有価証券報告書-第19期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/30 16:13
【資料】
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【項目】
156項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
1.会社の経営の基本方針
当社は1918年に日本初の純国産万年筆を発売して以来、100年以上にわたり、筆記具製品の製造販売を中心とした事業を継続してまいりました。現在では万年筆のみならず、なめらかな書き味の油性ボールペン「アクロボール」や消せるボールペン「フリクションボールノック」をはじめとした各種ボールペン、「ドクターグリップ」をはじめとしたシャープペンシル等を、世界でも数少ない総合筆記具メーカーとして、広く世界190以上の国と地域で販売し、各地でご愛用いただいております。今後も「書く、を支える。」という基本理念の下、業界の水先案内人として、高付加価値、高品質かつ適正価格の製品の開発・製造・販売を継続し、「PILOT」及び蒔絵万年筆の「NAMIKI」ブランドを世界中で愛していただけるような経営を目指すとともに、持続的な成長と企業価値向上を追求してまいります。
2.目標とする経営指標
当社グループは、連結経営を重視する中で、連結売上高、連結営業利益並びに連結経常利益の伸長に努め、引き続き安定的な利益体質の構築に向けた経営基盤の強化を目指してまいります。新型コロナウイルス感染症の影響は国や地域で異なることから、その収束時期を正確に見通すことは困難ですが、2021年度期末に向けて緩やかにコロナ禍が収束していくことを前提条件とした上で、市場の回復はそれ以上に長期化することも想定し、翌連結会計年度は、連結売上高920億円以上、売上高営業利益率15%以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上の確保を目指してまいります。なお、中長期的な各種経営指標の目標数値につきましては、世界経済の状況等経営を取り巻く環境を精査したうえ、次期中期経営計画(2022~2024年)において開示させていただく予定です。
3.中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、他社と差別化した付加価値の高い製品を継続的に開発し、適正な価格で販売することにより、価格競争で消耗することなく利益を確保していくこと、世界各国の経済状況を見極め、適時かつ適所に製品を投入して販売エリアを拡大していくこと及び主力のステイショナリー用品事業により培った技術や販売ルートを活用した関連事業を展開することにより、事業領域と収益の拡大を図っていくことを中長期的な会社の経営戦略の基本としております。
また同時に、継続的な事業の推進に向け、経営基盤を盤石にするための人材確保や育成にも積極的に取り組んでまいります。当社グループは戦略をより具体化するための方策として、2019年を初年度とする3ヵ年の中期経営計画を策定して進捗を図っております。
[中期経営計画概要]
(1) 経営方針:「変わらぬ想い、新たな挑戦、次の100年へ」
① 変わらぬ想い … 創立以来、築かれ培われてきた技術と伝統を大事にし、未来に継承していきます。
② 新たな挑戦 …… 常に市場と向き合い、最高の満足を顧客に提供できるような顧客中心企業として、新たな視点、新しい発想、斬新なアイディアを歓迎し、タブーなく議論し、変わるべきところは変わり、時代や環境の変化に対応します。
③ 次の100年へ…… この3年間で次の進化へとつながる基盤を作り、世界の顧客に、この先も驚きと感動と満足を届けられるような、愛されるパイロットを創ってまいります。
(2) 将来的に目指す姿:「世界のそれぞれの国と地域でマーケットシェアトップの企業になる」
「当社が製造するすべての製品カテゴリーでトップとなるアイテムをつくる」
上記目標を実現するために、本中期経営計画においては
① 製品・サービス全般にわたり、顧客目線に立ち、顧客満足度の最大化を図ります。
② ブランドが顧客に選ばれる商品力・販売力・供給力の充実を図ります。
③ 目標の達成及び経営基盤の強化のためにグループ内の人材育成を図ります。
以上を重点施策として段階的に実施してまいります。
当社は、2018年10月に創立100周年を迎えましたが、それは決してゴールではなく、1つの通過点に過ぎないということをグループ社員一同が共通して認識し、その先も継続的、安定的に成長していけるような諸施策を策定・推進して、更なる企業価値の向上を図ってまいります。
4.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは「書く、を支える。」企業として、世界190以上の国と地域で製品を販売しておりますが、その製造の多くは国内で行っているため、グローバルに展開する際の為替の変動リスクにも耐えうる収益構造が必要となります。これまでに生産・物流の効率化をはじめとした数々の改善を進めてきた結果、近年では大幅な利益率の向上を実現し堅調な業績を維持しておりますが、今後も継続して改善に取り組んでまいります。
収益面においては、新型コロナウイルス感染症の影響による販売数量の減少に伴う製品の粗利率の低下が見込まれる他、収益構造の改善により向上した利益率から得られる利益につきましても、市場差別化のための高付加価値商品の開発、生産設備の増強やITインフラの整備・充実、広告を含めた各種マーケティングの強化施策等への投資を行い、一時的な営業利益率の低下が見込まれるものの、将来的な成長に向けた施策を実施することで安定した事業の継続を図ってまいります。
また新型コロナウイルス感染症の感染拡大にあたり、当社グループで働く人々とその家族、ステークホルダーの皆様の健康と安全確保を最優先に、感染拡大防止に継続して注力いたします。その収束まで、各国政府等の要請に基づき適切に対処すると同時に、コロナ禍の長期化を想定する中で、グループ子会社を含む資金の手当てや経費の徹底的な削減を実施するとともに、各国の状況にあわせた事業継続への取り組みを進めてまいります。
同時にガバナンスの実効性を向上させるために、これまでに指名・報酬諮問委員会の設置、取締役会に占める社外取締役比率の増加等を実施してまいりました。今後もより実効性のあるガバナンス体制構築に向け、さらに取り組みを加速させてまいります。
加えて当社グループは、持続的な成長と持続可能な社会の発展に寄与するため、サステナビリティの取り組みを推進しております。将来世代が豊かな生活を継続的に営むためには、地球環境に配慮した企業活動が重要であると認識しております。リサイクル材を使用したBEGREEN製品の販売、生産工程における廃棄物の削減や生産方法の見直しによる環境負荷の低減、そして率先してリデュース、リユース、リサイクルのための社会活動を継続し、持続可能な社会の実現に向けてグループ一体となって取り組んでまいります。
当社グループの事業は、少子化に伴う国内市場の縮小や世界的に進むデジタル化等の要因により、高い成長が見込まれにくい分野に属しております。その中で当社グループはお客様に喜んでいただけるような付加価値の高い魅力的な製品の開発や、販路の整備による「企業価値、ブランド力の向上」、持続的な成長を支えるための「経営資源の再配分」、ガバナンスを向上させ将来的展望を見据えた「経営基盤の強化」を中長期的な観点から経営施策の柱に据え、世界のトップブランドとなるべく、販売しているそれぞれの国と地域で、筆記具カテゴリーにおけるトップシェアを目指し、販売シェアの拡大を図ってまいります。