有価証券報告書-第68期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:26
【資料】
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【項目】
146項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念として「新たな価値を創造し、世界のお客様に信頼される会社を実現する」ことを掲げ、真に市場から必要とされ、お客様にとって無くてはならないサプライヤーになることを目指して、事業活動を進めております。その経営理念の下、以下の経営方針を定めており、その実現が企業価値の増大につながるものと考えております。
① グローバル企業としてさらなる発展をめざす
② ファクトリー&ファブレス機能を強化し卓越した強みを創造する
③ 企業の成長を通し、社員の幸福と社会貢献を実現する
(2) 目標とする経営指標及びその推移
当社グループが目標とする経営指標(連結)につきましては、以下を掲げております。
① 売上高、売上高総利益率、営業利益、営業利益率
② ROE(自己資本当期純利益率)について8%以上維持を目標としております。
③ ROA(総資産経常利益率)について10%以上維持を目標としております。
④ DOE(純資産配当率)について2.3%を目標としております。
⑤ 配当性向について30%以上を目標としております。
なお、各経営指標の達成状況は以下のとおりです。
66期
(2018年3月)
67期
(2019年3月)
68期
(2020年3月)(注)
目標(期首予想)実績目標(期首予想)実績目標(期首予想)実績
売上高(百万円)38,00038,97440,00039,45740,00035,905
売上高総利益率(%)25.125.325.324.925.024.1
営業利益(百万円)3,8504,2194,2504,0764,1003,265
営業利益率(%)10.110.810.610.310.39.1
ROE(自己資本当期純利益率)(%)8.011.18.010.08.08.0
ROA
(総資産経常利益率)
(%)10.011.010.010.210.08.1
DOE
(純資産配当率)
(%)2.32.32.32.42.32.5
配当性向(%)30.020.430.024.130.031.2

(注)68期(2020年3月)の目標数値は、下方修正前の数値を記載(2019年11月に売上高36,000百万円に下方修正)
(3) 経営環境
今後の自動車市場は、中長期的には新興国を中心とした自動車需要の伸長もあり、緩やかに拡大していくものと考えております。その一方で、環境問題など社会的課題への対応や、電動化、自動運転、コネクティッド、シェア&サービスなどの技術革新の急速な進行などにより、自動車業界は100年に一度の変革期に直面しています。
このような経営環境の中、当社グループは、市場の変化をお客様への更なる貢献のチャンスと捉え、新たな価値の創造とグローバルな対応力の強化に積極的に取り組んでいきます。
新たな価値の創造に関しては、当社の独自技術である「圧入プロジェクション接合技術」を活用した自動運転関連部品・電動化部品が大手自動車メーカー数社に新規採用されるなど既に成果に至っており、今後の更なる拡大を見込んでいます。
グローバルな対応力の強化に関しては、お客様の現地調達ニーズの拡大に対応するために米国、中国、タイの主要海外拠点で冷間圧造、精密プレス、精密切削など国内と同様の生産体制の整備等を推進しております。
一方、短期的な経営環境は、米中貿易摩擦による両国経済の減速や欧州の景気の低迷等、世界経済の成長率鈍化、これらを背景にしてわが国経済も低成長が継続、さらに世界的な新型コロナウイルスの感染拡大も影響を及ぼしており自動車業界は深刻な状況にあります。特に新型コロナウイルスの影響は甚大であり、現在、当社グループの主要得意先は当該ウイルス感染拡大防止のため国内外で工場の稼働停止、生産活動の縮小を行っており、その再開時期、正常化までの期間が流動的で見通せない状況にあり、今後、正常化した場合でも自動車需要の減退等が懸念されています。
このような状況を踏まえ、当社グループの2021年3月期の連結業績予想も合理的な算定が困難であることから未定としております。
当社グループといたしましては、早期に業績を回復基調に戻すべく、開発検討段階から新加工技術や幅広く最適な調達機能を提案できる当社の強みを発揮して、経営の基本方針に沿った各種戦略や、対処すべき課題に掲げた基本戦略をぶれることなく推し進めてまいります。
(4) 中長期的な経営戦略
当社グループは、今後5年以内のグループ連結売上高500億達成を目標とし、以下の戦略を推進しています。
① 開発・製造機能の強化による強みの構築
② グローバル事業体制の強化、拡充
③ 戦略的調達活動の推進
④ 企業価値向上への取組み継続
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 開発・製造機能の強化による強みの構築に関する事項
(a) 幅広いマーケティング活動に基づき、新たな加工技術を開発し競争力を強化する
当社グループは独自の新たな加工技術の開発と、既存保有技術の進化活動を積極的に進めております。
当社独自の加工技術である「圧入プロジェクション接合技術」は、「高強度化」「高精度化」「軽量・コンパクト化」を実現するものであり、今後の拡大が期待される自動運転関連部品や電動化部品として既に大手自動車メーカー数社に採用されております。今後もその技術を幅広い部品の製造に活用する等の開発活動を進めます。
また、新たな加工技術の開発については、市場調査の専門組織を立ち上げ、減速機ユニット、モーターユニット、HV用エンジンユニット等、次世代自動車への採用が見込まれる部品を中心に、精密塑性加工技術や接合技術等の高度化を調査・研究中です。これらの取組みは当社の強みを増していくだけではなく、各自動車メーカーがCO2削減目標を掲げて開発・投入を進めているHVやEV等に、当社の独自加工技術を用いた部品が採用されることにより、結果的に環境問題への対応として貢献できると考えており、今後、更に加速してまいります。
(b) 各製造拠点の生産対応能力を拡大し、ファクトリー機能を強化する
長期的には世界の自動車生産台数の増加が見込まれており、お客様が求めるニーズも更に多様化、高度化していくものと考えています。こうした需要をカバーし、多種多様な品揃えで差別化を図っていくためには、当社グループ内の生産対応能力の拡大が必要と考えています。
具体的な施策の一例として現在、当社国内製造子会社のオーハシ技研工業株式会社の製造工場集約を推進中であります。これは、人材、設備、各種業務、拠点間運賃、インフラ整備等の重複コストを改善することに加え、新技術開発の強化等、同社製造機能の強化を図り、国内における切削加工事業の再構築を目指したものであり、本年7月にはこの新体制をスタートする予定です。
さらに同子会社鈴鹿工場の第2工場建設も検討しており、これらを積極的に推進し、中期的な目処として、売上高に占めるグループ製造部門の比率を現状の25%から40%に引き上げることを目指します。
(c) 主要調達先との資本提携を推進し、グループ内製造機能を強化する
高い加工技術力、独自の加工技術を有する主要調達先との資本提携を推進し、グループ内の製造機能を強化します。現行の資本提携先においては、株式会社テーケーで戦略商品製造ラインの増設と製造環境のインフラ整備を行ったほか、株式会社ナカヒョウでは大型溶接機等の新規設備導入を行う等、生産体制の整備を進めています。
② グローバル事業体制の強化、拡充
(a) 新事業拠点展開と既存拠点の機能を強化し、グローバル対応力の向上を図る
当社のお客様の海外現地調達ニーズは今後も更に増加していくものと想定され、こうしたニーズに対応するための当社グループ海外拠点の機能を更に強化していきます。一例としては、2019年度に米国の製造子会社における切削加工の新規設備の導入、タイの製造子会社における切削加工の新規設備の導入を実施したほか、中国の製造子会社においては工場拡張と圧造加工の新規大型設備を導入する計画が現在進行中であるなど、積極的に施策を実行しています。
(b) 各海外子会社の組織体制の強化とローカル社員の経営管理力の向上を図る
継続課題として積極的に取り組みます。
③ 戦略的調達活動の推進
(a) ファブレス機能の更なる強化のために、主要調達先企業との戦略的関係を構築する
(b) グローバル調達体制を強化する
ファクトリー機能と併せ、当社のもう一つの事業の柱であるファブレス機能の更なる強化について継続課題として取り組んでおります。お客様のニーズは多様化しており、そのニーズに対応するためには、自社での開発機能の強化と併せ、高い技術力を持つ調達先企業との連携を強化し、事業活動を行うことが不可欠と考えております。
高い技術力を有する主要調達先企業とは資本提携を含めた戦略的関係を構築すべく、現在も候補先を選定し交渉を進めておりますが、それと同時に新たな調達先の発掘にもグローバルに取り組んでいます。
④ 企業価値向上への取組み継続
(a) ESG(環境・社会・企業統治)を重視した企業活動を推進し、持続的成長を図る
当社グループは、ESGを重視した企業活動を重視しており、環境問題への対応として電動化部品について積極的な研究開発を進めているほか、社会貢献活動として、地域の清掃活動、寄付活動などにも積極的に取り組んでいます。
また、株主をはじめステークホルダーから信頼されるため、企業倫理に基づき法令、社会規範を遵守し、健全かつ透明性の高い、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる経営体制を構築し、コーポレート・ガバナンスの充実を図っていきます。その取組みの一環として、当事業年度には、指名・報酬委員会を設置し、活動をスタートいたしました。
(b) ステークホルダーへの安定的な還元を実行する
継続して企業価値の向上を図り、ステークホルダーの信頼向上に努めることを重視しており、その実現のために、強固な経営基盤と財務体質を維持し、株主様に対しては安定的な還元と積極的な資本政策を実施してまいります。
なお、当事業年度は年間で1株当たり52円と8期連続の増配を決議しており、また、2020年5月には、株主還元の充実及び資本効率の向上を図ることを目的として、上限3億円(21万株)の自己株式の取得を決定し、併せて、従来保有していた自己株式全株の消却を実施しました。