有価証券報告書-第105期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/23 12:54
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167項目
※新型コロナウイルス感染症の影響および当社グループの考え方
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大収束後に予想される顧客・市場・社会の変化に対応し、新たな提供価値を創出することを重要な課題と認識しております。
新型コロナウイルス感染症がサプライチェーン、グローバリゼーションに与える影響に鑑み、当社グループとして、ビジネスモデルの見直しが求められます。例えば、デジタルトランスフォーメーション(注)(以下、DX)の推進においては先端技術の採用などにより、外部環境の変化に対応した経営戦略を推進してまいります。
なお、当社グループの基本理念、ビジョン、長期経営方針に変更はありません。2020年度に最終年度となる中期経営計画「ACE-2020」(以下、「ACE-2020」)については、計画にある各施策の遂行を基本としますが、新型コロナウイルス感染症による影響を分析し、適宜、新たな施策を講じてまいります。
(注)デジタル技術とデータを活用して、顧客や社会のニーズに対応するため、製品やサービス、ビジネスモデル、業務プロセス、組織、企業風土などを変革し、競争優位性を確立すること。
当社は、2032年までを対象とする「長期経営方針」および2016年度~2020年度の5ヶ年を対象とする
「ACE-2020」に掲げる事項を対処すべき課題と捉えております。
(1) 基本理念
当社は、グループの共通の価値観として、以下の経営理念、ビジョン、NAGASEウェイを掲げております。
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(2) 長期経営方針
当社グループは、創業200年の節目を迎える2032年度に向かい、「現行比3倍の利益水準の常態化」を目指して、「成長に向けたチャレンジ」と「成長を支える経営基盤の強化」を骨子とした長期経営方針を2014年度に策定しております。
「成長に向けたチャレンジ」においては、注力領域への経営資源の投下と、従来からのビジネスモデルに依存する体質からの脱却を通じ、これまでの事業の延長だけではなし得ない飛躍的な成長を目指します。「成長を支える経営基盤の強化」は、「成長に向けたチャレンジ」を成功に導くために、事業の拡大とグローバル化に寄与する経営基盤を構築してまいります。
(3) 中期経営計画「ACE-2020」について
長期経営方針の目標実現のために、2016年度からの17年間を3つのStageに分け、2016年度から2020年度までの5ヶ年をStage1:「変革期」と位置付け、「ACE-2020」をスタートしました。
「ACE-2020」の“ACE”は、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表しています。
「ACE-2020」では、商社中心の考え方から、商社をグループ機能のひとつと考え、製造、研究、海外ネットワーク、物流、投資の各機能を最大限活用し、グループ一丸となって世界へ新たな価値を創造し、提供することを目指しております。
「ACE-2020」の定量目標および推移は下表のとおりです。
目標第105期(2019年度)第104期(2018年度)第103期(2017年度)第102期(2016年度)
連結売上高1兆円以上7,995億円8,077億円7,839億円7,223億円
連結営業利益300億円以上191億円252億円241億円150億円
ROE6.0%以上4.9%6.6%5.8%3.7%

(4) 「ACE-2020」の骨子と施策
「ACE-2020」では、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革を実行しております。
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① 収益構造の変革
重点施策①-1:「ポートフォリオの最適化」
「ACE-2020」では、経営資源の最大効率化を進めるために、成長性、収益性、事業規模を観点に、事業を「注力領域」、「育成領域」、「基盤領域」、「改善領域」の4つの領域に仕分けを行い、各領域にあった戦略実行により、事業拡大を図っております。
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当期は、「注力領域」であるライフ&ヘルスケアにおいて、米国のPrinova Group, LLC(以下、Prinova社)を子会社化しました。Prinova社は、北米・欧州を中心に食品素材販売、配合品製造および最終製品の受託製造までを手掛けるバリューチェーンの垂直統合型事業を展開しており、NAGASEグループの既存事業とのシナジー創出により成長を図ってまいります。また、㈱林原の海外ビジネスの拡大を図るべく中国(厦門)にアプリケーション開発ラボ「長瀬食品素材 食品開発中心(厦門)」を設立しました。なお、食品素材・食品添加物・機能性素材分野の強化を目的に、2020年4月1日にフード イングリディエンツ事業部を新設しました。
同じく「注力領域」であるエレクトロニクスにおいては、成長が見込まれる次世代情報通信市場(5G市場)に経営資源を投入しました。NAGASEグループが持つ要素技術とネットワークの有効活用が可能となる高機能素材および高速通信世代に要求される技術ソリューションにおいて、次年度以降につながる基盤を構築しました。
「育成領域」では、2016年度よりIBM社と共同で開発しているマテリアルズ・インフォマティクス(注)1(以下、MI)のプロジェクトは順調に進んでおり、次年度、NAGASEグループ内外に対して、サービス開始を見込んでおります。また、デジタルマーケティングのプラットフォーム(注)2開発のため、専門性の高い人的資源を確保し、米国(フィラデルフィア)に拠点を開設しました。なお、MIプロジェクトやデジタルマーケティングの展開を含むNAGASEグループのDX推進を目的に、2020年4月1日にグローバルマーケティング室を設置しました。
ナガセR&Dセンターでは、従前より取り組んできた希少アミノ酸「エルゴチオネイン」の研究が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2019年度課題設定型産業技術開発費助成事業に採択されました。エルゴチオネインの生産において、化学合成から環境配慮型バイオプロセス確立への研究を進めております。
「基盤領域」では、中国における環境規制の強化および貿易摩擦による供給不安を解消することを目的にリスクケミカルの調査・分析を行い、バリューチェーン上で情報を共有しました。また、国内外における合成樹脂の販売は、減速する市場においても、高機能樹脂を中心に前年水準の販売量を維持し、「基盤領域」における商社機能を果たしました。
また、㈱アイエンスを関連会社化し、排水・循環水・排ガス処理事業のグローバル展開を図ってまいります。上下水の水質向上は持続可能な社会を実現するためのグローバルな課題のひとつであり、今後も、「基盤領域」のネットワークを活用して環境貢献事業への展開を進めてまいります。
「改善領域」では、一部の不採算事業の撤退を決定しました。
(注)1. データと人工知能を用いて新規材料や代替材料の探索などを効率よく行う情報科学の手法。
2. 顧客の閲覧・購入履歴のデータを活用し、人工知能などを用いたデータ解析を行うことによる効率的なマーケティング手法とその仕組み。
ポートフォリオの最適化:2019年度実施の具体的施策
注力領域● 米国のPrinova社を子会社化
● 中国(厦門)にアプリケーション開発ラボ設立
● フード イングリディエンツ事業部を新設
● 次世代情報通信市場(5G市場)における基盤構築
育成領域● MIの開発
● デジタルマーケティングのプラットフォーム開発に着手
● DX推進のため、グローバルマーケティング室を新設
● 希少アミノ酸「エルゴチオネイン」がNEDOの助成事業に採択
基盤領域● リスクケミカルの情報発信
● 高機能樹脂の拡販
● ㈱アイエンスの関連会社化による環境貢献事業の推進
改善領域● 一部の不採算事業の撤退を決定

重点施策①-2:「収益基盤の拡大・強化」
「ACE-2020」では、商社業・製造業それぞれが独自の重要業績評価指標(KPI)設定と施策実行により、各機能を向上させるとともに、それぞれの機能を活用した新たな事業の創造を目指しております。
商社業は、海外の売上規模の拡大によりグローバル展開のさらなる加速を目指し、製造業は、将来の注力事業の育成とコストダウンによる経営の安定化(損益分岐点の改善)を進めております。
当期は、注力エリアである米州において、高付加価値事業の創出等を目的に、樹脂等の分野における革新的な技術プラットフォームおよび優れた製品開発能力を有する米国のINTERFACIAL CONSULTANTS社を子会社化しました。
製造業においては、前期より継続しておりましたグループ製造責任者会議を発展させ、グループ製造連携委員会を発足しました。同委員会は、NAGASEグループとしての標準的な製造管理体制を構築し、安全・品質・環境対応などの非財務項目の改善活動を促進してまいります。
収益基盤の拡大・強化:2019年度実施の具体的施策
商社業● 注力エリアである米州においてINTERFACIAL CONSULTANTS社を子会社化
製造業● グループ製造連携委員会を発足

② 企業風土の変革
重点施策②-1:「マインドセットの徹底」
「ACE-2020」では、「主体性・責任感・危機意識の醸成」、「トップメッセージの共有化」、「モニタリングとPDCAの徹底」を進め、グループ一丸となって主体的に行動を起こす仕組みづくりに取組んでおります。
当期は、「モニタリングとPDCAの徹底」として、注力および育成領域における新規施策の収益貢献が想定に届かず、各施策の蓋然性評価および課題抽出を実施しました。
マインドセットの徹底:2019年度実施の具体的施策
● 「ACE-2020」における各施策の蓋然性評価および課題抽出

重点施策②-2:「経営基盤の強化」
「ACE-2020」では、「効率性の追求」を進め、連結の売上高販管費率の0.5%改善を目指しております。また、「人財育成」を進め、競争力向上と持続的発展を可能にする人財を育成しております。
当期は、「効率性の追求」として、コーポレート機能の強化および間接業務(取引リスクマネジメントとオペレーション)の生産性向上を目的に、組織と機能の集約化を進めました。次年度より、長瀬ビジネスエキスパート㈱は、グループ全体の取引リスクマネジメントの高度化と効率性の向上を担うことになりました。
「人財育成」においては、多様な人財の活用を方針として、労働年齢に対応する人事制度の変更、グローバルのリーダー候補の可視化、リーダー人財の育成計画などの仕組みづくりを行いました。
経営基盤の強化:2019年度実施の具体的施策
● 長瀬ビジネスエキスパート㈱への業務移管による組織と機能の集約化
● 多様な人財活用に向けた人事施策の実施


(5) 経営者による当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等につきましては、米中貿易摩擦に加え、第4四半期に発生した新型コロナウイルス感染症の影響による需要と市況の下落の影響を受け、通期業績は当初見込みを下回り、前期比減収減益となりました。
一方で、MIの開発継続やデジタルマーケティングの開発着手などの投資は継続し、将来に向けて、新しいビジネスモデルの構築に必要とされる技術開発を進めました。
「ACE-2020」では、外部環境の影響を受けやすい収益体質からの脱却を目指し、「ギャップを埋める対策」を掲げて各施策を策定・実行しております。現時点では各施策の収益貢献は低く、事業戦略のPDCAサイクルに課題を認識しました。(4)に記載の通り、各施策の蓋然性評価を開始しており、来期および次期中期経営計画の戦略策定において改善を図ってまいります。
また、当社グループは、資本効率性の改善を課題として認識しております。「ACE-2020」では、注力領域の規模の拡大、全領域の資本効率の改善、および新たなビジネスモデルの育成により改善を図っております。
「ACE-2020」は、KPIとして、「注力ビジネス拡大」、「グローバル展開の加速」、「製造業の収益力向上」、「効率性の追求」、「投資」、「強固な財務体質」を設けております。今期、「ACE-2020」の施策である「注力領域に追加できるコーポレート規模のM&A」を実施し、各KPIの向上に貢献しています。
「注力ビジネス拡大」においては、(4)に記載の通り、Prinova社を子会社化することにより欧米における食品素材関連事業のプラットフォームを獲得しました。2012年度の㈱林原の子会社化に続き、新たな成長ドライバーの確保および事業・地域ポートフォリオの最適化が進んだことを評価しております。今後、子会社化により発生したのれんを上回るシナジー創出が資本効率性の観点から課題として認識しております。しかし、もう一つの「注力領域」であるエレクトロニクスは、「ACE-2020」策定時の前提と外部環境が乖離しており、戦略の見直しが必要であると認識しております。
「グローバル展開の加速」においては、「ACE-2020」のKPIとして掲げている海外売上高6,000億円により、各エリアでNAGASEグループがプレゼンスを発揮し、その結果として、エリア独自の市場開発が可能となることを目的としています。技術優位性のある企業の子会社化やデジタルマーケティングへの先行投資は、今後のエリア独自の市場開発の手段として有効と評価しております。
「製造業の収益力向上」においては、(4)に記載の通り、Prinova社、INTERFACIAL CONSULTANTS社および㈱アイエンスの関係会社化など新規市場の開拓を進めました。また、Prinova社のPMI活動として、NAGASEグループ製品の米州における採用、NAGASEグループのアジアチャネル利用によるPrinova製品の拡販など、シナジー効果が期待できる施策を進めてまいります。
「効率性の追求」においては、グループ全体の売上高が想定を下回り、加えて、Prinova社買収に伴う費用の増加および中長期的な成長に向けた先端技術への投資による費用の増加等により、連結の売上高販管費率の改善が想定と乖離しています。(4)に記載の通り、長瀬ビジネスエキスパート㈱を主体とし、業務・組織・機能の効率化を推し進め、引き続き、効率性の追求を図っております。
今期、Prinova社、INTERFACIAL CONSULTANTS社など成長に向けた投資として784億円の支出を行いました。運転資本は143億円増加しましたが、子会社の新規連結に伴う増加分が264億円であり、樹脂原料や化学品等の在庫管理を徹底し、運転資本の適正化を図っております。また、株主還元は配当金の支払として57億円の支出を行いました。
これらの資金支出の財源は、営業活動によるキャッシュ・フロー330億円に加え、長期借入による調達254億円および社債の発行による調達200億円であり、結果として、グループ全体の有利子負債は503億円増加しました。
今期、「ACE-2020」の施策の一つである「注力領域におけるコーポレート規模のM&A」を実施し、KPIとして設定された「成長投資額」は達成しました。一方で、「強固な財務体質」をKPIとして設定しており、今後は、のれんを上回るシナジーの創出、適正な運転資本水準の維持により、資本効率性の改善を図ってまいります。
なお、上記文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(6) 次期の見通し
① 次期における業績全般の見通し
次期の当社グループを取り巻く環境として、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響を受け、世界経済の大幅な悪化が予想されます。
このような状況の下、来年度は、中期経営計画「ACE-2020」の最終年度となりますが、「ACE-2020」で掲げた各施策の遂行を基本としつつ、新型コロナウイルス感染症への対応および感染拡大収束後に予想される顧客・市場・社会の外部環境変化に対応した経営戦略の更新を適宜行ってまいります。
次期の業績見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響が下半期においては概ね回復する前提のもと、以下のとおり策定しております。
生活関連セグメントでは、第2四半期連結会計期間において買収したPrinova社の業績が次年度では通期にわたり寄与すること、および、同社のビタミン類、アミノ酸類等の販売が主として欧米で好調に推移することにより、大幅な増収・増益を見込んでおります。一方、他のセグメントでは、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、特に自動車業界に関わる事業の比率が高い機能素材セグメント、モビリティ・エネルギーセグメントでは相当程度の減収・減益を見込んでおります。また、加工材料セグメントでは、減収に加え、情報印刷関連材料ビジネスにおける市況下落の影響による収益性の悪化等により、相当程度の減益を見込んでおります。
なお、次期の業績見通しにつきましては、現時点で得られた情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいて算出しておりますが、実際の業績は、新型コロナウイルス感染症拡大の収束時期、海外および国内の景気動向、為替動向など様々な要因により大きく変動する可能性があります。
(単位:百万円)
売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属
する当期純利益
2021年3月期 見通し754,00015,00015,50012,500
2020年3月期 実績799,55919,16719,08315,144
増減率△5.7%△21.7%△18.8%△17.5%

② 次期におけるセグメント別業績の見通し
(売上高)
(単位:百万円)
2020年3月期
実績
2021年3月期
見通し
増減率
機能素材169,318148,000△12.6%
加工材料267,078243,000△9.0%
電子115,12384,500△26.6%
モビリティ・エネルギー126,000103,000△18.3%
生活関連121,545175,000+44.0%
全社・その他492500+1.5%
売上高 計799,559754,000△5.7%

(営業利益)
(単位:百万円)
2020年3月期
実績
2021年3月期
見通し
増減率
機能素材5,3644,300△19.8%
加工材料8,5265,600△34.3%
電子5,3964,800△11.1%
モビリティ・エネルギー1,8901,100△41.8%
生活関連3,9736,800+71.1%
全社・その他(注)△5,984△7,600-
営業利益 計19,16715,000△21.7%

(注)セグメント間取引消去による調整を含んでおります。

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