「プレミアムキット」による医療機関の経営効率化の提案には、製品だけではなく営業員の専門知識の習得が必要であるため、そのための教育訓練の充実も図ってまいりました。
今後も、プレミアムキットによる競合他社との差別化と新規販売強化を行い、医療機関の効率化と安全性の向上に貢献してまいります。
「R-SUD(単回使用医療機器再製造)」事業とは、1回限り使用できることとされている医療材料SUD(Single UseDevice:単回使用医療機器)を、使用後に製造販売業者が収集し、検査・分解・洗浄・滅菌などの処理を行った上で、同一用途のSUDとして再び製造販売する事業です。
医療機関のコスト削減効果が期待される他、資源の有効活用と環境保護にも繋がることから、国内でのニーズが増えることが予想され、日本では厚生労働省が2017年7月31日に「R-SUD」に関する新しい制度の創設を発表、法令が整備されました。
厚生労働省が「R-SUD」の推進を行う理由は、医療費高騰への対策(医療材料の高騰と人手不足による人件費上昇への対処)と、安全性の担保(医療機関独自で行われていた再利用の防止)の2点にあります。
当社の「R-SUD」事業への参入の目的は、労働人口の減少と病院の機能分化による急性期病院への患者の集中に対応し、手術で使用される材料の全てをセットで提供し、医療現場の最適化を目指すこと(SCM:サプライチェーンマネジメントの実現)と医療費削減の提案にあります。
これは、将来的にはキットビジネスの最終構想として、SCM、病院管理システム、病院経営改善コンサルティングの3つを包括し、「オペ室から病院全体への経営改善へ」貢献することを目指すものです。
「R-SUD」事業につきましては、美浦工場第一を全面改装し、検査・試験等の準備を鋭意進めております。2019年3月末に許認可申請をスタートし、2020年度の事業開始を目指しております。
当社の海外戦略は、これまでインドネシアを中心に展開してまいりました。現地子会社のP.T.ホギインドネシアは、世界でも有数の医療用不織布の製造工場としての地位を確立しておりますが、人件費が今後も増加傾向にあるため、さらなる省力化と自動化を推進し、またインドネシア国内の販売強化と医療材料の内製化を進めることにより、生産性のさらなる改善を図ってまいります。
また、今後は新たな成長戦略の一環として将来的に医療機器の市場として大きな可能性があるASEAN(東南アジア諸国連合)各国での許認可を順次取得することで、世界規模への販売拡大を目指してまいります。
中でも、医療材料等製品の海外展開の第一歩として、当社と三菱商事株式会社は、2018年8月に合弁会社であるホギメディカルアジアパシフィックPTE.LTD.をシンガポールに設立いたしました。現地での営業活動を開始しており、シンガポールの大型国立病院などへの「プレミアムキット」提案を進めております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標といたしましては、1株当たり当期純利益(EPS)、自己資本当期純利益率(ROE)、営業利益を重視しております。
(4)経営環境
医療業界におきましては、増加し続ける医療費を背景に、少子高齢化の進行や人口減少など労働力が不足していく中で医療制度の大改革が進められており、各医療機関では診療報酬の影響等による経営の圧迫で、生き残りに向けてなお一層厳しい経営環境が続いております。
当医療機器業界におきましては、この厳しい環境変化の中で、医療機関の経営改善や効率化に、より貢献する製品・サービスの提供が求められる状況となっております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は、「社会貢献」、「安全なもの作り」、「安定生産」、「お客様との共存共栄」、「社員満足度の向上」、「安定成長」及び「利益改善」を経営のキーワードとして掲げております。当社が販売する製品は、医療の現場で使用されるものが多いため、安全な製品の安定供給は当社の存在意義でもあり社会的責任でもあります。以上のことを踏まえ、下記の対処すべき課題についてそれぞれの施策に取り組んでおります。これらを継続して遂行することにより、企業価値の向上を図ってまいります。
①安全な製品の安定供給
・安定供給のための生産管理体制の強化
・お客様が使いやすく、かつ安全な製品の追求
・新キット工場の自動化による安全性の向上
②継続的な利益成長
・オペラマスター及びプレミアムキットの販売強化
・新製品の販売強化
・新キット工場の自動化による生産性の向上
・インドネシア工場での生産性の改善
・材料の内製化推進
・海外販売事業の拡大
③医療環境の変化への対応
・働き方改革・医療の安全と質の改善・物流改善への貢献
・進歩する医療技術に対応する新製品の開発
・SUD(単回使用医療機器)のリプロセス(再製造)の事業化
・急性期病院向け次世代経営支援ソリューション開発
④内部統制システム・コンプライアンス体制の整備
・情報管理の徹底、社員教育の充実