有価証券報告書-第73期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 10:01
【資料】
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【項目】
179項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は経営理念として、『私たちは、時代と市場の変化に迅速に対応し、「流通のプロ」として顧客の多様なニーズに応え、広く社会に貢献します。』を掲げております。
この理念の下、顧客第一主義を掲げ、付加価値を高めた商品の流通や顧客ニーズに即応した提案型サービスを提供するユーザー系商社として、「存在感ある商社流通」を追求し、すべてのステークホルダーからの評価・支持を得られる企業価値の向上に努めます。またコンプライアンスを重視し、事業を通じて国際社会や地域社会に貢献することで、「企業の社会的責任」を果たしていきます。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、持続的な企業の成長、高収益な事業体質及び安定的な財務基盤の確立を図るため、事業セグメントごとの取扱数量、経常損益並びにグループ全体でのネット負債倍率(Net DER)などを経営上の重要な管理指標としております。また、企業活動の裾野を広げて事業の成長性を量る指標として、新規ユーザー獲得数も採用しております。
なお、2021年3月期の通期業績目標につきましては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が、当社グループの事業活動及び経営成績等に及ぼす影響を本報告書提出日現在において合理的に見積もることが困難であることから、未定としております。今後、公表が可能となった時点で速やかにお知らせいたします。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2016年度から2019年度までの4か年にわたる中期経営計画を策定し、重点課題の達成に向けた取り組みを進めてまいりました。中期経営計画の概要は、以下の通りです。
《テーマ》
『Sへのこだわり -STEADY, SPEEDY, STRATEGIC- 』
~中長期を見据えたSUSTAINABLEな収益体質と経営基盤の強化~
① STEADY:既存の事業領域から得られる収益の確保と強化
② SPEEDY:グループ企業や国内外の戦略投資からの投資効果の早期実現
③ STRATEGIC:4年間で500億円程度の戦略的投資の継続による将来の追加収益の確保
《業績目標》
最終年度(2019年度) 売上高2兆1,000億円、経常利益350億円
新規ユーザー獲得数2,700社(4年間累計)





当連結会計年度において、当中期経営計画の期間が終了したことから、その結果を以下のように総括しております。

① STEADY… 既存の事業基盤からの収益 (当社子会社及び③に該当する戦略的投資先からの受取配当金を控除した当社単体の経常利益) ② SPEEDY… 投資したグループ会社からの収益 (当社連結子会社の経常利益、非連結子会社からの受取配当金及び持分法投資損益(③に該当する
戦略的投資対象会社分を除く)) ③ STRATEGIC…戦略的投資からの追加収益
(金属資源を中心とする戦略的投資先からの持分法投資損益及び受取配当金)
売上高については、最終年度に市況低下、需要減退の影響を受け、未達とはなったものの、ほぼ想定水準を実現しました。
利益面での3つの「S」それぞれの推移は、以下の通りです。
① STEADYについては、2017年度までは、当社の取扱品目の多くが市況上昇局面にあり利益スプレッドが拡大したことに加え、国内外の経済環境の緩やかな成長もあって取扱数量も増加するなど順調な経過となりましたが、計画期間後半は、鉄鋼市況のピークアウトの一方で、仕入れコストの上昇がスプレッドを圧縮した他、米中貿易摩擦やオリンピック関連工事の一巡による需要の減退、外貨建取引の拡大に伴う外貨調達コストの増加も加わり、利益水準としては概ね想定ラインを維持したものの、目標値には若干未達で終了しました。
② SPEEDYについても、計画期間前半は、国内グループ会社を中心に成長を維持し、順調な結果となりましたが、後半は、海外コイルセンターにおけるひも付き価格上昇期の利益スプレッドの剥落や、海外グループ会社での現地通貨安による為替差損の発生により利益が下押しされました。その後、国内の鉄鋼販売グループ会社も景気減速の影響を受けて利益水準を落としたほか、米中貿易摩擦による需要減退影響の顕在化など、停滞感が残る結果となりました。
③ STRATEGICについては、青山控股集団のインドネシアプロジェクトにおいては、製品取引による収益貢献に加え、配当も開始されるなど概ね期待通りの成果となりました。しかしながら、クロム鉱石資源の世界シェアの高さから安定的な収益貢献が期待されたSAMANCOR CHROME HOLDINGS PROPRIETARY LTD. (以下、SAMANCORといいます。)については、2017年度の持分法適用以降の3か年はクロム市況とステンレス鋼需要の停滞期に入り、収益が悪化、当社持分に対する利益は想定を大幅に下回り、2019年度には将来収益見通しの引下げから減損処理を余儀なくされ、多額の損失を計上する結果となりました。
新規ユーザー獲得数の目標については、2,666社と目標にあと一歩及びませんでしたが、取引ユーザーのすそ野を広げる活動は、今後の収益に貢献するものと考えております。
投資に関しては、大型の資源投資があり計画の500億円を上回る768億円となりましたが、SAMANCORで減損処理が発生した他、開発型の投資も多く、その投資効果の多くが次年度以降に現れるもので、当計画期間での直接的な利益貢献は限定的でした。
当社は、中期経営計画の最終年度において、当社グループとしては初めての経常損失となったことを真摯に受け止め、2020年度を初年度とする次期の中期経営計画(2020年度-2022年度)においては、財務体質の強化にあらためて努めるとともに、前中期経営計画で種蒔きした国内外での成長機会から漏れなく果実を採るための土台作りと位置づけ、次への発展を見据えて取り組んでまいります。
基本的な事業戦略は前中期経営計画を引き継ぎ、そこか(即納・小口・加工)戦略や東南アジアでの事業展開の強化を通じた収益の最大化などを目指していきながらも、持続的な(Sustainable)成長につなげるための経営基盤の構造(Structural)改革を意識し、以下の施策にも優先的に取り組んでいく所存です。
(1)財務規律の強化と資本効率の向上
(2)グループ経営体制の深化
(3)人材基盤の高度化・多様化
(4)基幹システムの更改及びHKQC(Hanwa Knowledge Quality Control)の実効性向上
(5)SDGsへの取り組み及び多様なステークホルダーとの対話促進
なお、定量的な目標を含む次期中期経営計画の詳細につきましては、新型感染症の流行の状況が連結業績に与える影響などを踏まえ、2020年度第2四半期決算発表時を目途に公表する予定でおります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症の拡大により世界経済の先行きが見通しづらいなか、米国においては、サプライチェーンの分断による企業活動の停滞や、これまで景気を牽引してきた個人消費の失速などが懸念されています。欧州においては、感染症への対策として都市の封鎖や移動・入国制限などが続いており、情勢が長期化した場合には倒産企業の拡がりや雇用環境の悪化などが不安視されます。中国では、政府主導のもと企業の操業は一部で再開していますが、外需の縮小が続くなかで国内経済の回復にも相当程度の時間を要するものと考えられます。その他の新興諸国では、感染症流行による各国での経済活動の抑制を背景に、輸出や設備投資の減少などが当面続いていくことが見込まれます。
国内経済は、貿易摩擦や消費税率引上げの影響に加え、感染症拡大によるオリンピックの開催延期や政府による緊急事態宣言の発動が相次ぎ、急速に停滞感が強まっています。全国的な休業・自粛要請が続くなかで雇用環境の悪化や倒産件数の増加が懸念されるほか、建設工事の中断や製造業における生産活動の抑制など、企業活動の下振れが続くものと思われます。
当社グループとしましては、このような事業環境の中においても、各事業分野における需要動向を的確に把握し、取引先のニーズを反映した適切な販売・在庫政策を進めるとともに、新規取引先を積極的に開拓することにより、業績の維持・向上に注力していく所存です。
当社グループの対処すべき課題としては、以下を認識しております。
営業面では、メーカー・サプライヤーからユーザーにいたるバリューチェーンの各段階の効率化や最適化を実現していくことにより、全体に含まれるあらゆる収益機会を確実にとらえて収益を最大化していく必要があり、そのために自律的な成長と事業の多様性の確保を軸に、攻めの戦略を打ち出していきます。また、「第二の阪和を東南アジアに」をコンセプトに、これからの有望・成長市場である東南アジア域内へモノの輸出から機能の輸出への転換を推進するなど、海外での収益力強化を図ります。
経営管理面では、キャッシュ・フローの重視や保有資産の見直しなど財務規律の強化と資本効率の向上に取り組んでいくほか、事業規模の拡大やグループ会社の増加を踏まえ、部分最適からグローバル最適へと全社の経営資源をより効率的かつ効果的に配分するようグループ経営体制を再構築していきます。また、当社基幹システムの刷新やHKQC(Hanwa Knowledge Quality Control)活動の推進を通じて、引続き業務品質の向上や収益の取りこぼし防止に努めていくほか、幅広い知見を有する人材の育成や多種多様なステークホルダーとの積極的な対話などにも取り組んでまいります。