有価証券報告書-第111期(2025/04/01-2026/03/31)
(1)中期経営計画ACE 2.0の総括
当社グループは、2021年度から2025年度までの5ヶ年を対象とした中期経営計画ACE 2.0において、“質の追求”を基本方針として掲げました。「A(主体性)」「C(必達)」「E(効率性)」のマインドを持ち、NAGASEの持続的な成長を可能にするため、すべてのステークホルダーが期待する“想い”を具体的な“形”(事業・仕組み・風土)として創出することを目指し、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革、およびこれらを支える機能の拡充を推進してまいりました。
結果として、成果を出せる体制に改革でき、最終年度(2025年度)における財務KGIとして掲げた「ROE8.0%以上、営業利益350億円」という目標に対し、ROE8.0%、営業利益447億円となり、共に達成いたしました。
財務KPIは、ACE 2.0期間中に改廃を行い、「率の経営」の推進のため3つの財務KPIを設定・運用した結果、収益性が向上し、財務KGIの達成に貢献しました。
また、非財務目標についても、「カーボンニュートラル」への取り組みでは、Scope1,2のGHG排出量を2013年度比で49.2%削減し、目標である37%以上削減を達成いたしました。「従業員エンゲージメント」については、(グループ)エンゲージメントサーベイ実施割合100%、2025年度の(単体)エンゲージメントサーベイスコアが「61.7」となり、目標である60以上を達成しました。
(財務KGI)
ACE 2.0の定量目標および実績
ACE 2.0の定量目標および実績は、下表のとおりです。

(財務KPI)

(非財務目標)

(ACE 2.0基本方針)
各施策の5ヶ年の行動実績と、次期中期経営計画に向けて認識された課題は以下のとおりです。
(ACE 2.0振り返り)

1.収益構造の変革
1―1 収益性・効率性の追求
経営資源の最大効率化を図るために、経営資源の確保と再投下を実行しました。事業ポートフォリオを従来の事業軸から、商社と製造による機能軸に変更し、「基盤」、「注力」、「育成」、「改善」の4つの領域に分類しました。
「基盤」領域は、フードと半導体分野にて商社機能の拡充を図り、「注力」領域は、フード、半導体、およびライフサイエンス分野へ積極的に経営資源を投下し、「育成」領域は、研究開発機能の拡充、およびグローバルサウスへの事業を展開し、「改善」領域は、不採算事業や減損懸念事業からの撤退を進めました。

<基盤領域>商社機能および特定分野以外の製造機能を事業ポートフォリオにおける基盤領域と定義しています。商社機能は、グローバルネットワークとNAGASEの人材が有する情報の目利き力を活かし、社会および顧客課題の探索とソリューションのマッチングを担います。この取り組みを通じて獲得したキャッシュと良質な情報を注力・育成領域の事業展開に活かし、将来の新規事業・新規素材の創出に欠かせない機能を果たしています。
フード分野では、米国Prinovaグループを通じて、米国の甘味料専門商社(The Ingredient House社)やブラジルの香料・食品素材メーカー(Flavor Tec社、Aplinova社)を買収いたしました。これにより、アロマ事業等におけるバリューチェーンの垂直統合を実現するとともに、南米市場等でのグローバル展開と取扱製品の販売拡大を本格化させております。
半導体分野では、当社の広範なネットワークや専門知識、特殊物流ノウハウ等を持つ商社としての総合力が高く評価され、最先端半導体の国内製造を目指すRapidus株式会社の材料輸送取りまとめ業者に選定されました。次世代半導体のサプライチェーン構築に中核的立場で貢献しております。
<注力領域>Prinovaグループを中心としたフード分野、ナガセケムテックス社を中心とした半導体分野、ナガセヴィータ社を中心としたライフサイエンス分野における製造機能を注力領域と定義し、積極的な資本投下と事業基盤の拡充を行いました。
フード分野では、米国Prinovaグループにおいて新経営体制のもと基盤強化を図りました。課題であったNutrition事業では、米国ユタ州の新工場立ち上げ時、費用先行の状況が続きましたが、人員の最適化、自動化設備の導入など、徹底した原価低減の他、営業体制の再構築など、収益改善策を推進いたしました。その結果、2025年度には収益回復の目途が立ち、次年度以降の本格的な利益貢献に向けた体制を整えました。
半導体分野では、ナガセケムテックス社を中心に、需要が急増する先端半導体向け液状封止材の生産能力増強や、次世代パッケージ向け新素材「a-SMC」の開発を進めました。また、米国SACHEM社のアジア地域における半導体用高純度化学品事業(現ナガセサークレアグループ)を買収し、半導体製造用薬液(TMAH)の回収・再生事業に向けた新工場を開設いたしました。
ライフサイエンス分野においては、旧旭化成ファーマ株式会社より診断薬および診断薬酵素等の事業を買収し、2025年7月に「ナガセダイアグノスティックス株式会社」として事業を開始いたしました。同社が有する高感度な診断薬用酵素の技術力と、当社の既存事業およびグローバルネットワークを融合させ、技術シナジーの創出や新興国市場への販売拡大による事業成長を狙ってまいります。
(注力領域の進捗)

<育成領域>将来の収益の柱となる新規素材の研究開発や新規事業、高成長エリアを育成領域と定義し、中長期的な視点での種まきを実行いたしました。
研究開発(バイオ)機能では、グループ横断の「NAGASEバイオテック室」を創設したほか、米国カリフォルニア州に新研究所を開設し、AI・ロボティクスを活用した開発期間の飛躍的な短縮基盤を整えました。また、さらなる市場拡大が期待できる「グローバルサウス(インド、インドネシア、メキシコ、ブラジル)」へのエリア戦略を推進し、自動二輪・EV部品に関連する事業の合弁会社の設立やフード事業の商権拡大を目的としたM&A等を行い、将来への布石を着実に打ちました。
<改善事業>不採算事業や減損懸念事業等を改善領域と定義し、効率性およびベストオーナーの観点から事業ポートフォリオの見直しを断行いたしました。
具体的には、セツナン化成社、米国SOFIX社、大泰化工社等の売却・清算のほか、フィンランドInkron Oy社の売却等を実行し、将来の損失リスクの低減、資産の効率化を図りました。損失10億円以下という目標は未達となりましたが、引き続き損失削減に努めます。
(事業子会社の営業損失、持分法損失、減損損失、不採算取引の金額規模)

1-2 既存事業の強化
<率の経営の徹底>全事業において、「率の経営」の浸透を図り、収益性の向上を徹底いたしました。具体的には、採算性が相対的に低い取引について是正を行い、条件が整わない場合には商権返上も選択の一つとして収益性の向上に努めるとともに、在庫の保有水準の適正化など運転資本の効率化に取り組みました。こうした取り組みは、筋肉質な経営体質への転換を進め、財務KPIで掲げた3指標の改善にも貢献しました。
<事業部の再編>組織運営の合理化、意思決定のスピードアップおよび成長分野への人的資源の最適配分を目的として、従来の11事業部を7事業部へと再編いたしました。また、各種会議体の見直しと稟議規程の改定を行い、事業部門再編の効率的な運用を実現しました。
<グループ会社の再編>ケミカル分野をナガセケムテックス社へ、バイオ分野をナガセヴィータ社へ集約するグループ再編を実行いたしました。高度な技術とリソースを中核会社へ結集し、経営資源の利活用最大化と生産性向上を実現する体制を整えました。
1-3 持続可能な事業の創出
社会・環境課題の解決に貢献する新たなビジネスモデルとして、商社・製造・研究の3つの機能を活用した“ユニークネス”の概念に通じる事業開発を進めました。
<生分解性SAPの開発>ナガセヴィータ社の酵素技術とナガセケムテックス社の樹脂製造技術を掛け合わせ、でんぷん由来の生分解性高吸水性ポリマー(SAP)を開発いたしました。パートナー企業との共同開発を通じ、使用済み紙おむつから再生パルプやSAF(持続可能な航空燃料)を生成するリサイクル基盤の構築など、社会実装に向けた取り組みを加速させました。
<半導体用現像液の回収・再生事業>米国SACHEM社のアジア地域における半導体用高純度化学品事業を買収し、国内初となる半導体製造用薬液(TMAH)の回収・再生事業を創出いたしました。大阪府東大阪市に新工場を建設し、半導体業界の環境負荷低減(水・エネルギーや産廃処理の削減)に貢献するビジネスを推進いたしました。
2.企業風土の変革
2-1 経済価値と社会価値の追求
持続的な成長には経済価値と社会価値の両立が不可欠であるとの認識のもと、マテリアリティ(重要課題)を再定義いたしました。
マテリアリティにつきましては、ACE 2.0策定時以降に生じた外部環境の変化等を踏まえ、2024年9月に課題を再整理し、サステナビリティ推進委員会および取締役会での議論を経て見直しを実施いたしました。その結果、従来の「従業員エンゲージメントの向上」「脱炭素社会への貢献」「透明性の高いコーポレート・ガバナンス」に加え、当社グループが新たに取り組むべき重要課題として「健康寿命延伸への貢献」「サプライチェーンの持続性への貢献」「資源循環社会への貢献」を追加し、計6つのマテリアリティとして再特定しております。今後も経営環境の変化に合わせ、継続的な見直しを実施してまいります。

これらの課題解決に向けた非財務目標のうち、「カーボンニュートラル」への取り組みでは、Scope1,2のGHG排出量を2013年度比で49.2%削減し、目標である37%以上削減を達成いたしました。「従業員エンゲージメント」については、(グループ)エンゲージメントサーベイ実施割合100%を達成し、2025年度の(単体)エンゲージメントサーベイスコアが「61.7」となり、目標である60以上を達成しました。なお、従業員エンゲージメント向上の責任主体をコーポレート部門から各事業部へ移管し、現場主導で主体的に課題解決にあたる体制に変更しました。
2-2 効率性の追求
資本効率性の向上を最重要課題の一つと位置づけ、その実現に向けた経営陣のコミットメントをさらに高めるため、役員報酬制度の改定を実施いたしました。単年度の業績(当期純利益等)に連動する金銭報酬に加え、業績連動型株式報酬の導入および比率引き上げを行うとともに、業績評価における資本効率性指標(ROE等)の比重を高めることで、株主の皆様との価値共有をより一層進め、持続的な企業価値向上に向けたインセンティブを強化しました。
資本コストや株価を意識した経営のもと、資産の効率化として政策保有株式の売却を進め、ACE 2.0期間累計の削減目標である300億円の売却を実施いたしました。
株主還元方針について、従来の「安定配当」から「継続増配」へと転換し、2021年度の54円から2025年度には100円へと大幅な増配を見込む水準となりました(16期連続増配見込み)。また、適正資本構成について見直しを行い、ACE 2.0の後半2年間限定の株主還元方針として「総還元性向100%」を掲げ、機動的な自己株式取得を組み合わせることで、資本効率性を改善させました。
2-3 変革を推進する人材の育成
変革を牽引する人材の強化を目的に、2024年度より新たな人事制度の運用を開始いたしました。役職者の年功的運用を廃止して役割・職務と処遇を高く連動させるとともに、各事業部に人事担当者(事業部CHRO)を配置し、事業戦略と連動したタレントマネジメント体制を構築いたしました。
従業員エンゲージメントの向上のための取り組みとして、経営人材育成研修や若手向け書生制度の拡充、さらには事業部間の交換留学制度を新たに導入し、多様な成長・学びの機会を提供いたしました。
風通しの良い組織風土を醸成するため、部門内や事業部長との対話会に加え、経営陣と従業員の双方向対話の場であるタウンホールミーティング「N-Meet up!!」や社長対話会などを定期開催し、多層的なコミュニケーションを促進いたしました。
また、株主、経営陣、従業員が同じ目線を持ち、マルチステークホルダーの価値向上に対する意識を高めることを目的に、自社株投資会への加入を促進し、37.8%から90.3%まで加入率を向上させました。
3.変革を支える機能
3-1 DXの更なる加速
DXおよびデジタルマーケティングの推進において、全社的なデジタルプラットフォームの運用を開始しましたが、収集されるデータや生成AI等の活用を含め、事業収益や業務効率化への抜本的な貢献という観点で、次期中期経営計画における継続課題として認識しています。
3-2 サステナビリティ推進体制の構築
社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を中心に、非財務目標に関わるグループ横断のプロジェクトを設置することで、マテリアリティの見直しや非財務目標達成に向けた具体的な施策の実践などに繋げています。結果として、ACE 2.0で掲げる非財務目標の達成の他、外部評価機関のレーティングの改善に寄与し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する6つのESG国内指数すべての構成銘柄に選定されました。
また、脱炭素経営ソリューションを展開するパートナー企業との協業を通じて、GHG排出量の可視化やサプライチェーン管理のソリューションを顧客と共同で展開する一方で、グループの気候変動対応として、SBT(Science Based Targets)認定を取得するなど、気候変動対応において、グローバル水準と整合性のある目標の下、カーボンニュートラルに向けた取り組みも強化しています。
(外部評価機関からの評価推移)

3-3 コーポレート機能の拡充
2つの変革を推進するための基盤強化を目的として、以下の組織拡充を実施いたしました。
グループ横断的なサステナビリティ戦略を推進する「サステナビリティ推進室」、全社で活用できる先端技術(ブロックチェーン・MI等)や医療・エネルギー分野等の新規開発を担う「未来共創室」、グループ製造業各社の生産性向上と付加価値拡大を俯瞰的に牽引する「グループ製造業経営革新室(GMI)」、そして既存事業とは異なる視点からスタートアップへの投資を行い次世代事業の創出を目指す「Nagase Future Investments株式会社」を設立いたしました。
4.新中期経営計画に向けた課題
ACE 2.0では、定量的な財務KGIの達成だけでなく、質の追求を軸に、変革に向けた基盤整備と体質の強化を進めるとともに、株主視点を重視した経営の転換を図ってきました。具体的には、製造機能(半導体、フード、ライフサイエンス)へのリソースの投下、不採算事業の整理・撤退の実行、率の経営による収益性の向上、グループ会社の再編、株式報酬の拡大、従業員持株会参加率の増加などです。
一方で、継続課題も認識しています。具体的には、DXの進化、コーポレート部門の生産性の向上、政策保有株式の対連結純資産比率の改善です。
新中期経営計画では、ACE 2.0で構築してきた基盤を前提に、「構造改革」から「成長加速」へフェーズを移行します。既存の成長戦略の具現化を確実に進めるとともに、次の成長ドライバーの創出に経営資源を集中し、あわせて変革に耐えうる強靭性・人材の強化を図ることで、時価総額1兆円の早期実現を目指します。
その目標達成のためには、スケールの拡大、レジリエンスの向上、そして成長を牽引する人材の強化を課題として認識し、新中期経営計画の策定を進めてまいりました。
(2)理念体系の見直し
当社グループは、現在の理念体系が複雑な構造となっているという課題を認識しました。次期中期経営計画の始動を機に、これまでの理念の核となる考え方を継承しつつ、よりシンプルな体系へと改定いたしました。
新たな「基本理念」は、「経営理念」、「ありたい姿」の2つの要素で構成いたします。
<経営理念>社会の構成員たることを自覚し、誠実に正道を歩む活動により、社会が求める製品とサービスを提供し、会社の発展を通じて、社員の福祉の向上と社会への貢献に努める
<ありたい姿>マテリアルを通じて、お客様と社会の課題を解決し、「ひと」と「地球」のウェルビーイングに貢献するNAGASE
この基本理念のもと、「サステナビリティ基本方針」をすべての企業活動に共通する方針として位置づけ、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
<サステナビリティ基本方針>NAGASEグループと社会の持続的な成長のため、企業活動を通じて社会・環境課題の解決に貢献し続ける
1.誠実な事業活動
2.社会との良好な関係
3.環境への配慮
(3)新中期経営計画 Walk the Talk 2028
当社グループは、飛躍的成長を時価総額1兆円と定め、早期実現を目指します。
2028年度を最終年度とする新中期経営計画 Walk the Talk 2028は、「飛躍的成長への基盤づくり」と位置づけ、時価総額1兆円に値する企業への進化を見据え、スケールの拡大、レジリエンスの向上、そして成長を牽引する人材の強化を課題として認識し、3つの基本方針を定めました。
(3つの基本方針)
1.成長戦略の実行
2.「ひと」の育成
3.強靭性の構築

(新中期経営計画の3つの基本方針)

1.成長戦略の実行
成長戦略の実行にあたり、セグメント体制を変更いたします。
機能素材、加工材料、モビリティの3つのセグメントを統合しマテリアルセグメントに、電子・エネルギーはエレクトロニクス、生活関連はライフサイエンスセグメントに名称を変更いたします。
この変更により、事業ポートフォリオの明確化、成長分野への資本配分の加速、そして、ROICを基軸とした経営を徹底し、資本効率を意識した収益構造への転換を図ります。収益性の高いエレクトロニクス、ライフサイエンスセグメントに資本を重点配分し、収益構造のバランス化を進めます。
また、各セグメントにセグメント長を配し、責任と権限を委譲、意思決定の迅速化を図るとともに、多様な事業環境に即した戦略を確実に実行し、成長を加速させます。
ACE 2.0において、事業ポートフォリオを従来の事業軸から、商社と製造による機能軸に変更しました。Walk the Talk 2028では、ポートフォリオの入れ替えと効率化の追求を担う「グロース」領域、自社製品の競争優位性をさらに強化する「フォーカス」領域、そして将来の収益源に向けた仕込みを行う「チャレンジ」領域を設定いたしました。ACE 2.0から計画してきた成長投資(施策)を確実に実行するとともに、投資成果の最大化を図ることに加え、不採算事業の整理・改善も継続的に実施することで、持続的な企業価値向上を実現します。
(セグメント体制の変更)

(セグメント別成長戦略)

(成長投資(ACE 2.0)の確実な収益化)

また、全てのセグメントにおいて、NAGASEの商社・製造・研究の3機能をフル活用しバリューチェーン全体で高付加価値を生み出す「NAGASEにしかできない独自のモデル=ユニークネス」を創出し、将来を牽引するドライバーへ進化させます。このユニークネスは既存事業の成長に加え、新たな成長ドライバーとして、収益規模の拡大とROEの向上を通して時価総額1兆円とのスケールギャップの解消を進めます。
(One NAGASEでユニークネスの創出)

(飛躍的成長への計数ロードマップ)

2.ひとの育成
当社グループは、「ひと」を最重要の経営資源と位置づけています。前例踏襲ではなく自らの意志で動く「ひと」こそが、当社グループの実行力の源泉と認識しており、個の力を強化し、それを束ねることで組織の限界を突破してまいります。
具体的には、現場力の強化に加え、2種類のリーダー育成を推進していきます。プロジェクトエンジニア=複雑な要素を統合し、構想から実現までを推進できる「ひと」と、ビジネスオーケストレーター=グループ全体を俯瞰し、強みを引き出し、調和させ、最高のハーモニーを奏でる「ひと」です。
(個の力の強化)

3.強靭性の構築
いかなる外部環境の変化にも対応し、持続的に企業価値を向上させるための強靭な経営・財務基盤を構築いたします。
先ず、資本効率性の追求として、ROIC経営を深化します。
ACE 2.0では、「率の経営」の推進のため、PLの効率性を追求する3つの財務KPIを設定・運用した結果、資本効率性を示す財務KGIである営業利益およびROE指標の達成に貢献しました。
Walk the Talk 2028では、3つの財務KPIに加えて、運転資本回転率、固定資産回転率のほか、継続課題として認識するコーポレート部門の生産性向上の指標として、間接部門の一般管理費率(対売上総利益)を導入し、「稼ぐ力」と「回す力」の両面から資本効率を引き上げてまいります。
また、継続課題として認識する政策保有株式についても、ACE 2.0の5ヵ年で実行した額以上の売却を行い、資産入替を進めます。
(資本効率性の追求(ROIC経営の深化))

(資本効率性の追求(キャッシュアロケーション))

4.株主還元方針
当社は、株主の皆様への価値向上を経営の重要課題と位置付けており、継続的な増配および自己株式の機動的な取得を株主還元方針と定めております。
新中期経営計画では、施策の確実な実行および成長投資の推進により、事業基盤の拡大と収益力の向上を図り、1株当たり利益の持続的な向上を目指します。具体的には、3年間でEPS(1株当たり当期純利益)30%の成長を目安としております。
自己株式の取得については、成長投資の機会および財務体質とのバランスを踏まえつつ、資本コストや株価水準も勘案しながら、機動的に実施することにより、新中期経営計画で掲げるROE9%以上の達成と株主価値の向上を図ります。
(株主還元方針)

5.定量目標(全社KGIおよび事業KPI)
最終年度(2028年度)では、収益力の最大化を示す「営業利益500億円以上」、および資本効率性の向上を示す「ROE9.0%以上」の達成を財務KGIとして掲げます。また、事業KPIとして、EBITDAとROICを各個社、セグメント単位で設定します。
また非財務目標として、カーボンニュートラルの実現に向け、Scope1,2のGHG排出量2021年度比32.7%削減を掲げ、経済価値と社会価値双方を追求し、持続的な企業価値の向上を実現してまいります。なお、本目標は、SBT認定を取得済の2030年目標と整合したものとなっております。

当社グループは、2021年度から2025年度までの5ヶ年を対象とした中期経営計画ACE 2.0において、“質の追求”を基本方針として掲げました。「A(主体性)」「C(必達)」「E(効率性)」のマインドを持ち、NAGASEの持続的な成長を可能にするため、すべてのステークホルダーが期待する“想い”を具体的な“形”(事業・仕組み・風土)として創出することを目指し、「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の2つの変革、およびこれらを支える機能の拡充を推進してまいりました。
結果として、成果を出せる体制に改革でき、最終年度(2025年度)における財務KGIとして掲げた「ROE8.0%以上、営業利益350億円」という目標に対し、ROE8.0%、営業利益447億円となり、共に達成いたしました。
財務KPIは、ACE 2.0期間中に改廃を行い、「率の経営」の推進のため3つの財務KPIを設定・運用した結果、収益性が向上し、財務KGIの達成に貢献しました。
また、非財務目標についても、「カーボンニュートラル」への取り組みでは、Scope1,2のGHG排出量を2013年度比で49.2%削減し、目標である37%以上削減を達成いたしました。「従業員エンゲージメント」については、(グループ)エンゲージメントサーベイ実施割合100%、2025年度の(単体)エンゲージメントサーベイスコアが「61.7」となり、目標である60以上を達成しました。
(財務KGI)
ACE 2.0の定量目標および実績
ACE 2.0の定量目標および実績は、下表のとおりです。

(財務KPI)

(非財務目標)

(ACE 2.0基本方針)
各施策の5ヶ年の行動実績と、次期中期経営計画に向けて認識された課題は以下のとおりです。(ACE 2.0振り返り)

1.収益構造の変革
1―1 収益性・効率性の追求
経営資源の最大効率化を図るために、経営資源の確保と再投下を実行しました。事業ポートフォリオを従来の事業軸から、商社と製造による機能軸に変更し、「基盤」、「注力」、「育成」、「改善」の4つの領域に分類しました。
「基盤」領域は、フードと半導体分野にて商社機能の拡充を図り、「注力」領域は、フード、半導体、およびライフサイエンス分野へ積極的に経営資源を投下し、「育成」領域は、研究開発機能の拡充、およびグローバルサウスへの事業を展開し、「改善」領域は、不採算事業や減損懸念事業からの撤退を進めました。

<基盤領域>商社機能および特定分野以外の製造機能を事業ポートフォリオにおける基盤領域と定義しています。商社機能は、グローバルネットワークとNAGASEの人材が有する情報の目利き力を活かし、社会および顧客課題の探索とソリューションのマッチングを担います。この取り組みを通じて獲得したキャッシュと良質な情報を注力・育成領域の事業展開に活かし、将来の新規事業・新規素材の創出に欠かせない機能を果たしています。
フード分野では、米国Prinovaグループを通じて、米国の甘味料専門商社(The Ingredient House社)やブラジルの香料・食品素材メーカー(Flavor Tec社、Aplinova社)を買収いたしました。これにより、アロマ事業等におけるバリューチェーンの垂直統合を実現するとともに、南米市場等でのグローバル展開と取扱製品の販売拡大を本格化させております。
半導体分野では、当社の広範なネットワークや専門知識、特殊物流ノウハウ等を持つ商社としての総合力が高く評価され、最先端半導体の国内製造を目指すRapidus株式会社の材料輸送取りまとめ業者に選定されました。次世代半導体のサプライチェーン構築に中核的立場で貢献しております。
<注力領域>Prinovaグループを中心としたフード分野、ナガセケムテックス社を中心とした半導体分野、ナガセヴィータ社を中心としたライフサイエンス分野における製造機能を注力領域と定義し、積極的な資本投下と事業基盤の拡充を行いました。
フード分野では、米国Prinovaグループにおいて新経営体制のもと基盤強化を図りました。課題であったNutrition事業では、米国ユタ州の新工場立ち上げ時、費用先行の状況が続きましたが、人員の最適化、自動化設備の導入など、徹底した原価低減の他、営業体制の再構築など、収益改善策を推進いたしました。その結果、2025年度には収益回復の目途が立ち、次年度以降の本格的な利益貢献に向けた体制を整えました。
半導体分野では、ナガセケムテックス社を中心に、需要が急増する先端半導体向け液状封止材の生産能力増強や、次世代パッケージ向け新素材「a-SMC」の開発を進めました。また、米国SACHEM社のアジア地域における半導体用高純度化学品事業(現ナガセサークレアグループ)を買収し、半導体製造用薬液(TMAH)の回収・再生事業に向けた新工場を開設いたしました。
ライフサイエンス分野においては、旧旭化成ファーマ株式会社より診断薬および診断薬酵素等の事業を買収し、2025年7月に「ナガセダイアグノスティックス株式会社」として事業を開始いたしました。同社が有する高感度な診断薬用酵素の技術力と、当社の既存事業およびグローバルネットワークを融合させ、技術シナジーの創出や新興国市場への販売拡大による事業成長を狙ってまいります。
(注力領域の進捗)

<育成領域>将来の収益の柱となる新規素材の研究開発や新規事業、高成長エリアを育成領域と定義し、中長期的な視点での種まきを実行いたしました。
研究開発(バイオ)機能では、グループ横断の「NAGASEバイオテック室」を創設したほか、米国カリフォルニア州に新研究所を開設し、AI・ロボティクスを活用した開発期間の飛躍的な短縮基盤を整えました。また、さらなる市場拡大が期待できる「グローバルサウス(インド、インドネシア、メキシコ、ブラジル)」へのエリア戦略を推進し、自動二輪・EV部品に関連する事業の合弁会社の設立やフード事業の商権拡大を目的としたM&A等を行い、将来への布石を着実に打ちました。
<改善事業>不採算事業や減損懸念事業等を改善領域と定義し、効率性およびベストオーナーの観点から事業ポートフォリオの見直しを断行いたしました。
具体的には、セツナン化成社、米国SOFIX社、大泰化工社等の売却・清算のほか、フィンランドInkron Oy社の売却等を実行し、将来の損失リスクの低減、資産の効率化を図りました。損失10億円以下という目標は未達となりましたが、引き続き損失削減に努めます。
(事業子会社の営業損失、持分法損失、減損損失、不採算取引の金額規模)

1-2 既存事業の強化
<率の経営の徹底>全事業において、「率の経営」の浸透を図り、収益性の向上を徹底いたしました。具体的には、採算性が相対的に低い取引について是正を行い、条件が整わない場合には商権返上も選択の一つとして収益性の向上に努めるとともに、在庫の保有水準の適正化など運転資本の効率化に取り組みました。こうした取り組みは、筋肉質な経営体質への転換を進め、財務KPIで掲げた3指標の改善にも貢献しました。
<事業部の再編>組織運営の合理化、意思決定のスピードアップおよび成長分野への人的資源の最適配分を目的として、従来の11事業部を7事業部へと再編いたしました。また、各種会議体の見直しと稟議規程の改定を行い、事業部門再編の効率的な運用を実現しました。
<グループ会社の再編>ケミカル分野をナガセケムテックス社へ、バイオ分野をナガセヴィータ社へ集約するグループ再編を実行いたしました。高度な技術とリソースを中核会社へ結集し、経営資源の利活用最大化と生産性向上を実現する体制を整えました。
1-3 持続可能な事業の創出
社会・環境課題の解決に貢献する新たなビジネスモデルとして、商社・製造・研究の3つの機能を活用した“ユニークネス”の概念に通じる事業開発を進めました。
<生分解性SAPの開発>ナガセヴィータ社の酵素技術とナガセケムテックス社の樹脂製造技術を掛け合わせ、でんぷん由来の生分解性高吸水性ポリマー(SAP)を開発いたしました。パートナー企業との共同開発を通じ、使用済み紙おむつから再生パルプやSAF(持続可能な航空燃料)を生成するリサイクル基盤の構築など、社会実装に向けた取り組みを加速させました。
<半導体用現像液の回収・再生事業>米国SACHEM社のアジア地域における半導体用高純度化学品事業を買収し、国内初となる半導体製造用薬液(TMAH)の回収・再生事業を創出いたしました。大阪府東大阪市に新工場を建設し、半導体業界の環境負荷低減(水・エネルギーや産廃処理の削減)に貢献するビジネスを推進いたしました。
2.企業風土の変革
2-1 経済価値と社会価値の追求
持続的な成長には経済価値と社会価値の両立が不可欠であるとの認識のもと、マテリアリティ(重要課題)を再定義いたしました。
マテリアリティにつきましては、ACE 2.0策定時以降に生じた外部環境の変化等を踏まえ、2024年9月に課題を再整理し、サステナビリティ推進委員会および取締役会での議論を経て見直しを実施いたしました。その結果、従来の「従業員エンゲージメントの向上」「脱炭素社会への貢献」「透明性の高いコーポレート・ガバナンス」に加え、当社グループが新たに取り組むべき重要課題として「健康寿命延伸への貢献」「サプライチェーンの持続性への貢献」「資源循環社会への貢献」を追加し、計6つのマテリアリティとして再特定しております。今後も経営環境の変化に合わせ、継続的な見直しを実施してまいります。

これらの課題解決に向けた非財務目標のうち、「カーボンニュートラル」への取り組みでは、Scope1,2のGHG排出量を2013年度比で49.2%削減し、目標である37%以上削減を達成いたしました。「従業員エンゲージメント」については、(グループ)エンゲージメントサーベイ実施割合100%を達成し、2025年度の(単体)エンゲージメントサーベイスコアが「61.7」となり、目標である60以上を達成しました。なお、従業員エンゲージメント向上の責任主体をコーポレート部門から各事業部へ移管し、現場主導で主体的に課題解決にあたる体制に変更しました。
2-2 効率性の追求
資本効率性の向上を最重要課題の一つと位置づけ、その実現に向けた経営陣のコミットメントをさらに高めるため、役員報酬制度の改定を実施いたしました。単年度の業績(当期純利益等)に連動する金銭報酬に加え、業績連動型株式報酬の導入および比率引き上げを行うとともに、業績評価における資本効率性指標(ROE等)の比重を高めることで、株主の皆様との価値共有をより一層進め、持続的な企業価値向上に向けたインセンティブを強化しました。
資本コストや株価を意識した経営のもと、資産の効率化として政策保有株式の売却を進め、ACE 2.0期間累計の削減目標である300億円の売却を実施いたしました。
株主還元方針について、従来の「安定配当」から「継続増配」へと転換し、2021年度の54円から2025年度には100円へと大幅な増配を見込む水準となりました(16期連続増配見込み)。また、適正資本構成について見直しを行い、ACE 2.0の後半2年間限定の株主還元方針として「総還元性向100%」を掲げ、機動的な自己株式取得を組み合わせることで、資本効率性を改善させました。
2-3 変革を推進する人材の育成
変革を牽引する人材の強化を目的に、2024年度より新たな人事制度の運用を開始いたしました。役職者の年功的運用を廃止して役割・職務と処遇を高く連動させるとともに、各事業部に人事担当者(事業部CHRO)を配置し、事業戦略と連動したタレントマネジメント体制を構築いたしました。
従業員エンゲージメントの向上のための取り組みとして、経営人材育成研修や若手向け書生制度の拡充、さらには事業部間の交換留学制度を新たに導入し、多様な成長・学びの機会を提供いたしました。
風通しの良い組織風土を醸成するため、部門内や事業部長との対話会に加え、経営陣と従業員の双方向対話の場であるタウンホールミーティング「N-Meet up!!」や社長対話会などを定期開催し、多層的なコミュニケーションを促進いたしました。
また、株主、経営陣、従業員が同じ目線を持ち、マルチステークホルダーの価値向上に対する意識を高めることを目的に、自社株投資会への加入を促進し、37.8%から90.3%まで加入率を向上させました。
3.変革を支える機能
3-1 DXの更なる加速
DXおよびデジタルマーケティングの推進において、全社的なデジタルプラットフォームの運用を開始しましたが、収集されるデータや生成AI等の活用を含め、事業収益や業務効率化への抜本的な貢献という観点で、次期中期経営計画における継続課題として認識しています。
3-2 サステナビリティ推進体制の構築
社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を中心に、非財務目標に関わるグループ横断のプロジェクトを設置することで、マテリアリティの見直しや非財務目標達成に向けた具体的な施策の実践などに繋げています。結果として、ACE 2.0で掲げる非財務目標の達成の他、外部評価機関のレーティングの改善に寄与し、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用する6つのESG国内指数すべての構成銘柄に選定されました。
また、脱炭素経営ソリューションを展開するパートナー企業との協業を通じて、GHG排出量の可視化やサプライチェーン管理のソリューションを顧客と共同で展開する一方で、グループの気候変動対応として、SBT(Science Based Targets)認定を取得するなど、気候変動対応において、グローバル水準と整合性のある目標の下、カーボンニュートラルに向けた取り組みも強化しています。
(外部評価機関からの評価推移)

3-3 コーポレート機能の拡充
2つの変革を推進するための基盤強化を目的として、以下の組織拡充を実施いたしました。
グループ横断的なサステナビリティ戦略を推進する「サステナビリティ推進室」、全社で活用できる先端技術(ブロックチェーン・MI等)や医療・エネルギー分野等の新規開発を担う「未来共創室」、グループ製造業各社の生産性向上と付加価値拡大を俯瞰的に牽引する「グループ製造業経営革新室(GMI)」、そして既存事業とは異なる視点からスタートアップへの投資を行い次世代事業の創出を目指す「Nagase Future Investments株式会社」を設立いたしました。
4.新中期経営計画に向けた課題
ACE 2.0では、定量的な財務KGIの達成だけでなく、質の追求を軸に、変革に向けた基盤整備と体質の強化を進めるとともに、株主視点を重視した経営の転換を図ってきました。具体的には、製造機能(半導体、フード、ライフサイエンス)へのリソースの投下、不採算事業の整理・撤退の実行、率の経営による収益性の向上、グループ会社の再編、株式報酬の拡大、従業員持株会参加率の増加などです。
一方で、継続課題も認識しています。具体的には、DXの進化、コーポレート部門の生産性の向上、政策保有株式の対連結純資産比率の改善です。
新中期経営計画では、ACE 2.0で構築してきた基盤を前提に、「構造改革」から「成長加速」へフェーズを移行します。既存の成長戦略の具現化を確実に進めるとともに、次の成長ドライバーの創出に経営資源を集中し、あわせて変革に耐えうる強靭性・人材の強化を図ることで、時価総額1兆円の早期実現を目指します。
その目標達成のためには、スケールの拡大、レジリエンスの向上、そして成長を牽引する人材の強化を課題として認識し、新中期経営計画の策定を進めてまいりました。
(2)理念体系の見直し
当社グループは、現在の理念体系が複雑な構造となっているという課題を認識しました。次期中期経営計画の始動を機に、これまでの理念の核となる考え方を継承しつつ、よりシンプルな体系へと改定いたしました。
新たな「基本理念」は、「経営理念」、「ありたい姿」の2つの要素で構成いたします。
<経営理念>社会の構成員たることを自覚し、誠実に正道を歩む活動により、社会が求める製品とサービスを提供し、会社の発展を通じて、社員の福祉の向上と社会への貢献に努める
<ありたい姿>マテリアルを通じて、お客様と社会の課題を解決し、「ひと」と「地球」のウェルビーイングに貢献するNAGASE
この基本理念のもと、「サステナビリティ基本方針」をすべての企業活動に共通する方針として位置づけ、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
<サステナビリティ基本方針>NAGASEグループと社会の持続的な成長のため、企業活動を通じて社会・環境課題の解決に貢献し続ける
1.誠実な事業活動
2.社会との良好な関係
3.環境への配慮
(3)新中期経営計画 Walk the Talk 2028
当社グループは、飛躍的成長を時価総額1兆円と定め、早期実現を目指します。
2028年度を最終年度とする新中期経営計画 Walk the Talk 2028は、「飛躍的成長への基盤づくり」と位置づけ、時価総額1兆円に値する企業への進化を見据え、スケールの拡大、レジリエンスの向上、そして成長を牽引する人材の強化を課題として認識し、3つの基本方針を定めました。
(3つの基本方針)
1.成長戦略の実行
2.「ひと」の育成
3.強靭性の構築

(新中期経営計画の3つの基本方針)

1.成長戦略の実行
成長戦略の実行にあたり、セグメント体制を変更いたします。
機能素材、加工材料、モビリティの3つのセグメントを統合しマテリアルセグメントに、電子・エネルギーはエレクトロニクス、生活関連はライフサイエンスセグメントに名称を変更いたします。
この変更により、事業ポートフォリオの明確化、成長分野への資本配分の加速、そして、ROICを基軸とした経営を徹底し、資本効率を意識した収益構造への転換を図ります。収益性の高いエレクトロニクス、ライフサイエンスセグメントに資本を重点配分し、収益構造のバランス化を進めます。
また、各セグメントにセグメント長を配し、責任と権限を委譲、意思決定の迅速化を図るとともに、多様な事業環境に即した戦略を確実に実行し、成長を加速させます。
ACE 2.0において、事業ポートフォリオを従来の事業軸から、商社と製造による機能軸に変更しました。Walk the Talk 2028では、ポートフォリオの入れ替えと効率化の追求を担う「グロース」領域、自社製品の競争優位性をさらに強化する「フォーカス」領域、そして将来の収益源に向けた仕込みを行う「チャレンジ」領域を設定いたしました。ACE 2.0から計画してきた成長投資(施策)を確実に実行するとともに、投資成果の最大化を図ることに加え、不採算事業の整理・改善も継続的に実施することで、持続的な企業価値向上を実現します。
(セグメント体制の変更)

(セグメント別成長戦略)

(成長投資(ACE 2.0)の確実な収益化)

また、全てのセグメントにおいて、NAGASEの商社・製造・研究の3機能をフル活用しバリューチェーン全体で高付加価値を生み出す「NAGASEにしかできない独自のモデル=ユニークネス」を創出し、将来を牽引するドライバーへ進化させます。このユニークネスは既存事業の成長に加え、新たな成長ドライバーとして、収益規模の拡大とROEの向上を通して時価総額1兆円とのスケールギャップの解消を進めます。
(One NAGASEでユニークネスの創出)

(飛躍的成長への計数ロードマップ)

2.ひとの育成
当社グループは、「ひと」を最重要の経営資源と位置づけています。前例踏襲ではなく自らの意志で動く「ひと」こそが、当社グループの実行力の源泉と認識しており、個の力を強化し、それを束ねることで組織の限界を突破してまいります。
具体的には、現場力の強化に加え、2種類のリーダー育成を推進していきます。プロジェクトエンジニア=複雑な要素を統合し、構想から実現までを推進できる「ひと」と、ビジネスオーケストレーター=グループ全体を俯瞰し、強みを引き出し、調和させ、最高のハーモニーを奏でる「ひと」です。
(個の力の強化)

3.強靭性の構築
いかなる外部環境の変化にも対応し、持続的に企業価値を向上させるための強靭な経営・財務基盤を構築いたします。
先ず、資本効率性の追求として、ROIC経営を深化します。
ACE 2.0では、「率の経営」の推進のため、PLの効率性を追求する3つの財務KPIを設定・運用した結果、資本効率性を示す財務KGIである営業利益およびROE指標の達成に貢献しました。
Walk the Talk 2028では、3つの財務KPIに加えて、運転資本回転率、固定資産回転率のほか、継続課題として認識するコーポレート部門の生産性向上の指標として、間接部門の一般管理費率(対売上総利益)を導入し、「稼ぐ力」と「回す力」の両面から資本効率を引き上げてまいります。
また、継続課題として認識する政策保有株式についても、ACE 2.0の5ヵ年で実行した額以上の売却を行い、資産入替を進めます。
(資本効率性の追求(ROIC経営の深化))

(資本効率性の追求(キャッシュアロケーション))

4.株主還元方針
当社は、株主の皆様への価値向上を経営の重要課題と位置付けており、継続的な増配および自己株式の機動的な取得を株主還元方針と定めております。
新中期経営計画では、施策の確実な実行および成長投資の推進により、事業基盤の拡大と収益力の向上を図り、1株当たり利益の持続的な向上を目指します。具体的には、3年間でEPS(1株当たり当期純利益)30%の成長を目安としております。
自己株式の取得については、成長投資の機会および財務体質とのバランスを踏まえつつ、資本コストや株価水準も勘案しながら、機動的に実施することにより、新中期経営計画で掲げるROE9%以上の達成と株主価値の向上を図ります。
(株主還元方針)

5.定量目標(全社KGIおよび事業KPI)
最終年度(2028年度)では、収益力の最大化を示す「営業利益500億円以上」、および資本効率性の向上を示す「ROE9.0%以上」の達成を財務KGIとして掲げます。また、事業KPIとして、EBITDAとROICを各個社、セグメント単位で設定します。
また非財務目標として、カーボンニュートラルの実現に向け、Scope1,2のGHG排出量2021年度比32.7%削減を掲げ、経済価値と社会価値双方を追求し、持続的な企業価値の向上を実現してまいります。なお、本目標は、SBT認定を取得済の2030年目標と整合したものとなっております。
