訂正有価証券報告書-第200期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 14:35
【資料】
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【項目】
144項目
② 戦略
当社はグループ全体に及ぶ気候変動と生物多様性についての影響を確認するため、全事業を対象にシナリオ分析を行い、短期・中期・長期(注1)のリスクと機会を抽出しました。(表1)
また、特に影響が大きいと予想される木材は、気候変動による影響の有無および大小を把握するために、将来の生育適域の変化を文献にて調査し、推計しました。(表2)
気候変動に関しては国際エネルギー機関(IEA)による移行面で影響が顕在化する「1.5~2℃シナリオ(注2)」と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による物理面で影響が顕在化する「4℃シナリオ(注3)」をメインに、その他複数のシナリオ(注4)を使用し分析しました。
生物多様性に関してはリスク分析ツール「ENCORE」(注5)にて事業プロセスに関連する自然への依存と影響の項目を抽出し、リスク・機会が大きいものに関しては、TNFDが推奨しているシナリオを参考に「生態系の劣化」と「規制・思想」を2軸に4つのシナリオを定義し、分析しました。
当社は、気候関連課題・自然関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるという認識のもと、リスクや機会を整理し、戦略の見直しを随時実施しております。(表3)
(注1)短期:現在-数年後/中期:2030年/長期:2050年に影響が強く表れる
(注2)1.5℃シナリオ:NZE(IEA World Energy Outlook 2022)、2℃未満シナリオ: RCP2.6 他
(注3)4℃シナリオ:RCP8.5 他
(注4)APS(Announced Pledges Scenario)、STEPS(Stated Policies Scenario)他
(注5)ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):事業プロセスに関連する自然関連の依存と影響、その大きさの評価ツール。TNFDフレームワークにて使用を推奨されている
(表1)特に重要度の高いリスク・機会一覧と対応戦略
分類説明
気候変動関連生物多様性関連気候変動・生物多様性双方関連

R…リスク(Risk) O…機会(Opportunity)
短…発現期間 短期 中…発現期間 中期 長…発現期間 長期
分類項目事業、戦略、財務計画への潜在的な影響
自然資本への影響
ヤマハの対応策







自然災害・自然災害による施設の損傷、人的被害及びこの影響による生産の停止
・サプライチェーンの被災による生産停止及び仕入値高騰に伴うコストの増加
・損害保険料の増大
・ヤマハグループ拠点(製造・営業・物流)を対象に洪水リスクと損害の再評価を行い、想定される自然災害に対して事前対策や保険付保内容の見直しを実施
R
木材生育
適域変化
・木材の価格上昇、品質低下
・木材代替に要する技術的、仕様変更コスト
・気温上昇、降水・気象状況の変化に伴う木材生育状況悪化による調達コストの増加
・温暖化による生育適域変化予測調査実施(表2)
・希少材料を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化)
R
カーボンプライシング・炭素税などの導入による生産、調達コストの増加
・2031年3月期におけるグループ内エネルギーコストは成り行きで10億円から20億円程度増加する予測
・徹底したエネルギー削減、再生可能エネルギーの利用推進による排出削減計画実施(削減目標達成によりエネルギーコスト増加分を4.5億円から9億円程度に抑制できる見込み)
・ICP(インターナルカーボンプライシング)を設定し(14,000円/t-CO2)、低炭素設備投資を促進
・サプライヤーと連携した排出削減の推進
R
インドア
活動化
・屋内での活動機会増加に伴う楽器需要の増加
・リモートワーク、オンラインイベント・ゲームの拡大による通信機器の需要拡大
・動画配信の拡大に伴う音響機器の需要拡大、ライブと配信のハイブリッドイベントがデファクトスタンダード化
・音響、信号処理、通信技術の融合によるリモート、オンラインイベント用ソリューションの提供
・遠隔でのライブ、レッスン、合奏の実現による新たな顧客体験の創造
O
持続可能な木材の利用木材の代替、有効活用・森林の持続可能性に配慮した製品が、顧客や投資家からの評価を高め、市場での競争力を向上させる
・代替材料の確保による希少樹種の保護
・持続可能性に配慮した木材使用率増加
・既存の希少資源を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化)
・適正な品質基準の設定、端材の有効利用等による歩留まり向上
・楽器適材の調達を持続可能にする「おとの森」活動
O
林産地劣化・木材の過剰伐採や林産地の水不足、水質汚染、土壌劣化により良質な楽器適材が入手困難となる
・木材の価格上昇、品質低下
・生態系の劣化を招いたと見做され、評判が低下する
R
林産業の撤退・木材の入手が困難になり、木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生
・環境に配慮した企業の増加により森林クレジット市場が拡大し、木材の安定調達に影響
・持続可能性に配慮した木材使用率増加
・楽器適材の調達を持続可能にする「おとの森」活動
R
木材の輸入規制・規制対象木材を使用する製品の生産停止による損失
・規制対象木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生
・持続可能性の低い木材使用の削減、代替
R
認証材の安定調達・環境意識の高い顧客、サプライチェーンからの支持
・持続可能性の小さい木材を使用し続けることに対する評判リスクの回避
・持続可能な木材調達による森林保護
・持続可能な森林から産出される認証材の利用拡大
O
有害物質削減事業プロセスで使用する化学物質(VOC、毒劇物)や油による汚染・製造現場からの排出もしくは漏洩事故により、生態系に悪影響を与える
・評判の低下、汚染の回復費用、損害賠償費用、漏洩対策設備改善、管理強化コスト発生
・環境設備に関する構造の基準を定め、漏洩事故の防止に努める
・漏洩リスクを抽出し、想定緊急事態について対応訓練を実施
・VOC削減プロジェクトを設置
・排出先の水域の水質や生物への影響についての調査を実施
R
有害廃棄物による汚染・土壌、地下水の汚染による評判の低下、損害賠償費用、汚染の回復費用発生及び生態系劣化
・法規制が厳格化され、コスト増加
・有害廃棄物の排出削減、適正処分
・有害物質の使用制限
R
水の保全事業プロセスや生活で使用する水の不足・水不足による事業活動の停止・遅延
・水不足地域での多量の水利用による評判の低下
・水使用の削減計画に沿った水リサイクル、節水活動の実施
R


(表2)戦略 木材生育適域変化予測

(表3)特に重要度の高いリスク・機会一覧とシナリオ分析

影響は現在の延長線上影響は拡大関連なし

分類項目気候変動自然資本依存影響R リスク
O 機会
リスク・機会のタイプ
1.5℃~2.0℃
シナリオ
4.0℃シナリオ規制↑生態系↓
規制→生態系↓
規制↑生態系↓
規制→生態系↓
気候変動への対応自然災害R物理(急性)
木材生育適域変化R物理(慢性)
カーボンプライシングR移行(政策・法的)
インドア活動化O製品・サービス
持続可能な木材の利用木材の代替、有効活用影響O効率・リソース
製品・サービス
評判
林産地劣化依存
影響
R物理(慢性)
林産業の撤退依存R移行(政策・法的)
移行(市場)
木材の輸入規制依存R移行(政策・法的)
認証材の安定調達影響O生態系保全
持続可能な利用
有害物質削減事業プロセスで使用する化学物質(VOC・毒劇物)や油による汚染影響R物理(急性)
移行(技術)
移行(評判)
有害廃棄物による汚染影響R物理(慢性)
移行(政策・法的)
移行(評判)
水の保全事業プロセスや生活で使用する水の不足依存R物理(慢性)

自然資本に対する分析
◆LEAPアプローチ
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、さまざまな業種の企業が自然関連課題の評価・管理・情報開示ができるようフレームワークを作成しており、その中で、LEAPアプローチ(注1)を推奨しています。ヤマハではこのLEAPアプローチに則り、当社の自然関連課題を評価・分析しました。
Locate
ヤマハは楽器・音響機器・その他(部品・装置等)の3つの領域でグローバルに事業を展開しております。その中でも、楽器事業はヤマハの売上の6割以上を占める主要事業の一つであり、その原材料は自然資本に依存し、自然との接点が大きい事業です。中でも木材はあらゆる楽器に使用されており、当社の事業と密接に関連しております。一般的に木材はプラスチック等と比べるとエコで持続的な材料であると考えられていますが、楽器用材の中には木材の持つ特性や風合いにより用途を限定的にしている代替困難なものもあり、その持続性が問われております。
また、SBTN(The Science Based Targets Network)の公開している評価ツールの一つであるHigh Impact Commodity List(注2)では、木材は“High Impact Commodity”に該当しており、科学的な面で見ても自然への影響が大きい原材料といえます。そのため今回の評価では、自然への依存度・影響度が高いと考えられる木材について検討を行うこととしました。
「木材調達」優先地域の特定
ヤマハが調達する代替困難な木材の原産エリアを世界地図にプロットし、その中でも特に重要な樹種の原産地を優先地域として特定しました。(図1)
(図1)


Evaluate Assess
Locateで特定した優先地域の依存と影響関係の評価については、TNFDが推奨する自然関連リスク分析ツール「ENCORE」(注3)にて事業プロセスに関連する自然への依存・影響を抽出(図2および図3)した結果、林産物の調達セクターは多くの生態系サービスに依存関係を持ち、GHG排出量・陸生生態系利用・水質汚濁の面で自然に影響を与える事が分かりました。更に事業を通じた自社の知見も加え、依存度と影響度の大きさを分析し、特に重要な項目のリスクと機会についてダブルマテリアリティ(注4)を採用して一覧化(表4)しました。
(図2)依存関係

(図3)影響関係

(表4)
依存
分類・項目依存度リスク機会ヤマハの活動
供給
サービス
自然資源木材の枯渇・規制の強化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ森林資源保全の推進
→安定した使用量の確保
→資源使用量に対する資源成長量の維持・促進
新技術の開発(代替材・技術開発)
→過剰伐採の抑制
→環境に配慮した製品による評価向上
おとの森活動による持続的育成
希少木材の効率的利活用
・木材加工、再生技術の開発 →適切な利用
・希少木材を代替する新素材 →新しい価値
水の枯渇により木の生育・原産地コミュニティの住民生活に悪影響原産地森林機能の維持・回復(水源涵養)
コミュニティにおける生活用水インフラの整備
おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持
おとの森活動による地域開発支援
調整
サービス
水質・水量・水流調整木質原材料産地の洪水・水供給不足・水質汚染により木の生育・原産地コミュニティの住民生活に悪影響
土質調整・土砂保持・微生物分解木質原材料産地の土壌劣化により木の更新・生育が阻害され個体数が減少し調達コストが増加、または調達不能となる恐れ森林被覆面積の維持・回復
原産地森林の植生の維持・回復
おとの森活動による森林回復に向けた取り組み
・林内植栽による森林の更新サイクルの促進
・農業用地への現地有用種の植栽
生態系保全
(受粉・生息環境維持・害虫駆除)
木質原材料産地の生態系劣化により木の生育が阻害され、個体数減少、材質劣化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ森林保全活動による生態系の維持・機能回復
遺伝子多様性の担保
おとの森活動での持続的育成・機能保全
・林内植栽による希少種の保全と多様性維持
自然災害緩和洪水や暴風雨による生育阻害ならびに調達不能
木質原材料産地の森林火災、延焼により木の更新・生育が阻害され、個体数が減少して調達コストが増加、または調達不能となる恐れ
原産地森林機能の維持・回復(水源涵養)
森林火災の抑制、森林機能回復
おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持
おとの森活動での森林火災抑制への取組み
・植林地周辺での防火帯の設置
・早期火入れによる乾季延焼の抑制、植生維持
騒音減衰
気候調整木質原材料産地の気候変動により木の生育適域が変遷し、個体数が減少して調達コストが増加、または調達不能となる恐れ重要種の生育環境の把握・種の保全
新技術の開発(未利用資源の利活用・技術開発)
→特定種の過剰伐採の抑制
→原産地の賦存資源の地産地消
おとの森活動で森林を健全に保つことによる森林機能の維持
・林内植栽による希少種の保全と多様性維持
・希少種の立地環境の研究、育苗技術の開発
希少木材の効率的利活用
希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用


影響
分類・項目影響度リスク機会ヤマハの活動
生態系
利用
陸域圧縮、露出、機械的損傷によった土壌劣化・浸食増加による土壌の性質悪化と植生変化
→木質原材料産地の劣化により種の個体数が減少
→地滑り・森林火災のリスク増加
→人口増加、農畜産用地への森林の転換による資源減少
森林被覆面積の維持・回復
原産地森林の植生の維持・回復
コミュニティにおける土地利用の改善
おとの森活動による森林回復に向けた取り組み
・林内植栽による森林の更新サイクルの促進
・農業用地への現地有用種の植栽
・コミュニティでの森林管理技術の導入、支援
淡水
海洋
汚染非GHG大気汚染
土壌汚染
水質汚染
固形廃棄物
資源利用水の供給
多種多様な木材の供給原産国別の規制強化による調達性低下
資源減少による木材の材質低下、調達性の低下
持続可能性に配慮した木材の優先的利用
新技術の開発による利用可能な木材の最適化(集約と多様化)
持続可能性に配慮した木材利用の推進
・自社基準の設定
・木材デューディリジェンスの実施
おとの森活動による持続的資源育成
・唯一性の高い希少資源の保全
木材の効率的利活用
・木材加工・再生技術の開発
・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用
気候変動温室効果ガズ現場での重機の使用、製炭、木材・製品の輸送、生産活動、製材・製品・梱包材の廃棄焼却により発生
→気候変動による種の植生変化・生息地減少
→気候変動による災害の頻発
森林資源保全の推進
→森林機能による炭素固定
→資源使用量に対する資源成長量の維持・促進
新技術の開発(代替材・技術開発)
→過剰伐採の抑制
→木材利用効率の改善・向上
→原産地の賦存資源の地産地消
資源の再利用
おとの森活動による資源保全
・森林モニタリングによる炭素固定評価機能の開発
・植林、環境保全による資源の持続的育成
木材の効率的利活用
・木材加工・再生技術の開発
・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用
外来種
その他
外来種侵入
騒音公害


Prepare
LEAPアプローチのL、E、Aの分析により特定された依存、影響、リスク、機会に対応するため、これらを評価し管理するための戦略や開示指標を設定しました。「④ 指標及び目標」をご覧ください。
その他、今回の分析で特定された優先地域における、持続的な木材調達に関する具体的な取り組みについては、おとの森活動(注5)紹介ページをご覧ください。
(注1)LEAPアプローチ:企業の自然との接点、依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を判定 するための統合的な評価方法。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏むことで、企業は自社にとって重要な自然との接点を評価することができる。
(注2)自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもの。
(注3)ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):事業プロセスに関連する自然関連の依存と影響、その大きさの評価ツール。
(注4)ダブルマテリアリティ:環境が企業に与える影響だけでなく、企業が環境に与える影響も含めるという考え方。
(注5)おとの森活動 https://www.yamaha.com/ja/stories/environment/otonomori/

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