有価証券報告書-第56期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 15:26
【資料】
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【項目】
108項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「社業を通じて医療進歩の一翼を担い、人々の健やかな生命と幸福に尽くし、もって社会の繁栄に寄与する」を社是とし、患者・医療従事者等の安全と医療機関等の経営の合理化・省力化に貢献できる製商品群を製造・販売しております。
(2)経営戦略等
当社グループは、将来患者が集中すると予想される高度急性期病院、及び一般急性期病院への「オペラマスター」提案をさらに強化いたします。手術情報の集約・活用によって効率的な手術室運営をはじめとした業務改善を実現し、病院全体の経営改善に貢献してまいります。
これまで「オペラマスター」のコンセプトやシステムは、長年ご愛顧いただいておりますお客様のご意見・ご要望にお応えし、進化してまいりました。現在販売中の「手術管理システム」は、ご要望をもとにシステム部分の機能を拡張し、以前より詳細かつ迅速に手術室の実績管理データを分析可能となりました。これにより、手術管理の自動化が図られるとともに、手術室運用の効率化により一層貢献しております。今後も「オペラマスター」の開発を継続・強化し、医療現場のニーズに対応しながら進化を遂げてまいります。
当社グループは創業以来、製品のライフサイクルを重視しております。経営の柱となる主力製品が成熟する前に、次の成長の柱を育成して軌道に乗せる「次期主力製品の開発」を重点施策の一つとして製品開発に注力してまいりました。特に、医療制度改革により大きく変化しつつある現在の医療環境下では、「オペラマスター」、「病院経営管理システム」、「低侵襲」、「医療安全」、「在宅・介護・予防」の5分野に焦点を絞り、市場ニーズの調査・掘り起こしから、新製品の開発・販売、サービスの提供までを一貫して担う「プロダクトチーム制度」を導入しております。各分野のプロダクトチームは、当社グループの5分野の重点施策における一層の業績向上を目指して活動しております。
開発分野の一つである「低侵襲」医療は、内視鏡やカテーテルなどを用いることで手術や検査に伴う負担をできるだけ少なくし、術後の回復も早いという利点があります。このため、近年の外科手術においては開腹手術に代わり、内視鏡手術の増加が顕著になっております。当社グループは「低侵襲」医療分野における新製品として、リバーフィールド株式会社が開発した「内視鏡用ホルダ EMARO」を2015年8月より発売しております。「内視鏡用ホルダ EMARO」は術者の頭部に頭の動きを検出するジャイロセンサーを装着し、両手を使うことなく、内視鏡カメラを直感的に操作できるシステムです。術者はカメラ助手に口頭指示することなく、自分の見たいアングルに内視鏡を動かすことができ、スムーズに手術を行うことが可能です。また、上下左右の操作だけでなく、回転や前後の操作も可能であり、内視鏡メーカーを選ばずに装着することができます。この「内視鏡用ホルダ EMARO」につきましては、使用前に医療機関のご理解を深めていただくことが特に重要と判断し、医療機関において臨床試用及びご評価をいただきました上で販売しております。
当社グループは、常に直接比率の向上を意識して経営に取り組んでおります。間接部門は少数体制で行い、製造部門はできる限り自動化を目指して少数の人員で製造可能な設備と体制を敷いてまいりました。当社グループの成長において、とりわけ重要な戦略である新キット工場につきましては、自動化による効率化により、将来の原価低減や生産量増加への対応、増設設備の細分化による高い稼働率を目指します。さらに、生産管理システムによる間接人員の省力化、部材の内製化の推進などによって、生産性と安全性も同時に追求いたします。これにより、長期的な会社の成長を目指してまいります。
新キット工場の建物は2015年8月に完成し、生産設備の据え付けを実施いたしました。工場建設による減価償却費の増加が原価の上昇要因にはなっておりますが、より安全な製品を安定的に供給するための製造施設として他社との差別化を図ることができるため、当社グループの売上高及び利益に将来大きく貢献するものと考えております。
新キット工場では、新形態のプレミアムキット製品を生産しております。従来のキットは不織布で内容物を包む形態のため、「展開(開封)しづらい」、「荷崩れ・型崩れの発生」、「どこに何があるか分かりにくい」、「手術の手順に沿った配置になっていない」などのご意見をいただいておりました。これらに対応し、手術に使用する衛生材料をひとまとめにした新しい形態に改良しております。新形態では、「安全に開封できる」、「内容物を開封せずに確認できる」、「手術の手順に沿った分散包装」など、お客様が一層使いやすく、かつ安全な製品を医療の現場にお届けしてまいります。オールインワンキットに変更したことで、手術準備を大幅に短縮・削減し、準備工程を標準化できますので、手術環境の改善に一層貢献いたします。また、キットの包材変更により、作業効率と安全性の向上を図るだけでなく、在庫管理業務や物品の受け払い業務まで軽減、適正在庫によるスペース確保までできるというメリットもあり、使用していただいた医療機関からご好評をいただいております。プレミアムキットは少子高齢化や人口減少による限られた労働力と、急性期病院の手術件数の集中化に対応しなければならない医療機関に対し、有用な製品であると考えております。また、当社グループにとって、将来売上高の柱の一つとなる製品と捉えており、会社の営業力・資源を集中的に投下し、早期の拡販に向けて注力してまいります。
インドネシア現地子会社のP.T.ホギインドネシアは、世界でも有数の医療用不織布の加工工場として、その地位を確立しております。P.T.ホギインドネシアでは、ミシンでの縫製など、主に人手のかかる業務を行っております。現在、インドネシアでは年々人件費が上昇しており、今後も増加傾向をたどると予想されることから、工場における省力化・自動化の推進が必要となってまいりました。これに対応し、材料の内製化や生産プロセスの見直しを実施し、日本から不織布生産の技術者を派遣するなど、生産性の改善に注力してまいりました。また、不織布製品の販売面におきましても、インドネシアを含む東南アジア全域は人口が多く経済成長が高いことから、将来的に医療機器の市場として大きな可能性があります。インドネシアの販売会社であるP.T.ホギメディカルセールスインドネシアは不織布製品の販売を行っておりますが、今後は現地病院のニーズに合わせた販売方法を模索しつつ、インドネシア国内の販売を強化し、将来的には東南アジア全域への拡販を見据えてまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営指標といたしましては、1株当たり当期純利益(EPS)、自己資本当期純利益率(ROE)、営業利益を重視しております。
(4)経営環境
増加し続ける医療費を背景に、医療制度改革が進められている状況下、医療環境は大きく変化しております。当社グループの主要顧客である急性期病院におきましては、国が進める社会保障・税の一体改革で描かれた2025年の医療・介護の実現に向けて機能分化が進むことにより、一つの病院で行う手術件数が増加すると予想されます。また、高齢化により患者に対する医療従事者の不足も懸念されているため、効率的な手術室運営や業務負担の軽減を念頭に置いた病院経営が必要不可欠となっております。その中で、当医療機器業界におきましても、厳しい環境変化への対応が求められており、各企業はより一層の経営の効率化及び合理化が求められる状況となっております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は、「社会貢献」、「安全なもの作り」、「安定生産」、「お客様との共存共栄」、「社員満足度の向上」、「安定成長」及び「利益改善」を経営のキーワードとして掲げております。当社が販売する製品は、医療の現場で使用されるものが多いため、安全な製品の安定供給は当社の存在意義でもあり社会的責任でもあります。以上のことを踏まえ、下記の対処すべき課題についてそれぞれの施策に取り組んでおります。これらを継続して遂行することにより、企業価値の向上を図ってまいります。
①安全な製品の安定供給
・安定供給のための生産管理体制の強化
・お客様が使いやすく、かつ安全な製品の追求
・新キット工場の自動化による安全性の向上
②継続的な利益成長
・オペラマスター及びキット製品の販売強化
・プレミアムキットの販売強化
・材料の内製化推進
・新製品の販売強化
・新キット工場の自動化による生産性の向上
・インドネシア工場での生産性の改善
③医療環境の変化への対応
・進歩する医療技術に対応する新製品の開発
・手術室運営の効率化及び医療機関の経営改善に貢献するオペラマスターの更なる付加価値の向上
④内部統制システム・コンプライアンス体制の整備
・情報管理の徹底、社員教育の充実