有価証券報告書-第69期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 14:25
【資料】
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【項目】
134項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、経営理念として「新たな価値を創造し、世界のお客様に信頼される会社を実現する」ことを掲げ、真に市場から必要とされ、お客様にとって無くてはならないサプライヤーになることを目指して、事業活動を進めております。その経営理念の下、以下の経営方針を定めており、その実現が企業価値の増大につながるものと考えております。
① グローバル企業としてさらなる発展をめざす
② ファクトリー&ファブレス機能を強化し卓越した強みを創造する
③ 企業の成長を通し、社員の幸福と社会貢献を実現する
(2) 目標とする経営指標及びその推移
当社グループが目標とする経営指標(連結)につきましては、以下を掲げております。
① 売上高、売上高総利益率、営業利益、営業利益率
② ROE(自己資本当期純利益率)について8%以上維持を目標としております。
③ ROA(総資産経常利益率)について10%以上維持を目標としております。
④ DOE(純資産配当率)について2.3%を目標としております。
⑤ 配当性向について30%以上を目標としております。
なお、各経営指標の達成状況は以下のとおりです。
67期
(2019年3月)
68期
(2020年3月)(注)1
69期
(2021年3月)(注)2
目標(期首予想)実績目標(期首予想)実績目標(期首予想)実績
売上高(百万円)40,00039,45740,00035,90527,00029,782
売上高総利益率(%)25.324.925.024.123.423.4
営業利益(百万円)4,2504,0764,1003,2651,3002,105
営業利益率(%)10.610.310.39.14.87.1
ROE(自己資本当期純利益率)(%)8.010.08.08.08.04.9
ROA
(総資産経常利益率)
(%)10.010.210.08.110.05.4
DOE
(純資産配当率)
(%)2.32.42.32.52.32.4
配当性向(%)30.024.130.031.230.049.0

(注)1.68期(2020年3月)の目標(期首予想)は、下方修正前の数値を記載(2019年11月に売上高36,000百万円、営業利益3,300百万円に下方修正)
2.69期(2021年3月)の目標(期首予想)は、2020年8月に公表した数値を記載(2021年2月に売上高29,000百万円、営業利益1,900百万円に上方修正)
(3) 経営環境
今後の自動車市場は、中長期的には新興国を中心とした自動車需要の伸長もあり、緩やかに拡大していくものと考えております。その一方で、環境問題など社会的課題への対応や、電動化、自動運転、コネクティッド、シェア&サービスなどの技術革新の急速な進行などにより、自動車業界は100年に一度の変革期に直面しています。
また、足元は、新型コロナウイルス感染症が再拡大するなど収束の兆しが見られず、加えて、世界的な半導体不足、海上物流の混乱等も顕在化しており、自動車業界の先行きは不透明な状況が続いています。
このような経営環境の中、当社グループは、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に万全の対策を講じつつ、市場の変化を的確に捕捉し、新たな価値の創造とグローバルな対応力の強化に積極的に取り組んでまいります。
新たな価値の創造に関しては、当社の独自技術である「圧入プロジェクション接合技術」を活用した自動運転関連部品・電動化部品が更に適用範囲を拡げて、採用実績を積み上げております。
グローバルな対応力の強化に関しては、お客様の現地調達ニーズの拡大に対応するために米国、中国、タイの主要海外拠点で冷間圧造、精密プレス、精密切削など国内と同様の生産体制の整備等を推進しております。
当社グループといたしましては、引き続き、開発検討段階から新加工技術や幅広く最適な調達機能を提案できる当社の強みを発揮して、経営の基本方針に沿った各種戦略や、対処すべき課題に掲げた基本戦略をぶれることなく推し進め、今後の難局を乗り越えてまいります。
(4) 中長期的な経営戦略
当社グループは、今後5年以内のグループ連結売上高500億円達成を目標とし、以下の戦略を推進しています。
① 開発・製造機能の強化による強みの構築
② グローバル事業体制の強化、拡充
③ 戦略的調達活動の推進
④ 企業価値向上への取組み継続
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 開発・製造機能の強化による強みの構築に関する事項
(a) 幅広いマーケティング活動に基づき、新たな加工技術を開発し競争力を強化する
当社グループは独自の新たな加工技術の開発と、既存保有技術の進化活動を積極的に進めております。
当社独自の加工技術である「圧入プロジェクション接合技術」は、「高強度化」「高精度化」「軽量・コンパクト化」を実現するものであり、今後の拡大が期待される自動運転関連部品や電動化部品として既に大手自動車メーカー数社に採用されております。本接合技術を幅広い部品の製造に活用する等の開発活動にも注力しており、2020年度では、新たにブレーキ関連部品として大手自動車メーカー数社に採用されるなど成果を積み上げております。
また、第二、第三の独自加工技術の開発にも積極的に取り組んでおり、市場調査の専門組織を立ち上げ、減速機ユニット、モーターユニット、HV用エンジンユニット等、次世代自動車への採用が見込まれる部品を中心に、精密塑性加工技術や接合技術等の高度化を調査・研究中です。これらの取組みは当社の強みを増していくだけではなく、各自動車メーカーがCO2削減目標を掲げて開発・投入を進めているHVやEV等に、当社の独自加工技術を用いた部品が採用されることにより、結果的に環境問題への対応として貢献できると考えており、今後、更に加速してまいります。
(b) 各製造拠点の生産対応能力を拡大し、ファクトリー機能を強化する
長期的には世界の自動車生産台数の増加が見込まれており、お客様が求めるニーズも更に多様化、高度化していくものと考えています。こうした需要をカバーし、多種多様な品揃えで差別化を図っていくためには、当社グループ内の生産対応能力の拡大が必要と考えています。
具体的な施策の一例として、2020年度は当社国内製造子会社のオーハシ技研工業株式会社の主要加工技術である切削加工事業を統合いたしました。これは、人材、設備、各種業務、拠点間運賃、インフラ整備等の重複コストを改善することに加え、新技術開発の強化等、同社製造機能の強化を図り、国内における切削加工事業の再構築を目指したものです。
さらに同子会社鈴鹿工場の第2工場建設も検討しており、これらを積極的に推進し、中期的な目処として、売上高に占めるグループ製造部門の比率を現状の25%から40%に引き上げることを目指します。
(c) 主要調達先との資本提携を推進し、グループ内製造機能を強化する
高い加工技術力、独自の加工技術を有する主要調達先との資本提携を推進し、グループ内の製造機能を強化します。現行の資本提携先においては、株式会社テーケーで戦略商品製造ラインの増設を行う等、生産体制の整備を進めています。
② グローバル事業体制の強化、拡充
(a) 既存拠点の機能を強化し、グローバル対応力の向上を図る
当社のお客様の海外現地調達ニーズは今後も更に高まっていく見通しであり、こうしたニーズに対応するため、当社グループ海外拠点では自社製造機能や現地調達機能を更に強化しながら、安定した部品供給体制を構築してまいります。2020年度は、中国の製造子会社において工場を拡張した上で、圧造加工の新規大型設備を導入し、量産開始に向けた準備を進めております。また、米国の製造子会社では圧造、切削、精密加工技術において、タイの製造子会社では切削加工技術において、それぞれ製造強化につながる新規設備を導入しました。
③ 戦略的調達活動の推進
(a) ファブレス機能の更なる強化のために、主要調達先企業との戦略的関係を構築する
ファクトリー機能と併せ、当社グループのもう一つの事業の柱であるファブレス機能についても、一層強化 してまいります。お客様のニーズは多様化しており、そのニーズに対応するためには、自社の開発・製造機能の強化と併せ、高い技術力を有する調達先企業との連携を更に強化し、事業活動を行うことが不可欠と考えております。2020年度は、主要調達先数社と新たな設備導入を前提とした受注活動を展開し、新規案件の受注に成功いたしました。
また、新たな調達先の開拓にもグローバルに取り組んでおります。
④ 企業価値向上への取組み継続
(a) SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する企業活動達成を推進し、企業価値の向上を図るとともに 活力ある豊かな社会づくりを実践する
SDGsに対する当社グループの基本方針は、事業活動を通じて環境と社会の課題解決に貢献し、経済的価値と社会的価値の「共創」を実現していくこととしております。その「共創」の実現により、持続的開発目標の達成を目指してまいります。
優先して取り組む主要目標として、①自動車産業の発展と社会に貢献する技術革新の実現、②地球環境に配慮した企業経営、③人と社会とのつながりを重視したステークホルダーとの関係強化、の3項目を掲げ、具体的取組事項を全部署の目標、調達先との協業目標に組込み、推進してまいります。
また、株主をはじめステークホルダーから信頼されるため、企業倫理に基づき法令・社会規範を遵守し、健全かつ透明性の高い、経営環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる経営体制を構築し、コーポレート・ガバナンスの充実を図ってまいります。その取組みの一環として、本年6月の株主総会において、社外取締役(東京証券取引所の定めに基づく独立役員)1名の追加選任を決議いたしました。
(b) ステークホルダーへの安定的な還元を実行する
継続して企業価値の向上を図り、ステークホルダーの信頼向上に努めることを重視しており、その実現のために、強固な経営基盤と財務体質を維持し、株主様に対しては安定的な還元と積極的な資本政策を実施してまいります。
なお、2020年度は新型コロナウイルス感染症が拡大し、当社業績にも大きな影響を及ぼしましたが、年間配当は前年と同一の1株当たり52円を維持しました。また、株主還元の充実及び資本効率の向上を図ることを目的として自己株式の取得を3回実施し、総額795百万円(52万株)の自己株式を取得した他、従来保有していた自己株式(148万株)の消却も実施いたしました。