有価証券報告書-第71期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/27 11:58
【資料】
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【項目】
148項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、卸売市場法に基づく東京都中央卸売市場の水産物の荷受会社として、“国民の健康的な食生活への貢献”という社会的使命を果たしていくとともに、集荷力・販売力の強化に努め、首都圏の一大消費地を抱える市場荷受としての優位性を発揮しつつ、“旧来型の荷受会社から、広範な機能を有する販売会社への転換”を図り、新たな価値創造によってステークホルダーの期待に応えて参ります。
(2)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
上記基本方針のもと、当社グループはMSC、ASCといった海洋保護活動に貢献する国際流通認証を取得し、海洋資源保護や環境に配慮した水産物の取扱いを増やすことにより、出荷者・生産者から、買受人の皆様の顧客満足度を高められるよう、集荷及び販売に注力していきます。また、生産地加工・消費地加工の充実、豊洲市場内の新冷蔵庫などの設備を活用し、多種多様な顧客ニーズに沿った販売を心掛けていくとともに、グループ会社を横断する形で物流委員会を設置、グループ会社資産の全てを有機的に結合することで、生鮮冷凍物流通網を構築していくことを目指します。
当社グループは、2014年度より『新経営計画=CHALLENGE-2020』(以下、『CHALLENGE-2020』という)を推進しており、豊洲新市場移転への助走期間と位置付けた2年計画“フェーズⅠ”は、2015年度で所期の目的を概ね達成し終了しました。
2016年度からは、セカンドステップとして“フェーズⅡ”をスタートさせ、同年8月末に、豊洲新市場における加工機能の拡充等の戦略拠点として、総投資額53億円を投じた多機能型冷蔵庫を完成させ、同年11月の新市場開場に向け万全の態勢を整えておりました。
しかしながら、東京都知事による移転延期の発表(2016年8月末)により状況は一変し、豊洲新冷蔵庫は未稼働(建設仮勘定)となり、“フェーズⅡ”の所期の計画、すなわち、豊洲市場移転後の機能拡充と投資効果を最大限に生かし、着実な業績伸長を目指すという当初の計画は、歩みを止めざるを得ない状況でありました。この間、株主始めステークホルダーの皆様には、多大なるご心配をお掛け致しておりましたが、2017年6月に、東京都は豊洲新市場への移転する旨の基本方針を表明、続く2017年12月に同市場の開場日を2018年10月11日にすることを正式決定し、同日、2年間の空白を経てようやく東京都中央卸売市場豊洲市場が誕生いたしました。同時に当社もこの新しい市場で事業を開始することができました。
新市場は、最新の設備と機能を備えており、温度管理、衛生管理の徹底により、水産物の鮮度維持、品質管理が確保されており、また、築地市場に比べスムーズな物流が確保されていることで、出荷者・生産者、そして買受人の皆様からは好評価を受けている一方、築地に比べ遠くなった、交通の便が悪いという評判や、最新設備による費用増加という課題も見えてきました。
当初、“フェーズⅢ”は新たな挑戦・ジャンプアップ期間と位置付け、各事業の持続的成長と新規収益機会の獲得により、トップラインの引上げと優良資産のレバレッジ効果により収益率向上を目論んでいたものの、市場移転延期という失われた2年間のブランクを取り戻すのは難しく、豊洲市場での今後の事業展開も勘案し、下記のとおり『CHALLENGE-2020』の最終目標を修正いたしました。
『CHALLENGE-2020』2020年度業績目標
(当初計画)
2020年度業績目標
(修正後)
売上高100,000百万円77,000百万円
経常利益700百万円250百万円
親会社株主に帰属する当期純利益600百万円200百万円
総資産20,000百万円17,500百万円
純資産7,000百万円6,200百万円
自己資本比率35.0%35.0%

修正した目標達成に向け、新設冷蔵庫の稼働安定化、リスクマネジメントの徹底、営業利益の黒字安定化、財務基盤の強化に取り組んで参ります。
(3)経営環境
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用環境の改善等を背景に景気は緩やかな回復基調が継続しているものの、米中通商問題の長期化や海外経済の減速などの不安要因もあり、国内景気は足踏み状態が続いております。
当社を取巻く水産卸売業界においては、日本近海の鮮魚漁獲量の減少傾向、輸入物を主体とする冷凍魚の高騰など供給側の厳しさは継続しており、消費者の食に対する節約志向・安全安心志向、海洋資源の保護意識の高まり、さらに、素材から調理品へとの消費形態の変化が加速されており、一般消費者等の需要側にも水産物に対する今まで以上の厳しい目が注がれ、水産物卸売業を取り巻く環境は厳しい状況が続くものと思われます。